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後日談、5
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「教えてくれるかしら、イーグル」
私が言うと、イーグルは待っていたかのように纏め上げた資料を渡してくる。
なんとも用意が良い。
「調べたところ、すぐに原因が判明しました」
「拍子抜けするくらいに?」
「正確に言えば、原因の予測ですね。それを確定させるのは少々骨が折れましたが、無事に納得できるものになったかと」
なるほど。
イーグルに骨が折れるといわしめるとは、中々である。
これは心して読まないといけない。
私は早速資料に目を通していく。
「相変わらずイーグルの字って分かりやすいわね」
「そうですか?」
「うん。読みやすい。内容も的確にまとめられてるからってのもあるんだけど、まず目に優しいのよね」
「褒めていただけて嬉しいですね。毎日褒めてもらっていますが」
ごほん。
イーグルにからかわれた気がする。私は咳払いを一つ入れた。
いやだって。イーグルって完璧なんだもん。
っと。のろけてる場合じゃない。
同席しているキアがにやにやしてるけど、今は無視。あまりにしつこかったらチョップする方向で。
「……守護霊?」
「はい。珍しいことに、彼女には活発な守護霊が憑いているようなのです」
確かに珍しい。
この世界には、確かに一部の人間にだけ守護霊がやってくる。けど、ほとんどの場合はとても弱く、本当の危機の時に僅かな影響を与えるぐらいしかできないような脆弱存在だ。
これはご先祖様や何かしらの縁があって繋がった精霊などが守護霊になるんだけど、残滓に近い存在だからだ。
けど、《シスター》には活発な守護霊が憑いている。
だからちょっとしたことでも影響力を発揮してしまうのか。
結果、あのような惨劇が発生する、と。
「守護霊とはちょっと思わなかったわね」
「激レアも激レアですからね」
キアの意見に同意だ。
しかも守護霊なんて感知に感知を重ねないと分からない。活発っていっても、普段はそれくらい脆弱なわけで。
うーん。なるほど。
「もちろん、《シスター》そのものにもドジっ子属性は備わっています」
「本来ならちょっとコケそうになったりするくらいのものが、その守護霊の介入によってとんでもない惨劇にまで拡大されてるってワケね」
「そうなります」
「守護霊なんだか邪魔霊なんだか分かりませんね。でもこれってどうするんですか?」
キアがスープを一口しつつ聞いてくる。
「そんなの決まってるじゃない」
私はふかふかのパンを一口サイズにちぎってから微笑んだ。
「熱意ある説得あるのみよ」
◇ ◇ ◇
というわけで、翌朝。朝の礼拝を終えた《シスター》の元へ訪れ、私たちは早速守護霊とのコンタクトを開始した。
特別なことはしない。
私とキアの二人で作った魔法陣の中に入って、守護霊を一時的に固定、強化。
で、姿を現してもらうのだ。
後はお話をするだけである。
どんな守護霊が出るかはまったく分からない。
ご先祖様のときもあれば、動物のときもあるし、精霊のときもある。こればっかりは本当に出たトコ勝負である。
とはいえ、ほとんどの場合は言葉もしくは魔力を通じた意思でやり取りできるから何がでてきてもあまり関係なかったりするんだけど。
『…………。』
「…………。」
いや、関係あったわ。
すっごいビミョーな空気が流れる中、私とそれは相対していた。めっちゃ眉間にシワがよってるのが分かる。
向こうもすっごい気まずい感じ。
いや、うん。よし。
私は迷いなく魔力を高めた。
『って待てえええええっ!?』
「待つわけないでショ。安心しなさい。肉体言語で奈落へご帰宅願うだけよ」
『それ滅ぼすつもりだよね!?』
「当たり前じゃないのよあんた自分がどういう状態か分かってんの!? アークレイっ!」
私は肩を怒らせながらそれの名を呼ぶ。
そう。アークレイ。東欧王国の元王子にして、国家反逆罪やらなにやら色々な罪によって極刑にされた大罪人である。ちなみに元婚約者。婚約破棄したけど。
『知らんっ! 我だって気がつけばこの娘に取り込まれていたのだ!』
「はぁ!?」
『我は確かに命を失った。そこはちゃんと覚えてる。けど、恨みに恨みが重なって死にきれず、魂の一部が剥離してさ迷っていたのだ。で、知らずとこの学院にまでやってきてしまってだな。そして吸収されたのだ』
王国の極刑は、魂による再生を防ぐ為、浄化されつつ行われる。文字通り消滅してしまうのだ。にも関わらず、魂の一部が剥離して逃げ出したんかい。
