【R18】4番目の彼女

井笠令子

文字の大きさ
上 下
2 / 15

1.パーティで再会

しおりを挟む
 私はショッピングセンターで筆耕士ひっこうしをしている。招待状の宛名や贈り物にかけるのし紙などに筆で文字を書く仕事だ。
 だけど、最近はパソコンの書体を印刷して済ませるということも多くて、8~9割が事務の仕事でのこりの1割程度が筆耕である。
 そんな私が、珍しく出席することになったのは取引先であるダンススクールの創業5周年パーティ。このダンススクールは卒業時や実力検定の証書の名前書きを注文してくれるお得意様だ。
 ホテルで開催される為、久々にライトカーキのワンピースを着て7センチヒールを履いた。ボーイが配るシャンパンを受け取り、サイドに並ぶ色とりどりの料理やデザートを眺めると、非日常感にすっかり浮かれて、自分がまるでイイ女になった気さえする。

「それでは、代表よりご挨拶をさせていただきます」

 少し高い位置に結んだツーブロックのマンバンヘアにピンストライプのピンクブラウンのスーツ、外人モデルかと見紛うほどのイケメンが壇上に上がった。

 ──さすがダンススクールの代表、派手だわ。

「……でありまして、今後も子供たちの育成のため、様々な可能性を持ったイベントを開催していきたいと思っております」

 パチパチパチパチ。大きな拍手を浴びながら降壇した代表に、早速とばかりに女性が群がっていった。
 すごい。肉食女子すごい。やっぱりダンスをやっている女性が多いのか露出された足は引き締まってるし、お尻もキュッとあがってる。普段運動しない私とは大違いだ。カッコいいな。ちょっとワンピースを着てイケてるかもと勘違いしたさっきの私を殴りたい。
 おとなしく、さっきから気になっていたズッキーニのピンチョスを摘まもう。
 いくつかの料理を選んで、邪魔にならないよう空いているテーブルについたとたんに声を掛けられた。

「きぃちゃん。ひさしぶり!」

 きぃちゃんとは私の小・中学生時代のあだ名である。高橋希たかはし のぞみの漢字が希望の『き』だからである。ちなみに高校以降は『のん』と呼ばれている。
 声を掛けてきたのは、先程の派手代表さん。おぼろげながら記憶の中にあるくっきりとした眉と左目の下のほくろ。

「もしかして……徹志てつしくん?」

「そう!覚えててくれて嬉しい。せっかくだから話したいな。挨拶終わらせてくるから待っててくれる?」

「うん、わかった。あとでね」

 同じ小学校から同じ中学へと進学し、ごく普通のクラスメイトだった私たち。敵対していたわけでも特別仲が良かったわけでもない。だけど、再会というのはうれしいものだ。


「きぃちゃん、お待たせ。どっか場所移動して座って話そうよ」

 そう言われて、彼の行きつけだというバーに移動して二次会と相成った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

処理中です...