義両親から冷遇されまくってるけれど、国のために改革しまくります。~国難を夫婦そろって拳で救え!~

しろいるか

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物理的交渉。

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 翌日。
 さっそくアポを取った私とチャーリーは町へ出向き、我が国の商人協会の本部へと出向いていた。

 本来なら呼びつけるのが筋なんだろうけど、そうしたら目立つし、相手もあれこれ理由をつけて来ないのだ。

 だったら乗り込むのが一番! である。
 出されたお茶も程ほどに、私たちは本題へと入る。迅速果断が大事だ。

「……というわけなので、塩を優先的に手配して欲しいの」

 一通りの説明を終えると、でっぷりした体型の中年オヤジ──商人協会の会長は深いため息をついて椅子に深く座り込んだ。
 うっわ腹立つ。
 私はなんとか笑顔の体裁を整えた。

 我が国には大きい商会はないし、商圏も保有してない。互助会のような、本当に寄合の小さい規模でのみ団体は存在している。

 その団体の長がコイツである。
 別名、帝国の犬。
 帝国中央に大きい商圏を保有する商会の中堅らしく、商いの相互発展だか何だかを目的としてやってきたのである。

「塩、ですか……確かに大事でしょうなあ」

 ふてぶてしい態度を崩さず、オッサンはこっちを見ることさえしない。

「帝国南部の惨状はこちらも耳にしておりますよ。諸外国からの取引拒否問題もね。うちだって打撃は受けていますし?」
「じゃあ話は早いと思うんですけど。今のうちに手を打たないといけません。食糧問題は確実にやってきます」

 チャーリーが前のめりになりつつ訴える。
 ぐっと真摯に見つめるが、オッサンは受け流すような態度だった。

「確かに早く手を打つのも策としては有効でしょうな。しかし、それは同時に帝国中央を見捨てることになりますぞ」
「……はい?」
「このままでは間違いなく帝国中央は飢える。多くの死者を出す。貴殿方はそれを見殺しにする、という意味です」

 事も無げに言い放たれ、私は唖然とした。
 え、いや、それはっ!
 私が反駁する前に、オッサンはようやく私たちを見る。

「塩はもちろんとして、貴殿方は小麦といった食糧も確保しようとしている。そちらは我らを通さず、農家へ直接交渉までして」

 ──ほう。
 さすがにこっちの流れも調べているらしい。さすが帝国の犬。鼻はきく。

「私は残念なのです。自分達だけ助かるために食糧を確保し、冬を過ごす。それは帝国に所属する国として正しい姿勢なのですかな? ずっと帝国という大きい傘に守られておきながら、いざ危機となれば簡単に見捨てる。ずいぶんと冷たいものだと思いますがね?」

 こ、こいつ、いけしゃあしゃあと!

「もちろん完全にシャットアウトはしませんよ。畜産やキノコ類、山の幸など、余剰分に関しては捻出します」
「それだけでは足りないのですよ」

 オッサンは呆れたように言い放つ。

「帝国中央を、それこそ自国の民の命と引き換えにでも助ける。それが貴殿方のような辺境諸国の仕事ではありませんか?」

 ──……はあ?
 何ほざいてんだコイツ。んなわけねぇだろ。そもそも私らは自国の民を守り幸せにするため働いてるんだぞ?

 何が悲しくて大切な民を犠牲にせにゃならんのだ。

 有り得ない。
 絶対有り得ない。

「我らに飢えろと? そうおっしゃるか」
「頭さえ生きていれば、国はどうにでもなりましょう。帝国中央が持ち直せれば、助力も期待できる。人が足りなければ移民を、金がなければ貸付を」

 それはもう、うちの国じゃない。
 単なる傀儡だ。それに貸付って。借金背負えってか!? 助けたのはこっちなのに!?
 なな、なんつう失礼発言を!
 って言うか、なんだかんだ理由つけておいてコイツら金儲けしたいだけじゃないの!

 がたん、と私は立ち上がる。

 瞬間、オッサンはにたぁ、と笑った。
 私たちを挑発して怒らせるのも、このオッサンの目論見なんだろう。どうあがいても、こいつらは己の利益最優先なのだ。

「おや、図星ですかな? しかし困りますなぁ、そんな短絡的思考では、これでは」
「おっと足が滑ったちゃぶ台返しぃいいっ!」

 どがっしゃああんっ!

「わっひゃああああはぶうっ!」

 私の叫ぶと同時に蹴りあげたテーブルは、一寸の乱れもなくオッサンの顔面に直撃した。
 うん、いい音!
 ついでにお茶も盛大に浴びたことだろう。

「あ、いたたたっ、な、何をっ!?」
「あーらごめんなさいちょっと足が滑っちゃってってきゃあああ床が濡れて滑っちゃうううううっ!」

 私は滑ったふりをして跳躍、身体を捻りつつ倒れこみ、オッサンの鳩尾に肘を叩き込む!
 ずむっ、と気持ちよい音。
 さらに起き上がる振りをして顎を頭突きではねあげ、おまけにビンタを一撃。

「あらあああ、大丈夫ですかぁ!?」

 私は心配する素振りをしながらオッサンの胸ぐらを両手で掴み、締め上げながらぐいっと持ち上げる。
 きゅっ。
 と、オッサンの首がいい感じにシェイプアップする。

「おご、んごっふごっ!」
「んふふふーん。なんか苦しそうですね。私が介抱してあげましょうか? あの世まで」

 真顔で言い放つと、オッサンの顔が見る見る真っ青になっていく。

「あのねぇ、何やら色々と立場まで勘違いしてるみたいなんだけどぉ、あんたら、そもそも誰の許可で商売してるワケ?」
「なっ……!?」
「我々はこの国を治めるものだ。言ってしまえば王族である」

 困惑するオッサンに、威厳を放ったのは他でもないチャーリーである。
 普段は物静かな感じだけど、威圧はキッチリ出してこれるのだ。

「その王族に対し、さっきからどのような態度だったのだ、貴公は。不敬にも程がある」
「な、かはっ……このっ」
「つまりね? 不敬罪ってことで即座にとがめることも可能なのよ。で、その上で通商破棄も可能なわけね。あんたを帝国中央へ送り返せるの。そうなったら困るのはどっちかしら? 本来なら流通するものさえしなくなるのよ? それ、向こうが許すかしら」

 ただでさえ帝国は弱体化しているのである。ここで内紛沙汰になるのは、さらに困惑するはずだ。
 最悪、他国の介入を許すことになる。

「ぐぅっ……!?」
「帝国中央の狙いとしては、そんな内紛さえ起こせないくらいこっちを弱らせるために食糧やらを根刮ぎ買い漁るつもりなんだろうけどね? そんなの見え見えなの」
「その上で我らは動くんだ。民を守るために」

 二人で睨むと、オッサンは黙り込んだ。
 両手を離すと、むせ返りながらオッサンは尻もちをついた。

「げほ、げほっ! き、貴様らっ!」
「あら。まだそーんな口がきけるんだ。へぇ」

 私はボキボキと拳を鳴らしながらオッサンの前に立つ。

「お互いの今後のために、教育的指導が必要みたいね?」
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