29 / 96
元婚約者がよりを戻そうと押しかけて来ましたが……わたくし、もう結婚してますけど
③
しおりを挟む
嘲笑うようにこちらを見る二人に、カサンドラはその場から立ち去る事しか出来なかった。
ここでカサンドラがいくら騒ぎ立てたって侯爵家と伯爵家相手では勝ち目がない。
訴えたところで、簡単に揉み消されてしまうだろう。
カサンドラは家族の顔を思い浮かべた。
今、カサンドラがヘイリーやエイヴリーを引っ叩いて暴れたとしても、家族に迷惑を掛けるだけだ。
悔しくて悲しくて頭がおかしくなりそうだった。
あれだけ「愛している」と言っていた癖に、手のひらを返された。
エイヴリーとの愛は一瞬で偽物になったのだ。
数日後、カサンドラはエイヴリーから一方的に婚約破棄された。
カサンドラは子爵家、一方エイヴリーは伯爵家。
やりたい放題のエイヴリーを止める方法など、カサンドラは知らなかった。
カサンドラの家族は抗議しようと言ったが、カサンドラは静かに首を振った。
そして、エイヴリーは侯爵家の次女であるヘイリーとすぐに婚約をした。
社交界では捨てられた子爵令嬢カサンドラと公の場で愛を囁き合うヘイリーとエイヴリーの話でもちきりだった。
婚約破棄されたカサンドラは暫く表に出る事が出来ずに部屋に閉じこもっていた。
そんなカサンドラを家族は心配していた。
身勝手な婚約破棄といえど、これから結婚の幅が狭まり、家族にも心配を掛けてしまうと思うと気が重かった。
カサンドラとエイヴリーの壮大な恋は一瞬にして終わりを迎えた。
まるで炎が水で消されてしまうようだ。
そんな時、悲しみに泣き暮れるカサンドラに光が差し込んだ。
メレゼ子爵邸に一人の男性が訪れてきた。
それがベルファスト国王の次男であるブライアンだった。
第二王子であるブライアンと子爵令嬢であるカサンドラは、昔からの顔馴染みであった。
メレゼ子爵は色んな花を育てていて、城の色んな場所に飾る花を月に二度、新しく替えていたのだ。
父の仕事について行き、カサンドラも何度も何度も城に行っていた。
そして父の仕事が終わるまで、歳の近いブライアンとよく遊んでいたのだ。
当時、ブライアンと庭を駆け回っていたカサンドラ。
身分関係なくカサンドラに接してくれるブライアンは良い友人だと思っていた。
そんな時、ブライアンは隣国へ一年間留学する事となった。
そしてブライアンが留学から帰ってくる少し前に、カサンドラとエイヴリーは婚約した。
留学する前は、月に一度はお茶をする仲であったカサンドラとブライアン。
しかしブライアンが帰ってきてからはエイヴリーと婚約していたのもあり、ブライアンとのお茶の予定を断っていたのだ。
そして婚約破棄……。
ブライアンは何度も「カサンドラと会って話がしたい」と手紙をくれた。
カサンドラを心配してくれている気持ちは嬉しかったが、カサンドラはボロボロで瞼も腫れていて、とてもブライアンと会える状態ではなかった。
その為、何度も断りの手紙を書いていた。
――コンコンコンッ
そんなある日、部屋に響いたノックの音に鼻を啜りながら返事をする。
部屋で泣いていたカサンドラの前に、颯爽と現れたブライアン。
背後には両親と侍女が嬉しそうに笑っていた。
呆然としすぎて動けないでいるカサンドラの涙を親指で拭ったブライアンは、悲しそうに眉を顰めた。
「こんなに目を腫らして……」
「……ブライ、アン?」
「君にそんな顔をさせる程に……あの男が好きだったの?」
「っ、いいえ!腹が立ちすぎて、悔しくて泣いているのよッ」
「………そうか」
「今は、世界で一番嫌いな人だわ…っ」
カサンドラがそう言うと、ブライアンはカサンドラの頬の涙の跡にキスを落とす。
「!!!」
「ねぇ……カサンドラ、僕と結婚してくれないかな?」
「え………?」
カサンドラは目を見開いた。
始めは冗談を言っているのかと思っていたが、ブライアンは真剣にカサンドラを見つめている。
ここでカサンドラがいくら騒ぎ立てたって侯爵家と伯爵家相手では勝ち目がない。
訴えたところで、簡単に揉み消されてしまうだろう。
カサンドラは家族の顔を思い浮かべた。
今、カサンドラがヘイリーやエイヴリーを引っ叩いて暴れたとしても、家族に迷惑を掛けるだけだ。
悔しくて悲しくて頭がおかしくなりそうだった。
あれだけ「愛している」と言っていた癖に、手のひらを返された。
エイヴリーとの愛は一瞬で偽物になったのだ。
