24 / 96
ヤンデレ令嬢、大好きだった婚約者とサヨナラします!
①⑤
しおりを挟むしかし此処でベアトリスが怒れば、マーヴィンのペースに乗ってしまうだけだろう。
ベアトリスは再び同じ契約書を取り出して、マーヴィンに見せつけてからニッコリと微笑む。
先程、マーヴィンに渡したのは原本のコピーである。
勿論、作成したのはブランドだ。
(コピー機もないのにどうやって書き写したのかしら‥)
その答えは「秘密」だそうだ。
大事な紙をマーヴィンに取られて再び破られるのは避けたかったベアトリスは急いで懐に仕舞い込む。
(‥‥まぁ、これもコピーだけどね)
マーヴィンは何が起きたのか分からないのか、ポカンとして口を開けてベアトリスが持っている紙と自分の足元でボロボロになった紙を見ている。
マーヴィンの行動の先の先を読んだブランドは、まるで予知能力者かと疑ってしまう程だ。
これだけ行動パターンを読めているとなると、ブランドはマーヴィンにもストーカー行為をしていたに違いない。
(お兄様、恐るべし‥)
終わることのない押し問答にも飽きてしまった。
ベアトリスはマーヴィンにトドメを刺す為に、もう1つの切り札を取り出す。
「わたくし、お兄様に調べて貰ったことがありますの」
「ブランドに‥?」
そう言ってベアトリスは用意していたもう1枚の紙をマーヴィンの前に広げていく。
「っ、今度はなんだ‥!!」
「貴方に弄ばれた御令嬢のリスト‥‥といえば分かりやすいかしら?」
「!?」
「中には"名前を出したくない" "もう忘れたい"という方もいらっしゃったのですが、殆どの方が協力を惜しまない‥と、こうして書き込んで下さったのです」
「はぁ‥?向こうが勝手に近づいて来たんだッ!俺は何もしていないっ」
「‥‥受け入れた時点で変わりませんわ」
形勢逆転。
マーヴィンは先程とは違い、焦った様子を見せていた。
先程の契約書と不貞行為の証拠がズラリと並んだベアトリスが持っている紙。
これを合わせて見せてこそ、最大の効果を発揮することだろう。
女性を遊んで捨ててを繰り返していたマーヴィン。
それはもう数えきれないほどの恨みを買っている。
(――罰を受ける時が来たのよ!マーヴィン・セレクト)
『証拠を集めるのは俺に任せてくれ!!!』
そう言ったブランドの行動は早かった。
女性達の話を聞きに行くと朝早くに出ていき、夜遅くにシセーラ邸に帰ってきたブランドはボロボロになって眼鏡が曲がっていた。
泣きながら掴み掛かられたり、愚痴を聞かされ続けたりと散々な目に遭ったらしい。
「やはり女性は大切にしなければな‥」そう言ったブランドはフラフラと自室へと戻って資料を作り上げた。
そして何故かマーヴィンと関係を持っている女性を全て把握していたブランドのお陰で、この紙は完成したのだった。
「中にはマーヴィン様が婚約してくれると仰ったからといって、婚約者とお別れになった方もいるそうで‥」
「‥っ」
「その方の人生を滅茶苦茶にして逃げたのですね?あらあら、こんなに怒りを買って‥‥フフッ、そのうち刺されるんではないですか?」
マーヴィンに弄ばれたリストの中には、ご丁寧にズラリと恨みつらみが書き綴られていた。
ベアトリスはその紙に書かれた酷い部類のものを読み上げていく。
中には「コロシテヤル」と延々と書かれているものもある。
(遊び方を間違えた男の末路ね‥‥ゲームの中では王女と結ばれたから、みんな泣き寝入りしたのかしら)
そんなゲーム内と現実のマーヴィンとのギャップにベアトリスは完全に萎えていた。
「勝手な思い込みだろう!?俺はただ‥っ!!」
「マーヴィン様を死ぬほど恨んでいる方もいるでしょうね」
「‥‥ッ」
「わたくしと婚約破棄した後‥大変ですわねぇ?」
(本当、悪い事は出来ないわね)
ベアトリスはしみじみと思っていた。
こうやって人生がひっくり返るような出来事は簡単に起こってしまう。
352
お気に入りに追加
2,067
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

好き避けするような男のどこがいいのかわからない
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
マーガレットの婚約者であるローリーはマーガレットに対しては冷たくそっけない態度なのに、彼女の妹であるエイミーには優しく接している。いや、マーガレットだけが嫌われているようで、他の人にはローリーは優しい。
彼は妹の方と結婚した方がいいのではないかと思い、妹に、彼と結婚するようにと提案することにした。しかしその婚約自体が思いがけない方向に行くことになって――。
全5話

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。



正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる