かむづまり──朱夏の庭で君と

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「…うっ、うあっ……あっ、んんっっ」
 ギシギシと軋むベッドの上で、白い背中が限界までのけ反る。苦しそうに歯を食いしばり、顔を苦痛に歪めながら、ハルは小さな呻き声を上げていた。
「ハル…ハルッ、きついか……?」
「あっ…う、うっ…」
 言葉にもならない苦しみを感じているだろうに、それでもハルは首を振って意地を張る。すでにそこだけ高く上げたハルの小さな尻の蕾には、硬く勃起した俺のモノが根元まで埋まっていた。

 愛しき者と1つになれた喜び。
 心と体。魂をも繋いで、互いを感じ合える幸せ。
 知らなかった。気付かなかった。解かろうともしていなかった。
 人と人とが褥で行う営みが、これほどまでに心身を満たすものだということを。
 
「ハル…今、俺とお前は、1つになってるんだ……解かるか?」
「ん……ん、あ……セ、ツ……ッ」
 ぎゅうぎゅうと締め上げてくるハルの中は、熱くてきつくて隙間もないほど狭かった。本来何かを受け入れるためのものではないが、事前にたっぷり指で解きほぐしたお陰か、薄赤く擦れた蕾は前回の様には切れたりしていない。
「解る…よ、セツ……セツ……ッ」
 朦朧となりながらも、背中越しに俺を振り返り、ほんのりと微笑むハル。
 ああ、なんて可愛らしく、いじらしいんだろう。俺の、ハル。俺だけの、ハル。
 泉の如く溢れる愛おしさと、ますます強まる独占欲と肉欲とで、俺は、俺という存在は、己が神であることすら忘れてしまいそうだった。
「動くぞ……ハル……ッ!」
 繋がりだけでは満足できない。もっともっと深くハルを感じたい。感じさせたい。
「ひっ…んっ、あ……うあっ」
 馴染んだところでゆるゆる腰を動かし始めると、ハルは息を詰め苦痛に声を漏らした。その様があまりに辛そうで心が痛んだが、俺の内に芽生えたばかりの肉の欲望が、性急に愛しき者を求めてやまなかった。
 ハルが欲しい。彼の何もかもすべてが欲しい。
 彼を俺1人だけのものにして、俺だけを見詰め、求めさせたい。
 なんという浅ましい欲求。けれど、どこまでも深くなる強い愛情。
「ハル…ハル、愛してる……ッ」
「ッッ!?……あっ、あ、セツ…!?」
 肉体だけじゃない。心も、その魂すらも、俺だけのモノに。
 人の子に対して──いや、他の何者に対しても抱いた事など無かった欲望。人が人を愛するように、俺は──神霊たる俺は、儚い命の人に過ぎないハルを、月見里陽斗という人の子を、この永久なる魂かけて愛していると伝えた。
「あっ、んっ、セツ…セツッッ」
「ハル…ハルッ、俺の、俺のハル……ッッ」
 無体なほどに腰を叩きつけ、ハルとの繋がりを深くする。すると、中を抉った俺のモノがイイ所を突いたのか、苦痛ばかりを感じていたハルが、次第にそれだけではない声で喘ぎ始めた。
「あっ、あっ、変だよ…セツ、俺…俺…ッッ!?」
 打ち付ける度に揺れるハルの可愛らしいものが、初めて感じた内からの快楽に勃起し先走りを滴らせる。ベッドに擦りつけた顔は性的な涙と涎に塗れ、潤んだ青い瞳には明らかな情欲の色があった。
「あ…あっ、セツ…俺も、好き…好きだよ…セツ…ッッ」
「……ハル、ハルッ!?」
「ひッ……ひゃあ!?」
 堪え切れなくなったとばかりに囁かれた言葉に思わず目を瞠る。繋がりを一旦解いてハルの身体をひっくり返し、胡坐を組んだ足の上に対面で座らせると、ハルは恥ずかしそうに目を伏せてしまった。
「今、なんて言ったんだ。ハル…ッ」
「………………ッッ」
「ハル…ハル、お願いだ。もう1度…もう1度言ってくれ」
「………セツ……ッッ」
 ハッキリと伝えられたハルの想いに、俺は我が耳を疑い、慌てて彼の顔を覗き込みながら、小さくて愛らしい唇が再び開く瞬間を待った。
「好き…だ…俺も、セツのこと…好き、だよ…」
「…………ハルッ」
 言ったとたん真っ赤になるハル。
 初心なその姿を目にして俺の胸の中は、交ざり合う数々の感情で弾けそうになった。
「ん、んっ、ふ……ああ…ッ」
 これほどに心騒がせる人間は初めてだ。
 神である俺を不安にし、ハラハラと心配させ、こんなにも脅かせる稀有な存在。と同時に、俺という『男』を魅惑し、この心と魂を囚えて離さぬ、恐るべき愛しい人の子供。
「愛している……ハル…ッ」
「セ……ツ……ッ」
 自然な流れで口付けを交わし、目と目で見詰めあった俺とハルは、今度は心まで通じ合せながら再び1つとなった。
「あうっ、あっあっあっ!!セツッ、深…っ、奥、ああっ、あああああ!!!!」
「ハルッ、ハル、愛してる…愛してる、俺のハル!!」
 対面座位のまま奥を突きあげてやると、ハルは快楽と苦痛のない交ぜになった涙を零し、言葉にならない喘ぎと悲鳴を上げる。次の瞬間、俺の腹とハル自身の身体で挟まれたハルの可愛いものが、擦られて快楽に耐え切れず精を吐きだした。
「ひゃあああっっ、あっあっ!!」
「くっ、ハル……出る……ッッ」
 絶頂を迎えた俺自身も、ハルの中で精を吐き出すが、こんな物ではまだ物足りぬとばかりに、萎えた中心にドクドクと血が集まってくる。旺盛な欲望に自分自身でも呆れ驚くが、こればかりは理性なんぞで抑えきれるものではなかった。
「あ……あっ、っ………!」
 脱力したハルを仰向けに寝かせた俺は、細かく痙攣する細い足を抱え上げ、上から突き下ろす勢いで三度みたび抽送を始めた。ハルは半ば意識を飛ばしながらも、そんな俺の行為にイイ声を上げて善がる。平らな胸の突起が色を濃くし、刺激を受けてピンと勃つ様が妖艶だ。
「セツっ、ああっ、あ、愛…愛してる……ッッ」
「ああ、ハル、愛してる…俺もお前だけを…お前だけを愛してる……!!」
 まっすぐに見詰めてくる青いガラス玉。それは真実だけを俺に伝えて来ていた。純粋なハルの想い。いつから、どのようにして、俺を愛してくれるようになったのか。何も解からないけれど、解らないままでも構わなかった。

 想いが真実であるなら、他に何ひとつ必要ない。

「―――――――――――――ッッ!!」
「く……あっ…!!」
 その後、声もなくハルが絶頂を迎えて失神し、俺もハルの中で何度目かの精を吐き出して脱力した。濃密で激しいセックスは深夜まで続き、俺とハルは互いの愛を確かめ合ってようやく果てたのである。
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