数日後、カサンドラはエイヴリーから一方的に婚約破棄された。
カサンドラは子爵家、一方エイヴリーは伯爵家。
やりたい放題のエイヴリーを止める方法など、カサンドラは知らなかった。
カサンドラの家族は抗議しようと言ったが、カサンドラは静かに首を振った。
そして、エイヴリーは侯爵家の次女であるヘイリーとすぐに婚約をした。
社交界では捨てられた子爵令嬢カサンドラと公の場で愛を囁き合うヘイリーとエイヴリーの話でもちきりだった。
婚約破棄されたカサンドラは暫く表に出る事が出来ずに部屋に閉じこもっていた。
そんなカサンドラを家族は心配していた。
身勝手な婚約破棄といえど、これから結婚の幅が狭まり、家族にも心配を掛けてしまうと思うと気が重かった。
カサンドラとエイヴリーの壮大な恋は一瞬にして終わりを迎えた。
まるで炎が水で消されてしまうようだ。
そんな時、悲しみに泣き暮れるカサンドラに光が差し込んだ。
メレゼ子爵邸に一人の男性が訪れてきた。
それがベルファスト国王の次男であるブライアンだった。
第二王子であるブライアンと子爵令嬢であるカサンドラは、昔からの顔馴染みであった。
メレゼ子爵は色んな花を育てていて、城の色んな場所に飾る花を月に二度、新しく替えていたのだ。
父の仕事について行き、カサンドラも何度も何度も城に行っていた。
そして父の仕事が終わるまで、歳の近いブライアンとよく遊んでいたのだ。
当時、ブライアンと庭を駆け回っていたカサンドラ。
身分関係なくカサンドラに接してくれるブライアンは良い友人だと思っていた。
そんな時、ブライアンは隣国へ一年間留学する事となった。
そしてブライアンが留学から帰ってくる少し前に、カサンドラとエイヴリーは婚約した。
留学する前は、月に一度はお茶をする仲であったカサンドラとブライアン。
しかしブライアンが帰ってきてからはエイヴリーと婚約していたのもあり、ブライアンとのお茶の予定を断っていたのだ。
そして婚約破棄……。
ブライアンは何度も「カサンドラと会って話がしたい」と手紙をくれた。
カサンドラを心配してくれている気持ちは嬉しかったが、カサンドラはボロボロで瞼も腫れていて、とてもブライアンと会える状態ではなかった。
その為、何度も断りの手紙を書いていた。
――コンコンコンッ
そんなある日、部屋に響いたノックの音に鼻を啜りながら返事をする。
部屋で泣いていたカサンドラの前に、颯爽と現れたブライアン。
背後には両親と侍女が嬉しそうに笑っていた。
呆然としすぎて動けないでいるカサンドラの涙を親指で拭ったブライアンは、悲しそうに眉を顰めた。
「こんなに目を腫らして……」
「……ブライ、アン?」
「君にそんな顔をさせる程に……あの男が好きだったの?」
「っ、いいえ!腹が立ちすぎて、悔しくて泣いているのよッ」
「………そうか」
「今は、世界で一番嫌いな人だわ…っ」
カサンドラがそう言うと、ブライアンはカサンドラの頬の涙の跡にキスを落とす。
「!!!」
「ねぇ……カサンドラ、僕と結婚してくれないかな?」
「え………?」
カサンドラは目を見開いた。
始めは冗談を言っているのかと思っていたが、ブライアンは真剣にカサンドラを見つめている。
319
お気に入りに追加
2,068
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

出て行けと言われても
もふっとしたクリームパン
恋愛
よくあるざまぁ話です。設定はゆるゆるで、何番煎じといった感じです。*主人公は女性。書きたいとこだけ書きましたので、軽くざまぁな話を読みたい方向け、だとおもいます。*前編と後編+登場人物紹介で完結。*カクヨム様でも公開しています。

好き避けするような男のどこがいいのかわからない
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
マーガレットの婚約者であるローリーはマーガレットに対しては冷たくそっけない態度なのに、彼女の妹であるエイミーには優しく接している。いや、マーガレットだけが嫌われているようで、他の人にはローリーは優しい。
彼は妹の方と結婚した方がいいのではないかと思い、妹に、彼と結婚するようにと提案することにした。しかしその婚約自体が思いがけない方向に行くことになって――。
全5話

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる