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転生したら皇女様でした〜推しがピンチなので婚約破棄してから国に持って帰ります〜
⑤
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確かに馬鹿過ぎてリリアーナ目線では面白いのであろうが、リリアーナでなくなった今、とても楽しめそうにはなかった。
それに折角、皇女になったのだ。
この立場を利用せずにどうしろというのか。
デクランを推すのに持ってこいの環境、美貌、権力……。
全てを持ち合わせているリリアーナに恐ろしいものなどありはしない。
デクランは没落した貴族で血筋はいいが、恵まれない環境に居る。
引き取られた家では使用人のような扱いを受けている。
高貴な血筋故の美しい美貌を髪と眼鏡で隠しながら、独り立ちしようと直向きに頑張っている素晴らしい子なのだ。
そんなデクランをドロドロに甘やかして貢いであげたいと何度思ったことだろう。
そのチャンスが叶う今、遠慮などしていられない。
「婚約者……そうね、そうだったわね」
「………っ!」
「今から、わたくしが言う言葉をよく聞いて下さいませ」
「なっ、なんだよ!」
「殿下……!いい加減になさって下さいッ」
「煩い!なんだ、言ってみろよ!!」
馬鹿な王太子には現実を見てもらった方がいいだろう。
「………この婚約、破棄させて頂くわ」
「……!?」
「お待ち下さいッ!!リリアーナ殿下」
「どうか、っどうかそれだけは……!」
トレとダンテは凄い勢いで頭を下げている。
何も分かっていないナシールとチェリーはポカンとしている。
「お黙りになって?」
「……ッ」
「わたくし、もう貴方達に飽きてしまったの……国に帰らせて頂くわ」
「!!」
サァーッと血の気が引いていくのを他人のように見ていた。
パサリと豪華な羽根の扇子を広げた。
この目も当てられないこの状況を目の当たりにするとストレスが溜まりそうである。
(さっさと帰りましょう……私の楽園へ)
国に帰っても文句を言われる筋合いはない。
むしろ、言える訳がないのだ。
今まで何の反応も示さないリリアーナは、ナシールにとってはどうでもいい存在だ。
それは周知の事実だったし、今まで黙認されていた。
突然、変わる態度に戸惑うのも無理はないだろう。
ナシールとチェリーが目の前で何をしようとも、リリアーナは何も言わなかった。
それは二人が見ていて余りにも馬鹿な事ばかりするので面白かったからに過ぎない。
これだけ周囲は焦っているのに、二人はリリアーナが婚約を破棄したお陰で結ばれることが出来ると大喜びである。
「これでチェリーと幸せになれるな!」
「はい、嬉しいですっ」
まるで、そこだけ異世界である。
「ナシール殿下……!リリアーナ殿下が居なければこの国はッ」
ダンテが必死に訴えかけているが後の祭りだった。
嬉しそうにしているところ、大変申し訳ないが待ち受けているのは恐らく経験したことのない地獄だろう。
「……直ぐに手続きを行って頂戴。お父様にも連絡して」
「かしこまりました、殿下!直ぐに手配致しますわ」
侍女達はとても嬉しそうに頷いた。
ナシールとチェリーのリリアーナに対する対応が心底気に入らなかった侍女達は、いつも文句を言っていた。
ベルベット皇国でのリリアーナとの扱いとは雲泥の差だからだ。
「お、お待ち下さい……っ」
「嫌ですわ」
「せ、せめて国王陛下の指示があるまでは……!」
「貴方の指図は受けないわ」
「……ッそんなつもりは」
「それに、わたくしは今すぐに帰りたいの」
ここにリリアーナを止められるものは誰も居ない。
「ああ、でもやる事がまだ残っていたわ」
「……ッ、何でしょうか!?」
「是非ッ、是非とも教えてください」
周囲もその様子を固唾を飲んで見守っている。
それに折角、皇女になったのだ。
この立場を利用せずにどうしろというのか。
デクランを推すのに持ってこいの環境、美貌、権力……。
全てを持ち合わせているリリアーナに恐ろしいものなどありはしない。
デクランは没落した貴族で血筋はいいが、恵まれない環境に居る。
引き取られた家では使用人のような扱いを受けている。
高貴な血筋故の美しい美貌を髪と眼鏡で隠しながら、独り立ちしようと直向きに頑張っている素晴らしい子なのだ。
そんなデクランをドロドロに甘やかして貢いであげたいと何度思ったことだろう。
そのチャンスが叶う今、遠慮などしていられない。
「婚約者……そうね、そうだったわね」
「………っ!」
「今から、わたくしが言う言葉をよく聞いて下さいませ」
「なっ、なんだよ!」
「殿下……!いい加減になさって下さいッ」
「煩い!なんだ、言ってみろよ!!」
馬鹿な王太子には現実を見てもらった方がいいだろう。
「………この婚約、破棄させて頂くわ」
「……!?」
「お待ち下さいッ!!リリアーナ殿下」
「どうか、っどうかそれだけは……!」
トレとダンテは凄い勢いで頭を下げている。
何も分かっていないナシールとチェリーはポカンとしている。
「お黙りになって?」
「……ッ」
「わたくし、もう貴方達に飽きてしまったの……国に帰らせて頂くわ」
「!!」
サァーッと血の気が引いていくのを他人のように見ていた。
パサリと豪華な羽根の扇子を広げた。
この目も当てられないこの状況を目の当たりにするとストレスが溜まりそうである。
(さっさと帰りましょう……私の楽園へ)
国に帰っても文句を言われる筋合いはない。
むしろ、言える訳がないのだ。
今まで何の反応も示さないリリアーナは、ナシールにとってはどうでもいい存在だ。
それは周知の事実だったし、今まで黙認されていた。
突然、変わる態度に戸惑うのも無理はないだろう。
ナシールとチェリーが目の前で何をしようとも、リリアーナは何も言わなかった。
それは二人が見ていて余りにも馬鹿な事ばかりするので面白かったからに過ぎない。
これだけ周囲は焦っているのに、二人はリリアーナが婚約を破棄したお陰で結ばれることが出来ると大喜びである。
「これでチェリーと幸せになれるな!」
「はい、嬉しいですっ」
まるで、そこだけ異世界である。
「ナシール殿下……!リリアーナ殿下が居なければこの国はッ」
ダンテが必死に訴えかけているが後の祭りだった。
嬉しそうにしているところ、大変申し訳ないが待ち受けているのは恐らく経験したことのない地獄だろう。
「……直ぐに手続きを行って頂戴。お父様にも連絡して」
「かしこまりました、殿下!直ぐに手配致しますわ」
侍女達はとても嬉しそうに頷いた。
ナシールとチェリーのリリアーナに対する対応が心底気に入らなかった侍女達は、いつも文句を言っていた。
ベルベット皇国でのリリアーナとの扱いとは雲泥の差だからだ。
「お、お待ち下さい……っ」
「嫌ですわ」
「せ、せめて国王陛下の指示があるまでは……!」
「貴方の指図は受けないわ」
「……ッそんなつもりは」
「それに、わたくしは今すぐに帰りたいの」
ここにリリアーナを止められるものは誰も居ない。
「ああ、でもやる事がまだ残っていたわ」
「……ッ、何でしょうか!?」
「是非ッ、是非とも教えてください」
周囲もその様子を固唾を飲んで見守っている。
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