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「申し訳ないんだが、婚約を解消してくれないか?」と言われたので「はい、分かりました。さようなら」 と答えました。
②
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だんだんとわたくしが苛々している事を感じているのでしょう。
バレット様は慌てているようです。
何やら勘違いしているようなので、わたくしはハッキリと意思を伝えてからこの場を去る事に致しました。
「何度でも言いますわ。無関係です。これからは気安く話しかけないでください。では、ごきげんよう」
「……っ!」
背中から縋るような視線を感じました。
しかし、わたくしはバレット様との婚約を正式に破棄する事に致しました。
お父様は静かに頷いて髭を触ります。
お母様はわたくしの心情を汲んでいるのか複雑そうです。
「タイミングが良いのか悪いのか……まさかこんな事になるなんてな」
「申し訳ございません」
「ヴァレンヌのせいではない。では、あの話は受けるという事で話を進めてよいか…?」
「はい……ですが、相手方は大丈夫でしょうか?婚約破棄をしたばかりですし…」
「そんな事を気にする事はない。むしろ婚約破棄を告げられて良かったな。此方からはマスング公爵家にはとても言い出せなかったからな……色々とややこしくならずに済んだ。本当に良いタイミングだった」
「お父様とお母様にご迷惑は掛からないでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。今回、我々に非は全くないのだから。むしろ向こうの方が顔を合わせづらかろう」
「でも………はしたないと思われないでしょうか?」
「大丈夫よ!私達に任せない。貴女の幸せを一番に願っているわ」
「ありがとうございます……お父様、お母様」
「あぁ」
「わたくし、今度こそ幸せになりますわ」
数日後、マスング公爵様と夫人はロレ侯爵邸にわざわざ謝罪にいらっしゃいました。
訳を聞けば、バレット様はとある子爵令嬢に夢中になりすぎて、全く聞く耳を持たないのだそうです。
どうやらバレット様は一人で暴走をしているようです。
「ヴァレンヌが嫁いで来てくれるのを楽しみにしていたのに……!受け入れ難いわ…」
「すまない、ヴァレンヌ…」
「わたくしの事はお気になさらないで下さい」
「ヴァレンヌがこれから苦労するのかと思うと本当に申し訳なくて…」
「わたしの責任だ。バレットが本当に申し訳なかった…!我々も出来る限り協力を…」
「聞いて下さい。実はつい最近、ヴァレンヌには……」
お父様とお母様は公爵と夫人に訳を話しました。
とても上手い具合に話を纏めてくれたようです。
「まぁ……!そうなの!?」
「偶々ではありますが…なので、わたくしは大丈夫ですわ」
「おめでとう、なんて私達には言う資格はないけれど…」
「わたくしは公爵様達が大好きですから…今までありがとうございました」
夫人は涙ぐんで私を抱き締めました。
これで今後の関係もバッチリです。
最後まで頭を下げ続けるマスング公爵と夫人を見送ります。
それから一週間経ちました。
わたくしの前に一人の令嬢が立ち塞がります。
バレットと楽しげに話していた令嬢、バスレフ子爵の後妻の娘……ミランダ様です。
「ウフフ、ご機嫌よう!ヴァレンヌ様」
「ご機嫌よう、ミランダ様」
勝ち誇ったような笑みを浮かべているミランダ様に嫌な予感を感じつつも挨拶を返します。
「ヴァレンヌ様に申し訳ない事をしたって思ってぇ…」
「あぁ、お気になさらず」
「令嬢達からも評判の良い優しいバレット様を……本当にごめんなさぁい」
恐らくミランダ様は、わたくしの悔しがる顔を見にきたのでしょう。
随分と挑戦的な方のようです。
わたくしを心配しているというよりは、悲しんでいるところを憐れみに…いや、見下しに来たのでしょう。
けれどそんなミランダ様の前で、わたくしは一切表情を変える事はありませんでした。
何があっても表情は崩してはいけない…貴族の令嬢としては出来て当然でございます。
バレット様は慌てているようです。
何やら勘違いしているようなので、わたくしはハッキリと意思を伝えてからこの場を去る事に致しました。
「何度でも言いますわ。無関係です。これからは気安く話しかけないでください。では、ごきげんよう」
「……っ!」
背中から縋るような視線を感じました。
しかし、わたくしはバレット様との婚約を正式に破棄する事に致しました。
お父様は静かに頷いて髭を触ります。
お母様はわたくしの心情を汲んでいるのか複雑そうです。
「タイミングが良いのか悪いのか……まさかこんな事になるなんてな」
「申し訳ございません」
「ヴァレンヌのせいではない。では、あの話は受けるという事で話を進めてよいか…?」
「はい……ですが、相手方は大丈夫でしょうか?婚約破棄をしたばかりですし…」
「そんな事を気にする事はない。むしろ婚約破棄を告げられて良かったな。此方からはマスング公爵家にはとても言い出せなかったからな……色々とややこしくならずに済んだ。本当に良いタイミングだった」
「お父様とお母様にご迷惑は掛からないでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。今回、我々に非は全くないのだから。むしろ向こうの方が顔を合わせづらかろう」
「でも………はしたないと思われないでしょうか?」
「大丈夫よ!私達に任せない。貴女の幸せを一番に願っているわ」
「ありがとうございます……お父様、お母様」
「あぁ」
「わたくし、今度こそ幸せになりますわ」
数日後、マスング公爵様と夫人はロレ侯爵邸にわざわざ謝罪にいらっしゃいました。
訳を聞けば、バレット様はとある子爵令嬢に夢中になりすぎて、全く聞く耳を持たないのだそうです。
どうやらバレット様は一人で暴走をしているようです。
「ヴァレンヌが嫁いで来てくれるのを楽しみにしていたのに……!受け入れ難いわ…」
「すまない、ヴァレンヌ…」
「わたくしの事はお気になさらないで下さい」
「ヴァレンヌがこれから苦労するのかと思うと本当に申し訳なくて…」
「わたしの責任だ。バレットが本当に申し訳なかった…!我々も出来る限り協力を…」
「聞いて下さい。実はつい最近、ヴァレンヌには……」
お父様とお母様は公爵と夫人に訳を話しました。
とても上手い具合に話を纏めてくれたようです。
「まぁ……!そうなの!?」
「偶々ではありますが…なので、わたくしは大丈夫ですわ」
「おめでとう、なんて私達には言う資格はないけれど…」
「わたくしは公爵様達が大好きですから…今までありがとうございました」
夫人は涙ぐんで私を抱き締めました。
これで今後の関係もバッチリです。
最後まで頭を下げ続けるマスング公爵と夫人を見送ります。
それから一週間経ちました。
わたくしの前に一人の令嬢が立ち塞がります。
バレットと楽しげに話していた令嬢、バスレフ子爵の後妻の娘……ミランダ様です。
「ウフフ、ご機嫌よう!ヴァレンヌ様」
「ご機嫌よう、ミランダ様」
勝ち誇ったような笑みを浮かべているミランダ様に嫌な予感を感じつつも挨拶を返します。
「ヴァレンヌ様に申し訳ない事をしたって思ってぇ…」
「あぁ、お気になさらず」
「令嬢達からも評判の良い優しいバレット様を……本当にごめんなさぁい」
恐らくミランダ様は、わたくしの悔しがる顔を見にきたのでしょう。
随分と挑戦的な方のようです。
わたくしを心配しているというよりは、悲しんでいるところを憐れみに…いや、見下しに来たのでしょう。
けれどそんなミランダ様の前で、わたくしは一切表情を変える事はありませんでした。
何があっても表情は崩してはいけない…貴族の令嬢としては出来て当然でございます。
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