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69.ポーランド分割 過去
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――東京 帝国天文台 叶健太郎
宇宙が大好きな叶健太郎は先月設立されたばかりの帝国天文台に来ていた。帝国天文台は天文学を研究する国立の施設で、施設内に巨大天体望遠鏡が設置されている。
叶健太郎は帝国天文台へ取材許可をもらう際に巨大天体望遠鏡を見せてもらうことも忘れずに依頼していた。その結果、実際に巨大天体望遠鏡を覗かせてくれることになったのだ。
珍しくワクワクソワソワしながら、帝国天文台へ取材に行った叶健太郎を帝国天文台にいた帝国大学の教授が直接迎え入れてくれる。
「本日はよろしくお願いします」
叶健太郎は教授へ丁寧なお辞儀を行い、彼と握手をする。
「叶さん。いつもあなたのエッセイを読んでますよ。宇宙に興味がおありなことも存じ上げてます」
教授はにこやかに叶健太郎へ告げると、叶健太郎は照れからか頭をぼりぼりと掻きむしる。
「教授のような方が読んでくださってるとは恐縮です」
「大学の先生方の中にはあなたのファンは割にいるんですよ」
リップサービスか本気なのか教授の気さくな態度に少しドギマギした叶健太郎であったが、すぐにいつもの調子に戻る。
「巨大天体望遠鏡を見せていただけますか?」
「分かりました。では先に望遠鏡のところへ行きましょうか」
教授に連れられて望遠鏡がある施設にまでいくと、叶健太郎の目に巨大望遠鏡が映る。
「おおお! これはすごい!」
望遠鏡の余りの大きさに叶健太郎は感嘆の声をあげる。
「技術が進歩すればもっと遠くまで見えるようになりますよ」
「生きているうちにこれより凄い望遠鏡を見てみたいものですよ」
教授の言葉にも叶健太郎は望遠鏡から目を離さず彼に答えた。ああ、取材を忘れるところだった……叶健太郎はようやく取材を始めるのだった。
望遠鏡の取材を一通り終えた後、二人は歓談室でコーヒーに口をつけていた。
「教授が天文学以外で注目している技術ってあるんですか?」
叶の質問に教授は即答する。
「一番注目しているのはトランジスタです。1925年、1934年に特許は出されていますが実用化までにはまだハードルが高そうですが」
「トランジスタってどんなものなんですか?」
叶健太郎の問に教授はトランジスタのすばらしさを語ってくれるが、彼には半分も理解できなかった。しかし、叶健太郎は教授が注目する技術だからきっと幅広い分野で応用が利く技術なんだろうなということだけは読み取ったのだった。
時代を変える技術……トランジスタか。興味深い。次は教授の教えてくれた「三極鉱石」なるものの取材に行こうかと心に誓う叶健太郎なのであった。
――磯銀新聞
どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリの磯銀新聞だぜ! 今回もエッセイストの叶健太郎が執筆するぜ! 街頭テレビはすごい人だかりだな。スポーツ中継が人気みたいで、試合がはじまるとものすごい人だかりになるよなあ。
夜に開催するボクシングとか大人気だよ。俺? 俺はサッカーが好きだなあ。え? 人気スポーツじゃないじゃないかって? いやいや。サッカーは絶対人気スポーツになるって。スピード感がいいんだよ。スピード感といえば、来年から自動車レースが開催されるようだぜ。
三重県の鈴鹿にレース場を作って自動車メーカーが自慢のレースカーを持ち寄ってスピードを競い合う競技だ。これも楽しみだなあ。自動車も普及して身近な乗り物になってきたし、スピードの追求も面白いよな。
