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一章 役立たず王女、島流しにされる
⑦
しおりを挟む『人の顔を見て泣くとは、失礼な奴だな奴だな』
「わああぁあぁん!」
『チッ……』
見た目は神様のように美しく上品なのに、なかなかに口が悪い。
けれどそんなことすらどうでもよくなるくらい、人と会えたことや陸地に辿り着けたことが嬉しかった。
擦り減り続けた精神、肉体的にも限界だった。
常に死と隣り合わせの状況に涙が止まらない。
メイジーは泣きながらその場に座り込む。
足も腕も体の節々も痛くてもう限界だった。
「う゛あ゛あ゛ぁ……!」
『…………はぁ』
不機嫌そうな表情は涙で歪んで見えなくなってしまった。
膝をついて空を見上げながら大号泣である。
(……生きてた! 諦めなくて本当によかったわ)
ずっと泣いていると男性から声がかかる。
『おい、お前……!』
メイジーはあまりの喜びから彼に抱きついた。
もちろん普段ならこんなことは絶対にしないのだが、今は極限状態だ。
そして噛み締めるように言った。
「……神様、ありがとうっ!」
寝ている間ではあるが、海に沈むことなくここに辿り着けたのは奇跡だろう。
そしてもう一度、お礼を口にしようとした時だった。
『どけ……臭うぞ?』
「…………っ!」
その言葉を聞いてメイジーは我に返り、男性から離れて距離を取るために後ろに下がろうとした時だった。
「わっ……!」
メイジーはバランスを崩してフラリと後ろに倒れそうになってしまう。
自分が岩場にいて、崖のようになっていることを思い出したのだ。
(うそっ……落ちる!?)
反射的に何かを掴もうと腕を伸ばした時だった。
『……危ない!』
「……っ!」
男性はメイジーの腕を掴んで引き上げてくれたようだ。
彼に寄りかかるようにして体を預けていた。
自分の心臓の鼓動がここまで聞こえてくる。
緊張から息を止めていたメイジーは小さく息を吐き出した。
(た、助かったわ……!)
メイジーは男性にお礼を言おうと顔を上げる。
するとすぐ近くに彼の顔があった。
海のような瞳に飲み込まれてしまいそうだ。
男性を見つめていたメイジーはハッとする。
先ほど言われた『臭う』という台詞を思い出したからだ。
「……ご、ごめんなさい!」
『…………』
メイジーがは後ろを確認しつつ、男性から距離を取る。
男性は何も言うことはなく背を向けた。
そして男性の向こう側……。
岩場の奥に陸地や木々が見えたことでメイジーは喜びに震えていた。
(ここは…………陸地よね?)
ゆっくりと辺りを見渡してみると、ここは海に囲まれていることに気がついた。
メイジーは三日間、耐え抜いて島に辿り着いたようだ。
腹の奥底から、感情が込み上げてくる。
「やっ……、……!」
『……何?』
男性が首を傾げてメイジーが言ったことを聞き取ろうとした瞬間だった。
「──やったあああぁああぁぁっ!」
『……ッ!?』
「生き残ってやったわっ! ざまぁみろっ」
拳を高く挙げて、メイジーは大声で叫んだ。
生還できた喜びと安心感に涙が溢れそうになるのをなんとか堪えていたのだが、急激な疲れが襲う。
(体に力が入らない……!)
メイジーはフラリとよろめいた時に膝をついて倒れないように耐えていた。
自分の体が言うことを聞かずに力が抜けていく。
視界がボヤけているが、こちらに向かっている大勢の人たちが見えた。
原始的な恰好で髪は黒や茶色で肌はこんがりと日に焼けていた。
何か槍のようなものを持っているのは見えたが、それを確認する前にある意識が朦朧とする。
『おい! しっかりしろ……!』
男性の声が聞こえたが、メイジーの体はどんどんと重くなっていく。
(お腹すいたし喉乾いた……まずここはどこなのか聞かないと……その前に名前を)
乾いた唇が開いただけで、声が出ることはなかった。
メイジーはそのまま意識を手放したのだった。
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