ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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3.楽な選択は限られる

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 選択は若い内に限られた。
 農家の手伝いにあまり参加しなくてもよく、多少奇行をとっても、子供だからと許される時期に決めておくべきだった。
 しかし、俺は貧乏農家の出身。後ろ盾も専門的な知識もなく、身一つしかない。村を出ていための蓄えもない。
 村を出て生活しようと思ったら、選択肢は少なく、どうやってもある程度は賭けになる。
 でも敢えて覚悟を決めるような必要はなかった。
 村を出た瞬間息絶えるかもしれないが、この村にいても、緩やかに死んでいくだけなので、あまり違いはないと思えたからだ。
 俺の情報収集と能力範囲で、村を出て貧乏を脱するための二つの案があった。
 
 1.王都の兵士に志願する

 軍備のための若い兵士が不足しているため、王都では常に志願兵を募集している。
 堅苦しい生活になるかもしれないが、給料とかはそれなり。
 戦争になったりして死ぬ可能性はあるが、まあそれはそれ。
 そんなに悪い選択だとは思っていなかったが、警備のための派兵としてまた村に戻ってくるハメになるかもしれない、というのが選ばなかった理由。
 村に来た兵士たちの、苦虫を噛み潰したような顔をが過りまくった。
 
 2.迷宮探索の冒険者になる
 
 世界各所にある迷宮の魔物を退けて、資源や古代の宝を発掘する仕事。
 誰にでもなれるし、名乗れる。気軽さとアクセスの良さが魅力。
 収入はめちゃくちゃ不安定。しかし組合や訓練所は非常に多い。つまり、素人をそそのかして、仲介の中抜き業者をやる方が安定して儲かる商売ってことだろう。 
 ただ、一回大きなヤマを当てれば、大量の収入があるかもしれないという逆転性はある。
 絶望は多いが一応希望も入っている商売。
 働き方にある程度自由が効く(かもしれない)。
 何より迷宮のないこの村に帰ってくる可能性が低い。採用。
 

 方針として、いくら大金を稼げても苦労したら意味ないので、とにかく楽をすることを優先した。
 5年以内に一生分稼げたらいいな、という夢は持つが、それはどうなるかわからない。
 しかし、楽をするのは今からでも出来るので、資格の取得が楽な戦士を選んだ。
 実のところ他にも楽に稼げそうな選択肢がなかったわけではないが、やはり貧乏が足かせになった。
 子供で、初期資本が限りなく0であると、新しく事業をするためのちょっとした道具や知識の調達も困難になる。
 貧乏は楽ではないと、特に思い知った瞬間だった思う。
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