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番外編(その後のお話)
助け合って③(エヴァン)
しおりを挟むメーアは真ん中辺りで立ち止まると、パチンと指を鳴らす。
すると湖の水が簡単に持ち上がってしまった。
そしてヘドロとゴミを氷で纏め上げて、湖の外に出していく。
そして湖に水を戻した後、メーアはまたパチンと指を鳴らした。
それと同時にメーアの足元の部分から濁りが消えていき、水が透き通っていった。
一瞬でキラキラと光が反射する綺麗な湖になったのだった。
綺麗になった湖の上で、ララが嬉しそうに歌を唄っていると、何処かから精霊が集まってくる。
リオノーラやスフレ、タイラーはポカンと口を開けながらその様子を見ていた。
「‥‥メーアが凄すぎて何も言葉が出ない」
『えー‥?リオノーラ、今更何言ってんの?』
「永遠にメーアを推せるわ‥!!」
『はいはい、僕もずっとリオノーラの側に居るからね』
すると、タイラーの腕の中にいたエヴァンが目を覚ます。
「エヴァン‥気分は?大丈夫なの?」
「母上‥‥?ーーッ、ヴァルトは!?」
エヴァンは焦った様子でヴァルトの姿を探していた。
『ねぇヴァルト、何か動物とかになれない?さっきの妖精の姿でもいいからエヴァンの負担を減らしてみて』
メーアがエヴァンの胸元を見ながら話しかけると、エヴァンの胸元にララと同じくらいの妖精の姿をしたヴァルトが現れた。
ヴァルトは綺麗になった湖を見て、驚きながらもポロポロと涙を流す。
『‥‥ッ!!!!』
『湖は綺麗になったよ‥森のゴミはリオノーラとフェリクスがどうにかしてくれるからね』
ヴァルトがリオノーラを見る。
リオノーラはヴァルトを見てニコリと微笑んだ。
ヴァルトは涙を流しながらエヴァンの顔に擦り寄った。
『っ、ありがとう‥!水、きれい!森、よろこぶ』
エヴァンは小さなヴァルトを手のひらで優しく包み込む。
「‥‥よかった」
*
エヴァンの隣には、いつもヴァルトがいた。
定期的にエヴァンはヴァルトと一緒に、森と湖に行っている。
まだエヴァンの魔力が少ない為、人型にはなれないが、どうやらヴァルトは大きな力を持った森の高位精霊だという事が分かった。
あの後、フェリクスの元へ向かったヴァルトは、火の精霊であるフランメを見て気絶してしまい、周囲は大騒ぎとなった。
『フランメって子供に好かれないんじゃない?』
『何だと!?』
『ひっ‥!!』
『あーあ、フランメが大きい声出すから‥』
『‥‥』
そんなフランメとヴァルトの様子を見て、フェリクスが声を掛ける。
「すぐに森を綺麗にしようね」
『王さま、ありがとう‥!』
「いいえ、エヴァンを宜しくね‥ヴァルト」
『エヴァン、だいすき』
「僕もヴァルトが大好きだよ」
フェリクスとエヴァンにスリスリと頬を寄せるヴァルト‥‥フランメは無表情だが、だいぶ落ち込んでいるようだった。
森のゴミを撤去をして、湖も森も元の姿を取り戻したようだった。
そして森への不法投棄を禁止して、綺麗な状態を保てるようにフェリクスが徹底的に手を回した。
「ゴミを‥‥綺麗に掃除できたよ」
そう言ったフェリクスの輝くような笑顔と、フランメの満足そうな顔を見て、リオノーラは全てを察したのだった。
そんなお陰か、森の動物も精霊も少しずつ戻ってきたようだった。
ヴァルトは本当に嬉しそうにしていた。
ゾイが森の精霊であるヴァルトの事を聞くと、ユーリンと共にヴァルトを調べにやってきた。
どうやら最近、ユーリンはゾイの精霊の研究を手伝っているようだった。
「本当だ、風の精霊と違う‥」
「森の奥に湖があったなんて‥もっと早く知りたかったわ」
「エヴァン、ヴァルトは何が好きなの?」
「花とか木とか‥自然が好きみたいです」
「なるほどね‥!興味深いわ」
ヴァルトは、エヴァンに夢で助けを求めた事を、覚えていなかった。
相当、波長のようなものが合ったのではないかと、ゾイとユーリンは仮説を立てて話し込んでいた。
ユーリンとゾイの圧力にヴァルトが怯えていると、マリクソンとアジャイルがヴァルトを宥めるように登場した。
風の精霊と土の精霊である2匹に対して、すぐに心を許したヴァルトはマリクソンの頭の上に乗りながら遊んでいた。
そんな様子をフランメは納得出来ない様子で、遠くから眺めていた。
「エヴァン、おめでとう」
「父上‥」
「素敵な精霊と契約出来て良かったわね、エヴァン」
「母上‥!ありがとうございます」
エヴァンは満面の笑みで2人の手を握った。
end
以上で番外編は終了となります
今までお付き合いして下さり、ありがとうございました!
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