推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
上 下
45 / 56
番外編(その後のお話)

取引は計画的に②(デリック&アリス&スフレ)

しおりを挟む

ジュリエットと婚約しているにも拘らず、何故か御令嬢に言い寄られてしまう。
「大切な婚約者がいるから」と断っていても、他の令嬢よりも慎ましく多少地味なジュリエットを下に見ているのか、最近は彼女に迷惑を掛けているようだった。
心配になりジュリエット本人に聞いてみても、本を読みながら「別に、大した事はないです」そう素気なく話すだけだった。

令嬢達の前に出て、牽制したとしてもジュリエットへの嫌がらせを加速してしまうかもしれないし、一時的な解決にしかならない。
むしろ悪化してしまう可能性すらあるだろう。
となると、頼れるのはジュリエットと同じクラスでありリオノーラの妹であるスフレと、お洒落で令嬢達に慕われているアリスである。


「ジュリエットの慎ましい姿はとても素敵なんだが、些か自分の身なりに興味がなくてね」

「確かに、地味ですわね」

「他の御令嬢と比べちゃうと……そうですね」


ジュリエットが興味あるのは本だけである。
眼鏡にキッチリと着込んだ制服。化粧も髪のアレンジもしない。
普段着ているドレスも真面目な家庭教師が着るような、固いものばかりだ。

ドレスをプレゼントしてみようと母のブティックに行ったものの、嫌な顔をされて以来行っていない。
デリックも流石に、御令嬢の身形についてアドバイスをする事も出来ずに気を揉んでいた。


「アリス嬢。ジュリエットが少しでもお洒落に興味を持てるように導いてくれないか?」

「はぁ……!?」

「そしてスフレ嬢には、ジュリエットに手を出している御令嬢を牽制して欲しいんだ」


どの面下げて来たんだよ……とでも言いたげなアリスの視線。
今までアリスにしてきた事を考えれば、自分の願いを聞いてくれる訳もない。
そして絶対的なアリス信者の一人であるスフレはアリスと同じ気持ちなのだろう。
因果応報とはよく言ったものだ。
けれど、笑みを張り付けながら思っていた。


───ここまでは想定内である。


自分だって馬鹿ではないし、元より自分の願いをタダで受け入れてもらおうなどとは思っていない。

そして切り札を出す。


「さて、そんな二人に提案があるんだ」

「……何ですの?」

「まずアリス嬢から……」


後ろから一冊の本を取り出した。


「本……?そんな古びた本が何だって言うの?」

「まぁ、最後まで聞いてよ」

「……ふん」

「ここにユーリンが、幼い頃からずっとずーっと欲しがっていた本があります」

「ッ!!??」

「これを渡せばユーリンは……」

「───ッこのアリスに全て任して下さいませ!!デリック殿下!!!必ずやジュリエット嬢をお洒落に目覚めさせてみせますわッ!!!!」

「……アリス様、悪魔に魂を売ったのね」

「そうよ、スフレ!!わたくしはユーリン様の為なら、悪魔に魂を売る覚悟があるわ!!」

「ッ!!さすがです!!アリス様……!」


本を受け取ったアリスの目が爛々と輝いていた。


「そしてスフレ嬢……」

「私はそう易々と釣られたりしないんだから!!」


今度はスフレの番と言わんばかりに、内ポケットから一通の手紙を取り出した。


「ここに隣国の第三王子であり、スフレ嬢が好きそうな爽やかなイケメンで、とても性格が良いガイルの……」

「───ッ畏まりました!デリック殿下ッ!!ジュリエット様の邪魔をする御令嬢を牽制し、そして必ずやジュリエット様をお守りしてみせますっ!!!!!!!」

「あはは……話が早くて助かるよ」

「「お任せ下さいませ!!」」


スフレは手紙を奪い取ると、アリスと共にご機嫌に去って行った。
あの二人に任せれば、取り敢えずは一安心と言った所だろうか。
一息ついた後、ジュリエットがいるであろう図書室へと足を進めた。








欲望に忠実な二人

end
しおりを挟む
感想 918

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。