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白馬の王子!?
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「僕の大切な婚約者を犯人扱いとは、どういうおつもりですか、シーリズ先生?」
「…………え」
バタンと音を立ててドアが開き、険悪ムードの教室内に颯爽と現れたのは──
「……え、誰?」
「お……王太子殿下!?」
私はてっきりいつもの長い金髪をなびかせた、きらびやかな姿で登場してくると思い込んでいた。おかげでその変わり果てた姿を見て『アンタ誰だよ、新キャラかい!?』って心の中で思わず突っ込んでしまう。シーリズ先生(そんな名前だったの??)が敬称を口にしなかったら、危うく口に出して突っ込むとこだったわ。
「アウラ…誰とは酷いな…」
…って、あ。口に出しちゃってたか。ごめんごめん。
でも、それほどにリュオディス王子の姿は変わっていたのだ。いや本当に。
「え……な、なんで…??」
唐突かつ突然なデザイン変更…ならぬ、イメチェンに私も相当びっくりしていたが、何故だかヒロインも彼のその姿に驚愕していた。つい一瞬前までの泣き真似までやめて、青ざめた顔で王子の姿を見ている。その理由は良く解らないのだけども──
それにしても、うーん…どうしちゃったの王子、こんな急に??
失恋でもしたの?って、乙女か王子は。私もしっかりしろ。
「どうだい?アウラ…君の好みに合わせてみたよ」
「あ…ええ、え??」
恥ずかしげもなくそう言い切った王子の、肩下まで伸ばされていたきらびやかな金髪は、なんと、うなじの所で綺麗に切り揃えられていたのだ。しかも長かった髪を一息に切ったせいなのか、全体がちょっと跳ねたりしててヒーローみたいでカッコイイ。うん。本当にかっこいいし、似合ってると思う。
ていうか、ちょっと待って!?
誰から聞いたのよ、私の好み!?
何気にスルーしそうになったけど、私、殿下にそんなこと言った覚えないわよ!?
「とてもカッコイイです。リュオディス殿下」
黒い疑惑は脳内で突っ込みつつ、思ったことを素直に口にしたら、リュオディス王子は嬉しそうにニコーっと笑った。うわーっ、白馬の王子様の笑顔!!周りの令嬢達から、声のない悲鳴が上がるのが解る。学園内とはいえさすがに不敬だから、声に出すのは耐えたみたいだ。偉いな~、お嬢様方!!
「リュオディス殿下、お話の所申し訳ございませんが…」
すっかり忘れ去られていたシーリズ先生が、話を元に戻そうと会話に割って入ってきた。王子は途端に笑顔潜めて真面目な顔になる。私はそんな彼の顔を目にして、『キリッとしててカッコイイぞ、王子!!』とこれまた脳内で賞賛の拍手を送った。
「オイレンブルク令嬢の罪は明らかです。たとえ王太子殿下の婚約者とはいえ、赦されることではありません」
おっと。ちょっと放置してた間に、先生の脳内では私の罪と確定していたらしい。
よほど自信と確信があるのか、王太子殿下に対しても強気だ。
「このような罪を犯したからには、オイレンブルク令嬢は殿下との婚約を辞退し、修道院へ入られるのがよろしいかと」
えっ、えっ!?ちょっと待って。これって、机に落書きしたって言う…つまり、単なる『いたずら』だよね??なのに、いつの間にか先生の脳内では落書き事件が、王族毒殺未遂でもやらかしたような事態になっていた。おいおい…いくらなんでも罪が重すぎでしょ。
「落書きの罪で??」
あ。殿下も目が点になってる。
ついで、呆れたような深いため息をついた。
うん。ですよね!!そうですよね!!??
良かった、王子がまともな反応見せてくれて!!
「何を言うのですか!!これはただの悪戯などではございません!!学園の施設に対する器物損壊罪!!教室を騒がせた騒乱罪!!一人の可憐な少女を傷付けた傷害罪でございますよ!!リュオディス殿下!!」
おお~物は言いようって、まさにこのことだわ。ポンコツでも、さすが先生を名乗るだけあるわね。聞いてる私もなんだか突然、『単なる落書き』がたいした罪のように思えてきたし。
「アウラが落書きをしたという、確たる証拠はあるのですか」
「もちろんです!!リーナ…グスタフ男爵令嬢の証言!!これこそ何よりの証拠でございます!」
そ・れ・し・か・ないんかい!!!!
思わず激しく突っ込んでしまった。脳内で。しかし、あまりの馬鹿馬鹿しさに危うく口に出すとこだったわよ…!!ほんと、馬鹿しかいないのか、この世界って??ああ、あと、突然ヒロインの愛称をやめて言い直すの、あからさま過ぎて気持ち悪いんですけど!?
「証言だけが証拠とは……呆れて物が言えませんね。グスタフ男爵令嬢、本当にそれはアウラがやったというのですか?」
「ハイッ!?いえっ、あ……ええと…それはその…ですね…」
王子から突っ込まれて聞かれると、さすがのヒロインも視線をキョロキョロさせて狼狽え始めた。
これはアレだな…ポンコツ1号レイドール様の時のように、王子が味方に付いてくれないと察したから、この場をどう切り抜けようかと考えてるんだな。あと、もしかすると原作では、ここに王子は登場してないのかも。なにせ王子が現われるや否や、泣き真似忘れるくらいに動揺してたしね。
それにしても、さ~て…これからどうする気かな??
「ち、違うんです!!その、私、脅されてて…ええと、そう!!シーリズ先生がそう言えって言ったんです…!!」
「………はあっ!!??」
わあ!!攻略対象切り捨てたよ!!いっそ潔いな、ヒロイン!!??
