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56.エピローグ
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戻って来た。
ハムスターがひまわりの種を齧っている姿に思わず頬が緩む。誰かが餌をあげてくれたのだろうか?
ベッドの上に置きっぱなしだったスマートフォンを見て、思わず声が出る。
「時間が全く進んでいない。まあ、次元を超えるんだし。俺が最後に見た光景を思い浮かべていたからその時に戻っても不思議じゃないか」
『ふむ。これがお主の世界か。狭いな』
「そら部屋の中だから狭いに決まってるだろ。って?」
『何だ。相変わらず失礼な奴だな』
チクチクと俺の脛をトゲトゲで突っついていた駄竜の尻尾を掴み上げた。
いやいや、待て。マジで待ってくれ。
つい自然な動作で駄竜の尻尾を掴んだが、有り得ない。なんで駄竜が日本の俺の部屋にいるんだ?
「へー。これがヨシタツの世界かあ」
勝手に窓を開け、外を眺めるアリアドネ。
対して、無言でカーテンをぴしゃりとしめる俺。
彼女の姿が見られたら騒ぎになるぞ。あ、でも遠目からならコスプレだと思われるか。
「すごいです。ヨシタツ様。まるで生きているような絵ですね!」
あ、やっぱりベルヴァもいたのね。
彼女は床に無造作に置きっぱなしになっていたとある本に対し感嘆の声をあげる。
「ヨシタツ様、これは何と書いているのですか? この方は女戦士なのでしょうか」
「え、あ、まあ。そうだな」
ビキニ姿のぷるるんボディな美女が悩ましい顔でこちらを見ている写真が表紙の本は、言わずと知れたコンビニのレシートに書かれていたアレだ。
皆まで言わなくても分かるよな?
誤魔化せたかなと思ったところで、更なる危機が!
「本だけじゃありません。この真っ白な紙も見たことがありません! とても精巧なのですね」
「そ、それは、触れちゃあだめだ」
カピカピになったティッシュをさささと回収し、ゴミ箱に放り込む。
その時、階下から声が!
「お兄ちゃん、テレビの音量をもう少し落としてくれない?」
「あ、ああ。うん」
妹からクレームが入った。幸い、テレビの音と勘違いしてくれているようだ。
しかし、このままここに留まると確実に妹がここに踏み込んでくる。
ま、マズイ。まずいぞ。一旦落ち着く時間を。
え、いや待て。
スンスンと鼻を引く付かせ食べ物を探している駄竜の角を掴む。
「ファフサラス。どうやってここに?」
「簡単なことよ。あなたの物理が想定を遥かに上回っていたからよ。戻るのにもあなたの力が必要だけど」
彼に代わりアリアドネがこたえてくれた。
「俺がいなかったらどうするんだよ……って。俺は戻って来たじゃないか。だったら、力も元に戻ってんじゃないの?」
「戻るというのがよくわからないけど。あなたが得たものを失わせるなんてどうやるの?」
できれば隠しておきたかったムフフな本に手をやり、呟く。
「収納」
本が消えた。アイテムボックスの中に入った、で間違いない。
リストを表示させてみると、リストが見えるし。日本にいるというのにアイテムボックスの力は失われていない。
「な、何てことだ……力があるのはいいけど、過ぎたるはってやつだぞこれ」
今の俺はデコピン一発で家を崩壊させるほどのパワーを持っている。何かのきっかけでつい力を入れてしまったら大惨事になることは想像に難くない。
いや、力加減よりもし俺が電車にぶつかったりする事故に遭ったら、の方を気にすべきか。事故には気をつけような。
『戻るか?』
「そんなにすぐ魔力が溜まるものなのか?」
『アリアドネの術式は物理に多くを頼るものとなっているのだ。我らの使う魔力はぐっすり寝れば回復する程度だな。一日に三度くらいなら使うことができる』
「な、何だと……じゃ、じゃあ。一旦戻る」
『お主はお人好しが過ぎるぞ。我が真実を語っていないかもしれぬぞ?』
「そんなことはない。お前は真実しか言わないさ。こと『強さが関わること』には特にな」
『ぬうう』
駄竜が拗ねて机の下に潜ってしまった。
「アリアドネ、ベルヴァさん、一旦、戻ろう」
「分かったわ。ファフサラス。次元の扉の魔法を使うわよ。出てきて」
『行くのか』
駄竜が椅子の間から顔を覗かせる。
やっとやる気になってくれた様子だ。
「はやくしてくれ。階段を登って来る音がする」
黒い球体を思いっきり叩き、弾けたところをくぐる。
「ちょっとお兄ちゃん。あれ?」
という妹の声が聞こえた気がした。
日本と異世界を自由に行き来できるようになった俺たちの冒険は新たなステージを迎える。
さあて、まずは何をするかなあ。日本で仕事もしないといけないけど……いや、異世界の方で遊び尽くし、そうなると突然歳を取ることになってしまうか。
悩みが尽きないが、楽しい明日を想像した俺の頬は自然と緩むのだった。
おしまい
ハムスターがひまわりの種を齧っている姿に思わず頬が緩む。誰かが餌をあげてくれたのだろうか?