なんとまぁ執着心が凄いことで。
王子であったのは伊達ではないのだろう。いや、どうでもいいけど。
『で、あれよあれよと小娘の様子を見ていたんだ。で、かなりドジをするじゃないか。まどろみながらだが、手を貸してやらねばと思って影響力を行使していたのだ。悪いことなどしておらん』
どうやら魂の一部が剥離したことで、きれいなアークレイが形成されているらしい。なんだそれ。いやんなワケない。まどろんでるから我を失ってなんだかきれいになってるっぽいだけだわ。
だって、確実に亡霊だもん。しかも危険な方。
「それで彼女がドジをするたびに被害を拡大させてたワケ?」
『そこには深いワケがあってだな』
「下らなかったら手足一本ずつ細切れにしていくからね?」
『いやそれ怖いんだけど!?』
「いいから話す!」
『ええい、脅迫者め。論より証拠が良い。皆よ、出てくるが良い』
アークレイが指を鳴らすと、わらわらといろんな何かが出てくる。それこそ動物、老若男女、得たいのしれないなにかまで。
え、えええ? 何コレぇ……。
ドン引きしていると、ざっと見て三〇もの存在が出現した。
ちょっと多すぎません? しかも全員ヤバい気配なんだけど。
「どういうことですか、これ」
「たぶんだけど、彼女はかなりの霊媒体質じゃないかしら。しらずしらずのうちに色んなものを拾って、体内に取り込んじゃってるのよ」
「ああ、そういう。で、取り込みすぎちゃって意識混濁してるんですね」
つまり助けようとして、いろんな意思がそうなっちゃうから変なことになって、結果としてドジの惨劇を拡大させていたわけだ。
まぁそりゃそうだ。悪霊の塊だもんね。
なんとも間抜けな図式である。
「まぁ、そうと分かればやることは一つね」
私は容赦なく魔力を高める。
『っておい!? テレジア!?』
「理由はどうであれ、悪影響が出ているのは確かよ。今はなんでかきれいなアークレイだけど、元々は亡霊なわけだし。ということで、まとめてあの世に帰りなさいっ! ちょっと乱暴だけどねっ!」
『まって聖女なんだったらそこは優しくしてどうぞ!?』
「んな優しさは少なくともあんたには持ち合わせてないっ!」
私は光を収束させて両手を突き出す。
「最上位祈聖っぽい破霊滅烈火砲っ!」
『それ聖女の使う魔法じゃなっ――――――』
盛大な音を立てて、破邪の魔法が全員を消し飛ばした。
よーし、これで解決解決。
私が言うと、イーグルは待っていたかのように纏め上げた資料を渡してくる。
なんとも用意が良い。
「調べたところ、すぐに原因が判明しました」
「拍子抜けするくらいに?」
「正確に言えば、原因の予測ですね。それを確定させるのは少々骨が折れましたが、無事に納得できるものになったかと」
なるほど。
イーグルに骨が折れるといわしめるとは、中々である。
これは心して読まないといけない。
私は早速資料に目を通していく。
「相変わらずイーグルの字って分かりやすいわね」
「そうですか?」
「うん。読みやすい。内容も的確にまとめられてるからってのもあるんだけど、まず目に優しいのよね」
「褒めていただけて嬉しいですね。毎日褒めてもらっていますが」
ごほん。
イーグルにからかわれた気がする。私は咳払いを一つ入れた。
いやだって。イーグルって完璧なんだもん。
っと。のろけてる場合じゃない。
同席しているキアがにやにやしてるけど、今は無視。あまりにしつこかったらチョップする方向で。
「……守護霊?」
「はい。珍しいことに、彼女には活発な守護霊が憑いているようなのです」
確かに珍しい。
この世界には、確かに一部の人間にだけ守護霊がやってくる。けど、ほとんどの場合はとても弱く、本当の危機の時に僅かな影響を与えるぐらいしかできないような脆弱存在だ。
これはご先祖様や何かしらの縁があって繋がった精霊などが守護霊になるんだけど、残滓に近い存在だからだ。
けど、《シスター》には活発な守護霊が憑いている。
だからちょっとしたことでも影響力を発揮してしまうのか。
結果、あのような惨劇が発生する、と。
「守護霊とはちょっと思わなかったわね」
「激レアも激レアですからね」
キアの意見に同意だ。
しかも守護霊なんて感知に感知を重ねないと分からない。活発っていっても、普段はそれくらい脆弱なわけで。
うーん。なるほど。
「もちろん、《シスター》そのものにもドジっ子属性は備わっています」
「本来ならちょっとコケそうになったりするくらいのものが、その守護霊の介入によってとんでもない惨劇にまで拡大されてるってワケね」
