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気付いてもらえないときのこと

傲慢にも対峙することになったことについて

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「倒しましょう! 女の敵だよあいつは! わたしはミルコちゃんの味方だよ!」

 鳥々を散らし叫ぶ声は、間違いなく綾のものだった。

 歩き疲れたゴンを抱えて、僕はミッコさんを置き去りにしたベンチに戻ってきたときのことだった。

 女の敵で、綾の敵で、綾はミッコさんに味方するという。

 さて。
 敵のいなくなったミッコさんにとって、新たに名乗りを挙げた僕はどう見えるのだろうか。流麗の言葉がよく似合う横顔をじっと観察する。

「……っ」

 そっぽを向かれた。

「その、ミッコさん。怒らせたらしいなら謝ります。だからそんな、耳まで赤くしないでくださいよ。赤鬼みたいですよ」
「このロクデナシ。ミルコちゃんがなんで怒ってるかわかるまで名前呼ばないから」

 違う、違う、と綾の袖を引くミッコさんとは裏腹に、綾の敵意は本物だ。

「違うのヤーちゃん。これは私の戦いなのです。ヤーちゃんに味方してもらう手前、勝たねばならないのです」

 ヤバい。驚天動地の窮地をミッコさんに着いて行ってくぐり抜けてきた中で鍛えられたセンサーが、かつてない警報を鳴らしている。

「すぅ。はぁ。うん」
 ミッコさんが立ち上がる。僕は息を呑む。

「改めて、私は貴方に告白します。絶対伝わるように好きと伝えます。覚悟していてください」

 それは。

「…………かはは」

 あまりにも決定的な宣戦布告だった。
 見るものがなくなるまで辺りを焼き払えば、なるほど、ミッコさんにしてみれば次に見るのは傍観者である僕か。

 僕がミッコさんと向かい合う、だって?

 なんと傲慢なことか。なんと傲慢なことか。
「あくまで僕に傲慢であれ、というんですね」

 自嘲する。

「覆して、僕は貴方に告白します。貴方より壮絶に決定的に伝えます。覚悟しろ世界史上最強」





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