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第一章 花屋の花子さん

① 旧校舎の噂

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旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。
そこには『誰か』が不思議な花を配っている。
真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。
一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。

『あなたにこの花をあげるわ』

その花を受け取った後は運命の分かれ道。
幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。

「花子さん、こんにちは!」
『あら、小春。またここに来たのね』
「うん、一緒に遊ぼう!」
『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』

これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。


* * *


六年生になって、一カ月が経とうとしていた。
新しいクラスにも馴染んで、楽しい日々を過ごしていたんだけど……。
そんな時、ある噂を聞いた。

「ねぇねぇ小春こはる……知ってる?」
「なにを?」
「隣の旧校舎にある花屋さんの話!」
「え……? 旧校舎に花屋さん?」

わたしが首をかしげてから顔をあげると、幼馴染で親友の水島 夏希みずしま なつきちゃんがにこりと笑った。
夏希ちゃんはひまわりみたいに明るくて、とても元気な女の子。
ポニーテールにネコのような目。
外で遊ぶことが大好きで、テニスを習っているから肌は日に焼けていて健康そうだ。
おしゃれなトップスにスカートはアイドルみたい。
夏希ちゃんとは家が隣で、いつも公園で話したりして遊んでいる。
今は中休み。
次は音楽の授業で移動教室だから、わたしは教科書を準備していた。

わたしたちが通う花咲はなさき小学校は六年前に新しい校舎になった。
今、わたしたちは六年生だ。
新しい校舎になってから、この小学校に入学した。
だから旧校舎には一度も入ったことがない。
六年前まで使っていた隣にある旧校舎は立ち入り禁止で今はだれもいないはず。
そんな場所に花屋があることが、わたしは信じられなかった。

「そうそう! お花屋さんがあるんだよ」
「あそこはもともと学校なんだよ? お店があるわけないよ」

わたしは夏希ちゃんの言葉が信じられなくて、おもわず笑ってしまった。
旧校舎は元は小学校で花屋さんなんてなかったし、この新しい校舎にも花屋さんはない。
そもそも小学校に花屋さんがあるなんて、聞いたことがなかった。

「でもね、隣の六年一組のクラスに、旧校舎で花をもらった子がいるんだって……!」
「え……? ほんとうに? うそだぁ」
「それが本当なの! 六年一組の三山 凛々みやま りりちゃん!」

わたしはその名前を聞いて少しだけ心がモヤモヤとした。
同じクラスになったことはないけど、両親がお金持ちプライドが高いんだって。
わたしは凛々ちゃんにイジワルなことを言われたばかり。
トイレに行ったあとにハンカチで手を拭いていた。
ポケットにハンカチを戻そうとしたら廊下にハンカチを落としてしまったのだ。

そこにいたのが凛々ちゃんだった。
まるで汚いものを見るように「ダサいハンカチ」って言って、わたしのハンカチをよけていった。
拾ってくれたらいいのにって思いながら凛々ちゃんの背中を見送る。
わたしはとてもイヤな気持ちになったことを今でも覚えている。
そして六年生になって、わたしと同じように凛々ちゃんに悪口を言われた子が、たくさんいるみたい。

「さっき、秋斗あきとに音楽の教科書を借りにいったんだけど、凛々が持っていたの!」
「持っていたってなにを?」
「なんと、その旧校舎の花屋さんで買ったユリでーす!」
「ユリ……?」

夏希ちゃんは目をキラキラさせながら言った。
栗原 秋斗くりはら あきとくんは隣のクラスで、家の向こう側に住んでいる。
足が速くてサッカーが得意。髪は短めで肌は日焼けしてる。
幼馴染で五年生の最初の頃は仲よかったんだけど、最近は嫌われているのか避けられているような気がする。
最近は話すらしなくなって、なんだか少しだけ寂しい。
いつも友達に囲まれていて楽しそうだ。

もうひとり、松雪 冬馬まつゆき とうまくんも昔から仲良しで家が近い。
冬馬くんはクールでかっこいいけど、あまり喋るのが得意じゃないみたい。
本がだいすきで、冷たく見えるけど本当はとても照れ屋なだけ。
なんと秋斗くんの家のとなりで、わたしたち四人は近所に住んでいて、昔からよく遊んでる。
わたしは気になって夏希ちゃんに問いかけた。
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