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1巻
1-2
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「……お父様」
「なんだい? ローズレイ」
「お願いがあるのです」
「ほぅ……ローズレイがお願いをするなんて、初めてじゃないか」
父も母もパルファンですら驚いた顔を見せた。
ローズレイはとにかく静かで、自分からは何もアクションを起こさない。
言われるがまま、されるがまま……まるで本物の人形のようだと言われていた。
けれど、人形のローズレイは今日で終わりを迎える。
「……わたくしに稽古をつけてくださいませ」
「…………は?」
「わたくしに剣の稽古を、とお願いしているのです。お父様」
ローズレイの言葉に場の空気が大きく変わった。
リズレイは顔面蒼白で今にも倒れそうである。
パルファンも目を見開いていた。
周囲の侍女や執事もざわつき、囁き声が聞こえる。
そんな中で、ビスクだけは娘から目を離さなかった。
薔薇のように真っ赤な瞳は、真っすぐにこちらを見つめていた。
「ローズちゃん、何馬鹿な事を言ってるの!? 貴女は将来……」
「黙りなさい、リズレイ」
ビスクがリズレイの言葉を遮る。改めてローズレイに向き合う。
「……理由を聞いてもいいかな?」
「はい、お父様」
真意を測るような視線にローズレイは応えるようにビスクを見た。
ビスクはローズレイの考えを見極めようとしている。
初めて口にするローズレイの願望に、真剣に耳を傾けてくれている。
「身を守りたいのです」
「ローズレイ、それならば護衛を雇えば……」
「いいえ、お父様。それではいつまで経っても自分の身は守れません」
「…………」
そう……いくら護衛がついていても、一人の時間なんていくらでもある。
そのたびに人任せにするなど考えられない。
「それに……」
「…………?」
「わたくし、足を滑らせたのではなく……誰かに突き落とされましたの」
「…………ッローズちゃん、それ本当なの!?」
それまで口出ししないよう堪えていたリズレイが声を荒げた。
ビスクも驚いたように目を見開いた。
隣に控えていた執事のゼフが、ビスクの目配せを合図にサッと使用人を集めて出て行った。
「ローズレイ、詳しく話しなさい……」
隣からガチャン、と食器が擦れる音がした。
「……あの日はよく晴れていました。わたくしの後ろに影が見えました。振り返ろうとした時に突き落とされたのです」
「顔は見たのかい? 服の色は……?」
「…………いいえ、見ておりません」
「貴方……! 今すぐローズちゃんを突き落とした犯人を捜しましょう!」
「…………。あぁ、そうだな」
「…………っ」
リズレイの尋問のような質問は夕食中も続いた。
ビスクは一旦席を外し、ローズレイに食事が終わり次第、部屋に来るように言った。
ローズレイは淡々と食事を口に運ぶ。
隣から怒りを孕んだ鋭い視線が送られてくる。
さて、パルファンはどう動くだろうか……
夕食後、自分の部屋に戻ってから一息つき、ビスクの部屋に向かおうと準備していると、ドンドンと乱暴に扉を叩く音が聞こえた。
「……お嬢様、ここでお待ちくださいませ」
そう言うと、侍女のユーアが扉を開いた。
しばらく待つも、彼女は戻ってこない。
扉の先からは言い争う声が聞こえてくる。
徐々に声は大きくなり、その後にゴツンという鈍い音を聞いて、ベッドに座っていたローズレイは、ユーアのいる扉の方へ駆け足で向かった。
ユーアの前にはふてぶてしく立ち塞がるパルファンがいた。
怒りで興奮しているようだ。
「ローズレイに話があるって言ってんのに俺の邪魔するなッ!!」
ローズレイは床に倒れ込むユーアに駆け寄り肩を抱く。
「……ユーア、ユーア!? 大丈夫!?」
「……っ、お嬢様……お部屋の奥へ」
「ローズレイ、さっきはどういうつもりだ」
「怪我をしたのね……! 今すぐ人を呼ぶわ」
「…………ローズレイッ! 聞いているのか!!」
ユーアの腕が少し赤くなっていた。
部屋中に響き渡る声を無視して、何か冷やすものがないかとキョロキョロと辺りを見回す。
人を呼ぼうと廊下へと出るが誰もいない。
「…………何だ! その態度はッ!!」
無視し続けたせいか、パルファンは激昂した。
ローズレイの肩を掴み、壁に押し付けると荒々しく声を上げる。
ローズレイは鋭くパルファンを睨みつけた。
「テメェッ……どういうつもりだ」
「お兄様こそ……どういうおつもりですか?」
兄の手を振り払い、床に崩れ落ちているユーアの手を取る。
「俺の話を……!」
「…………人に怪我をさせても平気な顔でいる男の話など、聞くに値しませんわ」
――パシッ!!
