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5.男児三日会わずは
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三日目の朝――。
無人島生活三日目を迎えることができた。正直なところ、ここが島なのかは自分で確かめたわけじゃない。
指南書に島だって書かれていたから、まあそうなんだろうなと思っている。
今のところ、指南書に書かれていた内容は全て真実だった。このことから島だということも間違っていないんじゃないかというわけである。
ここでの生活にはまだまだ慣れていない。まだ生活基盤を整えたわけじゃないので、不安はあるけどきっと何とかなる。
変な自信だけど、何となくそう思ったんだ。
心強くも可愛らしい相棒もいることだしさ。
クルミを鼻先でつっつきながら小刻みに口を動かすカピーの額を撫でる。
自分が触れても彼は食べることを止めず、あっという間に用意したクルミがなくなってしまった。
「まだ食べるかな」
「きゅっ」
どうやらもういいらしい。カピーはてこてこ歩いてヤカンに入った水に鼻を突っ込む。
くすりと笑い、鼻をこすりつつ立ち上がる。
「カピー。出かけてくるよ」
握りしめた竹竿を彼に向け微笑む。
あ、その前にっと。
昨日から干していた葦の束を手に取り籠をイメージする。
すると今度は手が緑に光り、葦の束がみるみるうちに籠へと変わった。
よおっし、今日はこの籠を魚で一杯にしてやるぞ。
籠を腰からぶら下げ、竹竿を上に掲げる。
反対側の手にヤカンを持つことも忘れていないぜ。脱水症状は怖いからね。
◇◇◇
小屋から浜辺に出て海岸沿いを少し歩くと岩場に変わる。
ちょうど探していた緩やかな岩礁地帯になっていて、他の場所を探さずここで釣りをすることを決めた。
探索はいつでもできる。釣りをするならなるべく小屋まで近い方がいいし、思い描いていた場所に近い地形だから他を探す理由がないのだ。
決して面倒だからとかそう言う理由はないよ。
余裕が出来たら高台とか切り立った崖に打ち付ける波とかも見てみたいな。この島にそんな風景があるのかを調べるだけでもワクワクしてくる。
岩に足をとられないよう注意して、足先をあげおろし足元の具合を確かめた。よし。これなら大丈夫そうだ。
竹竿を両手で握り、ぶんと勢いをつけて振る。
両手が青色の光を放ち、しゅるしゅると糸が「伸びた」!
糸の長さはせいぜい2メートルくらいしかないというのに目測で3メートル先に浮きが着水する。
釣りの特性すげえ! これなら釣りをやったことのない僕でも何とかなりそうだ。
「あ、餌を用意しなきゃいけないんだっけか」
いくらなんでも釣り針に何も餌をつけないまま投げ込んでも魚はつれないよね。
ところが、竹竿を引くとグイグイと何かが引っかかった感じがする。
力を込めて引っ張ると濃い緑色の植物らしきものが取れた。
水気を切って海の書に触れさせてみたら、ワカメだと分かる。
記念すべき最初の釣果はワカメかあ。食べることもできるし、出汁にもなる。
もっとも、釣らなくても拾えばいいって話だけど、それは言いっこなしだ。
次もあえて餌をつけずにそのまま竹竿を振るってみた。
5秒もしないうちに反応があり、引き上げる。
グロテスクな芋虫みたいなのが取れた。ナマコらしい。
これはひょっとして……。三度目の挑戦。もちろん餌無しで。
「お、おおお。魚だ!」
青みがかった鱗が綺麗な魚が釣れた!
