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13.またやりやがったあのテイマー!
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あれ?
ぴょこぴょこと俺のすぐ後ろをイエローなスライムがついてきているんだ。
ま、まあ。来るなら来るで問題ないさ。ぷにぷにして可愛いし!
ファイアバードも相変わらずリュックの上に乗っかったままだし、古代遺跡の地下にいながらピクニックでもしている気分になってきたぞ。
元々動物が大好きな俺としては大歓迎ではあるのだけど、スライムとファイアバードが怪我しないか心配ではある。
「ま、アルトたちが前にいるし、いきなりこちらに火の粉が飛んでくることもないか」
ふふんと鼻をならし、頭の後ろで腕を組もうとしたらファイアバードに引っかかる。
こ、こいつ。逃げるどころか俺の腕を押し返してきやがった。ふてぶてしいやつだな……。
リュックの上はお前の巣じゃあないんだぞ。
呑気な俺の気持ちを打ち払うかのようにギンロウの低い唸り声が耳に届く。
「グルルル」
ギンロウは首を下にさげ、警戒を露わにしている。
一方でロッソも歩みをとめ、長い舌で前方を指し示す。
階段を降りてからは真っ直ぐの回廊になっており、あと三十メートルほどで広間に出る。
アルトたちは広場をもうすぐ抜けようというところだ。
『来ル』
ロッソの声と重なるように床が震える!
ゴゴゴゴゴ!
物凄い轟音が鳴り響き、大広間の床が割れた。
「う、うお」
割れた床から錆びついた鉄の角が姿を現し、更に床が割れ中から角兜をかぶった顔が出てくる。
顔といっても初期のポリゴンみたいなのっぺりした彫像みたいな感じだ。
顔だけだが、全長3メートルくらいと古いシューティングゲームのボスキャラかよって思ってしまった。
実物を見た事はないけど、分かりやすい特徴からあの大理石の石像はフェイスで間違いない。
え? えらく余裕じゃないかって?
うん。矢面に立つのは俺たちじゃないからさ。
後ろを突かれたアルトたちだったが、派手な出現をしたために彼らの準備も整った。
そんなわけで、準備が整ったアルトたちとポリゴンフェイスの戦いが開始されたわけである。
口火を切ったのは近接戦士の男だった。
えいやとばかりに真っ直ぐにフェイスの額に向け剣を振り下ろす。
ところが、カアアアアンと派手な音を立て、剣は弾き返されてしまう。
いきなり行くとは勇気あるというか何というか……事前に強敵だって聞かされていたんだろうに。
いや、あれか。一押ししてみて相手の実力を測るってやつだな。うん。
でもアルトを含めた他のパーティメンバーは何かするわけでもなく戦士の様子を見守っているだけだぞ……。
アルトよ、立派な騎竜は飾りなのか。
ギンロウを捨てて、彼が次に従属させたのは馬より小回りがきいてタフな緑色のゴツゴツした鱗を持つ小型の竜だった。
俺の感覚では竜というより恐竜に近い。二足歩行をして、手が短い尻尾と首で振り子のようにバランスをとって走るタイプの恐竜にそっくりなんだよね。
対するフェイスは不動。地面から僅かに浮いた状態のままだ。
「深淵なる大地の底より吹きあがれ。ヘルファイア!」
お次は魔法使いの女が杖を振る。名前は確か……えっと。まあいい。
杖から赤黒い炎が噴き出し、フェイスに直撃する!
だが、地獄の業火もフェイスの表面さえ焦がすことができなかった。
茫然とするアルト以外のパーティメンバー。
その隙にフェイスの体全体がビカビカと光る。
次の瞬間、フェイスから見えない衝撃波が奴の体を中心として放射状に放たれた!