頬に痛みが走るのと同時に、ユーアが声を上げた。
あまりの勢いにローズレイの髪が大きく揺れ、床に倒れ込む。
「いきなり何なんだよッ! っ言いつけやがって!」
「…………なんの事です?」
「……ッ、それは……! だから……」
口籠るパルファンは言い訳を並べるのに必死だが、その態度では自分が犯人だと言っているようなものではないか。
パルファンは感情に任せて、ローズレイに暴言を浴びせ、言う事を聞かなければ暴力で捻じ伏せようとしている。
どんな時にも冷静でいなければならない騎士にとってはマイナスポイントだろう。
ユーアの瞳が心配そうに揺れ動いたが、実はここまではローズレイの作戦通りだ。
ローズレイは階段から落とされた時に、しっかりと顔を見ていた。
パルファンと目と目が合った記憶が残っている。
敢えて、その事を言わなかったのはパルファンを煽る為だ。
そして、まんまと煽られたパルファンは、ローズレイの部屋に突撃してきたわけだが……
(あまりにも酷いのでは……?)
以前のローズレイはよく耐えられたな、と感心してしまう。
「……と、とにかく! これ以上何か言ってみろ? ただじゃおかないからな!!」
「ほう……どうするというんだ?」
「ッ!?」
「…………お父様」
「まぁ、こんな事だろうと思っていたよ。ゼフ、ユーアを医務室へ」
「かしこまりました」
ビスクは手際良く指示を出して、同時にローズレイを起こして抱き抱える。
ユーアはゼフに連れられながらも、心配そうに此方を見ていた。
そんなユーアに大丈夫だという意味を込めて微笑むと、目を見開いたユーアは安心したように笑みを浮かべてから廊下を歩いて行った。
ローズレイが信頼を寄せるユーアは、ランダルトに恋をするまで一番大切な人だった。
「……これは、その……!」
ビスクは厳しい目をパルファンに向ける。
「身を守りたいとはこういう事か…………ならば宜しい。許可しよう」
「……いいのですか!? お父様、ありがとうございます」
「パルファン、言い訳があるなら聞くが……?」
「…………ッ」
ビスクは冷たく言い放つ。
パルファンは手をギュッと握りしめて涙を堪えていた。
そのまま三人はローズレイの部屋へと入り、ビスクが扉を閉める。
「パルファン」
「………………はい」
「ローズレイに言う事はないのか?」
パルファンはローズレイを睨み続けている。
「…………ッありません」
「そうか、ならローズレイの赤くなった頬はなんだ」
「…………っ」
「話にならんな……」
ジンジンと痛む頬にビスクの大きな手のひらが覆いかぶさる。
冷たい手は、熱を持った頬を冷やすのにぴったりだった。
「ローズレイ」
「……はい」
「パルファンに何か言う事はあるかい?」
「…………何もありませんわ。強いて言うならば、ユーアへの謝罪を要求致します」
「だそうだが……パルファン、お前はどうする?」
「………………謝罪しに、向かいます」
「そうか」
ビスクはローズレイの髪の毛で遊びながら答える。
「なら下がっていいぞ、しばらくローズレイに接触する事を固く禁ずる。そして私の許可が出るまで剣術の稽古はなしだ」
「…………っ! 父上それはッ!」
キャンキャンと必死に弁解を繰り返すパルファンは、いつの間にか戻って来たゼフに引き摺られるようにして部屋から出て行った。
聞けば、ゼフは食事後に一向に部屋に来ないローズレイの様子を見にきたのだという。
そして、パルファンの言葉を聞いて、全て察してくれたようだった。
「…………すまないね。ローズレイを危ない目に遭わせてしまったようだ」
「いいのです。お父様のせいではありませんので」
「それでも私はお前を守る義務がある。体を鍛えたところで一人で対応出来ない事もあるだろう。困った事があれば相談しなさい」
「ありがとうございます」
ビスクは真っ赤な髪を揺らして嬉しそうに微笑む。
ビスクとこんなに沢山話したのは、今日が初めてだった。
緊張が解けたローズレイは、ホッと息を吐き出した。
ビスクと他愛のない話をしながら、ローズレイはいつの間にか眠ってしまった。
* * *
あれから五年経ち、ローズレイは十四歳になった。
あの日以降、パルファンからの嫌がらせはピタリとなくなっている。
そもそもパルファンは十二歳の時、寮付きの王立学園へと入学した為、顔を合わせる事が一切なくなったのだ。
王立学園には中等部と高等部があり、中等部は十二歳~十六歳、高等部は十七歳~十九歳までだ。