欧州で起こっている戦争はとても複雑になってきているよな。西プロイセンから撤退したポーランド軍は本隊と合流し再編成を行う。そして再び激突するポーランドとドイツ。ドイツはポーランド国内での戦いとなったためか遠慮なく航空機による空爆を実施し、航空支援を受けたドイツ機甲師団はポーランド騎兵では相手にならなかった。
敗れたポーランド軍はさらに奥へと逃げ込んでいくが、ここで背後から思わぬ敵が出現したんだ。
背後から襲い掛かった敵はポーランドと不可侵条約を結んだソ連だった。ソ連赤軍はポーランド軍がたいしたことが無いと判断したのかポーランド北西部から進撃を開始する。不可侵条約を結んだはずのソ連から不意打ちを受けたポーランド軍はドイツとソ連に東西から挟まれる形になり苦境に立たされる。
こうなればソ連とドイツによるポーランド占領地の陣取り合戦だ。数で劣るドイツにオーストリア連邦が助け舟を出しポーランドの占領を進めていく。オーストリア連邦がポーランドへ進撃してから間もなくポーランド軍は壊滅したんだ。
オーストリア連邦の助けが功を奏したドイツはポーランドのおよそ三分の二を占領下に置いた。ソ連占領地とドイツ、オーストリア連邦占領地はワルシャワを境界とし、北西部がソ連、それ以外が独墺の占領地となった。
ポーランド政府はワルシャワから第二の都市クラクフへ移動し、ドイツと講和条約を結ぶ。クラクフで行われた和平条約でドイツ領西プロイセンはドイツ領の確認が行われポーランドがそれを了承する。また、共産党勢力へポーランドは独墺と共に対応に当たることを取り決めた。
一方のソ連占領地域はソ連が自国へと取り込み、ビャウィストクを州都とするポドラシェ州となる。
ドイツとフランスベルギーの戦いに場所を移すぜ。日本の海上封鎖がベルギーにまで及び、日本海軍はベルギー沿岸部を威嚇する。この結果、フランスとベルギーは日本の海上封鎖下に置かれることになった。
陸での戦いは一進一退の攻防が続いていたが、ポーランドとの戦いを終えたドイツ陸軍の半数がフランスベルギー戦線へ投入されるとドイツが優勢になってくる。
日本に制海権を握られていることもあり、フランスでは厭戦気分が高まっておりこのまま講和に傾きそうな勢いだな。ベルギーは小国の為、戦争を続ける体力も余りないからフランス、ベルギーとドイツの戦いは近く終結すると思うぜ。
東欧での戦いも収束に向かっている。ブルガリアの共産党革命軍と彼らに支援を行ったルーマニアはトルコの支援を受けたブルガリア政府軍に対し圧倒的に不利な立場に陥った為、ソ連赤軍へ救援を求めたがソ連は動かず、ブルガリアは政府軍の勝利で幕を閉じた。
ソ連はポーランドを侵略していたから手が回らなかったのか、トルコと事を構えるのを嫌がったのかは不明だ。いずれにしろブルガリアは共産圏にならず内戦が終わり、ルーマニアはブルガリアから手を引いた。
まとめると、ポーランドはソ連に領土の三分の一を奪われ、ドイツと講和する。ドイツとフランス、ベルギーの戦いはフランスの厭戦気分が高まりつつあり、早期に終了する可能性が出て来た。ブルガリア内戦は政府軍の勝利で終わる。
やはり問題はソ連の動きだよな。現状最も得をしているのはソ連だ。ドイツ領東プロイセンを奪い取り、ポーランドの北西部地域を占領した。極わずかな領域とはいえ、フィンランドからも領土を割譲させた。
ソ連が次に動くとすれば、ポーランドへの侵攻かオーストリア領ガリツィア州か、それとも中央アジアや極東なのか予想はつかないが、東欧で動きがあるならすぐに来るはずだ。ソ連からするとドイツがフランスと戦争をしている間こそがチャンスだからな。
