ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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15.発展なくして楽はない

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 さて懐に一気に大金が転がりこんできた。
 これはなるべく使わず、どんどん実入りを増やしていきたい、と思うところだが、収入の質を改善したければ、やはりある程度の支出は必要になる。そう強く思うのは、こういった支出をケチった結果が、俺のいた村の惨状だったからだ。あそこではケチのツケで、毎年じわじわと辛くなっていく場所だった。
 だから余裕が出来たときこそ、次の改善点を常に探さないといけない。
 現時点の狩りはもっと改良する必要があるし、蜜の質もあるが、そもそも夜甲虫狩りに完全に依存するのが問題。
 今はある程度のペースが保てていても、それが未来永劫続くとは限らないからだ。
 俺の生まれたあの忌まわしい村では、土地の制約などの都合上一つの作物に集中した生産を行う家が多かったが、そういう方法だと一度不作や病気が発生すると、そこから壊滅的な被害を被る。
 すると収入が激減するため、翌年以降の生産も難しくなり、そう遠くないうちに……、という流れになる。これが我が村における餓死の黄金パターンだ。
 一つの躓きから転落する可能性のあるのは、業態的にノルマもきつくなりがちで楽じゃないのはもちろん、気分的にもきつい。
 ダンジョンの魔物は、農作物なんかよりもさらに不安定なので尚更だろう。
 俺も訓練学校で知ったが、どんな魔物にも狩りのシーズンってのがちゃんと存在している。当然夜甲虫にだってあるはずだ。乱獲もよくない。
 なので常に破綻する危険性を考え、どんな状況でも収入があるように、先んじて別の分野に投資しておくのが無難だし楽になる。上手くいかなくても、結果的にマシになる可能性の方が高いはずだ。
 丁寧にやる必要はある。でも難しいことを考える必要はない。冒険者なんだから、新しい冒険の場を探そうと、そういうだけの話。
 で、新しい場所に向かうために、今の全裸同然の装備は(普通のダンジョン対策としても)非常に問題があるので、今回の収入と貯金で何か買おうと。つまりそういうわけである。
 
 そして目下、困っているのは攻撃力。ありとあらゆる場面で不足を感じる。
 防御力についても問題がないとは言わないが、防御とはあくまで魔物を倒せるだけの十分な攻撃力があってのものだと思う。
 いくら防御が高くても攻撃力がないんじゃ、結局逃げるしかないわけで。
 現状松明が有効な夜甲虫以外の魔物は、まったく太刀打ちできない。新しい狩りを試すためには、まず普通に攻撃して倒すための武器が早急に必要なのだ。
 それに狩り場の途中でたまに道を塞いでくるオークやウェアウルフにも、正直うんざりしている。しかし、気を抜くと一瞬で死ぬので入念にルートを練ったり、時には逃走用や脱出用アイテムを使っている。地味に痛い出費だ。
 だから、こいつらを余裕で倒せるぐらいの攻撃力を持った武器が欲しい。
 具体的には攻撃力60以上。一般に中級冒険者クラスの武器ぐらいに相当するので、これなら一撃でなますに出来るはず。
 下位の魔物にそこまで攻撃力のある武器が必要なのかと思うかもしれないが、パーティを組んでいるならそれなりの武器でも渡り合える。
 でも一人の場合、少ない手数で倒さないと、次に死ぬのはこっちなのだ。
 圧倒的な力がいる。レベルを上げなくても手に入る圧倒的な攻撃力が。
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