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逆ハーエンドを迎えたその後でモブはしぶしぶ舞台に立ちました①

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「貴殿の友人だと?」

 二人の前に進み出た俺を第二王子は訝しげに見た。それはあれか? お前に友達なんていないだろ、嘘つくなって言いたいのか? うっせーわ。友達くらい……。あれ? とも、だち? 俺、いたっけ? いやいや。そもそも俺にはアレクがいるし。主人と従者っていう対外的な立場はあれど、心の友と書いて親友と呼ぶ、身分を超えて繋がった固い絆が……って、それは今問題じゃないや。

「この者と関わりがあるというなら、お前も共犯か!! こいつも捕まえて……!」
「やめろ!」

 第二王子に続いて復活したガゼル・ロンドが俺を拘束せんとズカズカと近づいてくる。あと一歩というところで第二王子が鋭く命令した。ガゼル・ロンドはその一言でぴたりと制止する。止めてくれてありがとう第二王子。ついでに怖い顔して至近距離から俺を見下してくるガゼル・ロンドをもう少し遠ざけてくれないかな。
 第二王子は何事かを考えるように間を開けると、緩やかに口元に笑みを作った。もちろん目は笑っていない。めっさ怖い。

「衆目を厭い、静かな学園生活を送るために身分を伏せていたと記憶しているが卒業を機に公表なさるのか。カーマイン帝国第三皇子ユーステス・ヒルメルダ殿?」

 あーあ。言っちゃった。まあ、そのつもりで前に出たから良いんだけどさ。人が嫌がるポイントを的確に抑えてくるよね。さすが攻略対象。腐っても第二王子!

「は!? カーマイン帝国の皇子殿下!? こいつ……このお方が!?」

 ガゼル・ロンドがギョッと目を見開いて凝視してくる。だから、もうちょっと離れてくんないかな。いや俺が離れた方が早いわ。横に三歩移動するとヒロインに押しのけられたショックで微動だにしなかった他二名の攻略対象の顔が見えた。目と口をあんぐりと開けている。これが俗に言う間抜け面。せっかくイケメンなのに残念だ。
 観客の間にもごく一部を除いて騒めきが広がっていく。そりゃあ、驚くよな。こんな平凡を絵に描いた男が偉大なる帝国の第三皇子なんて。

 あらためまして。
 俺の名前はユーステス・ヒルメルダ。ハルハドール王国も位置するアゼンダ大陸で最も広大な土地と圧倒的な軍事力を誇る絶対的覇者カーマイン皇国の第五子にして三番目の皇子だ。

 兄姉たちが優秀すぎて霞んだ俺の存在は他国ではあまり知られていない。それを良いことにこっそり留学しこっそり学生生活を送っていた訳だが、最後の最後にばれてしまった。
ふっ、仕方がないさ。俺の高貴さを隠し通すなど土台無理な話だったのだ。

 だから、そんな嘘だろ信じられないみたいな顔いい加減やめてもらえませんか? あなた方の王子がちゃんと俺の身分を保証してくれてるんだぞ。
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