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交換しなさい
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「メイシャ。あなた、婚約破棄ね」
それは朝食時のなんでもない会話でぶちこまれた爆弾発言だった。
っていきなり!?
「な、なな、なんでですか? お義母さま」
面食らいつつ、私は辛うじてお茶を吹き出すのを我慢して聞く。
いや、貴族の女子たるもの、そんなはしたない真似は出来ない。絶対に出来ない。やってしまったら恥で切腹ものだ。
そんな私を嘲笑うかのように、義母は鼻を鳴らした。
「なんでって、決まってるでしょ」
「そうだよぉー、お姉さま。アイナがぁ~。お姉さまの旦那さんを欲しくなっちゃったからだよ?」
義母の後を継ぐように、姿を見せながら甘ったるい声を出してきたのは、義妹のアイナだ。
ぶっちゃけて言おう。私はコイツがダイッキライだ。
理由は単純だ。
なんでもかんでも、私のものを欲しがるのである。
小さい頃からだ。
私の実母は私が三歳の頃、流行り病で倒れて亡くなった。その後に義母と生まれて間もない義妹——アイナがやってきたのだ。
血のつながりはないけど、実の妹として接するようにと言われてたんだけど、まぁアイナはワガママなことワガママなこと。
私はずっとそれに振り回されてきた。
アイナは私が身に着けていたものを欲しがる。
だから同じものを与えても意味がなく、私はいつも奪われてきた。
姉だからと、我慢させられてきた。
で、それが極まって今度は婚約者かい。
呆れてものもいえない。
「何言ってるのよ、アイナ。あなたは別に婚約者がいるでしょ」
「あ~。そっちはお姉さまにあげる~」
「……は?」
「だって~。どう見てもお姉さまが見つけてきた旦那様の方が優良物件なんだもん。可愛い可愛いアイナの方がお似合いでしょ?」
なんだコイツ。いやなんだコイツ。
そのぶりっ子に鼻にかけたような甘ったるい声。全部癪に障る。
「それに~。そっちの旦那様は了承してくれたよ?」
「なんですって?」
旦那――ミゼルにもう話をつけてたの!?
いったいいつの間に!
本当に手が早い。どうせ義母も色々と手を貸しているのだろうけど。とはいえ、婚約者の交換なんて前代未聞である。
「でも、こんな事どう説明するつもりなのですか」
「お父様が上手にしてくれるから心配は要りません」
ああ、そう。
父上も上手く丸め込まれたのね。なんというか。まぁ、そもそも私たちが婚約者であることはまだ発表してないものね。どうにでもなるか。
うん。分かった。
どーせ今から何を言っても無駄なのだ。
義母がこういった時点で、すべては決まっている。私に拒否権はない。
「アイナ。本当にいいのね?」
「もちろんだよ~。だって、ミゼル様って見た目からして王子様だしぃ、辺境伯の長男だから将来有望だしぃ、性格も紳士だし」
「……分かった。でもこれが最後よ?」
「やったぁ~! お姉さま大好きっ!」
無邪気に演技臭くはしゃぐアイナを見て、私は薄く笑う。
言ったからな。撤回は許さないわよ。
自分でもドス黒いとわかる感情のまま、私は笑う。
覚悟していただこう。
ミゼルがどういうクソ男なのかを知らないアイナ。あんたバカよ。
そもそも気づけよ。
いくら見てくれが良くても、あっさりと婚約者交換に応じたような男だぞ。本性が知れるというものなのに。見えてないんだなァ。
まぁ、いいか。
今までの恨み、ここで晴らさせてもらう。
私はもう疲れたんだ。
こんな義妹のワガママと、義母のやり方に。私は好きなように生きる。
それは朝食時のなんでもない会話でぶちこまれた爆弾発言だった。
っていきなり!?
「な、なな、なんでですか? お義母さま」
面食らいつつ、私は辛うじてお茶を吹き出すのを我慢して聞く。
いや、貴族の女子たるもの、そんなはしたない真似は出来ない。絶対に出来ない。やってしまったら恥で切腹ものだ。
そんな私を嘲笑うかのように、義母は鼻を鳴らした。
「なんでって、決まってるでしょ」
「そうだよぉー、お姉さま。アイナがぁ~。お姉さまの旦那さんを欲しくなっちゃったからだよ?」
義母の後を継ぐように、姿を見せながら甘ったるい声を出してきたのは、義妹のアイナだ。
ぶっちゃけて言おう。私はコイツがダイッキライだ。
理由は単純だ。
なんでもかんでも、私のものを欲しがるのである。
小さい頃からだ。
私の実母は私が三歳の頃、流行り病で倒れて亡くなった。その後に義母と生まれて間もない義妹——アイナがやってきたのだ。
血のつながりはないけど、実の妹として接するようにと言われてたんだけど、まぁアイナはワガママなことワガママなこと。
私はずっとそれに振り回されてきた。
アイナは私が身に着けていたものを欲しがる。
だから同じものを与えても意味がなく、私はいつも奪われてきた。
姉だからと、我慢させられてきた。
で、それが極まって今度は婚約者かい。
呆れてものもいえない。
「何言ってるのよ、アイナ。あなたは別に婚約者がいるでしょ」
「あ~。そっちはお姉さまにあげる~」
「……は?」
「だって~。どう見てもお姉さまが見つけてきた旦那様の方が優良物件なんだもん。可愛い可愛いアイナの方がお似合いでしょ?」
なんだコイツ。いやなんだコイツ。
そのぶりっ子に鼻にかけたような甘ったるい声。全部癪に障る。
「それに~。そっちの旦那様は了承してくれたよ?」
「なんですって?」
旦那――ミゼルにもう話をつけてたの!?
いったいいつの間に!
本当に手が早い。どうせ義母も色々と手を貸しているのだろうけど。とはいえ、婚約者の交換なんて前代未聞である。
「でも、こんな事どう説明するつもりなのですか」
「お父様が上手にしてくれるから心配は要りません」
ああ、そう。
父上も上手く丸め込まれたのね。なんというか。まぁ、そもそも私たちが婚約者であることはまだ発表してないものね。どうにでもなるか。
うん。分かった。
どーせ今から何を言っても無駄なのだ。
義母がこういった時点で、すべては決まっている。私に拒否権はない。
「アイナ。本当にいいのね?」
「もちろんだよ~。だって、ミゼル様って見た目からして王子様だしぃ、辺境伯の長男だから将来有望だしぃ、性格も紳士だし」
「……分かった。でもこれが最後よ?」
「やったぁ~! お姉さま大好きっ!」
無邪気に演技臭くはしゃぐアイナを見て、私は薄く笑う。
言ったからな。撤回は許さないわよ。
自分でもドス黒いとわかる感情のまま、私は笑う。
覚悟していただこう。
ミゼルがどういうクソ男なのかを知らないアイナ。あんたバカよ。
そもそも気づけよ。
いくら見てくれが良くても、あっさりと婚約者交換に応じたような男だぞ。本性が知れるというものなのに。見えてないんだなァ。
まぁ、いいか。
今までの恨み、ここで晴らさせてもらう。
私はもう疲れたんだ。
こんな義妹のワガママと、義母のやり方に。私は好きなように生きる。
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