地面が物凄い音を立てアルトたちに衝撃波が迫る。
「ドラゴニュート、ブレスだ!」
「ぐ……月の女神アルテアに願う。ムーンフェンス!」
素早く後ろに下がり前を向いた戦士の後ろから彼を避けるようにして炎のブレスが奔る。
続いて、彼の目前に月の光でできたカーテンが降り注いだ。
ブレスで勢いを弱めた衝撃波は光のカーテンによって完全に消滅する。
連携もちゃんとできるのなら、最初からやればいいのに……。
「仕方ない。全員でかかるぞ!」
アルトの掛け声に他の三人が頷きを返す。
ようやく全員でかかるべき相手だと判断した彼らは、先頭に戦士が立ち背負ったままだった大楯を構える。
彼の両脇を騎竜とアルトが控えて、最後尾に魔法使いの女ともう一人の男……さっき神に祈りを捧げていた奴が並ぶ。
あれが彼らの本気の隊列ってやつだな。
騎竜は大柄で尻尾やブレスと戦士の男を挟んでいても攻撃が届く。アルトはこの前使っていた鞭でも使うのだろうか。自ら肉弾戦を挑むテイマーは珍しいけど、いないわけじゃあない。多いのは補助魔法や強化魔力を使うテイマーで、他には回復魔法や弓ってのもいる。
これらは獣魔をサポートすることを想定した戦い方だな。一方でアルトは獣魔と共に戦う脳筋スタイルってところ。
アルトたちが隊列を組み替えている間にもフェイスの次撃が彼らに襲いかかってくる。今回も衝撃波だけど扇型だった。
恐らく先ほどの円形より幅が狭まった分、威力がある。
これに対し、彼らはムーンフェンスと戦士の大楯で凌ぐ。
次に動いたのは魔法使いの女だった。
「ストレングス、エンチャントウェポン」
彼女の力ある言葉に応じ、二つの魔法が発動する。
アルト、戦士の体を赤色のオーラが包み込みすぐに消える。
更に戦士の剣、アルトがいつのまにか構えた鞭がぼんやりとした白い光を放つ。
発動の様子からして強化魔法だな。魔法のことは余り詳しくないんだ……。
「うおおおお!」
「ふん!」
アルトと戦士が同時にフェイスの額を狙う。
お、おお。上手い。
斜め十字になるように時間差で切りつけた!
今度は浅いけど傷がついている。
騎竜は放置なのか?
入って日が浅いので連携に難ありだからかな。
めぐるましく攻勢が変わっていく。フェイスの衝撃波のタイミングを見極め、全力で防御。隙をみて斬りつける。
シンプルだけど確実で悪くない手だ。あとはどちらの魔力が先に尽きるかの勝負という持久戦になってきた。
――ウオオオオオ!
突如フェイスの口がパカリと開き、野太い男の吠え声がこだまする。
ゴゴゴゴゴゴ。
ま、まさか。
ボコボコと床が盛り上がると共に轟音が鳴り響く。
それも二箇所だ!
床から先ほど見たのと同じ錆が浮いた鉄製の角が姿を現す。
これを見たアルトらは対峙するフェイスへ向け一気呵成に攻撃を加えるが、大きな傷をつけたものの奴は倒れることはなかった。
それどころか体を震わし、衝撃波を放つ準備態勢に入る。
更に床から完全に姿を現した新たなフェイス二体も同様に体を震わせ始めたのだ。
「ち、ちいい! ドラゴニュート」
そう言って舌打ちしたアルトはドラゴニュートの腹を蹴り、彼を戦士の前に行けと顎で指示を出す。
待て!
騎竜ことドラゴニュートはアルトたちの足を引っ張るどころか、大活躍していたじゃないか。
それを……結局アルトは獣魔を道具としてしか見ていないってことだったんだな。
役に立たぬ道具は必要じゃないから捨てる。道具だから死地であっても壁にする。
俺はまた勘違いをしていたようだ。彼のことを。
強さに対してある種のストイックさを持つ彼は、使えぬと冷酷な判断をしてギンロウを放逐したのだと思っていた。いや、そう思いたかったのかもしれない。
だけど、こいつは単に獣魔を使い捨ての道具と見るいけ好かない奴だった。
いっそこのまま全員ここで二度と動かぬ躯にでもなればいいなんて昏い気持ちがもたげてくる。
……だけど、ドラゴニュートを見捨てることが俺にはできない。
彼もギンロウと同じように「従属の権利書」でいいように操っているはず。
でなきゃ、「死ね」という命令に対し獣魔が躊躇なく従うわけがないだろう。
「ギンロウ。ロッソ。介入するぞ!」
「うおおおん」
『面倒くさイ。だが、あの竜を放っておくわけにはいかないカ』
もう衝撃波がドラゴニュートを襲うまで幾ばくも無い。
ギンロウは弾かれたように加速すると目にも留まらぬ速度で広場に躍り出る。
ぴょこぴょこと俺のすぐ後ろをイエローなスライムがついてきているんだ。
ま、まあ。来るなら来るで問題ないさ。ぷにぷにして可愛いし!
