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第4章
17、青葉学園ミスコンテスト。”天女様”の出場を認めるかで揉める
しおりを挟む夕方6時過ぎ、学園祭を明日に控えた青葉学園。
どことなくざわついた校内にあって、忙しなく会話が飛び交っているのが此処、学園祭の実行委員準備室である。
室内はちょっとしたパニックになっている。
その元凶たる問題を解決すべく、緊急ミーティングが開かれた。
実行副委員長が緊急ミーティング開始の口火を切る。
実行委員長「それで、皆さん、どうしますか?」
委員A「どうしますって……言われても」
委員B「どうしよう……」
委員C「う~ん」
口々に困惑の声を漏らす。
折りたたみ式の長机を2つくっつけた簡易デスクを皆が囲む。
机の隅には学園祭の企画書や台本が乱雑に積み上げられている。
邪魔なので、端に寄せたのだ。
一方、有象無象の書類を押しのけたデスクの真ん中に、まるで別世界の貴人を招くかのようにして、一枚の紙切れが丁寧に置かれている。
これが本来あるはずのない予定外のミーティングを引き起こした張本人だ。
委員D「やっぱ、締め切った後のエントリーは無効にすべきじゃない? それにこの紙、エントリー希望を知らせる言葉以外には花の名前しか記載されていない。これじゃ誰だか分からないわ」
キリリとした顔の女生徒が率直な意見を述べた。
委員長「はぁ? オマエ本気でそう思ってんの? こんなの一人しかいねぇじゃん」
委員D「そう?」
委員長「そうだよ」
委員A「この紙の主が誰かなんて不毛な議論はやめよう。時間の無駄」
委員B「だよね~」
たちどころに、「分かり切ったことを聞くな」との声が四方から発せられる。
委員D「……うん、そうだよね。これってやっぱそうなんだよね」
委員長「今更な疑問だよ」
キリリとした顔の女生徒は素直に頷く。
委員D「ごめん、バカなこと言って。この紙切れの主は間違いなく彼女よね。でもさ、だからと言ってこの紙を受け取るかどうかは別問題よ」
女生徒は紙の主に関する疑問を引き下げたものの、用紙の受理には否定的だ。
委員長「でも、出たいという意思があるのに、それを無視するのもなぁ」
委員D「私達はミスコンのエントリーについてしっかりと告知して、その告知通りに事を進めてきたのよ、今更ルールを捻じ曲げるのはどうかと思うけれど」
彼女の顔には道筋の外からやってきた出来事を受け入れたくないという意志が滲んでいる。
物事をキッチリと進めるタイプなのだろう。
男子生徒のほうも彼女の理屈には流されない。
委員長「でもさ、学園際って何? 生徒あってのモノだぜ。その生徒の意思を汲み取らないのはやっぱマズくねーか?」
副委員長「あぁ、俺もそう思う。ルールっつったてコレ、ミスコンだろ? 世の中のオッサン達がやる選挙って訳でもねーし、固いところに拘る必要あるのかな?」
女子生徒達は慎重だ。
委員A「そうかしら?」
委員B「既にミスコン参加者が誰たちであるのかは、全校生徒の周知の事実になっているわ。本番になって新しい子が突然出てきたら執行部への望まざる不平不満など面倒事が起きないかしら?」
別の女生徒もその声に続く。
委員C「そうそう。それに、コンテストで必用な衣装や、紹介プロフィールを載せたパンフは今更用意できないわ。出場を認めたとしても、彼女を魅力的に見せるための小道具は何も無い。これって彼女にとって相当に不利なことよ」
委員長「でもなぁ……う~ん」
議論は平行線を辿り、すでに1時間を経過している。
時計の針を見れば、もう16時を回る。
青葉祭当日を明日に控えた今、いつまでも平行線の議論を交わしている余裕はない。
皆、疲れが溜まっているのだろう、椅子の上にだらしなく四肢を伸ばし、天井を見上げながら頭を掻いている。
そうこうしているうちに、ミスコンの実行委員長である3年生の男子生徒がポツリと呟く。
委員長「でもさあ、彼女が出場するとなると、がぜん、面白い展開にならない?」
ルール遵守か? 生徒が主役か?
二つに割れて均衡を保っていた天秤に、新しい評価基準が降ってきた。
「面白いかどうか?」である。
☆-----☆-----☆-----☆-----
「蓮華のステータス」
1,命の残り時間 :10か月! とうとう1年を切る!
2,主人公へ向けた想い :トラウマ・レベル
3,頭の中にあること :柏木優貴乃への制裁
4,希望 :★☆☆☆☆
5,不安 :★★★★☆
6,今日あったこと :男子4人、女子5人から告白された
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