運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

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「ラルカティア・シルフィードです…」
 挨拶をしろと言う父に促され、俺は自分の名前を口にしてペコリと頭を下げた。
 目の前の背の高い男の人は、俺の姿を見て気まずそうに微笑んだ。きっと不愛想な子供だと、呆れられたのに違いない。だけど俺は、愛想笑いの一つも出来なかった。もとより、そんな心境になれるはずもない。

 何故なら、今まさに俺は、親から捨てられそうになっていたからだ。

 自分は愛されて育てられた子供じゃない。

 そのことは兄への扱いとの違いで、これまで嫌というほど思い知らされてきた。
 だけど俺はずっと願ってきた。夢に見るほど祈ってきた。

 いつか両親が俺のことも、愛してくれるのではないかと。
 兄へ対する愛情のおこぼれでも良いから、ほんの少しで構わないから、俺のことも愛して欲しい、と。

 そのためにずっといい子でいようと──両親や兄に好かれようと、出来る限りの努力もしてきた。
 5歳の子供に出来る努力なんて、ホントにたいしたことないけれど。
 俺はこれまで、わがままのひとつも言わず、どんな理不尽なことでも親の言いつけを守ってきた。なのに、そんな努力なんて最初から無駄だったのだと言わんばかりに、両親は無情に俺を捨てて行こうとしている。

 確かにここ1年の、俺への扱いは酷かった。
 殴られ、蹴られ、暴言を浴びせかけられ、俺は、心身ともに傷つけられてきた。
 だからそんな両親や兄と離れられるのは、むしろ嬉しいことのはずだったのに。

 それなのに、いざ、捨てられるとなった時、何故だか俺は、嬉しさよりも寂しさを、喜びよりも哀しみを感じてしまっていたのだ。

「さ、家へ入りな」
「あの……お、お邪魔、します…」
 両親と兄が振り返りもせず去っていくのを見詰めていたら、『クルト』と名乗った男の人は優しく俺を屋敷へと招き入れてくれた。
 改めて見ても大きな屋敷だった。これまで住んでいた家なんか、物置レベルに思えるくらい。そんな立派過ぎる屋敷に入るのを、俺はさすがに躊躇してしまう。
「無駄にデカいが住んでるのは俺だけだ。気兼ねすんな」
「あ……は、はい…」
 玄関前で動けずにいると、クルトさんはにかっと笑って、こんな俺と手を繋いでくれた。大きくてあったかい手だった。優しく包み込むような掌だった。

 こんな風に手を繋がれたの、生まれて初めてかも知れない。

 父や母が俺と手を繋ぐことは滅多になかったし、稀に人目を気にして繋ぐことはあったが、その時もなにか汚いモノでもつまむような繋ぎ方だったのだ。

 人と手を繋ぐって、こんなにあったかいんだな。

 そんな初めての温かさに感動してるうちに、俺は、いつの間にか屋敷の中へと入っていた。
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