ファイアバードも相変わらずリュックの上に乗っかったままだし、古代遺跡の地下にいながらピクニックでもしている気分になってきたぞ。
元々動物が大好きな俺としては大歓迎ではあるのだけど、スライムとファイアバードが怪我しないか心配ではある。
「ま、アルトたちが前にいるし、いきなりこちらに火の粉が飛んでくることもないか」
ふふんと鼻をならし、頭の後ろで腕を組もうとしたらファイアバードに引っかかる。
こ、こいつ。逃げるどころか俺の腕を押し返してきやがった。ふてぶてしいやつだな……。
リュックの上はお前の巣じゃあないんだぞ。
呑気な俺の気持ちを打ち払うかのようにギンロウの低い唸り声が耳に届く。
「グルルル」
ギンロウは首を下にさげ、警戒を露わにしている。
一方でロッソも歩みをとめ、長い舌で前方を指し示す。
階段を降りてからは真っ直ぐの回廊になっており、あと三十メートルほどで広間に出る。
アルトたちは広場をもうすぐ抜けようというところだ。
『来ル』
ロッソの声と重なるように床が震える!
ゴゴゴゴゴ!
物凄い轟音が鳴り響き、大広間の床が割れた。
「う、うお」
割れた床から錆びついた鉄の角が姿を現し、更に床が割れ中から角兜をかぶった顔が出てくる。
顔といっても初期のポリゴンみたいなのっぺりした彫像みたいな感じだ。
顔だけだが、全長3メートルくらいと古いシューティングゲームのボスキャラかよって思ってしまった。
実物を見た事はないけど、分かりやすい特徴からあの大理石の石像はフェイスで間違いない。
え? えらく余裕じゃないかって?
うん。矢面に立つのは俺たちじゃないからさ。
後ろを突かれたアルトたちだったが、派手な出現をしたために彼らの準備も整った。
そんなわけで、準備が整ったアルトたちとポリゴンフェイスの戦いが開始されたわけである。
口火を切ったのは近接戦士の男だった。
えいやとばかりに真っ直ぐにフェイスの額に向け剣を振り下ろす。
ところが、カアアアアンと派手な音を立て、剣は弾き返されてしまう。
いきなり行くとは勇気あるというか何というか……事前に強敵だって聞かされていたんだろうに。
いや、あれか。一押ししてみて相手の実力を測るってやつだな。うん。
でもアルトを含めた他のパーティメンバーは何かするわけでもなく戦士の様子を見守っているだけだぞ……。
アルトよ、立派な騎竜は飾りなのか。
ギンロウを捨てて、彼が次に従属させたのは馬より小回りがきいてタフな緑色のゴツゴツした鱗を持つ小型の竜だった。
俺の感覚では竜というより恐竜に近い。二足歩行をして、手が短い尻尾と首で振り子のようにバランスをとって走るタイプの恐竜にそっくりなんだよね。
対するフェイスは不動。地面から僅かに浮いた状態のままだ。
「深淵なる大地の底より吹きあがれ。ヘルファイア!」
お次は魔法使いの女が杖を振る。名前は確か……えっと。まあいい。
杖から赤黒い炎が噴き出し、フェイスに直撃する!
だが、地獄の業火もフェイスの表面さえ焦がすことができなかった。
茫然とするアルト以外のパーティメンバー。
その隙にフェイスの体全体がビカビカと光る。
次の瞬間、フェイスから見えない衝撃波が奴の体を中心として放射状に放たれた!
