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13.可愛い彼女とコーヒーボトル
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徹志くんの部屋を飛び出てから三日間、ずっと考えてるけどまだ答えは出ない。
徹志くんの思い出の中の私が美化されすぎてる。ただの思い込みが激しくて、突っ走っちゃうだけの女なのに、女神だとかありえない。
しかも、思い返してみたら、はっきり恋愛的な意味で好きだと言われたわけじゃない。
それに、そうよ。あのショッピングセンターの女は何だったのよ。仲良く腕組んでおいて他人ということはないでしょう。他の女がいる証拠、この目でしっかり見たじゃないか。
あぁ、やばかった。すっかりだまされて本気になるところだった。
気をしっかり持つんだ。高橋希。
このまま4番目の女、改め何番目かセフレかわかんないけど関係を続けるのか。
それともきっぱりお別れするのか。
それとも、唯一の彼女になりたいのか。
まずは、私自身がしっかり決めないと。
「高橋さん、前に言ってたイベント部の書道パフォーマンスの担当の方が来てるんだけど紹介していいかな」
「もちろんです」
現れたのは、私より年下であろう可愛い女性だった。
明るいニュアンスウェーブの髪にオフショルダーのニット。
ん?この服、この髪型、華奢な腕……マジか! あのとき食品売り場付近で徹志くんと腕を組んでた本命彼女(仮)だわ。
「宜しくお願いします」
林さんの影からぺこりと頭を下げた彼女。
どうでもいいけど、林さんと距離近くない?徹志くんとも腕を組んでたし、そういう性格の子なのかな?
「創ちゃん、もう大丈夫だよ」
ん? 創ちゃん呼び? 林さんの方が年上だよね?
私が困惑しているのを察したのか、照れた様子の林さんが内緒話をするように告げた。
「実は俺の彼女なんだ」
「そうなんですね! びっくりです 」
なんと! じゃあ、徹志くんは?
「会沢つかさと言います。兄がいつもお世話になってます」
そう言いながら差し出された名刺には『会沢つかさ』と確かに徹志くんと同じ苗字が記されていた。
「兄? 」
「ダンススクール代表の会沢徹志です。いつも高橋さんに賞状とかの文字をお願いしてると聞いて」
「あぁ、会沢徹志く……さん。そう……こちらこそ、いつもお世話になっております」
私も名刺を差し出し、小さく頭を下げた。つかささんは興味深げに私の名刺を手に取り見つめた。
「高橋希……希望の希」
「希でのぞみって珍しいですよね。普通、望の方ですよね」
「いや。素敵なお名前です。女神と同じ名前」
「そんな名前の女神いましたっけ? 神話とか?」
「何かでいるらしいんですよ。私もよく覚えてないんですけどね、てへ」
明るく会話しながらも私の頭の中は兄というワードで占められていた。徹志くんが兄。そうですか妹さんですか。そして林さんの彼女。なんだそうだったのか。
徹志くんの彼女じゃなかったんだ。胸につかえていた何かがするんと落ちた感じ。
もしかして徹志くんがあの時言った通り、本当に今は私だけしかいないのではないか。彼の言葉を素直に信じてもいいのかもしれない。
「じゃあ、俺はこれで。高橋さん、つかさちゃん、イベントの件よろしく頼むね」
そう言って筆耕室を去ろうとした林さんに、私は差し入れで借りたままだったステンレスボトルを差し出した。
「あ、林さんコーヒーの差し入れありがとうございました。ボトルお返ししそびれててすみません」
差し出したボトルを眺めると、林さんは不思議そうな顔をして言った。
「それ、俺のじゃないよ」
「あ、それ兄の物じゃないですか。ダンススクールのオリジナル品なんで。ほら、ここにネームが」
私の手のボトルを覗き込んだつかさちゃんが、指をさす。確かにブルーのボトルにはダンススクールの名前と『T.AIZAWA』と刻印されていた。
あのコーヒーは、徹志くんからの差し入れだったんだ。
徹志くんは中学の文化祭の時もこの前の宛名書きの時も、見守って私を支えてくれてたんだな。
やっぱり好きだ。
この気持ちをちゃんと認めよう。
次に会ったら、『好きだ』と伝えたい。
