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番外編(その後のお話)
助け合って①(エヴァン)
しおりを挟む歴代最高の国王と言われているフェリクスの偉大すぎる背中を見て、エヴァンはその姿に強く憧れていた。
そして、絶世の美女と他国から讃えられ、気難しいと言われる水の精霊に愛されている母の姿がいつも眩しく見えた。
水の精霊から愛されている母のように、水の精霊が大好きなリゼット
火の精霊と共に歩む父のように、フランメからも一目置かれるケヴィン
エヴァンは精霊が好きだけれど、どの精霊にも強く焦がれる事も心惹かれる事も無い。
王族だけは男性でも契約出来るのだが、例外は今のところ、リオノーラの弟で精霊団で活躍しているクーシャのみだった。
(僕はどんな精霊と契約するのだろう‥)
それと同時に、こんな自分と契約してくれる精霊が居るのかと考えると怖くなってしまう。
(母上は"直感"と"推せる存在"を見つける事って言ってたし、父上は"運"だって言っていた‥)
大抵、10歳前後で王族の子供は精霊と契約していると聞いた。
けれど、エヴァンは未だに誰とも契約していない。
父であるフェリクスは特殊な事情で遅かったと聞いた。
だから焦る事は無いよと、リオノーラにもフェリクスにも言われていたのだが‥。
(難しいな‥)
エヴァンは考え込んでしまい、机の上でウトウトと眠ってしまった。
*
その日、エヴァンは不思議な夢を見た。
『たすけて‥』
「‥‥え?」
『くるしいよ、たすけて』
暗い森の中、湖、白い花‥‥枯れた木の根元で緑色の淡い光が光ったり消えたりを繰り返す。
手を伸ばして必死に助けようとするけれど、手が届かない。
『だれかたすけて‥おねがい』
「っ、僕が助けに行くから‥!」
ーーー待ってて!!
ハッ‥と夢から覚めると外はまだ薄暗い。
不思議な夢だったけれど鮮明に内容を覚えていた。
エヴァンはベッドに寝転んで、もう一度その夢を見るために目を閉じた。
けれど、再び同じ夢を見ることは無かった。
朝になりエヴァンは居ても立っても居られずに、湖に行きたいとリオノーラとフェリクスに頼みに行った。
どうしても、その声の事が気になったからだ。
エヴァンが必死に訴える姿を見て、リオノーラと偶々その場に居たスフレと共に湖に出掛けることになった。
「タイラー、急にごめんなさいね」
「別に構わない!それに王妃と王太子とダーカー公爵夫人の護衛なんて騎士団長の俺にしか務まらないだろう?」
「ふふ、そうね!頼りにしてるわ」
「あっ、そこ左ね‥!」
「スフレが居てくれて助かったわ‥!私は湖の場所を知らなかったから」
「ガイルにデートに誘われて行ったことあったの!多分、エヴァンの言っている湖だと思うんだけど‥」
ガタガタと揺れる馬車の中、エヴァンは不安そうな表情を浮かべてリオノーラを見上げた。
「母上、あの‥‥ありがとう、ございます」
「‥どうしたの?」
「夢の話を信じてくれて‥‥でも、もし何もなかったら‥ごめんなさい」
「大丈夫よ、エヴァン‥もし仮に何もなかったとしても、皆で湖に行けるなんて最高の息抜きだもの」
「‥‥はい!」
リオノーラの言葉で緊張していた肩の力が抜けた。
スフレが馬車を止める様に声をかける。
この先からは徒歩で歩いて行かなければいけないと、入り組んだ道を進んでいく。
スフレの言う通り、軽装で来て正解だったようだ。
ガイル達が、また湖まで迷わずに行けるようにと子供の頃に目印を付けたのだそうだ。
どうやらタイラーも湖に来た事があるらしく「懐かしいな‥」と声を上げた。
暫く歩いていくと、目の前に湖が現れる。
「こんな所に湖があったのね‥知らなかったわ」
「あれ‥?ここの湖って、こんな感じだったかしら」
「‥‥何か、記憶と違う気がする」
スフレとタイラーが首を傾げる。
メーアがリオノーラを庇う様にスッと現れる。
するとララも真剣な表情でメーアの元へ飛んで行く。
『リオノーラ‥水が騒いでる』
「‥え?」
『ララ‥どっちか分かる?』
ララはメーアに、しがみ付きながら指を差す。
エヴァンはララが指差す方向へ向かおうとして、タイラーに止められてしまう。
「エヴァン、待て‥!俺が先に歩く」
万が一、エヴァンに怪我があってはいけないとタイラーが前に出る。
そのまま暫く歩いていくと、夢で見た白い花が辺りに咲いていることに気付いた。
(‥‥此処だ!)
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