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64.戦乱の季節 1940年 過去
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――日本 宇宙科学研究所 叶健太郎
叶健太郎は若い時から空想科学が好きだった。彼は新しい技術や未来を夢想した空想科学小説を、幼い頃からずっと追いかけてきたほどだった。それは今も変わらず叶健太郎の中にある。
少年時代に読んだ宇宙に旅立つ話が実現するかもしれないと思うとワクワクする気持ちが年甲斐もなく止まらない。宇宙科学研究所は空想科学ではなく、真剣に科学的な見地から宇宙へ行く手段を研究する組織なのだ。
宇宙科学研究所に向かう途中、1935年に宇宙科学の父と言われる旧ロシア帝国出身の教授がロシア公国で死没した時に、彼はかなりショックを受けたことを思い出していた。
宇宙科学研究所はドイツのロケット研究会のメンバーと交流を続けている。宇宙科学研究所はアメリカで酷評された液体燃料でロケットを飛ばした人物とも交流を図ろうとしたが、その人物は閉鎖的な人で日本には来てくれなかったということもあった。
叶健太郎は来日しているドイツのロケット研究会の若き天才へ取材許可を得ることができたので、本日ここまで足を運んだのだった。
予断ではあるが、宇宙科学研究所は東京からはるか遠くの種子島に設置されている。ロケットを飛ばす際の騒音がすごいらしく、こんな遠隔地になったそうだ。
叶健太郎の前に現れたドイツの天才は本当に若い。まだ三十歳にもなっていないと叶健太郎は聞いていたが、実際会ってみるとその若さに彼は驚愕する。
この青年がロケットを上空三キロまで飛ばしたというのだから驚きだ。
叶健太郎と若きドイツの天才に通訳は椅子に腰かけ、挨拶を交わす。
「はじめまして。叶さん」
「はじめまして。いやあ。本当にお若い」
叶健太郎と若き天才は硬い握手を交わし、歓談が始まる。
「本国ではロケットを三キロも上空へ飛ばしたとか」
「はい。恥ずかしながら。日本の協力があってこそですよ」
「そうなんですか」
「ええ。ドイツでは日本が研究していることと言えば割に注目されるんですよ。当初ロケット研究会は資金が非常に厳しかったんです」
なるほど。日本の研究所は採算度外視の研究内容も多々ある。一見して、金にならないと判断される研究であっても政府は出資してくれることが多い。
特に「新しい研究」や「斬新な発想」を政府は好んでいる。諸外国では奇異に見られる研究内容でも日本なら研究可能だからな……
確かに「宇宙へ行く」というのは突飛も無い話だと叶健太郎自身も思が、夢があっていいじゃないか! 俺は応援するぜと彼は心の中で応援するのだった。
「私自身、宇宙開発研究所を応援してます。私が生きているうちに人類が宇宙へ到達できればいいんですが」
「きっと、あなたが存命なうちに日独で宇宙へ進出してみせますよ」
若き天才は笑顔で自信に満ちた目を叶健太郎に向ける。
「そういえば、新エネルギー研究所の方へも顔を出していただけると聞いてますが」
「ええ。液体燃料の研究会を行っています。ロケットには液体燃料を使いますので」
「なるほど。新エネルギー開発所ももろ手をあげてあなたを歓迎したことでしょうね」
「持ち上げ過ぎですよ。叶さん」
叶健太郎と若き天才はお互いに声をあげて笑う。
新エネルギー研究所は既存エネルギーの効率化――特に電力施設には力を入れている。資源をより効率よく使うことで、コストを落とす研究をしている。それに加え、液体燃料やその他のエネルギーの研究をしている。
例えば、太陽や波からエネルギーが取得できないかとか、他にはドイツの科学者が発見した核分裂反応をエネルギーとして使えないかなどだ。
新エネルギー研究所も宇宙科学研究所に負けず劣らず、実験的要素が強い。上手くいかないことの方が多いんじゃないだろうか。
――磯銀新聞
どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリの磯銀新聞だぜ! 今回もエッセイストの叶健太郎が執筆するぜ! いやあ久しぶりに長旅をしたら、足腰に来るな。いや、運動はちゃんとしてるぞ俺。ははは。
まだだ、俺はまだ行ける! え? 整体に毎日行ってるって? んなわけあるかよ! ……週三回だよ。言わせんな恥ずかしい。
ソ連が再攻勢の為に軍をフィンランド国境へ集結させていたが、ここに来て急転直下フィンランドとソ連は休戦条約を締結した。フィンランドはカレリア地方のフィンランド湾沿いの僅かな地域の割譲を行ったが、あれほどのソ連の援軍を見せられてソ連に脅されたフィンランドは、ソ連の講和条件があまりに譲歩したものだったから逆に驚愕したそうだ。
フィンランドとあっさり停戦したソ連の思惑は推測に過ぎないが、イギリスの切り離しだろう。イギリスはフィンランドに対して支援を行っているが、ドイツ、オーストリア連邦、ポーランド、フランスへは中立宣言を行っている。今後ソ連がこれらの国と争うことになってもイギリスは出てこない。
フィンランドは日本とイギリスが支援していたので、このまま他と争うことになればイギリスが出て来る可能性があったからな。情勢を見てフィンランドから手を引いたんだろう。
