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17.魔物を倒せる快楽、そして現実に帰る
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『1660G』
そして見つけたのが、この値札だ。
露店の片隅で、まるでバナナの投げ売りのように、放りだされて積まれていた鋼龍の爪を発見。
未加工品と書かれていて、これは素材の爪をそのままつなげただけのもの、という意味のようだ。確かに長さや大きさが揃っていなかったりしている。
その中でも良さそうなのを掘り出して、購入を決めた。
そしてさっそく装備してみる。
その瞬間、攻撃力が俺の基礎ステータスの数倍に膨れ上がった。
他のステータスは低いままなので、余計にその突出っぷりがわかる。
ちまちまレベル上げたりするのがバカバカしく思えてくるなあ。
やはり人は努力や労力より、まず道具に頼るべきだ。
ちなみに、俺は武道家ではないので、爪を用いた技能などは使えないし、アビリティなどで攻撃力以上の力を出すことはできない。
これが装備に適応した専門の職だったりすると、他のステータスが伸びたり、クリティカル率が上がったり、武器の攻撃力以上に威力が出たり、といった恩恵があるが、適職外だとそうはらない。
あくまでも定格の攻撃力62で攻撃できるだけ。
しかし、一応定格で装備できる、というのもこの場合は大きい。
他の軽量級職の場合、装備してもすぐに装備重量限界にぶち当たって、攻撃力の半分も出せないし、他のステータス(主に素早さ)に深刻な影響を受ける。
こういった『持った装備をとりあえず振り回す能力』は、ステータス的に力や体力の割り振りなので、相対的に戦士は装備の幅が広い。
戦士には実質的な上位互換がたくさんあると言われるけど、取得の簡単さを考えればこの装備範囲の広さは破格だ。多少重量過多でも、素早さは元からないに等しいので気にならないのも大きい。訓練学校時代から、俺はそう思っていたけど、あんまり理解されなかったな。
力と体力しか無いという部分の欠点の方が目立つ、という意見が主流だった。
でも一生懸命に訓練しても、一気に攻撃力が数倍にはならないだろうし。
やっぱり力と体力と確保して、装備を更新していくのが手っ取り早くいし楽だと思う。
……というわけで現状の装備がこうだ。
武器 E安いナイフ→鋼龍の爪
頭 Eなし
体 Eなし(ボロい服は防具とは言わない)
盾 E訓練学校で貰った微妙な盾
武器以外何も変わっていないが、その武器が圧倒的に強くなった恩恵は、購入翌日の迷宮から目に見えてわかるほど大きかった。
遭遇しても今までは逃げるしかなかったオークが、
「ブオッ……」
と、雄叫びを上げる間もなく、なますになって息絶える。
武器としては微妙な下級品でも、二回り以上ランクが上。爪という武器の使いにくさを考慮しても、圧倒的な力が物を言いまくる。
今まで煩わしく感じていた狩り道中の強敵が、一閃のもとに倒れ伏すのは、痛快というほかなかった。
ぶっちゃけめちゃくちゃ気持ちいい。
調子に乗って、次の獲物に向かって直進。
わはははこの生肉め、さっさと俺の経験値になれ! なんて調子に乗っていると、
「ブモオオオオオオッ!」
側面の横穴から雄叫び。いきなり怒り狂ったオークが出てきて、その突進をもろに食らった。
「おふっ……」
口から空気と一緒に発した覚えのない声が漏れ、俺の身体はくの字に曲がって吹っ飛んだ。
まったく防御していなかったので、今ので体力を3~4割を持っていかれる。
幸い隠れていた奴は一匹だけだったので、その場を何とか立て直し、囲まれたりする前に突破することはできた。
危ない……。
レベルが低かったら、今の一発でアウトかもしれなかった。
武器は強くなったが、防具はほとんど裸同然のまま。一匹なら一撃で屠って終わりに出来るが、複数体潜んでいると危険度は跳ね上がる。
それはわかっていたはずなのだが、ついはしゃいでしまった。
奴らをもっと八つ裂きにするためには、やっぱりちゃんと渡り合える防具がないと…………いや待て、八つ裂きにするのは目的じゃない。落ち着け。
冷静に考えれば、まともな戦闘をするのは冒険者になって初めてのことだった。
スライムや夜甲虫って、狩りっていうより内職とか採集って感じだし。
あんまり考えたことはなかったけど、冒険っていうのは結構楽しいのかもしれない。
まあ、でも現状は冒険で儲かる当てがないので、今日も地味な夜甲虫狩りになるけど。
今日もそのためにダンジョンに来た。
狩り場の道中でストレスの源になっていた、強敵オークやウェアウルフを、お礼参りよろしく切り殺すためではない。そんなことをしている場合ではない。うん。
