ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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あまり楽とは言えない冒険者メリルの章

59.あまり楽とは言えない理由

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 レベルを上げて解決するにしても、戦闘回数はどうしてもこなさなければならない。
 しかし、そのために使う魔法が制限されているために、今までもレベルが上がっていないのだ。
 魔力を増やすための魔力がない状態を、意気込みだけで解決出来るものではない事は、よくわかっている。
 だからこそ、それを指摘されるのは辛い。一体何を言われるのか、身構えていると。
「そっかー。まあ仕方ないね」
 恐ろしいほどに、あっさりとした反応だった。
「え……あの、それだけですか……?」
 仮にも彼はメリルを雇っているのだ。期待した働きが出来なかった事に対して、もっと何か言う事がないのか。
「それだけって?」
「だってその、初歩的な魔法も満足に使えないわけですし……それでいいのかなって」
 ひょっとして、まだ給料を払っていないから、いざとなれば踏み倒せばいいと思っているのか。
「いい……いや、別によかないけど。そこは個人差あるとは思ってたし、そんなに気にはしてないよ」
 どうもそういう感じではない。
 あくまでも想定内、という反応だった。
「眠りの魔法はどのぐらい使える?」
「スリープなら2~3回ぐらい。頑張れば4回……魔力最大からなら、ですけど」
 メリルの魔法の適正はどちらかといえば、補助や妨害系が高い。だが、それを連射する状況は、補助や妨害に失敗していると言える。
 とりわけ細かい戦術よりも、火力が正義である初級冒険者界隈では、特に需要がない適正だった。眠らせたりこじらせたりする前に、焼き払ってしまう方が圧倒的に効率がいい。
 せめて適正が逆だったらもっとレベルアップの機会があっただろうし、冒険者業も今より上手く行っていたのではないか。そう考える事は何度もあった。どこの誰が決めたのかわからない才能に対して、やりきれない感情があったし、事実として人に貶されたこともある。
 今回も何か言われるのではないかと思ったが、男は貶めることも励ますこともなく、着々と次の話題に移った。
「じゃあ、魔力が回復するまで休憩してて。ここらはこいつらしか出ないし、その辺に座っててもいいよ」
「あ、はい……」
 他に何が出来るわけでもないので指示に従うしかない。メリルは適当なでっぱりを見つけて腰を下ろす。
 じっと魔力の回復を待つ間は、本当にやることがないので、背負子を下しおもむろに何かの準備を始めた男の動きを、観察することになる。
「これは持ってきといてよかったな」
 そう言って柔らかい土が露出している箇所を、背負っていた薪でガシガシ掘り始めた。十分な深さが出来ると、そこに薪を放り込む。
 そして薪とは別に用意していた松明を取り出して、先端に着火。さらに穴の中の薪にも、火を移して燃え上がらせた。
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