推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

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番外編(その後のお話)

取引は計画的に②(デリック&アリス&スフレ)

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ジュリエットと婚約しているにも拘らず、何故か御令嬢に言い寄られてしまう。
「大切な婚約者がいるから」と断っていても、他の令嬢よりも慎ましく多少地味なジュリエットを下に見ているのか、最近は彼女に迷惑を掛けているようだった。
心配になりジュリエット本人に聞いてみても、本を読みながら「別に、大した事はないです」そう素気なく話すだけだった。

令嬢達の前に出て、牽制したとしてもジュリエットへの嫌がらせを加速してしまうかもしれないし、一時的な解決にしかならない。
むしろ悪化してしまう可能性すらあるだろう。
となると、頼れるのはジュリエットと同じクラスでありリオノーラの妹であるスフレと、お洒落で令嬢達に慕われているアリスである。


「ジュリエットの慎ましい姿はとても素敵なんだが、些か自分の身なりに興味がなくてね」

「確かに、地味ですわね」

「他の御令嬢と比べちゃうと……そうですね」


ジュリエットが興味あるのは本だけである。
眼鏡にキッチリと着込んだ制服。化粧も髪のアレンジもしない。
普段着ているドレスも真面目な家庭教師が着るような、固いものばかりだ。

ドレスをプレゼントしてみようと母のブティックに行ったものの、嫌な顔をされて以来行っていない。
デリックも流石に、御令嬢の身形についてアドバイスをする事も出来ずに気を揉んでいた。


「アリス嬢。ジュリエットが少しでもお洒落に興味を持てるように導いてくれないか?」

「はぁ……!?」

「そしてスフレ嬢には、ジュリエットに手を出している御令嬢を牽制して欲しいんだ」


どの面下げて来たんだよ……とでも言いたげなアリスの視線。
今までアリスにしてきた事を考えれば、自分の願いを聞いてくれる訳もない。
そして絶対的なアリス信者の一人であるスフレはアリスと同じ気持ちなのだろう。
因果応報とはよく言ったものだ。
けれど、笑みを張り付けながら思っていた。


───ここまでは想定内である。


自分だって馬鹿ではないし、元より自分の願いをタダで受け入れてもらおうなどとは思っていない。

そして切り札を出す。


「さて、そんな二人に提案があるんだ」

「……何ですの?」

「まずアリス嬢から……」


後ろから一冊の本を取り出した。


「本……?そんな古びた本が何だって言うの?」

「まぁ、最後まで聞いてよ」

「……ふん」

「ここにユーリンが、幼い頃からずっとずーっと欲しがっていた本があります」

「ッ!!??」

「これを渡せばユーリンは……」

「───ッこのアリスに全て任して下さいませ!!デリック殿下!!!必ずやジュリエット嬢をお洒落に目覚めさせてみせますわッ!!!!」

「……アリス様、悪魔に魂を売ったのね」

「そうよ、スフレ!!わたくしはユーリン様の為なら、悪魔に魂を売る覚悟があるわ!!」

「ッ!!さすがです!!アリス様……!」


本を受け取ったアリスの目が爛々と輝いていた。


「そしてスフレ嬢……」

「私はそう易々と釣られたりしないんだから!!」


今度はスフレの番と言わんばかりに、内ポケットから一通の手紙を取り出した。


「ここに隣国の第三王子であり、スフレ嬢が好きそうな爽やかなイケメンで、とても性格が良いガイルの……」

「───ッ畏まりました!デリック殿下ッ!!ジュリエット様の邪魔をする御令嬢を牽制し、そして必ずやジュリエット様をお守りしてみせますっ!!!!!!!」

「あはは……話が早くて助かるよ」

「「お任せ下さいませ!!」」


スフレは手紙を奪い取ると、アリスと共にご機嫌に去って行った。
あの二人に任せれば、取り敢えずは一安心と言った所だろうか。
一息ついた後、ジュリエットがいるであろう図書室へと足を進めた。








欲望に忠実な二人

end
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