サイズはかなりこじんまりしているけど……4センチくらいかな。
メジナという魚らしい。
当たり前だけど、釣りの腕が優れているからなんて微塵も思っちゃいない。
釣りの特性の力であることは明らかだ。
餌も要らずに投げ込んだらすぐに結果が分かる。
その後、回を重ねてみるが何も引っかからないことも多くなってきた。
50回くらい試行した結果、何かしら釣れたのが半分くらいってところ。
魚がかかったのは最初のメジナを含めて三匹。どれも小さい。
僕でも知っているアジという魚とアイゴというゴツゴツした魚だった。
他はワカメとかどうやって針に引っかかったか分からない小さい巻貝とか、色んなものが釣れたんだ。
変わったところでは小石なんてもの釣れたぞ。
「腕が疲れてきたけど、もう少し。どんどん飛距離が伸びているし!」
うおりゃああ。
お、おおお。20メートルくらいいったか。自分の筋力じゃあボールを投げてもこんなには飛ばない。
5つ数えてから竹竿を引く。
またワカメかよ!
「まだまだ行くぞー」
楽しくなってきて、腕の疲れなんて気にならない。
お、今度は中々の引きだ。飛距離は先ほどと同じ20メートルと少し。
こ、今度はかつてない引きの強さだ。
ま、負けるものか。
ぐぐぐっと後ろに体重をかけて引っ張ると、急に対抗する力が抜け尻餅をつきそうになってしまう。
「何だこれ……」
引き上げた物の小ささにきょとんとする。あれだけの引きだったのに、こんなものだったのか。
しかし、引き上げた物をしげしげと見つめているうちに落ちた気持ちが真逆になる。
引き上げた物は手のひらサイズの貝殻が二つ。加工が施されていて、紐が括り付けてあった。
明らかな人工物だ。海の向こうに人の住む集落とかがあるのかも!
浜辺にも漂着物がなかったし、ひょっとしたらこの世界に僕一人かもなんて不安に思っていたのだけど、いずれ誰かに会えるかもしれないぞ!
この次に釣れたのは小さなボトルだった。
小瓶と言い換えてもいいかも。中指より少し大きいくらいのサイズで中に紙片が入っていた。口はコルクで栓がされている。
これもまた人の手で作られたもので間違いない。
まだまだ人工物が引っかかるかもしれないよな。
よおっしとばかりに天をあおいだら、雲一つない晴天だった。いや、そこじゃなくて。もう昼過ぎじゃないか。
釣りに夢中でこれほど時間がたっていたとは気がつかなかったぞ。
「これで最後にしよう。頼むぞ」
両手が青色に光り、勢いよく竹竿を振る。
あ、しまった。岩に引っかかってしまったかも。
飛距離は15メートルほどで突き出た岩の裏に浮きが落ちた……と思う。
仕方なく竹竿を引くが、先ほどと似たような強い引き!
「岩だと引っ張られないよな!」
息を吐き、一息に引っ張り上げる。
今度は尻餅をついてしまう。
針にはでっかい蛇のようなまだら模様の生物がかかっていた。
海の書によるとウツボとのこと。
これも名前だけは知っている。凶悪そうな顔をしておる。食べられるみたいなので、後で捌いてやろう。
大きさは80センチ以上と今日一番の大物だった。
ヤカンに残った水を飲み干し、海水を汲んで小屋へ戻る。
釣った魚やその他のものが結構重い……。
◇◇◇
遅くなったけど、スモモとクルミに加え、ブルーベリーとコケモモ、どんぐりまで発見して拾って戻ってきた。
籠があると拾い集める効率が段違いだな。
さあて、海水を入れたヤカンはどうなったか。
簡易的に積み上げた石で作った竈に吊るしたヤカンの様子を確かめる。この竈の制作時間は石を集める時間を含めて30分もかかっていない。
採集に行く前にちょこっと作っておいたのだ。クラフトさまさまだよね。
「お、良い感じじゃないか」