卒業後は家を継いだり、結婚したりする貴族の子供達にとっては、学園は自由でいられる最後の時間だった。
ローズレイも十二歳の頃に、学園に入学したいと頼んだが、即却下されてしまった。
さすがに五年も屋敷で生活していると飽きてしまう。
学園に通えなくても自分に出来る事をしようと、ローズレイは五年間、勉学に励み、身を守る術を教わっていた。
初めは普通の剣で訓練しようとしたが、剣が重たくて持てないので、短剣を使う護身術が中心となり、ローズレイは護身術にのめり込んだ。
リズレイは、毎回ローズレイが怪我をしないかとハンカチを握りしめながらウロウロしていた。
ローズレイが怪我をしようものなら倒れ込むので、常に侍女が背後に二人待機していたほどだ。
ある程度短剣を扱えるようになると、魔法の訓練を始めた。
教えてもらうのは、スタンガンのように小さな電流を相手の体に流し込む魔法や、風で痺れ毒を吸わせるといった実用的すぎる魔法ばかりだった。
ローズレイは毎日、楽しくて仕方なかった。
以前のローズレイは部屋に篭りきりだったが、今では沢山の人達と関わり、体を動かして、笑顔もどんどん増えていった。
そんな充実したある日、ローズレイは庭で、部屋に飾る花を摘んでいた。
庭師と話をしながら綺麗な花を見る事が、ローズレイの楽しみであり日課だった。
「…………君が〝銀色の女神〟?」
知らない声が聞こえて振り返れば、そこには二人の男が立っていた。
一人はパルファン、もう一人は……
「僕はランダルト・フォン・シルヴィウス……はじめまして、美しい女神様」
この国の王太子、ランダルト・フォン・シルヴィウス。
ローズレイが一番関わりたくない人物である。
(…………お父様とお母様、仕組んだわね)
数ヶ月前、両親とお茶をしていた時まで話は遡る。
リズレイが嬉しそうにランダルトとの縁談を持ってきた。
ローズレイは断固として拒否したのだが、やはり王家からの申し出を断りきれなかったのだろう。
三大公爵家には、王太子であるランダルトと歳の近い娘が三人いる。
その中でも白銀の髪と瞳を持つローズレイが一番の候補と言われていた。
そして、ランダルトの隣には久しぶりに間近で見る兄の姿……
「……はじめまして、ランダルト殿下。わたくしはビスク・ヒューレッドが娘……ローズレイ・ヒューレッドにございます」
「……あぁ、そんな堅苦しくしないで。今日は友人の家に遊びに来たのだから」
「…………左様ですか」
その言葉が嘘ではないと示すように、パルファンもランダルトも軽装だ。
遊びに来たのなら、わざわざ庭になど寄らないはず。
一切社交の場に顔を出さず、顔合わせすら断り続けるローズレイの様子を見てこいと言われた……そんなところだろう。
さしてローズレイに興味もなさそうだ。
「……では、わたくしはこれで失礼致します」
「一緒にお茶でもいかがかな? 美しい君と、もう少し話がしたいんだ」
接着剤でペッタリと貼り付けたような笑みと蕁麻疹が出てしまいそうな歯が浮くようなセリフ……
ローズレイをあっさり捨てて婚約破棄した男が今、目の前にいる。
「お気遣いありがとうございます。わたくしには話す事はございません……もう宜しいでしょうか? 急いでおりますので失礼します」
「ははっ、これは手厳しいね」
堅苦しくしないで、と言ったランダルトの言葉通り、兄の友達として接する。
公式の場だったら断るという選択肢はないが、兄の友達ならば誘いを断って良いと判断したのだ。
十五歳にしては、大人びて見えるランダルト。
この歳で、これだけ言葉が巧みならば、女性を口説くのに苦労しないだろう。
ローズレイは花籠を持って立ち上がり、綺麗にお辞儀して、その場を去った。
ローズレイの籠からパサリと紅い薔薇が落ちた。
それを拾い上げたランダルトは薔薇の茎をクルクルと回す。
背後からパルファンがランダルトに声を掛けた。
「…………妹が失礼を」
「いや、いいよ……突然来訪したのは此方だからね。御令嬢は色々と大変なのだろう……?」
「…………はい」
「元気がないね、あんなに美しい妹がいるのに」
「……いえ」
昔のパルファンならば「うるせぇ」と一言で済ませていただろう。
しかし、パルファンの性格や言動は、ある日を境に随分と変わったようだ。
行きすぎると感情的になり手がつけられないようなところがあったが、五年ほど前から場を弁えるようになったのだ。