地面が物凄い音を立てアルトたちに衝撃波が迫る。
「ドラゴニュート、ブレスだ!」
「ぐ……月の女神アルテアに願う。ムーンフェンス!」
素早く後ろに下がり前を向いた戦士の後ろから彼を避けるようにして炎のブレスが奔る。
続いて、彼の目前に月の光でできたカーテンが降り注いだ。
ブレスで勢いを弱めた衝撃波は光のカーテンによって完全に消滅する。
連携もちゃんとできるのなら、最初からやればいいのに……。
「仕方ない。全員でかかるぞ!」
アルトの掛け声に他の三人が頷きを返す。
ようやく全員でかかるべき相手だと判断した彼らは、先頭に戦士が立ち背負ったままだった大楯を構える。
彼の両脇を騎竜とアルトが控えて、最後尾に魔法使いの女ともう一人の男……さっき神に祈りを捧げていた奴が並ぶ。
あれが彼らの本気の隊列ってやつだな。
騎竜は大柄で尻尾やブレスと戦士の男を挟んでいても攻撃が届く。アルトはこの前使っていた鞭でも使うのだろうか。自ら肉弾戦を挑むテイマーは珍しいけど、いないわけじゃあない。多いのは補助魔法や強化魔力を使うテイマーで、他には回復魔法や弓ってのもいる。
これらは獣魔をサポートすることを想定した戦い方だな。一方でアルトは獣魔と共に戦う脳筋スタイルってところ。
アルトたちが隊列を組み替えている間にもフェイスの次撃が彼らに襲いかかってくる。今回も衝撃波だけど扇型だった。
恐らく先ほどの円形より幅が狭まった分、威力がある。
これに対し、彼らはムーンフェンスと戦士の大楯で凌ぐ。
次に動いたのは魔法使いの女だった。
「ストレングス、エンチャントウェポン」
彼女の力ある言葉に応じ、二つの魔法が発動する。
アルト、戦士の体を赤色のオーラが包み込みすぐに消える。
更に戦士の剣、アルトがいつのまにか構えた鞭がぼんやりとした白い光を放つ。
発動の様子からして強化魔法だな。魔法のことは余り詳しくないんだ……。
「うおおおお!」
「ふん!」
アルトと戦士が同時にフェイスの額を狙う。
お、おお。上手い。
斜め十字になるように時間差で切りつけた!
今度は浅いけど傷がついている。
騎竜は放置なのか?
入って日が浅いので連携に難ありだからかな。
めぐるましく攻勢が変わっていく。フェイスの衝撃波のタイミングを見極め、全力で防御。隙をみて斬りつける。
シンプルだけど確実で悪くない手だ。あとはどちらの魔力が先に尽きるかの勝負という持久戦になってきた。
――ウオオオオオ!
突如フェイスの口がパカリと開き、野太い男の吠え声がこだまする。
ゴゴゴゴゴゴ。
ま、まさか。
ボコボコと床が盛り上がると共に轟音が鳴り響く。
それも二箇所だ!
床から先ほど見たのと同じ錆が浮いた鉄製の角が姿を現す。
これを見たアルトらは対峙するフェイスへ向け一気呵成に攻撃を加えるが、大きな傷をつけたものの奴は倒れることはなかった。
それどころか体を震わし、衝撃波を放つ準備態勢に入る。
更に床から完全に姿を現した新たなフェイス二体も同様に体を震わせ始めたのだ。
「ち、ちいい! ドラゴニュート」
そう言って舌打ちしたアルトはドラゴニュートの腹を蹴り、彼を戦士の前に行けと顎で指示を出す。
待て!
騎竜ことドラゴニュートはアルトたちの足を引っ張るどころか、大活躍していたじゃないか。
それを……結局アルトは獣魔を道具としてしか見ていないってことだったんだな。
役に立たぬ道具は必要じゃないから捨てる。道具だから死地であっても壁にする。
俺はまた勘違いをしていたようだ。彼のことを。
強さに対してある種のストイックさを持つ彼は、使えぬと冷酷な判断をしてギンロウを放逐したのだと思っていた。いや、そう思いたかったのかもしれない。
だけど、こいつは単に獣魔を使い捨ての道具と見るいけ好かない奴だった。
いっそこのまま全員ここで二度と動かぬ躯にでもなればいいなんて昏い気持ちがもたげてくる。
……だけど、ドラゴニュートを見捨てることが俺にはできない。
彼もギンロウと同じように「従属の権利書」でいいように操っているはず。
でなきゃ、「死ね」という命令に対し獣魔が躊躇なく従うわけがないだろう。
「ギンロウ。ロッソ。介入するぞ!」
「うおおおん」
『面倒くさイ。だが、あの竜を放っておくわけにはいかないカ』
もう衝撃波がドラゴニュートを襲うまで幾ばくも無い。
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