しかし、オーストリア連邦は再軍備も完了し盤石の体制で防備に当たっている。オーストリア単独でもソ連とそれなりに戦えるんじゃないかと思うんだけどなあ。
宇宙が大好きな叶健太郎は先月設立されたばかりの帝国天文台に来ていた。帝国天文台は天文学を研究する国立の施設で、施設内に巨大天体望遠鏡が設置されている。
叶健太郎は帝国天文台へ取材許可をもらう際に巨大天体望遠鏡を見せてもらうことも忘れずに依頼していた。その結果、実際に巨大天体望遠鏡を覗かせてくれることになったのだ。
珍しくワクワクソワソワしながら、帝国天文台へ取材に行った叶健太郎を帝国天文台にいた帝国大学の教授が直接迎え入れてくれる。
「本日はよろしくお願いします」
叶健太郎は教授へ丁寧なお辞儀を行い、彼と握手をする。
「叶さん。いつもあなたのエッセイを読んでますよ。宇宙に興味がおありなことも存じ上げてます」
教授はにこやかに叶健太郎へ告げると、叶健太郎は照れからか頭をぼりぼりと掻きむしる。
「教授のような方が読んでくださってるとは恐縮です」
「大学の先生方の中にはあなたのファンは割にいるんですよ」
リップサービスか本気なのか教授の気さくな態度に少しドギマギした叶健太郎であったが、すぐにいつもの調子に戻る。
「巨大天体望遠鏡を見せていただけますか?」
「分かりました。では先に望遠鏡のところへ行きましょうか」
教授に連れられて望遠鏡がある施設にまでいくと、叶健太郎の目に巨大望遠鏡が映る。
「おおお! これはすごい!」
望遠鏡の余りの大きさに叶健太郎は感嘆の声をあげる。
「技術が進歩すればもっと遠くまで見えるようになりますよ」
「生きているうちにこれより凄い望遠鏡を見てみたいものですよ」
教授の言葉にも叶健太郎は望遠鏡から目を離さず彼に答えた。ああ、取材を忘れるところだった……叶健太郎はようやく取材を始めるのだった。
望遠鏡の取材を一通り終えた後、二人は歓談室でコーヒーに口をつけていた。
「教授が天文学以外で注目している技術ってあるんですか?」
叶の質問に教授は即答する。
「一番注目しているのはトランジスタです。1925年、1934年に特許は出されていますが実用化までにはまだハードルが高そうですが」
「トランジスタってどんなものなんですか?」
叶健太郎の問に教授はトランジスタのすばらしさを語ってくれるが、彼には半分も理解できなかった。しかし、叶健太郎は教授が注目する技術だからきっと幅広い分野で応用が利く技術なんだろうなということだけは読み取ったのだった。
時代を変える技術……トランジスタか。興味深い。次は教授の教えてくれた「三極鉱石」なるものの取材に行こうかと心に誓う叶健太郎なのであった。
――磯銀新聞
どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリの磯銀新聞だぜ! 今回もエッセイストの叶健太郎が執筆するぜ! 街頭テレビはすごい人だかりだな。スポーツ中継が人気みたいで、試合がはじまるとものすごい人だかりになるよなあ。
夜に開催するボクシングとか大人気だよ。俺? 俺はサッカーが好きだなあ。え? 人気スポーツじゃないじゃないかって? いやいや。サッカーは絶対人気スポーツになるって。スピード感がいいんだよ。スピード感といえば、来年から自動車レースが開催されるようだぜ。
三重県の鈴鹿にレース場を作って自動車メーカーが自慢のレースカーを持ち寄ってスピードを競い合う競技だ。これも楽しみだなあ。自動車も普及して身近な乗り物になってきたし、スピードの追求も面白いよな。
欧州で起こっている戦争はとても複雑になってきているよな。西プロイセンから撤退したポーランド軍は本隊と合流し再編成を行う。そして再び激突するポーランドとドイツ。ドイツはポーランド国内での戦いとなったためか遠慮なく航空機による空爆を実施し、航空支援を受けたドイツ機甲師団はポーランド騎兵では相手にならなかった。