それに剣術だけ極めればいい、という考え方も捨てたようで、勉学やマナーにも真剣に取り組む姿を見て、中身が入れ替わってしまったのか……と周囲が疑ったほどだ。
何かきっかけがあったのか……と不思議だったが、パルファンの態度を見る限り、妹のローズレイに関わる事のようだ。
再会の場で、パルファンとローズレイの視線が交わる事は一度もなかった。
「これでは父上に報告出来ないなぁ……」
「……!!」
「パルファン……どうにかしてくれないか?」
「………………」
「パルファン」
「…………分かった」
「……ありがとう、先にお茶を頂いてるよ」
複雑な表情を浮かべるパルファンに、ランダルトは笑みを深めた。
友人の新たな一面も見れたので、これで帰ってもいいのだが、面倒くさい事に父親からそろそろ婚約者を決めろと言われている。
〝三大公爵家の令嬢の誰か〟という条件付きだ。
母親から最も勧められているのは、ヴェーラー家の御令嬢、サラだ。
どこか掴みどころがなくヒラヒラと舞う蝶のような女性だった。
宰相の娘だけあり、知識が豊富で教養もある。
けれど口数が少なく、社交性が足りない……故に退屈だった。
歳はランダルトより二つ上の十七歳で、ランダルトにはどうも物足りなく感じてしまう。
スピルサバル家の御令嬢、ルーナルアは明るく快活で計算高い女性だった。
父親は様々な店を経営し、商品を通じて他国とも外交する国家間のパイプのような役割を担い、経済を回している。
隙あらば自らをアピールして、よく喋るので一緒にいると疲れてしまう。
歳はランダルトと同じだ。
両令嬢とも、とても美しく聡明だが、ランダルトはいまいちピンとこなかった。
そして父親に言われて、仕方なくヒューレッド家の令嬢に会いに来たわけだが、何故か分からないが会って早々に拒否されてしまった。
いつもはランダルトがお茶に誘えば、どんな女性でも喜んで付いて来た。
逆に、ここまで拒否されると、どうしてだろうと気になってしまう。
顔合わせを早く終わらせたくて、強引に誘ってみるものの、あっさりと断られてしまった。
ランダルトはローズレイが落としていった薔薇の花弁を優しく撫でた。
社交界では有名な話だ。
赤薔薇リズレイの娘……銀色の女神、女神の再来、様々な呼び名があるが、誰もローズレイの姿を見た事がなかった。
赤騎士ビスクが溺愛していると有名だが、一目姿を見ようと話を持ちかけても、誰も御目通りが叶わなかった。
ランダルトも国王である父に似て、綺麗な銀髪を受け継いだ。
ランダルトには兄が一人と妹が一人いるが、兄の髪が鈍色だという理由だけで、ランダルトが王位を受け継ぐ事になったのだ。
ローズレイの銀の髪は限りなく白に近い白銀……
とても同じ人間とは思えぬほどに美しかった。
着飾らなくてもこの美しさなのだから、社交界に出たらリズレイと並んで会場中の目を奪うだろう……
パルファンを脅すような形になってしまったが、ランダルトはどうしてもローズレイと話をしてみたかった。
(…………どうしたら此方に興味を持ってくれるのだろう)
ランダルトの興味を引いてしまったとも気付かずに、ローズレイは早歩きで廊下を歩いていた。
折角の良い気分は台無しだった。
早く部屋に戻りたいと足を進めていた時の事だ。
「ローズレイ」
名前を呼ばれて仕方なく足を止めた。
溜息をついて振り向くと、少し離れたところに気まずそうに俯いたパルファンが立っていた。
ワインレッドの髪は伸びて、綺麗に整えられていた。
服装もキッチリしていて清潔感がある。
大きくなった背と鍛えて逞しくなった体……以前のローズレイの記憶にあるパルファンとは大分違うように思えた。
ローズレイは反射的に、ガーターベルトで足にくくり付けてある折り畳みナイフに手を伸ばす。
「……鍛えてるという話は本当のようだな」
「…………」
ローズレイは黙ってパルファンを見た。
真意が分からない以上、警戒は怠らない。
黙ったままやられっぱなしのローズレイはもういない。
返り討ちにしてやる……ギュッと手のひらに力が篭る。
「殿下が、お前とお茶をしたいそうだ」
「…………」
「一緒に来てはくれないか?」
戦闘態勢だったローズレイは、パルファンの表情をまじまじと見る。
別人のようなパルファンが、普通に……至って普通にローズレイに話しかけている。
「なんだい? ローズレイ」
「お願いがあるのです」
