18 / 18
気付いてもらえないときのこと
傲慢にも対峙することになったことについて
しおりを挟む
「倒しましょう! 女の敵だよあいつは! わたしはミルコちゃんの味方だよ!」
鳥々を散らし叫ぶ声は、間違いなく綾のものだった。
歩き疲れたゴンを抱えて、僕はミッコさんを置き去りにしたベンチに戻ってきたときのことだった。
女の敵で、綾の敵で、綾はミッコさんに味方するという。
さて。
敵のいなくなったミッコさんにとって、新たに名乗りを挙げた僕はどう見えるのだろうか。流麗の言葉がよく似合う横顔をじっと観察する。
「……っ」
そっぽを向かれた。
「その、ミッコさん。怒らせたらしいなら謝ります。だからそんな、耳まで赤くしないでくださいよ。赤鬼みたいですよ」
「このロクデナシ。ミルコちゃんがなんで怒ってるかわかるまで名前呼ばないから」
違う、違う、と綾の袖を引くミッコさんとは裏腹に、綾の敵意は本物だ。
「違うのヤーちゃん。これは私の戦いなのです。ヤーちゃんに味方してもらう手前、勝たねばならないのです」
ヤバい。驚天動地の窮地をミッコさんに着いて行ってくぐり抜けてきた中で鍛えられたセンサーが、かつてない警報を鳴らしている。
「すぅ。はぁ。うん」
ミッコさんが立ち上がる。僕は息を呑む。
「改めて、私は貴方に告白します。絶対伝わるように好きと伝えます。覚悟していてください」
それは。
「…………かはは」
あまりにも決定的な宣戦布告だった。
見るものがなくなるまで辺りを焼き払えば、なるほど、ミッコさんにしてみれば次に見るのは傍観者である僕か。
僕がミッコさんと向かい合う、だって?
なんと傲慢なことか。なんと傲慢なことか。
「あくまで僕に傲慢であれ、というんですね」
自嘲する。
「覆して、僕は貴方に告白します。貴方より壮絶に決定的に伝えます。覚悟しろ世界史上最強」
鳥々を散らし叫ぶ声は、間違いなく綾のものだった。
歩き疲れたゴンを抱えて、僕はミッコさんを置き去りにしたベンチに戻ってきたときのことだった。
女の敵で、綾の敵で、綾はミッコさんに味方するという。
さて。
敵のいなくなったミッコさんにとって、新たに名乗りを挙げた僕はどう見えるのだろうか。流麗の言葉がよく似合う横顔をじっと観察する。
「……っ」
そっぽを向かれた。
「その、ミッコさん。怒らせたらしいなら謝ります。だからそんな、耳まで赤くしないでくださいよ。赤鬼みたいですよ」
「このロクデナシ。ミルコちゃんがなんで怒ってるかわかるまで名前呼ばないから」
違う、違う、と綾の袖を引くミッコさんとは裏腹に、綾の敵意は本物だ。
「違うのヤーちゃん。これは私の戦いなのです。ヤーちゃんに味方してもらう手前、勝たねばならないのです」
ヤバい。驚天動地の窮地をミッコさんに着いて行ってくぐり抜けてきた中で鍛えられたセンサーが、かつてない警報を鳴らしている。
「すぅ。はぁ。うん」
ミッコさんが立ち上がる。僕は息を呑む。
「改めて、私は貴方に告白します。絶対伝わるように好きと伝えます。覚悟していてください」
それは。
「…………かはは」
あまりにも決定的な宣戦布告だった。
見るものがなくなるまで辺りを焼き払えば、なるほど、ミッコさんにしてみれば次に見るのは傍観者である僕か。
僕がミッコさんと向かい合う、だって?
なんと傲慢なことか。なんと傲慢なことか。
「あくまで僕に傲慢であれ、というんですね」
自嘲する。
「覆して、僕は貴方に告白します。貴方より壮絶に決定的に伝えます。覚悟しろ世界史上最強」
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
空の六等星。二つの空と僕――Cielo, estrellas de sexta magnitud y pastel.
永倉圭夏
恋愛
7年前の深い罪の重さに押し潰されそうになりながらも辛うじて生きている裕樹(ひろき)は、岩手県にある引退競走馬の牧場「シェアト」でひっそりと身を潜めるように日々を送っていた。
暴れだした牝馬三冠馬のシエロ。そのシエロの前に一人の女性が両手を広げ立ちはだかる。まるで踏みつぶされたいかのように。彼女の眼と表情、そして行動を見て裕樹(ひろき)は7年前の記憶が甦る。
◎主な登場人物
・簑島 裕樹(みのしま ひろき)、24歳
拙作の主人公。黒髪短髪で細マッチョタイプ。背は高い方。
7年前の出来事で自責の念に駆られ、トラウマから時折フラッシュバックを起こす。空を死神から救い出そうと奔走、したびたび果敢な自己犠牲を発揮する。
・空(そら)、28歳
拙作のヒロイン。サマーセーターに細いデニム。細くて薄くて軽くBMIも17と危険なほどの痩身。胸も絶壁。平均よりやや小柄、黒いセミロング。
シェアトにふらりと現れ、暴れるシエロを一瞬で鎮めた。裕樹に名を問われ、とっさに「空(そら)」と答える。明らかに重度のうつ状態で、なぜこうなったか誰にもわからない。
・シエロ(コレドールシエロ)、12歳
サラブレッド、元競走馬。正しくはコレドールシエロ。栃栗毛、左後脚に半白、流星鼻梁白鼻。
牝馬3冠9頭目の馬。さらには菊花賞も勝利している。生涯戦績は17戦11勝。脚質は典型的な逃げ。馬主(うまぬし)はもうずいぶんと老齢の海崎 知宏(かいざき ともひろ)。
非常に神経質で気が強く調教には向かないとみなされて殺処分されるところだった。海崎氏が破格の値段で購入した。
引退後繁殖牝馬としての道を断たれたが、それでも海崎氏は慰労のためコレドールシエロを預け、現在では穏やかな日々を送っている。
・原沢美奈、18歳
ショートボブ中肉中背。身長も平均。都内の農業高校を出てすぐにこの農場に就職した。右も左もわからないところを裕樹が手取り足取り教えてくれて以来裕樹に「ぞっこん」。気が強く思ったことをポンポン口にするたち。空の登場に強い不安を抱く。
・大城雅哉(おおきまさや)、30歳
やや色黒で逞しい体つき、短髪ではつらつとした目元。この農場一番のイケメン。自信家でそれゆえに独善的な面もある。社会人ボクシング選手権の優勝経験者。空に一目惚れをする。内心で裕樹を低く見ている。
⚠️拙作は自死自傷を推奨・称揚する意図をもって書かれたものではありません。自死自傷はご自身はもちろんのこと周りの人々をも深く傷つける行為です。くれぐれもそのような選択をなさらないことを強く祈ります。
自死自傷の念に苛まれたり生き辛さを感じた時はためらうことなく精神神経科・心療内科を受診なさるかカウンセラーにかかるなど、速やかにご自身の心を守る行動を取って下さい。
さよならまでの六ヶ月
おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】
小春は人の寿命が分かる能力を持っている。
ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。
自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。
そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。
残された半年を穏やかに生きたいと思う小春……
他サイトでも公開中
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる