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"全く興味がない"それだけだった
②
しおりを挟む「***子爵の御令嬢が今度の舞踏会で俺と踊りたいと言っていたんだ」
「そうですか」
「今度は****男爵令嬢に俺が好きだと告白されてしまった」
「良かったですね」
「**伯爵令嬢にお前と別れて私と婚約して欲しいと言われてな」
ソフィーアは本を捲りながらミケーレの話を聞いて適当に相槌を打っていた。
毎日ソフィーアの元に通い、ペラペラとうるさい事この上ない。
そんな時、ミケーレがポツリと呟いた。
「お前は、俺と婚約出来て幸せじゃないのか‥?」
ソフィーアは本を持ったままミケーレを見上げた。
ソフィーアが「貴方と婚約出来て嬉しい」「貴方の側にいる事が出来て幸せ」とでも言えば満足なのだろうか。
しかしソフィーアが面倒くさいからと、ミケーレの求めている言葉を言ってしまえば最後、ミケーレの鼻は天高く伸びる事だろう。
「全く」
「‥‥っ」
「貴方はわたくしに何も与えてはくれませんもの」
あまりの鬱陶しさに本音が出てしまった。
当然、ミケーレはソフィーアの言葉に怒りを見せている。
ミケーレはソフィーアに冷たくあしらわれて悔しいのか、反撃とばかりに口を開く。
「俺はお前だけじゃなく、色々な御令嬢に接して分かった事があるんだ!」
「‥‥へぇ」
「俺の婚約者がいかに地味で男を立てる事を知らない女かってな」
「‥‥」
「お前は男を知らなすぎるんだよ‥俺と違ってな」
ミケーレの言葉にソフィーアの手がピタリと止まる。
ソフィーアが男を沢山知っていたら此処にはいられないだろう。
そんな常識すら忘れてしまったミケーレに馬鹿も大概にしろと言いたいくらいだ。
心でマグマのように煮えたぎる苛立ちをなんとか抑えながら、ソフィーアは深呼吸する。
いつもはサラリと受け流すソフィーアだったが、今回ばかりは黙ってはいられない。
それに、そろそろ機は熟したといえるだろう。
(仕掛けてみましょう)
ミケーレの気が大きくなり怒りに支配されている今ならば、成功する確率もグンと上がる事だろう。
ソフィーアはずっと口に出したかった言葉を吐き出した。
「だったら、婚約を破棄なさったら?」
「‥‥はぁ?」
「ランドリゲス公爵ならば、貴方の我儘を叶えてくれるでしょう?」
「なんだと‥?」
「望まない婚約関係を続けるよりも良いのではないでしょうか」
「‥‥」
「貴方を好いてくれるご令嬢が沢山いらっしゃるのでしょう?」
「それは、そうだがっ‥」
ソフィーアは敢えてミケーレが気にしている事を言葉に織り交ぜて、ミケーレを煽っていく。
そんなソフィーアの挑発にプライドが高いミケーレは必ず乗ってくると分かっていたからだ。
ミケーレがランドリゲス公爵に、ソフィーアを必ず繋ぎ止めておくように言われているのは知っている。
「でも‥」
「ああ、お1人では何も決められませんものね‥‥可哀想に」
ミケーレはソフィーアが着ていた服の胸元を掴み、威嚇するようにソフィーアを怒鳴りつける。
「ッ、伯爵家の分際で俺に指図するな!!」
「はっ‥‥貴方が自慢出来るのは家柄だけですか?」
「!!」
「よく考えてから動かないと、ランドリゲス公爵家をもうすぐ継がれるソリッド様に追い出されますわよ?」
ランドリゲス公爵家の長男であるソリッドが公爵家を継ぐのは時間の問題だろう。
ソリッドは聡明で頭が回る分、冷酷な一面も持ち合わせている。
不正を良しとせず、最近のミケーレの行動を心の底からよく思っていない。
ソリッドの注意に一切耳を傾けないミケーレには笑ってしまう。
今はランドリゲス公爵と夫人がいるからこそミケーレの我儘が許されている。
しかし彼が爵位を継いだらどうなるのか。
ソフィーアは楽しみで仕方なかった。
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
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