「高橋さん。じゃあ、早速なんですけど、打ち合わせお願いします。えっと書道のパネルとパフォーマンスで使う紙の相談で……」
徹志くんの思い出の中の私が美化されすぎてる。ただの思い込みが激しくて、突っ走っちゃうだけの女なのに、女神だとかありえない。
しかも、思い返してみたら、はっきり恋愛的な意味で好きだと言われたわけじゃない。
それに、そうよ。あのショッピングセンターの女は何だったのよ。仲良く腕組んでおいて他人ということはないでしょう。他の女がいる証拠、この目でしっかり見たじゃないか。
あぁ、やばかった。すっかりだまされて本気になるところだった。
気をしっかり持つんだ。高橋希。
このまま4番目の女、改め何番目かセフレかわかんないけど関係を続けるのか。
それともきっぱりお別れするのか。
それとも、唯一の彼女になりたいのか。
まずは、私自身がしっかり決めないと。
「高橋さん、前に言ってたイベント部の書道パフォーマンスの担当の方が来てるんだけど紹介していいかな」
「もちろんです」
現れたのは、私より年下であろう可愛い女性だった。
明るいニュアンスウェーブの髪にオフショルダーのニット。
ん?この服、この髪型、華奢な腕……マジか! あのとき食品売り場付近で徹志くんと腕を組んでた本命彼女(仮)だわ。
「宜しくお願いします」
林さんの影からぺこりと頭を下げた彼女。
どうでもいいけど、林さんと距離近くない?徹志くんとも腕を組んでたし、そういう性格の子なのかな?
「創ちゃん、もう大丈夫だよ」
ん? 創ちゃん呼び? 林さんの方が年上だよね?
私が困惑しているのを察したのか、照れた様子の林さんが内緒話をするように告げた。
「実は俺の彼女なんだ」
「そうなんですね! びっくりです 」
なんと! じゃあ、徹志くんは?
「会沢つかさと言います。兄がいつもお世話になってます」
そう言いながら差し出された名刺には『会沢つかさ』と確かに徹志くんと同じ苗字が記されていた。
「兄? 」
「ダンススクール代表の会沢徹志です。いつも高橋さんに賞状とかの文字をお願いしてると聞いて」
「あぁ、会沢徹志く……さん。そう……こちらこそ、いつもお世話になっております」
私も名刺を差し出し、小さく頭を下げた。つかささんは興味深げに私の名刺を手に取り見つめた。
「高橋希……希望の希」
「希でのぞみって珍しいですよね。普通、望の方ですよね」
「いや。素敵なお名前です。女神と同じ名前」
「そんな名前の女神いましたっけ? 神話とか?」
「何かでいるらしいんですよ。私もよく覚えてないんですけどね、てへ」
明るく会話しながらも私の頭の中は兄というワードで占められていた。徹志くんが兄。そうですか妹さんですか。そして林さんの彼女。なんだそうだったのか。
徹志くんの彼女じゃなかったんだ。胸につかえていた何かがするんと落ちた感じ。
もしかして徹志くんがあの時言った通り、本当に今は私だけしかいないのではないか。彼の言葉を素直に信じてもいいのかもしれない。
「じゃあ、俺はこれで。高橋さん、つかさちゃん、イベントの件よろしく頼むね」
そう言って筆耕室を去ろうとした林さんに、私は差し入れで借りたままだったステンレスボトルを差し出した。
「あ、林さんコーヒーの差し入れありがとうございました。ボトルお返ししそびれててすみません」
差し出したボトルを眺めると、林さんは不思議そうな顔をして言った。
「それ、俺のじゃないよ」
「あ、それ兄の物じゃないですか。ダンススクールのオリジナル品なんで。ほら、ここにネームが」
私の手のボトルを覗き込んだつかさちゃんが、指をさす。確かにブルーのボトルにはダンススクールの名前と『T.AIZAWA』と刻印されていた。
あのコーヒーは、徹志くんからの差し入れだったんだ。
徹志くんは中学の文化祭の時もこの前の宛名書きの時も、見守って私を支えてくれてたんだな。
やっぱり好きだ。
この気持ちをちゃんと認めよう。
次に会ったら、『好きだ』と伝えたい。
「高橋さん。じゃあ、早速なんですけど、打ち合わせお願いします。えっと書道のパネルとパフォーマンスで使う紙の相談で……」
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