枝ごとヤカンを持ち運んで、外側を手押しポンプから出た水で直接冷やす。
ちょっとばかし煮込み過ぎた。もう少し放置していたら焦げ付いて大変なことになっていたかもしれない。
ヤカンの裏面に付着した白い物体を指先に付着させペロッと舐めてみる。
「苦い! 塩って海水を蒸発させたら取れるんじゃなかったっけ」
塩にしては苦すぎるぞ。
単純に蒸発させるだけじゃダメらしい。難しいなあ、何をするにしても。
無人島生活三日目を迎えることができた。正直なところ、ここが島なのかは自分で確かめたわけじゃない。
指南書に島だって書かれていたから、まあそうなんだろうなと思っている。
今のところ、指南書に書かれていた内容は全て真実だった。このことから島だということも間違っていないんじゃないかというわけである。
ここでの生活にはまだまだ慣れていない。まだ生活基盤を整えたわけじゃないので、不安はあるけどきっと何とかなる。
変な自信だけど、何となくそう思ったんだ。
心強くも可愛らしい相棒もいることだしさ。
クルミを鼻先でつっつきながら小刻みに口を動かすカピーの額を撫でる。
自分が触れても彼は食べることを止めず、あっという間に用意したクルミがなくなってしまった。
「まだ食べるかな」
「きゅっ」
どうやらもういいらしい。カピーはてこてこ歩いてヤカンに入った水に鼻を突っ込む。
くすりと笑い、鼻をこすりつつ立ち上がる。
「カピー。出かけてくるよ」
握りしめた竹竿を彼に向け微笑む。
あ、その前にっと。
昨日から干していた葦の束を手に取り籠をイメージする。
すると今度は手が緑に光り、葦の束がみるみるうちに籠へと変わった。
よおっし、今日はこの籠を魚で一杯にしてやるぞ。
籠を腰からぶら下げ、竹竿を上に掲げる。
反対側の手にヤカンを持つことも忘れていないぜ。脱水症状は怖いからね。
◇◇◇
小屋から浜辺に出て海岸沿いを少し歩くと岩場に変わる。
ちょうど探していた緩やかな岩礁地帯になっていて、他の場所を探さずここで釣りをすることを決めた。
探索はいつでもできる。釣りをするならなるべく小屋まで近い方がいいし、思い描いていた場所に近い地形だから他を探す理由がないのだ。
決して面倒だからとかそう言う理由はないよ。
余裕が出来たら高台とか切り立った崖に打ち付ける波とかも見てみたいな。この島にそんな風景があるのかを調べるだけでもワクワクしてくる。
岩に足をとられないよう注意して、足先をあげおろし足元の具合を確かめた。よし。これなら大丈夫そうだ。
竹竿を両手で握り、ぶんと勢いをつけて振る。
両手が青色の光を放ち、しゅるしゅると糸が「伸びた」!
糸の長さはせいぜい2メートルくらいしかないというのに目測で3メートル先に浮きが着水する。
釣りの特性すげえ! これなら釣りをやったことのない僕でも何とかなりそうだ。
「あ、餌を用意しなきゃいけないんだっけか」
いくらなんでも釣り針に何も餌をつけないまま投げ込んでも魚はつれないよね。
ところが、竹竿を引くとグイグイと何かが引っかかった感じがする。
力を込めて引っ張ると濃い緑色の植物らしきものが取れた。
水気を切って海の書に触れさせてみたら、ワカメだと分かる。
記念すべき最初の釣果はワカメかあ。食べることもできるし、出汁にもなる。
もっとも、釣らなくても拾えばいいって話だけど、それは言いっこなしだ。
次もあえて餌をつけずにそのまま竹竿を振るってみた。
5秒もしないうちに反応があり、引き上げる。
グロテスクな芋虫みたいなのが取れた。ナマコらしい。
これはひょっとして……。三度目の挑戦。もちろん餌無しで。
「お、おおお。魚だ!」
青みがかった鱗が綺麗な魚が釣れた!
