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楽の戦士トーチの章
96.気楽な話題に乏しい-2
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冒険者同士の会話が基本弾まないのも、だいたいそういう理由だろう。たまにウマの合う奴がいて、いつも話したりしているぐらい。まあ、人間関係っていうのはそもそもそういうものなのかもしれない。ちゃんと付き合いが成立する奴の方が少ないというか。
でも、そういう奴らが集まってパーティーを組んだとしても、上手くいくとは限らない。
性格の合う合わないは、パーティーに必要な能力やバランスとは無関係だからだ。
レベル差がついたり、求められるクラスの人員が過少、あるいは過多。それらのほころびから、究極的には金の問題でこじれていく。
本来こういうところもちゃんと面倒を見るのが、ギルドの仕事ではないかと思うのだが、基本的にほったらかしだ。
冒険者同士で争ってくれるなら、こっちに火の粉はかからないし、コントロールしやすく丁度いいと思っている節すらある。
その結果がどちらも得をせず、現在の状況があると思う。
本来統治するべき奴が自分の都合のために出し惜しみして、全体がおかしくなるという、まあ俺の村とまったく同じ構図。
それがこういうちょっとした会話のシーンでも影響出てくる。改めていろいろ考えるところだ。
沈黙が降りる。
バーバリアンの店主とか、歓楽街の姐さんとは、ぎこちないなりにそこそこ会話になるものだが、冒険者同士だと話しかけるのも気を使う。
でも、このまま何もしないというのも、居心地が悪い。
故郷の村で生活していて、何が一番不快だったかというと、それは停滞感だった、と最近になって気が付き始めた。
何だか無為に悶々としているのは、気分が悪いのだろう。
なので今、俺はなんとかメリルと話をするべきだと思っている。
普通の仲良しパーティーと違って、今は同じ目的で同じ仕事をしているのだし、多少踏み込んでも決定的にこじれる可能性は低い気がする。一応、俺が雇い主であるという部分には気にしつつ、話しかける。
「君は、どの辺りの出身なの? こっちの人っぽくはないけど」
「え、わ、私ですか!?」
このまま話が終わると思っていたのか、メリルは少し慌てて言った。
でも、そういう奴らが集まってパーティーを組んだとしても、上手くいくとは限らない。
性格の合う合わないは、パーティーに必要な能力やバランスとは無関係だからだ。
レベル差がついたり、求められるクラスの人員が過少、あるいは過多。それらのほころびから、究極的には金の問題でこじれていく。
本来こういうところもちゃんと面倒を見るのが、ギルドの仕事ではないかと思うのだが、基本的にほったらかしだ。
冒険者同士で争ってくれるなら、こっちに火の粉はかからないし、コントロールしやすく丁度いいと思っている節すらある。
その結果がどちらも得をせず、現在の状況があると思う。
本来統治するべき奴が自分の都合のために出し惜しみして、全体がおかしくなるという、まあ俺の村とまったく同じ構図。
それがこういうちょっとした会話のシーンでも影響出てくる。改めていろいろ考えるところだ。
沈黙が降りる。
バーバリアンの店主とか、歓楽街の姐さんとは、ぎこちないなりにそこそこ会話になるものだが、冒険者同士だと話しかけるのも気を使う。
でも、このまま何もしないというのも、居心地が悪い。
故郷の村で生活していて、何が一番不快だったかというと、それは停滞感だった、と最近になって気が付き始めた。
何だか無為に悶々としているのは、気分が悪いのだろう。
なので今、俺はなんとかメリルと話をするべきだと思っている。
普通の仲良しパーティーと違って、今は同じ目的で同じ仕事をしているのだし、多少踏み込んでも決定的にこじれる可能性は低い気がする。一応、俺が雇い主であるという部分には気にしつつ、話しかける。
「君は、どの辺りの出身なの? こっちの人っぽくはないけど」
「え、わ、私ですか!?」
このまま話が終わると思っていたのか、メリルは少し慌てて言った。
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