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20.料理を待つ間にする楽しみに乏しい
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店員を呼んで、パンケーキのセットとナイトハニーシロップを強調しつつ、なるべく小声で伝える。
他の客と同じ物を頼むのは、なんとなく気まずいし。
なんてことを考えていることなど、まったく気にしない店員が、厨房に向かってでかい声で「パンケーキ、ナイトもう一つ!」などと言うので、全て台無しになった。
俺はこういうときの人の視線に、人一倍うるさい男。
すぐさま女の席に目を向けるが、彼女がこっちを気にした様子はない。というか、注文を終えたら早々に本を読み始めて、周囲を気にしていない。
助かった。いや、別に何も悪いことをしたわけではないが。
俺は彼女と違って、料理が来るまでに暇を潰すものを持っていない。というか、そんな娯楽品を買う余裕がない。
仕方がないので周囲をきょろきょろ観察して、時間が過ぎるのを待つ。
開店直後は寂しかった店内だが、しばらくすると徐々に人を集めてきていた。
皆、当然ながら身なりがしっかりしている。ここで一番見すぼらしいのが俺なのは確信を持って言えることだ。
でも必要以上に気取った格好をした人もいない印象だ。スーツとか紳士服っぽいシャツとか、清潔感はあるけど余計な物はついていない、機能性重視の出で立ちだ。
これから仕事なのでその前に朝食を済ませる。多分そういう人がこの時間には来るのだろう。
お金はあるけど、仕事はしなくてもいいまではいかないぐらいの労働者が、気軽に入ってくるここはそういう店なのだろう。
静かでゆったりとした空気の中に、程よい喧騒が紛れ込む。
ギルドの周りの飯屋なんて、基本居酒屋が昼間営業してるだけだから、客はうるさいし常にどこかしら酒くさい。飯を食べるというより、一刻も早く栄養を喉に通して脱出する場所って感じ。長居すると絡まれるし。案外安くもないし。
あんまり行きたくないので、なるべく料理しないで食べられる果物とか、教会の炊き出しの火を借りて自炊したりとか、最近そんなんばっかだったので、こうして落ち着いて料理を待つという時間そのものが新しい。
先に注文をした女のところに、料理が届けられた。
持っていた本を閉まって、布巾で手をぬぐい、小瓶に添えられたナイトハニーをたっぷりとパンケーキに垂らし、ナイフでカットしたパンケーキを口に運ぶ。
他の客と同じ物を頼むのは、なんとなく気まずいし。
なんてことを考えていることなど、まったく気にしない店員が、厨房に向かってでかい声で「パンケーキ、ナイトもう一つ!」などと言うので、全て台無しになった。
俺はこういうときの人の視線に、人一倍うるさい男。
すぐさま女の席に目を向けるが、彼女がこっちを気にした様子はない。というか、注文を終えたら早々に本を読み始めて、周囲を気にしていない。
助かった。いや、別に何も悪いことをしたわけではないが。
俺は彼女と違って、料理が来るまでに暇を潰すものを持っていない。というか、そんな娯楽品を買う余裕がない。
仕方がないので周囲をきょろきょろ観察して、時間が過ぎるのを待つ。
開店直後は寂しかった店内だが、しばらくすると徐々に人を集めてきていた。
皆、当然ながら身なりがしっかりしている。ここで一番見すぼらしいのが俺なのは確信を持って言えることだ。
でも必要以上に気取った格好をした人もいない印象だ。スーツとか紳士服っぽいシャツとか、清潔感はあるけど余計な物はついていない、機能性重視の出で立ちだ。
これから仕事なのでその前に朝食を済ませる。多分そういう人がこの時間には来るのだろう。
お金はあるけど、仕事はしなくてもいいまではいかないぐらいの労働者が、気軽に入ってくるここはそういう店なのだろう。
静かでゆったりとした空気の中に、程よい喧騒が紛れ込む。
ギルドの周りの飯屋なんて、基本居酒屋が昼間営業してるだけだから、客はうるさいし常にどこかしら酒くさい。飯を食べるというより、一刻も早く栄養を喉に通して脱出する場所って感じ。長居すると絡まれるし。案外安くもないし。
あんまり行きたくないので、なるべく料理しないで食べられる果物とか、教会の炊き出しの火を借りて自炊したりとか、最近そんなんばっかだったので、こうして落ち着いて料理を待つという時間そのものが新しい。
先に注文をした女のところに、料理が届けられた。
持っていた本を閉まって、布巾で手をぬぐい、小瓶に添えられたナイトハニーをたっぷりとパンケーキに垂らし、ナイフでカットしたパンケーキを口に運ぶ。
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