義両親から冷遇されまくってるけれど、国のために改革しまくります。~国難を夫婦そろって拳で救え!~

しろいるか

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稲光と来客

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 魔物たちは高い知性を得た結果、凶暴性を失った。
 それが、私とチャーリーが、魔物たちと会話して出した結論だった。

 つまり、彼らは魔物でありながら、こっちを見るや否や問答無用で襲いかかって暴れ倒したり、色々と口にできないような非道行為をしないのである。

 限りなく獣人に近いと言える。
 そして我が国では獣人をちゃんと人間と同等の存在だと表明しているワケで。
 さらに魔物たちは人間のエゴによりこうなったワケで。

「帝国の責任だから帝国でなんとかしろっていうのも道理っちゃあ道理だけど」
「待ってるのは殺処分でしょうね、間違いなく」
「手に余るだろうからな……」

 良くも悪くも帝国は過激派が多く、ざっくばらんだ。
 そんなトコに送り込んだらどうなるか。実権道具として弄ばれるか、あっさりと殺されるか。うーん。考えるだけでイヤになる。

 ここで放逐するのは無責任だ。

 とりあえず魔物たちを集めてみたのだけれど、本来であればいがみ合うはずの彼らは大人しく集まって座っている。なんだこの光景。
 学術的分野からすれば非常に興味深いのかもしれないけれど……。
 私たちが思うのは、責任という二文字だ。

「いや、これ本当にどうしよっか。メイ」
「うーん……そうね、条件次第、よね。ちょっと話してみる」

 私は言うべきことを簡単に纏めてから、一歩前に出た。

「ねぇ、質問なんだけど。あなたたち、もうちょっと勉強とかしたいと思わない?」
「ベンキョウ? コトバ、オボエル。チシキ、フエル。アバレル、シタクナクナル」
「そう、それ。今の様子でも十分大人しい気はするけど、やっぱり突発的に出くわしたら凶暴性が出てくるじゃない? それはあまり良くないと思うの。だから、こっちで先生を用意するから、もっとちゃんと勉強してみない?」

 私が提案すると、ウェアウルフ、コボルト、ゴブリンのリーダーらしき三人が互いに顔を見つめ合わせる。すぐに肯定したのか、お互いに頷いた。

「ヤッテミタイ。キョウミ、アル」
「オッケー。だったら、ちゃんと勉強をする、無益な殺生をしない、町の人たちを襲わない、襲いにいかない。というのをちゃんと守れるなら、この山に住んでもいいわよ」
「……ホントウカ!?」

 一気にウェアウルフの顔が明るくなる。
 うわー、分かりやすい。本気で喜んでるわー。

「あと、この山には草原エリアが結構あるんだけど、そこを開墾……えっと、畑とかにしようと思ってるの。そこも荒らさないこと」
「ハタケ、アラサナイ」
「っていうか、畑を作るの手伝うなら、その一部をあげてもいいわよ?」
「ソレ、オレタチ、サクモツ、ツクル、シュウカクスル、クウ、デキル?」
「もちろん手伝うわ」
「ヤル!!」

 即答されて、私は安堵する。
 ここで拒否されたらどうにもならなかったからだ。向こうは本当に住処が欲しいだけみたいだし、邪魔しないなら共存できそうだ。

「ってことだけど、チャーリー」
「問題は起こらなさそうだね。こっち側も相手に危害を加えないようにしっかりと通達しておけば、共存できるんじゃないかな」
「ありがとう、チャーリー。イヤって言われなくて安心した」
「メイのすることだし、正しいって僕も思うからね。反対する理由がないよ」

 私とチャーリーは同時に顔を綻ばせた。
 よし、これで基本方針はできた。後はしばらく食糧を分け与えて彼らに大人しくしてもらいつつ、専門家を招き入れて教育、そして畑の開墾だね。

 図らずして良い人手ゲット! である。

 何せ彼らは魔物。
 人間を凌駕する身体能力を持っているので、仕事率はかなり高いはずだ。
 開墾もスムーズに進むだろうし、警備だっていずれは任せられるようになるかもしれない。

「じゃあ早速、取り掛かろう」

 チャーリーの一言で、魔物討伐戦は魔物との共同生活作戦に切り替わったのだった。


 ◇ ◇ ◇


 犠牲者ゼロで済ませ、私たちはいったん町へ戻った。
 騎士団へは緘口令を敷いて解散。もし破ったら即座に私がぶん殴るって脅したらみんな一斉に怯えながら頷いていた。どうしてだろう。まぁいいや。

 ともあれ、ウトとトメからのアホみたいにメンドクサイ案件は解決、である。

 後は、二人をとっとと旅行に連れていって、一気に作戦開始だ。
 下準備やら何やらに手間取られつつも、私とチャーリーはいつもの仕事もこなして、二人をようやく追い出すことができた。

 ばっちり私は前日から体調不良を訴え(もちろんワザと)旅行をキャンセル。

 チャーリーも残務があるからと拒否し、夫婦水入らずでいってきなさいという一言も手伝って、ウトとトメは喜んで馬車に乗っていった。
 旅行期間は二週間ではなく、三週間。ちょっと延びたのは、業者の都合だ。この一週間は非常に大きい。

 さぁ、徹底的にやりますか!

 と、一気に作戦を開始した矢先のことだった。
 その日は夕方から雨模様だった。
 とはいえ、私もチャーリーも屋敷から指示を出しまくっていたのであまり気に留めていなかったのだけれど。

「こんな日に、火急の来客?」

 おうむ返しに聞くと、門番は気まずそうに頷いた。
 二人で顔を見合わせる。

 はて。また何か緊急事態か?

 とはいえ、騎士団の統制も上手くいってるし、商人協会もキッチリ働いていて、経済対策、食糧対策も上手くいっている。魔物たちも大人しくしているのは確認できている。問題らしい問題は発生しないはずなんだけど……?
 怪訝になっていると、門番が一枚の書簡を見せてきた。

 あ、この文字はっ……!

 見覚えのある懐かしい字に、私の記憶が刺激される。
 チャーリーも目を大きくさせていた。

「隣国の蝋印じゃないか。それも正式な!」
「この字、妹のものだわ」
「というと、隣国のお妃では……?」

 そう。
 私の妹は隣国に嫁ぎ、今は王妃として国のために頑張っている。私と違って姫らしい姫で、私が言うのもなんだけどめっちゃ可愛い。
 ちなみに性格はおっとりとしているようで、気も強ければ芯も強い。頭脳だけで言うなら私や姉より上だと思っている。

「どうして、急に?」
「分からない。とりあえずお目通りにかないたいという内容だね」

 書簡を広げて読んだチャーリーが言いつつ私に見せてくる。
 確かに妹直筆の文字だ。

「とりあえず、話を聞いてもいいかしら?」
「うん。そうだね。隣国さんだし」

 私たちは同時に頷く。
 外で、稲光が瞬いた。
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