「ほぅ……ローズレイがお願いをするなんて、初めてじゃないか」
父も母もパルファンですら驚いた顔を見せた。
ローズレイはとにかく静かで、自分からは何もアクションを起こさない。
言われるがまま、されるがまま……まるで本物の人形のようだと言われていた。
けれど、人形のローズレイは今日で終わりを迎える。
「……わたくしに稽古をつけてくださいませ」
「…………は?」
「わたくしに剣の稽古を、とお願いしているのです。お父様」
ローズレイの言葉に場の空気が大きく変わった。
リズレイは顔面蒼白で今にも倒れそうである。
パルファンも目を見開いていた。
周囲の侍女や執事もざわつき、囁き声が聞こえる。
そんな中で、ビスクだけは娘から目を離さなかった。
薔薇のように真っ赤な瞳は、真っすぐにこちらを見つめていた。
「ローズちゃん、何馬鹿な事を言ってるの!? 貴女は将来……」
「黙りなさい、リズレイ」
ビスクがリズレイの言葉を遮る。改めてローズレイに向き合う。
「……理由を聞いてもいいかな?」
「はい、お父様」
真意を測るような視線にローズレイは応えるようにビスクを見た。
ビスクはローズレイの考えを見極めようとしている。
初めて口にするローズレイの願望に、真剣に耳を傾けてくれている。
「身を守りたいのです」
「ローズレイ、それならば護衛を雇えば……」
「いいえ、お父様。それではいつまで経っても自分の身は守れません」
「…………」
そう……いくら護衛がついていても、一人の時間なんていくらでもある。
そのたびに人任せにするなど考えられない。
「それに……」
「…………?」
「わたくし、足を滑らせたのではなく……誰かに突き落とされましたの」
「…………ッローズちゃん、それ本当なの!?」
それまで口出ししないよう堪えていたリズレイが声を荒げた。
ビスクも驚いたように目を見開いた。
隣に控えていた執事のゼフが、ビスクの目配せを合図にサッと使用人を集めて出て行った。
「ローズレイ、詳しく話しなさい……」
隣からガチャン、と食器が擦れる音がした。
「……あの日はよく晴れていました。わたくしの後ろに影が見えました。振り返ろうとした時に突き落とされたのです」
「顔は見たのかい? 服の色は……?」
「…………いいえ、見ておりません」
「貴方……! 今すぐローズちゃんを突き落とした犯人を捜しましょう!」
「…………。あぁ、そうだな」
「…………っ」
リズレイの尋問のような質問は夕食中も続いた。
ビスクは一旦席を外し、ローズレイに食事が終わり次第、部屋に来るように言った。
ローズレイは淡々と食事を口に運ぶ。
隣から怒りを孕んだ鋭い視線が送られてくる。
さて、パルファンはどう動くだろうか……
夕食後、自分の部屋に戻ってから一息つき、ビスクの部屋に向かおうと準備していると、ドンドンと乱暴に扉を叩く音が聞こえた。
「……お嬢様、ここでお待ちくださいませ」
そう言うと、侍女のユーアが扉を開いた。
しばらく待つも、彼女は戻ってこない。
扉の先からは言い争う声が聞こえてくる。
徐々に声は大きくなり、その後にゴツンという鈍い音を聞いて、ベッドに座っていたローズレイは、ユーアのいる扉の方へ駆け足で向かった。
ユーアの前にはふてぶてしく立ち塞がるパルファンがいた。
怒りで興奮しているようだ。
「ローズレイに話があるって言ってんのに俺の邪魔するなッ!!」
ローズレイは床に倒れ込むユーアに駆け寄り肩を抱く。
「……ユーア、ユーア!? 大丈夫!?」
「……っ、お嬢様……お部屋の奥へ」
「ローズレイ、さっきはどういうつもりだ」
「怪我をしたのね……! 今すぐ人を呼ぶわ」
「…………ローズレイッ! 聞いているのか!!」
ユーアの腕が少し赤くなっていた。
部屋中に響き渡る声を無視して、何か冷やすものがないかとキョロキョロと辺りを見回す。
人を呼ぼうと廊下へと出るが誰もいない。
「…………何だ! その態度はッ!!」
無視し続けたせいか、パルファンは激昂した。
ローズレイの肩を掴み、壁に押し付けると荒々しく声を上げる。
ローズレイは鋭くパルファンを睨みつけた。
「テメェッ……どういうつもりだ」
「お兄様こそ……どういうおつもりですか?」
兄の手を振り払い、床に崩れ落ちているユーアの手を取る。
「俺の話を……!」
「…………人に怪我をさせても平気な顔でいる男の話など、聞くに値しませんわ」
――パシッ!!
