義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

しろいるか

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神様のおねがい

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 それから一週間。
 私は夢のような時間を過ごし、家族との思い出を重ねていった。

 すべては、家族を取り戻すため。

 でも、本当にそれだけ?
 私の中に、一つの感情が芽生え始めていた。
 どきどきしてしまう。どうしても、神様を意識するようになっていた。

 この人が旦那様だったら、どれだけ良いだろう。

 でもそれは不可能だ。
 私は人間で、神様は大狼神。魂の格が違う。寿命も違う。
 望むだけ、きっとそれは迷惑なんだと思う。

「セレス。少し話があるんだが、いいかな」

 果樹園のお世話を一緒にして汗を流してすっかり疲れたから、しっかりとお風呂に入って、ゆっくりリラックスしている時だった。
 神様が私の部屋に尋ねてきたのだ。

「どうぞ」

 断る理由はない。
 居住まいを正しておくと、神様はゆっくりとドアを開けて入ってきた。相変わらず寝間着はガウンだ。
 神様は一言断ってから、私の隣に座る。

 どうしてか、妙な沈黙が落ちた。

 重くはないけど、ちょっと息苦しい。
 ドキドキする。どうしてか、ここまで近いと緊張もしてしまう。

「ここにきて、それなりの時間が経ったな」
「はい。毎日が夢のようです」

 本心で言うと、神様は少しだけ顔をほころばせた。でも、どこか固くなっている感じだった。
 神妙にもしているし、どうしたんだろう。

「あの、どうかされましたか?」

 意を決して聞いてみると、神様は少しだけ目をそらした。

「いや、その、あの、だな」
「何か言いにくいこと、ですか?」

 私はイヤな感覚が胸に襲いかかったのを感じ取った。
 もしかして、追い出されるのだろうか。
 不安にじっと見つめていると、急に神様は顔を赤くしてしまった。

「すまない。そう見つめられてしまうと、だな、その……」

 わかりやすいくらいに、神様はそわそわしてくる。
 どうしたんだろう、私の顔が、存在が気に食わないのだろうか。

 何かしてしまったんだろうか。

 神様に対しては信頼もしていたし、親しくもしていた。でも、礼儀を欠いたつもりはなかったのだけれど。
 でも、もしそうだとしたら、誠心誠意謝らないと。
 何をしてしまったのか聞こうとすると、神様が何かぽつりと呟いた。

「神様? ごめんなさい、聞き取れませんでした」

 素直に言うと、神様はとうとう耳まで真っ赤にしてしまった!
 お、怒らせちゃった!?

「……照れるんだ」

 胸が押しつぶされそうになっていると、神様は唐突にそう切り出した。

「我はおかしくなってしまったようだ」

 少し混乱している様子を見せながら、神様は語り始める。

「君と一緒に暮らしてから、少しは収まるだろうと思っていた」
「あの、何が……」

 病気? ケガ? 何かの呪い?
 色々な要素を思い浮かべていると、神様はいきなりこっちを見て、私の手を優しく取った。温かい。

「でもっ。日に日に、時に時に。刻めば刻むほど、我は君の虜になっていった」
「と、とりこっ!?」
「君の傍にいると、君の顔を見つめていると、今すぐにでも唇を奪ってしまいたい。今すぐにでも抱きしめて、押し倒してしまいそうになるっ。でも、そんなことをしたら、君が我に失望したら、それこそ身が引き裂かれそうになる」

 神様は完全に取り乱している。
 どうすればいいんだろう。

「それだけ、我は自分を見失いそうになるくらい、君しか見えなくなってしまっている。でも」

 え? ええ?
 こ、ここ、これって、まさかの、まさかっ!?

「我は君のことが好きだ。愛しているんだ。たまらないんだ」
「神様……」
「最初は君に同情した。世話になった一族の末裔だから、情けをかけた。神としての役目を果たして、君たちを元に戻せば役目は終わる。そう思っていた」

 私の手を、そして顔をじっと見つめながら、神様は訴えてくる。

「だが、我は神としての役割以上に、愛を知ってしまった」
「愛……」
「我は君を愛している。一緒にいたい。だが、それは君を縛る行為でもある。もし君が我を受け入れてくれるのであれば、君は人間ではなくなるからだ」

 人間では、なくなる。

「神と交われば、必然的に神の力を宿す。そうなれば……君は元の土地へは戻れない。この先、家族を取り戻したとしても……ずっと一緒にはいられない」

 ああ、そうか。
 神様は、私の先のことまでずっと考えて、悩んでいたんだ。心配していたんだ。
 私が家族を失った悲しみを抱えていて、何もかも壊された過去を抱えていて、傷だらけだから。

 それでも、私のことが好きなんだ。

 とくん。
 と、胸が高鳴る。
 私だって、私だって。

「私だって……神様のこと、好きです」
「セレス?」
「みすぼらしくて、汚いだけで、何もない、何もかもなくしてしまった私を助けてくださって、ずっと優しく寄り添ってくださって、家族まで取り戻そうと頑張ってくださって。何もかも、私を助けるために」

 ああ、胸が、思いが止まらない。
 たまらなくなって、私は神様の肩に頭をこつん、とぶつけた。

「私だって、神様のこと、旦那様だったらどれだけいいだろうって……」
「セレスっ」

 神様は我慢の限界がきたのか、私を強く抱きしめた。
 温かい。熱いくらい。

「私は、もう覚悟なんて出来ています。神様……」
「セレス……ありがとう、ありがとう」

 神様はゆっくりと離れて、泣きそうな顔を浮かべていた。
 ああ、なんて愛おしいんだろう。
 私は今、最高の幸せを手にしたのだ。


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