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楽の戦士トーチの章
226.農業が楽しくない理由
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というか、これは農業なのか? あまりそれを彷彿とさせるような感じもしないしそれに――
「…………?」
「どうかされたんですか?」
「え、いや……」
自分でも、今何かに気を取られてぼんやりした、という感覚はあったが、何だったのか思い出せない。
「なんだろ、何か今すごく重要なことに気が付いたようなそうでないような気がするんだけど」
喉に小骨が引っかかったような感覚だけがあって、ひどく落ち着かない。
「今何をしようとしてたか忘れちゃうやつですか?」
メリルが適格な例えをする。
「ああ、うん。感覚としてはまさにそれなんだけど」
体のあちこちが痒いような気がして、しばらく落ち着かないあれだ。
「いやー、なんだっけ。こういうのって結構大事な事だとは思うんだよな」
後で思い出してみたら、別に大したことなかった、というパターンも無数にあるが。
「どの辺りでそう思ったか、順番に考えてみたらどうですか?」
極めて冷静にメリルが助言を送ってきた。
「それは、そうか……」
まったくその通りなので、順を思い出そうと試みる。
「やっぱ農業のくだりからだな。メリルとは大分農業に対して認識が違うなと思って」
「トーチさんって、農業にどういう認識を持たれてるんですか?」
「苦行」
あまり躊躇することなく、口から滑り落ちるようにその言葉が出てきた。
「え」
メリルの表情が一転して固まる。
「場合によっては拷問かもしれない」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってください。確かに……確かに農業には辛い事や、もうやりたくないと思うような事も多いですけど、流石にそれは何か別の話をしているのでは?」
そのつもりはない。
「実りもしない畑を、老人の機嫌取りために耕して疲れて、実入りも無くて冬が越せず、時たま他所に忍び込んだ奴が村中でどつかれ――」
農業にまつわる記憶を辿っていくと、驚くほどろくなものがなくて、一人で関心していると、慌てた様子のメリルが止めに入ってきた。
「…………?」
「どうかされたんですか?」
「え、いや……」
自分でも、今何かに気を取られてぼんやりした、という感覚はあったが、何だったのか思い出せない。
「なんだろ、何か今すごく重要なことに気が付いたようなそうでないような気がするんだけど」
喉に小骨が引っかかったような感覚だけがあって、ひどく落ち着かない。
「今何をしようとしてたか忘れちゃうやつですか?」
メリルが適格な例えをする。
「ああ、うん。感覚としてはまさにそれなんだけど」
体のあちこちが痒いような気がして、しばらく落ち着かないあれだ。
「いやー、なんだっけ。こういうのって結構大事な事だとは思うんだよな」
後で思い出してみたら、別に大したことなかった、というパターンも無数にあるが。
「どの辺りでそう思ったか、順番に考えてみたらどうですか?」
極めて冷静にメリルが助言を送ってきた。
「それは、そうか……」
まったくその通りなので、順を思い出そうと試みる。
「やっぱ農業のくだりからだな。メリルとは大分農業に対して認識が違うなと思って」
「トーチさんって、農業にどういう認識を持たれてるんですか?」
「苦行」
あまり躊躇することなく、口から滑り落ちるようにその言葉が出てきた。
「え」
メリルの表情が一転して固まる。
「場合によっては拷問かもしれない」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってください。確かに……確かに農業には辛い事や、もうやりたくないと思うような事も多いですけど、流石にそれは何か別の話をしているのでは?」
そのつもりはない。
「実りもしない畑を、老人の機嫌取りために耕して疲れて、実入りも無くて冬が越せず、時たま他所に忍び込んだ奴が村中でどつかれ――」
農業にまつわる記憶を辿っていくと、驚くほどろくなものがなくて、一人で関心していると、慌てた様子のメリルが止めに入ってきた。
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