頬に痛みが走るのと同時に、ユーアが声を上げた。
あまりの勢いにローズレイの髪が大きく揺れ、床に倒れ込む。
「いきなり何なんだよッ! っ言いつけやがって!」
「…………なんの事です?」
「……ッ、それは……! だから……」
口籠るパルファンは言い訳を並べるのに必死だが、その態度では自分が犯人だと言っているようなものではないか。
パルファンは感情に任せて、ローズレイに暴言を浴びせ、言う事を聞かなければ暴力で捻じ伏せようとしている。
どんな時にも冷静でいなければならない騎士にとってはマイナスポイントだろう。
ユーアの瞳が心配そうに揺れ動いたが、実はここまではローズレイの作戦通りだ。
ローズレイは階段から落とされた時に、しっかりと顔を見ていた。
パルファンと目と目が合った記憶が残っている。
敢えて、その事を言わなかったのはパルファンを煽る為だ。
そして、まんまと煽られたパルファンは、ローズレイの部屋に突撃してきたわけだが……
(あまりにも酷いのでは……?)
以前のローズレイはよく耐えられたな、と感心してしまう。
「……と、とにかく! これ以上何か言ってみろ? ただじゃおかないからな!!」
「ほう……どうするというんだ?」
「ッ!?」
「…………お父様」
「まぁ、こんな事だろうと思っていたよ。ゼフ、ユーアを医務室へ」
「かしこまりました」
ビスクは手際良く指示を出して、同時にローズレイを起こして抱き抱える。
ユーアはゼフに連れられながらも、心配そうに此方を見ていた。
そんなユーアに大丈夫だという意味を込めて微笑むと、目を見開いたユーアは安心したように笑みを浮かべてから廊下を歩いて行った。
ローズレイが信頼を寄せるユーアは、ランダルトに恋をするまで一番大切な人だった。
「……これは、その……!」
ビスクは厳しい目をパルファンに向ける。
「身を守りたいとはこういう事か…………ならば宜しい。許可しよう」
「……いいのですか!? お父様、ありがとうございます」
「パルファン、言い訳があるなら聞くが……?」
「…………ッ」
ビスクは冷たく言い放つ。
パルファンは手をギュッと握りしめて涙を堪えていた。
そのまま三人はローズレイの部屋へと入り、ビスクが扉を閉める。
「パルファン」
「………………はい」
「ローズレイに言う事はないのか?」
パルファンはローズレイを睨み続けている。
「…………ッありません」
「そうか、ならローズレイの赤くなった頬はなんだ」
「…………っ」
「話にならんな……」
ジンジンと痛む頬にビスクの大きな手のひらが覆いかぶさる。
冷たい手は、熱を持った頬を冷やすのにぴったりだった。
「ローズレイ」
「……はい」
「パルファンに何か言う事はあるかい?」
「…………何もありませんわ。強いて言うならば、ユーアへの謝罪を要求致します」
「だそうだが……パルファン、お前はどうする?」
「………………謝罪しに、向かいます」
「そうか」
ビスクはローズレイの髪の毛で遊びながら答える。
「なら下がっていいぞ、しばらくローズレイに接触する事を固く禁ずる。そして私の許可が出るまで剣術の稽古はなしだ」
「…………っ! 父上それはッ!」
キャンキャンと必死に弁解を繰り返すパルファンは、いつの間にか戻って来たゼフに引き摺られるようにして部屋から出て行った。
聞けば、ゼフは食事後に一向に部屋に来ないローズレイの様子を見にきたのだという。
そして、パルファンの言葉を聞いて、全て察してくれたようだった。
「…………すまないね。ローズレイを危ない目に遭わせてしまったようだ」
「いいのです。お父様のせいではありませんので」
「それでも私はお前を守る義務がある。体を鍛えたところで一人で対応出来ない事もあるだろう。困った事があれば相談しなさい」
「ありがとうございます」
ビスクは真っ赤な髪を揺らして嬉しそうに微笑む。
ビスクとこんなに沢山話したのは、今日が初めてだった。
緊張が解けたローズレイは、ホッと息を吐き出した。
ビスクと他愛のない話をしながら、ローズレイはいつの間にか眠ってしまった。
* * *
あれから五年経ち、ローズレイは十四歳になった。
あの日以降、パルファンからの嫌がらせはピタリとなくなっている。
そもそもパルファンは十二歳の時、寮付きの王立学園へと入学した為、顔を合わせる事が一切なくなったのだ。
王立学園には中等部と高等部があり、中等部は十二歳~十六歳、高等部は十七歳~十九歳までだ。
