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ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜
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何故か般若のように恐ろしい顔をしたエマの手のひらがファビオラの頭をがっしりと掴んでいて身動きがとれない。
ファビオラはあまりの恐怖に小さく首を縦に振りながら返事をする。
どうやらエマはここ数日、ファビオラがろくにご飯を食べずに泣いていたことが心底、許せないようだ。
まずはエマの言う通りにしようとミルクリゾットを食べて、入浴をしてから身なりを整える。
そして次の日から父と母に用意してもらった講師達に厳しいレッスンをしてもらおうと思ったが、この三年間で王妃教育も終わっていたため「教えることはもうありません」と言われてしまい、あまり意味をなさなかった。
けれど何かが足りない。
今後、これ以上嫌われないために必要なことは何かを考える。
そして思いついたのはエマとの特別訓練である。
画家に描いてもらったマスクウェルを前にデレデレしない訓練……つまりは彼の前で表情を取り繕う訓練を始めたのだった。
(これもマスクウェル殿下のため……っ!)
今、椅子の前にはマスクウェルのリアルな肖像画の顔を切り取った仮面を付けているエマがいる。
「じ、準備できたわ……!」
「いきますよ?」
「はぁ……今度こそ!絶対大丈夫なんだからっ」
「…………ファビオラ」
「うぐっ……!」
「ファビオラ」
「~~~っ、はい!ありがとうございますっ」
───パシンッ!
容赦なく飛ぶエマからの喝と頬を摘まれてしまう。
「あたたっ……!」
「やり直し」
「……はぁい」
そんな毎日を繰り返していると、徐々にマスクウェルに対する耐性がついてくる。
紙のマスクウェルには大分慣れてきた。
それから再び瞑想に滝行と精神を鍛え上げて、いつも表情が微動だにしないエマに表情を変えないコツを教わる。
約束のパーティーと学園の入学を一ヶ月前に控えたある日のこと。
ブラック伯爵邸に大きな箱が家に届く。
それはファビオラ宛で、誰からの荷物かというと……。
「見て、見てみてっ!エマ、見てよ!見てみてッ」
「見ています」
「マスクウェル殿下からわたくしにって、ドレスが届いたのっ!信じられないわ!こ、これはパーティーにきていいってことよね?」
「はい、そうでしょうね」
「どうしようどうしよう……!嬉しすぎて鼻水がっ」
「……。合わせてみましょうか」
「そ、そうねっ!」
完全に浮かれながらドレスを箱から取り出した。
シンプルではあるが、大人っぽくて綺麗なドレスが目の前に広げられた。
髪を結えてから優しい赤い色の生地のドレスを着用した後、鏡で確認してみる。
動くとキラキラと光るサイズもピッタリで体のラインも綺麗だった。
特に意味はないだろうが、ハート王家を象徴する赤色のドレスをプレゼントしてくれたことも嬉しくてファビオラは両手を合わせて感動していた。
「…………素敵」
思わず漏れる本音。
ファビオラはドレスを着た自分の姿に釘付けになっていた。
「さすがマスクウェル殿下ですね」
「え?」
「ゴホン……何でもありません」
「変なエマ。でもサイズまでピッタリだわ!マスクウェル殿下……すごいわ」
「…………」
「一生の宝物にしましょう 」
マスクウェルからのプレゼントが嬉しくて感動していた。
彼にはよく思われていないし、距離を置いているにも関わらず、まさかドレスがプレゼントされるとは思っていなかったからだ。
ご褒美ともいえるサプライズにファビオラは浮かれきっていた。
そんな時、扉を軽快にノックする音が響く。
いつものように返事をすると、慣れた様子で部屋の中に入ってきたトレイヴォンはこちらの様子を見て足を止めた。
「ビオラ……?そのドレス、どうしたんだ」
「レイ……!いい所にきたわね!見てみて~!フフッ、マスクウェル殿下からまさかのまさか、ドレスが届いたのよ!パーティーに着て行くドレスッ!素敵でしょう?」
「…………あぁ」
「えへへ~」
ファビオラはあまりの恐怖に小さく首を縦に振りながら返事をする。
どうやらエマはここ数日、ファビオラがろくにご飯を食べずに泣いていたことが心底、許せないようだ。
まずはエマの言う通りにしようとミルクリゾットを食べて、入浴をしてから身なりを整える。
そして次の日から父と母に用意してもらった講師達に厳しいレッスンをしてもらおうと思ったが、この三年間で王妃教育も終わっていたため「教えることはもうありません」と言われてしまい、あまり意味をなさなかった。
けれど何かが足りない。
今後、これ以上嫌われないために必要なことは何かを考える。
そして思いついたのはエマとの特別訓練である。
画家に描いてもらったマスクウェルを前にデレデレしない訓練……つまりは彼の前で表情を取り繕う訓練を始めたのだった。
(これもマスクウェル殿下のため……っ!)
