43 / 56
番外編(その後のお話)
①面倒な事になりました(リオノーラ&メーア&メメ)
しおりを挟む「───もう、メーアなんて大っ嫌い!」
『ッ、リオノーラ……待って!』
走り去っていく背中を見ながら、メーアはポカンと口を開けた。
『あーあ、メーア様』
『メメ……』
『あんなにメーア様が大好きなリオノーラに、何を言ったら嫌われるんですか?』
『嫌われっ……!?』
あんなに晴れていた空に暗雲が垂れ込める。
暫くすると、急な大雨が降り出して外は大騒ぎである。
『だって姫、"大嫌い"って言ってましたよ?』
『なんでリオノーラが怒ったのか、僕にも分からないんだ』
『メーア様でも分からないことってあるんですね』
『うん……初めて』
とても……いや、かなりしょんぼりしているメーアを見てメメは溜息を吐いた。
そして、このままリオノーラとメーアを放っておくわけにもいかないだろう。
『理由……聞いてきましょうか?』
『………………。うん』
これはまた重症である。
そして窓の外でザーザーと降る雨を見て、メメは人型の姿になると、去っていったリオノーラの後を追いかけた。
* * *
『姫……!姫っ、待ってください……!』
「メメちゃん……!」
こちらの世界では未だにメメは子供の姿のままだ。
メメはリオノーラの顔を見上げながら様子を窺っていた。
瞳に涙を溜めたリオノーラに抱きしめられてギョッとしてしまう。
そのまま部屋に引き摺られるようにして中に入る。
『姫、一体どうしたんですか?』
「……っ」
『メーア様、心配してますし……』
思いきり抱きつきながら鼻を啜るリオノーラを見て、メメは首を傾げた。
(本当にメーア様、何したんだろう……)
疑問に思いつつ、リオノーラが落ち着くのをひたすら待っていた。
外では轟々と風と雨が吹き荒れている。
もはや暴風雨……いや台風だろうか。
あ、これメーア様、相当キテんな……と思いながら窓を見ていた。
「…………メメちゃん、聞いて」
『何があったんですか……?』
「メーアが、メーアがね…………っ!」
『はい』
だんだんと服が引きちぎれそうな程、リオノーラの力が強くなっていくことに気づく。
そしてリオノーラが顔を上げた瞬間、血走っている目が見えた。
「───自分よりもかっこよくて綺麗な精霊なんてたくさんいるし、リオノーラだって目移りしちゃうんじゃないって、わたくしにそう言ったのよッ!!??」
メメは凄まじい勢いに体をのけぞらせていた。
しかしリオノーラの気は収まらない。
「ずっっっっっとずっっっっとメーアの顔が死ぬほど好きだって言ってんのに他の精霊の方がカッコいいですって!?信じられないわっ!!わたくしの推しはメーアただ一人だし浮気も摘み食いもした事ないのにっ!!!!はぁ?目移り?意味分かんない!!わたくしはメーアしか推していないのにッ!!!!」
『…………』
「メーアしか勝たんんんッ!!!」
つまり『リオノーラも僕以外にも推せる人いるんじゃない?』と軽い気持ちで言ったメーアに対して、リオノーラは「わたくしはメーアしか推していないのに!」と怒っているのだろうか。
(あ、これ……凄くめんどくさいやつ)
スン、としているメメに気づかずにリオノーラはひたすらベッドを叩いて自分の気持ちをぶつけている。
そしてリオノーラの乱れに乱れた髪を直しながら、ピカピカに晴れている窓の外を見つめていた。
もっと深刻かと思っていたメメは深い深い溜息を吐いた。
リオノーラは変な方向に愛が重くて面倒である。
『……ほらメーア様、こっそり聞いてたんでしょう?早く出てきて下さいよ』
「!?!?」
『リオノーラ……』
ひょっこりドアの隙間から顔を出すメーアをリオノーラは鋭く睨み付ける。
『ご、ごめんね。リオノーラがそんなに僕のこと、考えてくれるなんて思わなくて……』
「ッ!!!?」
『…………許して?』
メーアが子犬のようにこちらを見つめながら、コテンと首を傾げる。
先程まで般若のような顔をしていたリオノーラは、メーアの顔を見て口元を押さえながらワナワナと震えている。
『あの……リオノーラ?』
「そ、それ以上近づかないでっ!」
『!?』
リオノーラに拒否されたメーアの瞳が潤む。
「……は、鼻血でるからっ!その顔、あざといッ!!あざといメーアがっわ゛い゛い゛」
『『え……?』』
「はあぁぁ……メーア可愛いぃい!」
((…………ブレない))
リオノーラのメーアへの態度はずっと変わらないままである。
「ねぇメーア……猫耳つけてきてくれない?」
『猫の耳……?別にいいけど、なんで?』
「心の栄養よッ!!!」
『分かった。今日のお詫びにつけるよ』
「ハァァ……楽しみ!!」
『……僕に猫耳って需要あるの?』
「あるわッ!!!!」
『なるほど、そっか!』
『………………』
メメは伸びかけた服を手で整えながら、二人を冷ややかな目で見ていた。
(俺……何でこの二人に仕えてるんだろう)
end
出会った頃の可愛い男の子の姿で猫耳を装着したメーアを見たリオノーラは鼻血を出して倒れましたとさ……
11
お気に入りに追加
8,147
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。