敗れたポーランド軍はさらに奥へと逃げ込んでいくが、ここで背後から思わぬ敵が出現したんだ。
背後から襲い掛かった敵はポーランドと不可侵条約を結んだソ連だった。ソ連赤軍はポーランド軍がたいしたことが無いと判断したのかポーランド北西部から進撃を開始する。不可侵条約を結んだはずのソ連から不意打ちを受けたポーランド軍はドイツとソ連に東西から挟まれる形になり苦境に立たされる。
こうなればソ連とドイツによるポーランド占領地の陣取り合戦だ。数で劣るドイツにオーストリア連邦が助け舟を出しポーランドの占領を進めていく。オーストリア連邦がポーランドへ進撃してから間もなくポーランド軍は壊滅したんだ。
オーストリア連邦の助けが功を奏したドイツはポーランドのおよそ三分の二を占領下に置いた。ソ連占領地とドイツ、オーストリア連邦占領地はワルシャワを境界とし、北西部がソ連、それ以外が独墺の占領地となった。
ポーランド政府はワルシャワから第二の都市クラクフへ移動し、ドイツと講和条約を結ぶ。クラクフで行われた和平条約でドイツ領西プロイセンはドイツ領の確認が行われポーランドがそれを了承する。また、共産党勢力へポーランドは独墺と共に対応に当たることを取り決めた。
一方のソ連占領地域はソ連が自国へと取り込み、ビャウィストクを州都とするポドラシェ州となる。
ドイツとフランスベルギーの戦いに場所を移すぜ。日本の海上封鎖がベルギーにまで及び、日本海軍はベルギー沿岸部を威嚇する。この結果、フランスとベルギーは日本の海上封鎖下に置かれることになった。
陸での戦いは一進一退の攻防が続いていたが、ポーランドとの戦いを終えたドイツ陸軍の半数がフランスベルギー戦線へ投入されるとドイツが優勢になってくる。
日本に制海権を握られていることもあり、フランスでは厭戦気分が高まっておりこのまま講和に傾きそうな勢いだな。ベルギーは小国の為、戦争を続ける体力も余りないからフランス、ベルギーとドイツの戦いは近く終結すると思うぜ。
東欧での戦いも収束に向かっている。ブルガリアの共産党革命軍と彼らに支援を行ったルーマニアはトルコの支援を受けたブルガリア政府軍に対し圧倒的に不利な立場に陥った為、ソ連赤軍へ救援を求めたがソ連は動かず、ブルガリアは政府軍の勝利で幕を閉じた。
ソ連はポーランドを侵略していたから手が回らなかったのか、トルコと事を構えるのを嫌がったのかは不明だ。いずれにしろブルガリアは共産圏にならず内戦が終わり、ルーマニアはブルガリアから手を引いた。
まとめると、ポーランドはソ連に領土の三分の一を奪われ、ドイツと講和する。ドイツとフランス、ベルギーの戦いはフランスの厭戦気分が高まりつつあり、早期に終了する可能性が出て来た。ブルガリア内戦は政府軍の勝利で終わる。
やはり問題はソ連の動きだよな。現状最も得をしているのはソ連だ。ドイツ領東プロイセンを奪い取り、ポーランドの北西部地域を占領した。極わずかな領域とはいえ、フィンランドからも領土を割譲させた。
ソ連が次に動くとすれば、ポーランドへの侵攻かオーストリア領ガリツィア州か、それとも中央アジアや極東なのか予想はつかないが、東欧で動きがあるならすぐに来るはずだ。ソ連からするとドイツがフランスと戦争をしている間こそがチャンスだからな。
しかし、オーストリア連邦は再軍備も完了し盤石の体制で防備に当たっている。オーストリア単独でもソ連とそれなりに戦えるんじゃないかと思うんだけどなあ。
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