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第4章
3、お弁当を食べている私の邪魔をするな
しおりを挟む「(てか、私が出るよりアンタの方がいいんじゃないの?)」
箸を持ってない方の人差し指を岬に向けて、モシャモシャする。
「私はダメよ。専属でお仕事してるから、別の雑誌に勝手に出たらマズイよ」
確かにその通りだ。専属モデルとは基本的にその雑誌の出版社、もしくは出版社と契約したモデル事務所が所有している。
契約相手に許可無く別の雑誌で活動することはできない。
「(窮屈なのね、あなたのいる世界も)」
そう思った。
「(でも私よりも適任がいるじゃない、このクラスには。柏木さんじゃダメなの?)」
私は箸を持ってない方の人差し指で、教室の反対側で優雅にくつろいでいる西洋ドール(柏木優貴乃)を指差した。
すると京子が首をブンブンと横に振る。
そして私と岬にしか聞こえない小さな声で囁いた。
「だって優貴乃さん、怖いもの。確かに、あの人が出てくれれば、例え香奈多紗枝の妹がいようとも慶葉なんて目じゃないけれど。プライド高そうだし、こんなこと頼めない」
え、私ならいいの?
そう思ったが何も言わなかった。
まだ口の中が一杯だからというのもある。
後から知ったのだけど、ギャルっぽい見た目のわりに気の小さい京子が最初にこの件をお願いしたのは、園子を介して岬にだったらしい。でも岬には契約上の制約がある。勝手にコンペに出る事はNG。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ、私が頼んでやろっか?」
岬が小さくモジモジしたままの京子に告げた。京子はさらに小さな声で叫ぶように囁く。
「無理無理! あの人と一緒に撮影会なんて、すっごい緊張しそうだもん、私。……でももし可能なら」
昼休みのお弁当の匂い立ち込める教室の中、ひと際小さく丸まり照れたままの京子に岬は、「大丈夫よ、私が頼んであげる。それにさ京子」と言って呆れた顔のまま私を見下ろす。
その視線の先で、ひたすらモシャモシャしている私はニッコリ微笑んだ。
今、まさにウィンナーに箸の先端を突き刺そうとしている。
箸が止まらん!
「ギャル系の雑誌なら、こんなペコちゃん人形に頼むより、優貴乃の方がずっと適任よ。蓮華が出た日にはそれこそ“青葉の海苔缶娘”ってタイトルで笑いを取ることになるわよ」
海苔缶むすめ……。
また出たな。
何だ、それ。
最近、海苔缶むすめと呼ばれる回数が増えたことが気になるが、私はそれでもニッコリ微笑む。
「そっ、そんな」滅相もない、と言いたげな京子を他所に、岬は教室の反対側で優雅にお弁当を食べている西洋ドール、柏木優貴乃のもとへ歩み寄る。
私は岬の背中越しに彼女を眺める。
ふぅん、さすが西洋ドール。
海苔っぽくはないな。
ま、でも赤茶けた髪の毛がサルサソースみたいだけど。
ククク……青葉のピザむすめ。
心の中でそう告げてやる。
岬がさっさと用件を切り出す。
「ねえ優貴乃、来週の日曜に都内で、読モの撮影会があるんだけど、もし時間の都合がつくんだったらそれに出てアノ子達助けてやってくれない?」
「うっひゃぁ!」
京子って名前の彼女が私の隣で小さくなった。
「す、すみません! 優貴乃さん、アタシらなんかのためにその綺麗なおカオを晒すことなんて!」
彼女は亀のように小さくなる。
そして、彼女がしゃがみこむ瞬間、「(あ、ぱん〇)」見えちゃいました。
私はギャル一色の彼女にミスマッチな純白の下着に意識を奪われた。
そんな私たちの下に岬がツカツカと戻ってきた。
「いいってよ」
開口一番にそう告げた。
「!」
☆-----☆-----☆-----☆-----
「蓮華のステータス」
1,命の残り時間 :キッカリ1年と1か月間
2,主人公へ向けた想い :トラウマ・レベル
3,処刑回避に向けた行動:ゼロ
4,希望 :★☆☆☆☆
5,美貌 :★★★★★
☆-----☆-----☆-----☆-----☆
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