ベッドの上に置きっぱなしだったスマートフォンを見て、思わず声が出る。
「時間が全く進んでいない。まあ、次元を超えるんだし。俺が最後に見た光景を思い浮かべていたからその時に戻っても不思議じゃないか」
『ふむ。これがお主の世界か。狭いな』
「そら部屋の中だから狭いに決まってるだろ。って?」
『何だ。相変わらず失礼な奴だな』
チクチクと俺の脛をトゲトゲで突っついていた駄竜の尻尾を掴み上げた。
いやいや、待て。マジで待ってくれ。
つい自然な動作で駄竜の尻尾を掴んだが、有り得ない。なんで駄竜が日本の俺の部屋にいるんだ?
「へー。これがヨシタツの世界かあ」
勝手に窓を開け、外を眺めるアリアドネ。
対して、無言でカーテンをぴしゃりとしめる俺。
彼女の姿が見られたら騒ぎになるぞ。あ、でも遠目からならコスプレだと思われるか。
「すごいです。ヨシタツ様。まるで生きているような絵ですね!」
あ、やっぱりベルヴァもいたのね。
彼女は床に無造作に置きっぱなしになっていたとある本に対し感嘆の声をあげる。
「ヨシタツ様、これは何と書いているのですか? この方は女戦士なのでしょうか」
「え、あ、まあ。そうだな」
ビキニ姿のぷるるんボディな美女が悩ましい顔でこちらを見ている写真が表紙の本は、言わずと知れたコンビニのレシートに書かれていたアレだ。
皆まで言わなくても分かるよな?
誤魔化せたかなと思ったところで、更なる危機が!
「本だけじゃありません。この真っ白な紙も見たことがありません! とても精巧なのですね」
「そ、それは、触れちゃあだめだ」
カピカピになったティッシュをさささと回収し、ゴミ箱に放り込む。
その時、階下から声が!
「お兄ちゃん、テレビの音量をもう少し落としてくれない?」
「あ、ああ。うん」
妹からクレームが入った。幸い、テレビの音と勘違いしてくれているようだ。
しかし、このままここに留まると確実に妹がここに踏み込んでくる。
ま、マズイ。まずいぞ。一旦落ち着く時間を。
え、いや待て。
スンスンと鼻を引く付かせ食べ物を探している駄竜の角を掴む。
「ファフサラス。どうやってここに?」
「簡単なことよ。あなたの物理が想定を遥かに上回っていたからよ。戻るのにもあなたの力が必要だけど」
彼に代わりアリアドネがこたえてくれた。
「俺がいなかったらどうするんだよ……って。俺は戻って来たじゃないか。だったら、力も元に戻ってんじゃないの?」
「戻るというのがよくわからないけど。あなたが得たものを失わせるなんてどうやるの?」
できれば隠しておきたかったムフフな本に手をやり、呟く。
「収納」
本が消えた。アイテムボックスの中に入った、で間違いない。
リストを表示させてみると、リストが見えるし。日本にいるというのにアイテムボックスの力は失われていない。
「な、何てことだ……力があるのはいいけど、過ぎたるはってやつだぞこれ」
今の俺はデコピン一発で家を崩壊させるほどのパワーを持っている。何かのきっかけでつい力を入れてしまったら大惨事になることは想像に難くない。
いや、力加減よりもし俺が電車にぶつかったりする事故に遭ったら、の方を気にすべきか。事故には気をつけような。
『戻るか?』
「そんなにすぐ魔力が溜まるものなのか?」
『アリアドネの術式は物理に多くを頼るものとなっているのだ。我らの使う魔力はぐっすり寝れば回復する程度だな。一日に三度くらいなら使うことができる』
「な、何だと……じゃ、じゃあ。一旦戻る」
『お主はお人好しが過ぎるぞ。我が真実を語っていないかもしれぬぞ?』
「そんなことはない。お前は真実しか言わないさ。こと『強さが関わること』には特にな」
『ぬうう』
駄竜が拗ねて机の下に潜ってしまった。
「アリアドネ、ベルヴァさん、一旦、戻ろう」
「分かったわ。ファフサラス。次元の扉の魔法を使うわよ。出てきて」
『行くのか』
駄竜が椅子の間から顔を覗かせる。
やっとやる気になってくれた様子だ。
「はやくしてくれ。階段を登って来る音がする」
黒い球体を思いっきり叩き、弾けたところをくぐる。
「ちょっとお兄ちゃん。あれ?」
という妹の声が聞こえた気がした。
日本と異世界を自由に行き来できるようになった俺たちの冒険は新たなステージを迎える。
さあて、まずは何をするかなあ。日本で仕事もしないといけないけど……いや、異世界の方で遊び尽くし、そうなると突然歳を取ることになってしまうか。
悩みが尽きないが、楽しい明日を想像した俺の頬は自然と緩むのだった。
おしまい
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