今、椅子の前にはマスクウェルのリアルな肖像画の顔を切り取った仮面を付けているエマがいる。
「じ、準備できたわ……!」
「いきますよ?」
「はぁ……今度こそ!絶対大丈夫なんだからっ」
「…………ファビオラ」
「うぐっ……!」
「ファビオラ」
「~~~っ、はい!ありがとうございますっ」
───パシンッ!
容赦なく飛ぶエマからの喝と頬を摘まれてしまう。
「あたたっ……!」
「やり直し」
「……はぁい」
そんな毎日を繰り返していると、徐々にマスクウェルに対する耐性がついてくる。
紙のマスクウェルには大分慣れてきた。
それから再び瞑想に滝行と精神を鍛え上げて、いつも表情が微動だにしないエマに表情を変えないコツを教わる。
約束のパーティーと学園の入学を一ヶ月前に控えたある日のこと。
ブラック伯爵邸に大きな箱が家に届く。
それはファビオラ宛で、誰からの荷物かというと……。
「見て、見てみてっ!エマ、見てよ!見てみてッ」
「見ています」
「マスクウェル殿下からわたくしにって、ドレスが届いたのっ!信じられないわ!こ、これはパーティーにきていいってことよね?」
「はい、そうでしょうね」
「どうしようどうしよう……!嬉しすぎて鼻水がっ」
「……。合わせてみましょうか」
「そ、そうねっ!」
完全に浮かれながらドレスを箱から取り出した。
シンプルではあるが、大人っぽくて綺麗なドレスが目の前に広げられた。
髪を結えてから優しい赤い色の生地のドレスを着用した後、鏡で確認してみる。
動くとキラキラと光るサイズもピッタリで体のラインも綺麗だった。
特に意味はないだろうが、ハート王家を象徴する赤色のドレスをプレゼントしてくれたことも嬉しくてファビオラは両手を合わせて感動していた。
「…………素敵」
思わず漏れる本音。
ファビオラはドレスを着た自分の姿に釘付けになっていた。
「さすがマスクウェル殿下ですね」
「え?」
「ゴホン……何でもありません」
「変なエマ。でもサイズまでピッタリだわ!マスクウェル殿下……すごいわ」
「…………」
「一生の宝物にしましょう 」
マスクウェルからのプレゼントが嬉しくて感動していた。
彼にはよく思われていないし、距離を置いているにも関わらず、まさかドレスがプレゼントされるとは思っていなかったからだ。
ご褒美ともいえるサプライズにファビオラは浮かれきっていた。
そんな時、扉を軽快にノックする音が響く。
いつものように返事をすると、慣れた様子で部屋の中に入ってきたトレイヴォンはこちらの様子を見て足を止めた。
「ビオラ……?そのドレス、どうしたんだ」
「レイ……!いい所にきたわね!見てみて~!フフッ、マスクウェル殿下からまさかのまさか、ドレスが届いたのよ!パーティーに着て行くドレスッ!素敵でしょう?」
「…………あぁ」
「えへへ~」
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