サイズはかなりこじんまりしているけど……4センチくらいかな。
メジナという魚らしい。
当たり前だけど、釣りの腕が優れているからなんて微塵も思っちゃいない。
釣りの特性の力であることは明らかだ。
餌も要らずに投げ込んだらすぐに結果が分かる。
その後、回を重ねてみるが何も引っかからないことも多くなってきた。
50回くらい試行した結果、何かしら釣れたのが半分くらいってところ。
魚がかかったのは最初のメジナを含めて三匹。どれも小さい。
僕でも知っているアジという魚とアイゴというゴツゴツした魚だった。
他はワカメとかどうやって針に引っかかったか分からない小さい巻貝とか、色んなものが釣れたんだ。
変わったところでは小石なんてもの釣れたぞ。
「腕が疲れてきたけど、もう少し。どんどん飛距離が伸びているし!」
うおりゃああ。
お、おおお。20メートルくらいいったか。自分の筋力じゃあボールを投げてもこんなには飛ばない。
5つ数えてから竹竿を引く。
またワカメかよ!
「まだまだ行くぞー」
楽しくなってきて、腕の疲れなんて気にならない。
お、今度は中々の引きだ。飛距離は先ほどと同じ20メートルと少し。
こ、今度はかつてない引きの強さだ。
ま、負けるものか。
ぐぐぐっと後ろに体重をかけて引っ張ると、急に対抗する力が抜け尻餅をつきそうになってしまう。
「何だこれ……」
引き上げた物の小ささにきょとんとする。あれだけの引きだったのに、こんなものだったのか。
しかし、引き上げた物をしげしげと見つめているうちに落ちた気持ちが真逆になる。
引き上げた物は手のひらサイズの貝殻が二つ。加工が施されていて、紐が括り付けてあった。
明らかな人工物だ。海の向こうに人の住む集落とかがあるのかも!
浜辺にも漂着物がなかったし、ひょっとしたらこの世界に僕一人かもなんて不安に思っていたのだけど、いずれ誰かに会えるかもしれないぞ!
この次に釣れたのは小さなボトルだった。
小瓶と言い換えてもいいかも。中指より少し大きいくらいのサイズで中に紙片が入っていた。口はコルクで栓がされている。
これもまた人の手で作られたもので間違いない。
まだまだ人工物が引っかかるかもしれないよな。
よおっしとばかりに天をあおいだら、雲一つない晴天だった。いや、そこじゃなくて。もう昼過ぎじゃないか。
釣りに夢中でこれほど時間がたっていたとは気がつかなかったぞ。
「これで最後にしよう。頼むぞ」
両手が青色に光り、勢いよく竹竿を振る。
あ、しまった。岩に引っかかってしまったかも。
飛距離は15メートルほどで突き出た岩の裏に浮きが落ちた……と思う。
仕方なく竹竿を引くが、先ほどと似たような強い引き!
「岩だと引っ張られないよな!」
息を吐き、一息に引っ張り上げる。
今度は尻餅をついてしまう。
針にはでっかい蛇のようなまだら模様の生物がかかっていた。
海の書によるとウツボとのこと。
これも名前だけは知っている。凶悪そうな顔をしておる。食べられるみたいなので、後で捌いてやろう。
大きさは80センチ以上と今日一番の大物だった。
ヤカンに残った水を飲み干し、海水を汲んで小屋へ戻る。
釣った魚やその他のものが結構重い……。
◇◇◇
遅くなったけど、スモモとクルミに加え、ブルーベリーとコケモモ、どんぐりまで発見して拾って戻ってきた。
籠があると拾い集める効率が段違いだな。
さあて、海水を入れたヤカンはどうなったか。
簡易的に積み上げた石で作った竈に吊るしたヤカンの様子を確かめる。この竈の制作時間は石を集める時間を含めて30分もかかっていない。
採集に行く前にちょこっと作っておいたのだ。クラフトさまさまだよね。
「お、良い感じじゃないか」
枝ごとヤカンを持ち運んで、外側を手押しポンプから出た水で直接冷やす。
ちょっとばかし煮込み過ぎた。もう少し放置していたら焦げ付いて大変なことになっていたかもしれない。
ヤカンの裏面に付着した白い物体を指先に付着させペロッと舐めてみる。
「苦い! 塩って海水を蒸発させたら取れるんじゃなかったっけ」
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