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一章 役立たず王女、島流しにされる
①③
しおりを挟む──バシャッ
溜まっている水の上から注がれる熱湯。
じんわりと……というよりは熱々のお湯が急速に広がっていく。
再び茹でられると思っていたメイジーは指一本動かせないまま固まっていた。
だけどこのままではいけないと声を上げた。
「ちょっと待って! わたしの話を聞いて……っ!」
突如、横に差し出される葉っぱと花。
メイジーにとっては草にしか見えないのだが、何をするかわからずにいると、次々にお湯の中に投げ込まれていく。
それを見てあることを思っていた。
もしかしたら場所を移しただけでまた食べるつもりなのかもしれない、そんな考えが頭を過ぎる。
それを裏付けるように大鍋がどんどんとこちらに近づいているではないか。
(もしかして臭みを消すとか、味付けをしてる……?)
メイジーは悲鳴を上げるのをなんとか堪えていた。
すると次々に腕が突っ込まれて服を引っ張られてしまう。
コルセットがなかなか取れずにいたが、あっという間に丸裸になってしまい、着ていた服はどこかに持って行かれてしまう。
草からは青草い匂い。
ほんのりと花の香りもするが、何か纏うものがなければ身動きが取れない。
(…………茹でる準備?)
今度は葉を水で擦った後にメイジーの肌に擦り付けていく。
「ルゥ……!」
「……ル、ルゥ?」
メイジーがルゥを復唱するものの、満面の笑みで頷いている。
「ポップ、ルゥ!」
「ギャアアアッ……うぷっ」
足を引っ張られて髪まで水に浸かると、葉で擦られてしまう。
もう考えることをやめたメイジーはされるがままだった。
ゴシゴシ擦られた後にかけられたのは冷水だった。
髪が長いため、水を吸い込んでヒタヒタである。
布でガシガシと髪と体の水分を取った後に巻かれたのは彼女たちが着ているものと同じ布だ。
体や髪がサッパリして、ほんのりと石鹸のいい匂いがする。
けれど布を渡されたメイジーは困惑していた。
(これに着替えろということ……? 今から食べるのにどうして?)
それから石の上に座らされたメイジーは訳もわからないまま、今度は髪をとかされている。
ホワイトゴールドの絹のようサラサラの髪が珍しいのか、たのしそうに会話しているように思えた。
骨のようなクシで髪をとかされているのだが、彼女たちとは違って細く絡まりやすいからか、うまくとかせずに苛立っているようだ。
メイジーも強く頭皮を引かれているためかなり痛い。
木の器を持ってきた女性は躊躇なく、メイジーの髪に何かを塗っていく。
薄黄色の液体はオイルのようにも見えた。
髪をサラサラにしてクシを通りやすくしているのだろう。
それからもう一人の女性はメイジーの前に立つと木の器から再びオイルを取り出す。
(嗅いだことがあるような……オリーブオイルに似ている気がするけど違うのかしら)
それを顔にピシャリと塗られて驚いたメイジーは反射的に瞼を閉じる。
「わぷっ……!」
大雑把に顔に塗り広げられていくオイル。
今度は特に匂いもなく、されるがままになっていると余程変な顔をしていたのか、女性たちはメイジーの顔を見てくすくすと笑っているではないか。
それから自分でやれと言わんばかりに目の前に置かれた木の容器。
女性たちが腕を擦っているのを見て、オイルを塗り広げろという意味で受け取る。
メイジーはそこから自分でオイルを塗り広げていく。
日に焼けてヒリヒリと痛む肌。
肌は真っ赤になっていて痛々しいが、オイルのおかげで少しだけ痛みが和らいでいく。
(痛いけど、このオイル滑らかで塗りやすい……)
全身にオイルを伸ばしていると、メイジーを見ながら話し合っている女性たち。
もしかして食べるのではなく、メイジーを仲間として受け入れてくれるではないだろうか。
だから体を綺麗にしてくれたのかもしれないと思っていた。
メイジーの整えられた髪に飾られていく色とりどりの花。
(最後の飾り付け? やっぱり食べられるのかしら……ううん、きっと遊んでいるだけよ!)
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