「そうなります」
「守護霊なんだか邪魔霊なんだか分かりませんね。でもこれってどうするんですか?」
キアがスープを一口しつつ聞いてくる。
「そんなの決まってるじゃない」
私はふかふかのパンを一口サイズにちぎってから微笑んだ。
「熱意ある説得あるのみよ」
◇ ◇ ◇
というわけで、翌朝。朝の礼拝を終えた《シスター》の元へ訪れ、私たちは早速守護霊とのコンタクトを開始した。
特別なことはしない。
私とキアの二人で作った魔法陣の中に入って、守護霊を一時的に固定、強化。
で、姿を現してもらうのだ。
後はお話をするだけである。
どんな守護霊が出るかはまったく分からない。
ご先祖様のときもあれば、動物のときもあるし、精霊のときもある。こればっかりは本当に出たトコ勝負である。
とはいえ、ほとんどの場合は言葉もしくは魔力を通じた意思でやり取りできるから何がでてきてもあまり関係なかったりするんだけど。
『…………。』
「…………。」
いや、関係あったわ。
すっごいビミョーな空気が流れる中、私とそれは相対していた。めっちゃ眉間にシワがよってるのが分かる。
向こうもすっごい気まずい感じ。
いや、うん。よし。
私は迷いなく魔力を高めた。
『って待てえええええっ!?』
「待つわけないでショ。安心しなさい。肉体言語で奈落へご帰宅願うだけよ」
『それ滅ぼすつもりだよね!?』
「当たり前じゃないのよあんた自分がどういう状態か分かってんの!? アークレイっ!」
私は肩を怒らせながらそれの名を呼ぶ。
そう。アークレイ。東欧王国の元王子にして、国家反逆罪やらなにやら色々な罪によって極刑にされた大罪人である。ちなみに元婚約者。婚約破棄したけど。
『知らんっ! 我だって気がつけばこの娘に取り込まれていたのだ!』
「はぁ!?」
『我は確かに命を失った。そこはちゃんと覚えてる。けど、恨みに恨みが重なって死にきれず、魂の一部が剥離してさ迷っていたのだ。で、知らずとこの学院にまでやってきてしまってだな。そして吸収されたのだ』
王国の極刑は、魂による再生を防ぐ為、浄化されつつ行われる。文字通り消滅してしまうのだ。にも関わらず、魂の一部が剥離して逃げ出したんかい。
なんとまぁ執着心が凄いことで。
王子であったのは伊達ではないのだろう。いや、どうでもいいけど。
『で、あれよあれよと小娘の様子を見ていたんだ。で、かなりドジをするじゃないか。まどろみながらだが、手を貸してやらねばと思って影響力を行使していたのだ。悪いことなどしておらん』
どうやら魂の一部が剥離したことで、きれいなアークレイが形成されているらしい。なんだそれ。いやんなワケない。まどろんでるから我を失ってなんだかきれいになってるっぽいだけだわ。
だって、確実に亡霊だもん。しかも危険な方。
「それで彼女がドジをするたびに被害を拡大させてたワケ?」
『そこには深いワケがあってだな』
「下らなかったら手足一本ずつ細切れにしていくからね?」
『いやそれ怖いんだけど!?』
「いいから話す!」
『ええい、脅迫者め。論より証拠が良い。皆よ、出てくるが良い』
アークレイが指を鳴らすと、わらわらといろんな何かが出てくる。それこそ動物、老若男女、得たいのしれないなにかまで。
え、えええ? 何コレぇ……。
ドン引きしていると、ざっと見て三〇もの存在が出現した。
ちょっと多すぎません? しかも全員ヤバい気配なんだけど。
「どういうことですか、これ」
「たぶんだけど、彼女はかなりの霊媒体質じゃないかしら。しらずしらずのうちに色んなものを拾って、体内に取り込んじゃってるのよ」
「ああ、そういう。で、取り込みすぎちゃって意識混濁してるんですね」
つまり助けようとして、いろんな意思がそうなっちゃうから変なことになって、結果としてドジの惨劇を拡大させていたわけだ。
まぁそりゃそうだ。悪霊の塊だもんね。
なんとも間抜けな図式である。
「まぁ、そうと分かればやることは一つね」
私は容赦なく魔力を高める。
『っておい!? テレジア!?』
「理由はどうであれ、悪影響が出ているのは確かよ。今はなんでかきれいなアークレイだけど、元々は亡霊なわけだし。ということで、まとめてあの世に帰りなさいっ! ちょっと乱暴だけどねっ!」
『まって聖女なんだったらそこは優しくしてどうぞ!?』
「んな優しさは少なくともあんたには持ち合わせてないっ!」
私は光を収束させて両手を突き出す。
「最上位祈聖っぽい破霊滅烈火砲っ!」
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