ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

205.公務員の楽屋-2

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「それ何?」
 見たことのない装置だったので、聞いてみる。
「何というのは、何がですか?」
 俺は青い光を指さす。
「ああ、これは……魔力で熱を発生させるコンロですね」
「そういうのがあるんだ」
 ポットを置いているから、温めるものだと言われればなるほどと納得できる。ただ加熱するものと言えば、竈の炭火や焚火という生活している俺にとっては、やはり違和感がすごい。
 本当に湯が沸くのか? と思っていると、火では考えられないような速度で、湯気が上がりだした。
 ほんの数十秒だったと思う。
 信じられないぐらい速いし、まったく煙たくない。煤の匂いも全然しない。
「それがあれば、風呂行く前に前に火を使っとこうとか、思わなくて済みそうだなあ」
「ふっ……そうですね」
 変な事を言ったのか失笑されてしまったが、別に不快な感じはない。大袈裟な反応をする子供を見るような表情だった。
 湧いたお湯でお茶を作ったミルノはカップにそれを注いで、テーブルに置く。
 自分が飲みたいだけ、と言ったがちゃんと二人分用意してくれた。
 薄い緑のハーブティー。
 俺が普段口にするものは、水もこんなに綺麗にじゃないし、ハーブのカスが浮いていたりするが、ミルノが用意したものは、そういう濁りがない。ちょっと寂しいぐらい透き通った緑の水面から、湯気が立ち上ってくる。
「あっ、美味い……」
 いい香りに釣られて、すぐにカップのお茶に口をつけてしまった。
 どんな味かと言われると、いまいち言葉に表しにくい。口に入ったときの香りが美味しく感じる、とでもいうのだろうか。
 不純物のない、水のようなのど越しの良さもいい。
 今まで俺がお茶として認識していたものとは、明らかに味わいが違った。美味しい。
「なんか、君と会うときは大体美味しい思いしてる気がするなあ」
「……言い回し少し気になるところはありますが……まあいいでしょう。お茶請けも出しましょうか」
 一旦腰かけたミルノがすぐに立ち上がって、クッキーを持ってきてくれた。
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