でももうあと一匹だけ……。
そして見つけたのが、この値札だ。
露店の片隅で、まるでバナナの投げ売りのように、放りだされて積まれていた鋼龍の爪を発見。
未加工品と書かれていて、これは素材の爪をそのままつなげただけのもの、という意味のようだ。確かに長さや大きさが揃っていなかったりしている。
その中でも良さそうなのを掘り出して、購入を決めた。
そしてさっそく装備してみる。
その瞬間、攻撃力が俺の基礎ステータスの数倍に膨れ上がった。
他のステータスは低いままなので、余計にその突出っぷりがわかる。
ちまちまレベル上げたりするのがバカバカしく思えてくるなあ。
やはり人は努力や労力より、まず道具に頼るべきだ。
ちなみに、俺は武道家ではないので、爪を用いた技能などは使えないし、アビリティなどで攻撃力以上の力を出すことはできない。
これが装備に適応した専門の職だったりすると、他のステータスが伸びたり、クリティカル率が上がったり、武器の攻撃力以上に威力が出たり、といった恩恵があるが、適職外だとそうはらない。
あくまでも定格の攻撃力62で攻撃できるだけ。
しかし、一応定格で装備できる、というのもこの場合は大きい。
他の軽量級職の場合、装備してもすぐに装備重量限界にぶち当たって、攻撃力の半分も出せないし、他のステータス(主に素早さ)に深刻な影響を受ける。
こういった『持った装備をとりあえず振り回す能力』は、ステータス的に力や体力の割り振りなので、相対的に戦士は装備の幅が広い。
戦士には実質的な上位互換がたくさんあると言われるけど、取得の簡単さを考えればこの装備範囲の広さは破格だ。多少重量過多でも、素早さは元からないに等しいので気にならないのも大きい。訓練学校時代から、俺はそう思っていたけど、あんまり理解されなかったな。
力と体力しか無いという部分の欠点の方が目立つ、という意見が主流だった。
でも一生懸命に訓練しても、一気に攻撃力が数倍にはならないだろうし。
やっぱり力と体力と確保して、装備を更新していくのが手っ取り早くいし楽だと思う。
……というわけで現状の装備がこうだ。
武器 E安いナイフ→鋼龍の爪
頭 Eなし
体 Eなし(ボロい服は防具とは言わない)
盾 E訓練学校で貰った微妙な盾
武器以外何も変わっていないが、その武器が圧倒的に強くなった恩恵は、購入翌日の迷宮から目に見えてわかるほど大きかった。
遭遇しても今までは逃げるしかなかったオークが、
「ブオッ……」
と、雄叫びを上げる間もなく、なますになって息絶える。
武器としては微妙な下級品でも、二回り以上ランクが上。爪という武器の使いにくさを考慮しても、圧倒的な力が物を言いまくる。
今まで煩わしく感じていた狩り道中の強敵が、一閃のもとに倒れ伏すのは、痛快というほかなかった。
ぶっちゃけめちゃくちゃ気持ちいい。
調子に乗って、次の獲物に向かって直進。
わはははこの生肉め、さっさと俺の経験値になれ! なんて調子に乗っていると、
「ブモオオオオオオッ!」
側面の横穴から雄叫び。いきなり怒り狂ったオークが出てきて、その突進をもろに食らった。
「おふっ……」
口から空気と一緒に発した覚えのない声が漏れ、俺の身体はくの字に曲がって吹っ飛んだ。
まったく防御していなかったので、今ので体力を3~4割を持っていかれる。
幸い隠れていた奴は一匹だけだったので、その場を何とか立て直し、囲まれたりする前に突破することはできた。
危ない……。
レベルが低かったら、今の一発でアウトかもしれなかった。
武器は強くなったが、防具はほとんど裸同然のまま。一匹なら一撃で屠って終わりに出来るが、複数体潜んでいると危険度は跳ね上がる。
それはわかっていたはずなのだが、ついはしゃいでしまった。
奴らをもっと八つ裂きにするためには、やっぱりちゃんと渡り合える防具がないと…………いや待て、八つ裂きにするのは目的じゃない。落ち着け。
冷静に考えれば、まともな戦闘をするのは冒険者になって初めてのことだった。
スライムや夜甲虫って、狩りっていうより内職とか採集って感じだし。
あんまり考えたことはなかったけど、冒険っていうのは結構楽しいのかもしれない。
まあ、でも現状は冒険で儲かる当てがないので、今日も地味な夜甲虫狩りになるけど。
今日もそのためにダンジョンに来た。
狩り場の道中でストレスの源になっていた、強敵オークやウェアウルフを、お礼参りよろしく切り殺すためではない。そんなことをしている場合ではない。うん。
でももうあと一匹だけ……。
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