卒業後は家を継いだり、結婚したりする貴族の子供達にとっては、学園は自由でいられる最後の時間だった。
ローズレイも十二歳の頃に、学園に入学したいと頼んだが、即却下されてしまった。
さすがに五年も屋敷で生活していると飽きてしまう。
学園に通えなくても自分に出来る事をしようと、ローズレイは五年間、勉学に励み、身を守る術を教わっていた。
初めは普通の剣で訓練しようとしたが、剣が重たくて持てないので、短剣を使う護身術が中心となり、ローズレイは護身術にのめり込んだ。
リズレイは、毎回ローズレイが怪我をしないかとハンカチを握りしめながらウロウロしていた。
ローズレイが怪我をしようものなら倒れ込むので、常に侍女が背後に二人待機していたほどだ。
ある程度短剣を扱えるようになると、魔法の訓練を始めた。
教えてもらうのは、スタンガンのように小さな電流を相手の体に流し込む魔法や、風で痺れ毒を吸わせるといった実用的すぎる魔法ばかりだった。
ローズレイは毎日、楽しくて仕方なかった。
以前のローズレイは部屋に篭りきりだったが、今では沢山の人達と関わり、体を動かして、笑顔もどんどん増えていった。
そんな充実したある日、ローズレイは庭で、部屋に飾る花を摘んでいた。
庭師と話をしながら綺麗な花を見る事が、ローズレイの楽しみであり日課だった。
「…………君が〝銀色の女神〟?」
知らない声が聞こえて振り返れば、そこには二人の男が立っていた。
一人はパルファン、もう一人は……
「僕はランダルト・フォン・シルヴィウス……はじめまして、美しい女神様」
この国の王太子、ランダルト・フォン・シルヴィウス。
ローズレイが一番関わりたくない人物である。
(…………お父様とお母様、仕組んだわね)
数ヶ月前、両親とお茶をしていた時まで話は遡る。
リズレイが嬉しそうにランダルトとの縁談を持ってきた。
ローズレイは断固として拒否したのだが、やはり王家からの申し出を断りきれなかったのだろう。
三大公爵家には、王太子であるランダルトと歳の近い娘が三人いる。
その中でも白銀の髪と瞳を持つローズレイが一番の候補と言われていた。
そして、ランダルトの隣には久しぶりに間近で見る兄の姿……
「……はじめまして、ランダルト殿下。わたくしはビスク・ヒューレッドが娘……ローズレイ・ヒューレッドにございます」
「……あぁ、そんな堅苦しくしないで。今日は友人の家に遊びに来たのだから」
「…………左様ですか」
その言葉が嘘ではないと示すように、パルファンもランダルトも軽装だ。
遊びに来たのなら、わざわざ庭になど寄らないはず。
一切社交の場に顔を出さず、顔合わせすら断り続けるローズレイの様子を見てこいと言われた……そんなところだろう。
さしてローズレイに興味もなさそうだ。
「……では、わたくしはこれで失礼致します」
「一緒にお茶でもいかがかな? 美しい君と、もう少し話がしたいんだ」
接着剤でペッタリと貼り付けたような笑みと蕁麻疹が出てしまいそうな歯が浮くようなセリフ……
ローズレイをあっさり捨てて婚約破棄した男が今、目の前にいる。
「お気遣いありがとうございます。わたくしには話す事はございません……もう宜しいでしょうか? 急いでおりますので失礼します」
「ははっ、これは手厳しいね」
堅苦しくしないで、と言ったランダルトの言葉通り、兄の友達として接する。
公式の場だったら断るという選択肢はないが、兄の友達ならば誘いを断って良いと判断したのだ。
十五歳にしては、大人びて見えるランダルト。
この歳で、これだけ言葉が巧みならば、女性を口説くのに苦労しないだろう。
ローズレイは花籠を持って立ち上がり、綺麗にお辞儀して、その場を去った。
ローズレイの籠からパサリと紅い薔薇が落ちた。
それを拾い上げたランダルトは薔薇の茎をクルクルと回す。
背後からパルファンがランダルトに声を掛けた。
「…………妹が失礼を」
「いや、いいよ……突然来訪したのは此方だからね。御令嬢は色々と大変なのだろう……?」
「…………はい」
「元気がないね、あんなに美しい妹がいるのに」
「……いえ」
昔のパルファンならば「うるせぇ」と一言で済ませていただろう。
しかし、パルファンの性格や言動は、ある日を境に随分と変わったようだ。
行きすぎると感情的になり手がつけられないようなところがあったが、五年ほど前から場を弁えるようになったのだ。