「…………え」
バタンと音を立ててドアが開き、険悪ムードの教室内に颯爽と現れたのは──
「……え、誰?」
「お……王太子殿下!?」
私はてっきりいつもの長い金髪をなびかせた、きらびやかな姿で登場してくると思い込んでいた。おかげでその変わり果てた姿を見て『アンタ誰だよ、新キャラかい!?』って心の中で思わず突っ込んでしまう。シーリズ先生(そんな名前だったの??)が敬称を口にしなかったら、危うく口に出して突っ込むとこだったわ。
「アウラ…誰とは酷いな…」
…って、あ。口に出しちゃってたか。ごめんごめん。
でも、それほどにリュオディス王子の姿は変わっていたのだ。いや本当に。
「え……な、なんで…??」
唐突かつ突然なデザイン変更…ならぬ、イメチェンに私も相当びっくりしていたが、何故だかヒロインも彼のその姿に驚愕していた。つい一瞬前までの泣き真似までやめて、青ざめた顔で王子の姿を見ている。その理由は良く解らないのだけども──
それにしても、うーん…どうしちゃったの王子、こんな急に??
失恋でもしたの?って、乙女か王子は。私もしっかりしろ。
「どうだい?アウラ…君の好みに合わせてみたよ」
「あ…ええ、え??」
恥ずかしげもなくそう言い切った王子の、肩下まで伸ばされていたきらびやかな金髪は、なんと、うなじの所で綺麗に切り揃えられていたのだ。しかも長かった髪を一息に切ったせいなのか、全体がちょっと跳ねたりしててヒーローみたいでカッコイイ。うん。本当にかっこいいし、似合ってると思う。
ていうか、ちょっと待って!?
誰から聞いたのよ、私の好み!?
何気にスルーしそうになったけど、私、殿下にそんなこと言った覚えないわよ!?
「とてもカッコイイです。リュオディス殿下」
黒い疑惑は脳内で突っ込みつつ、思ったことを素直に口にしたら、リュオディス王子は嬉しそうにニコーっと笑った。うわーっ、白馬の王子様の笑顔!!周りの令嬢達から、声のない悲鳴が上がるのが解る。学園内とはいえさすがに不敬だから、声に出すのは耐えたみたいだ。偉いな~、お嬢様方!!
「リュオディス殿下、お話の所申し訳ございませんが…」
すっかり忘れ去られていたシーリズ先生が、話を元に戻そうと会話に割って入ってきた。王子は途端に笑顔潜めて真面目な顔になる。私はそんな彼の顔を目にして、『キリッとしててカッコイイぞ、王子!!』とこれまた脳内で賞賛の拍手を送った。
「オイレンブルク令嬢の罪は明らかです。たとえ王太子殿下の婚約者とはいえ、赦されることではありません」
おっと。ちょっと放置してた間に、先生の脳内では私の罪と確定していたらしい。
よほど自信と確信があるのか、王太子殿下に対しても強気だ。
「このような罪を犯したからには、オイレンブルク令嬢は殿下との婚約を辞退し、修道院へ入られるのがよろしいかと」
えっ、えっ!?ちょっと待って。これって、机に落書きしたって言う…つまり、単なる『いたずら』だよね??なのに、いつの間にか先生の脳内では落書き事件が、王族毒殺未遂でもやらかしたような事態になっていた。おいおい…いくらなんでも罪が重すぎでしょ。
「落書きの罪で??」
あ。殿下も目が点になってる。
ついで、呆れたような深いため息をついた。
うん。ですよね!!そうですよね!!??
良かった、王子がまともな反応見せてくれて!!
「何を言うのですか!!これはただの悪戯などではございません!!学園の施設に対する器物損壊罪!!教室を騒がせた騒乱罪!!一人の可憐な少女を傷付けた傷害罪でございますよ!!リュオディス殿下!!」
おお~物は言いようって、まさにこのことだわ。ポンコツでも、さすが先生を名乗るだけあるわね。聞いてる私もなんだか突然、『単なる落書き』がたいした罪のように思えてきたし。
「アウラが落書きをしたという、確たる証拠はあるのですか」
「もちろんです!!リーナ…グスタフ男爵令嬢の証言!!これこそ何よりの証拠でございます!」
そ・れ・し・か・ないんかい!!!!
思わず激しく突っ込んでしまった。脳内で。しかし、あまりの馬鹿馬鹿しさに危うく口に出すとこだったわよ…!!ほんと、馬鹿しかいないのか、この世界って??ああ、あと、突然ヒロインの愛称をやめて言い直すの、あからさま過ぎて気持ち悪いんですけど!?
「証言だけが証拠とは……呆れて物が言えませんね。グスタフ男爵令嬢、本当にそれはアウラがやったというのですか?」
「ハイッ!?いえっ、あ……ええと…それはその…ですね…」
王子から突っ込まれて聞かれると、さすがのヒロインも視線をキョロキョロさせて狼狽え始めた。
これはアレだな…ポンコツ1号レイドール様の時のように、王子が味方に付いてくれないと察したから、この場をどう切り抜けようかと考えてるんだな。あと、もしかすると原作では、ここに王子は登場してないのかも。なにせ王子が現われるや否や、泣き真似忘れるくらいに動揺してたしね。
それにしても、さ~て…これからどうする気かな??
「ち、違うんです!!その、私、脅されてて…ええと、そう!!シーリズ先生がそう言えって言ったんです…!!」
「………はあっ!!??」
わあ!!攻略対象切り捨てたよ!!いっそ潔いな、ヒロイン!!??
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