45 / 56
番外編(その後のお話)
取引は計画的に②(デリック&アリス&スフレ)
しおりを挟むジュリエットと婚約しているにも拘らず、何故か御令嬢に言い寄られてしまう。
「大切な婚約者がいるから」と断っていても、他の令嬢よりも慎ましく多少地味なジュリエットを下に見ているのか、最近は彼女に迷惑を掛けているようだった。
心配になりジュリエット本人に聞いてみても、本を読みながら「別に、大した事はないです」そう素気なく話すだけだった。
令嬢達の前に出て、牽制したとしてもジュリエットへの嫌がらせを加速してしまうかもしれないし、一時的な解決にしかならない。
むしろ悪化してしまう可能性すらあるだろう。
となると、頼れるのはジュリエットと同じクラスでありリオノーラの妹であるスフレと、お洒落で令嬢達に慕われているアリスである。
「ジュリエットの慎ましい姿はとても素敵なんだが、些か自分の身なりに興味がなくてね」
「確かに、地味ですわね」
「他の御令嬢と比べちゃうと……そうですね」
ジュリエットが興味あるのは本だけである。
眼鏡にキッチリと着込んだ制服。化粧も髪のアレンジもしない。
普段着ているドレスも真面目な家庭教師が着るような、固いものばかりだ。
ドレスをプレゼントしてみようと母のブティックに行ったものの、嫌な顔をされて以来行っていない。
デリックも流石に、御令嬢の身形についてアドバイスをする事も出来ずに気を揉んでいた。
「アリス嬢。ジュリエットが少しでもお洒落に興味を持てるように導いてくれないか?」
「はぁ……!?」
「そしてスフレ嬢には、ジュリエットに手を出している御令嬢を牽制して欲しいんだ」
どの面下げて来たんだよ……とでも言いたげなアリスの視線。
今までアリスにしてきた事を考えれば、自分の願いを聞いてくれる訳もない。
そして絶対的なアリス信者の一人であるスフレはアリスと同じ気持ちなのだろう。
因果応報とはよく言ったものだ。
けれど、笑みを張り付けながら思っていた。
───ここまでは想定内である。
自分だって馬鹿ではないし、元より自分の願いをタダで受け入れてもらおうなどとは思っていない。
そして切り札を出す。
「さて、そんな二人に提案があるんだ」
「……何ですの?」
「まずアリス嬢から……」
後ろから一冊の本を取り出した。
「本……?そんな古びた本が何だって言うの?」
「まぁ、最後まで聞いてよ」
「……ふん」
「ここにユーリンが、幼い頃からずっとずーっと欲しがっていた本があります」
「ッ!!??」
「これを渡せばユーリンは……」
「───ッこのアリスに全て任して下さいませ!!デリック殿下!!!必ずやジュリエット嬢をお洒落に目覚めさせてみせますわッ!!!!」
「……アリス様、悪魔に魂を売ったのね」
「そうよ、スフレ!!わたくしはユーリン様の為なら、悪魔に魂を売る覚悟があるわ!!」
「ッ!!さすがです!!アリス様……!」
本を受け取ったアリスの目が爛々と輝いていた。
「そしてスフレ嬢……」
「私はそう易々と釣られたりしないんだから!!」
今度はスフレの番と言わんばかりに、内ポケットから一通の手紙を取り出した。
「ここに隣国の第三王子であり、スフレ嬢が好きそうな爽やかなイケメンで、とても性格が良いガイルの……」
「───ッ畏まりました!デリック殿下ッ!!ジュリエット様の邪魔をする御令嬢を牽制し、そして必ずやジュリエット様をお守りしてみせますっ!!!!!!!」
「あはは……話が早くて助かるよ」
「「お任せ下さいませ!!」」
スフレは手紙を奪い取ると、アリスと共にご機嫌に去って行った。
あの二人に任せれば、取り敢えずは一安心と言った所だろうか。
一息ついた後、ジュリエットがいるであろう図書室へと足を進めた。
欲望に忠実な二人
end
11
お気に入りに追加
8,133
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。