それに剣術だけ極めればいい、という考え方も捨てたようで、勉学やマナーにも真剣に取り組む姿を見て、中身が入れ替わってしまったのか……と周囲が疑ったほどだ。
何かきっかけがあったのか……と不思議だったが、パルファンの態度を見る限り、妹のローズレイに関わる事のようだ。
再会の場で、パルファンとローズレイの視線が交わる事は一度もなかった。
「これでは父上に報告出来ないなぁ……」
「……!!」
「パルファン……どうにかしてくれないか?」
「………………」
「パルファン」
「…………分かった」
「……ありがとう、先にお茶を頂いてるよ」
複雑な表情を浮かべるパルファンに、ランダルトは笑みを深めた。
友人の新たな一面も見れたので、これで帰ってもいいのだが、面倒くさい事に父親からそろそろ婚約者を決めろと言われている。
〝三大公爵家の令嬢の誰か〟という条件付きだ。
母親から最も勧められているのは、ヴェーラー家の御令嬢、サラだ。
どこか掴みどころがなくヒラヒラと舞う蝶のような女性だった。
宰相の娘だけあり、知識が豊富で教養もある。
けれど口数が少なく、社交性が足りない……故に退屈だった。
歳はランダルトより二つ上の十七歳で、ランダルトにはどうも物足りなく感じてしまう。
スピルサバル家の御令嬢、ルーナルアは明るく快活で計算高い女性だった。
父親は様々な店を経営し、商品を通じて他国とも外交する国家間のパイプのような役割を担い、経済を回している。
隙あらば自らをアピールして、よく喋るので一緒にいると疲れてしまう。
歳はランダルトと同じだ。
両令嬢とも、とても美しく聡明だが、ランダルトはいまいちピンとこなかった。
そして父親に言われて、仕方なくヒューレッド家の令嬢に会いに来たわけだが、何故か分からないが会って早々に拒否されてしまった。
いつもはランダルトがお茶に誘えば、どんな女性でも喜んで付いて来た。
逆に、ここまで拒否されると、どうしてだろうと気になってしまう。
顔合わせを早く終わらせたくて、強引に誘ってみるものの、あっさりと断られてしまった。
ランダルトはローズレイが落としていった薔薇の花弁を優しく撫でた。
社交界では有名な話だ。
赤薔薇リズレイの娘……銀色の女神、女神の再来、様々な呼び名があるが、誰もローズレイの姿を見た事がなかった。
赤騎士ビスクが溺愛していると有名だが、一目姿を見ようと話を持ちかけても、誰も御目通りが叶わなかった。
ランダルトも国王である父に似て、綺麗な銀髪を受け継いだ。
ランダルトには兄が一人と妹が一人いるが、兄の髪が鈍色だという理由だけで、ランダルトが王位を受け継ぐ事になったのだ。
ローズレイの銀の髪は限りなく白に近い白銀……
とても同じ人間とは思えぬほどに美しかった。
着飾らなくてもこの美しさなのだから、社交界に出たらリズレイと並んで会場中の目を奪うだろう……
パルファンを脅すような形になってしまったが、ランダルトはどうしてもローズレイと話をしてみたかった。
(…………どうしたら此方に興味を持ってくれるのだろう)
ランダルトの興味を引いてしまったとも気付かずに、ローズレイは早歩きで廊下を歩いていた。
折角の良い気分は台無しだった。
早く部屋に戻りたいと足を進めていた時の事だ。
「ローズレイ」
名前を呼ばれて仕方なく足を止めた。
溜息をついて振り向くと、少し離れたところに気まずそうに俯いたパルファンが立っていた。
ワインレッドの髪は伸びて、綺麗に整えられていた。
服装もキッチリしていて清潔感がある。
大きくなった背と鍛えて逞しくなった体……以前のローズレイの記憶にあるパルファンとは大分違うように思えた。
ローズレイは反射的に、ガーターベルトで足にくくり付けてある折り畳みナイフに手を伸ばす。
「……鍛えてるという話は本当のようだな」
「…………」
ローズレイは黙ってパルファンを見た。
真意が分からない以上、警戒は怠らない。
黙ったままやられっぱなしのローズレイはもういない。
返り討ちにしてやる……ギュッと手のひらに力が篭る。
「殿下が、お前とお茶をしたいそうだ」
「…………」
「一緒に来てはくれないか?」
戦闘態勢だったローズレイは、パルファンの表情をまじまじと見る。
別人のようなパルファンが、普通に……至って普通にローズレイに話しかけている。
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