相変わらず攻めるのも引くのも決断がはやいなソ連は。
フィンランドとソ連の戦いが終結し、ポーランドは西プロイセンに居座ったまま、中国大陸は中華ソビエト共和国と中華民国が睨み合ったままの不気味な静寂さを保ち1939年は終わりを迎える。
開けて1940年。静寂だった波が一気に嵐へと変貌する。
まず動いたのがフランスとベルギーだった。フランスはドイツへ数度再軍備を停止するよう要求を出したがドイツが受け入れるわけは無く、ドイツ領ラインラントへベルギーと共に進駐する。
フランスとしてはドイツに脅しをかけ譲歩を得る構えだったのだろうが、フランスとベルギーのラインラント進駐から三日後、ソ連が東プロイセンに侵攻する。
ソ連の侵攻を受けドイツはソ連へ宣戦布告を行い、対決する姿勢を見せた。この頃になるとドイツの軍備も整ってきており、対抗する力を持ちつつあったんだ。日本はドイツを支持し、ドイツへ物資の輸送及び海軍と海兵隊を引き続きドイツへ留まらせることを約束する。
これを受けて、宣戦布告無しで東プロイセンへ侵攻したソ連はドイツへ宣戦布告を行う。
ドイツは宣戦布告を行ったものの、西プロイセンにポーランド軍が控えているのと、兵数がまだ十分に整っていないこともあり東プロイセンへ兵が回せず、東プロイセンはあっさりと占領されてしまう。
さて複雑になってきたので整理しよう。なあに難しくはないさ。
ドイツはフランス、ベルギーがラインラントへ進駐。ポーランドが西プロイセンに進駐。この三か国とは戦争状態にはなっていない。ドイツは三か国に退去を求めている状況だ。
ソ連は東プロイセンに侵攻し、占領下に置いた。
ドイツを直接支援している国は日本のみだ。支持している国はイタリア、北欧諸国、トルコ、オーストリア連邦になる。アメリカとイギリスは中立を保ちつつも、ソ連に対しては非難声明を出している。
驚くことにフランスとポーランドもソ連に東プロイセンからの退去を求める声明を出しているんだ。
ものすごく混沌としているよな。この状況。
ドイツが東プロイセンに至るには西プロイセンのポーランド軍を排除しなければならない。ドイツはポーランドに対し即時西プロイセンからの撤退を求めたが、ポーランドはドイツ領西プロイセンの南側の割譲を認めなければ退去しないと拒否を繰り返す。
そうしている間にも東プロイセンはソ連によって占領統治が進む。このまま座して待っていられないドイツはポーランドに期日を定め、退去命令を出す。もし退去しない場合は実力でポーランド軍を排除するとポーランドへ通達を行う。
叶健太郎は若い時から空想科学が好きだった。彼は新しい技術や未来を夢想した空想科学小説を、幼い頃からずっと追いかけてきたほどだった。それは今も変わらず叶健太郎の中にある。
少年時代に読んだ宇宙に旅立つ話が実現するかもしれないと思うとワクワクする気持ちが年甲斐もなく止まらない。宇宙科学研究所は空想科学ではなく、真剣に科学的な見地から宇宙へ行く手段を研究する組織なのだ。
宇宙科学研究所に向かう途中、1935年に宇宙科学の父と言われる旧ロシア帝国出身の教授がロシア公国で死没した時に、彼はかなりショックを受けたことを思い出していた。
宇宙科学研究所はドイツのロケット研究会のメンバーと交流を続けている。宇宙科学研究所はアメリカで酷評された液体燃料でロケットを飛ばした人物とも交流を図ろうとしたが、その人物は閉鎖的な人で日本には来てくれなかったということもあった。
叶健太郎は来日しているドイツのロケット研究会の若き天才へ取材許可を得ることができたので、本日ここまで足を運んだのだった。
予断ではあるが、宇宙科学研究所は東京からはるか遠くの種子島に設置されている。ロケットを飛ばす際の騒音がすごいらしく、こんな遠隔地になったそうだ。
叶健太郎の前に現れたドイツの天才は本当に若い。まだ三十歳にもなっていないと叶健太郎は聞いていたが、実際会ってみるとその若さに彼は驚愕する。
この青年がロケットを上空三キロまで飛ばしたというのだから驚きだ。
叶健太郎と若きドイツの天才に通訳は椅子に腰かけ、挨拶を交わす。
「はじめまして。叶さん」
「はじめまして。いやあ。本当にお若い」
叶健太郎と若き天才は硬い握手を交わし、歓談が始まる。
「本国ではロケットを三キロも上空へ飛ばしたとか」
「はい。恥ずかしながら。日本の協力があってこそですよ」
「そうなんですか」
「ええ。ドイツでは日本が研究していることと言えば割に注目されるんですよ。当初ロケット研究会は資金が非常に厳しかったんです」
なるほど。日本の研究所は採算度外視の研究内容も多々ある。一見して、金にならないと判断される研究であっても政府は出資してくれることが多い。
特に「新しい研究」や「斬新な発想」を政府は好んでいる。諸外国では奇異に見られる研究内容でも日本なら研究可能だからな……
確かに「宇宙へ行く」というのは突飛も無い話だと叶健太郎自身も思が、夢があっていいじゃないか! 俺は応援するぜと彼は心の中で応援するのだった。
「私自身、宇宙開発研究所を応援してます。私が生きているうちに人類が宇宙へ到達できればいいんですが」
「きっと、あなたが存命なうちに日独で宇宙へ進出してみせますよ」
若き天才は笑顔で自信に満ちた目を叶健太郎に向ける。
「そういえば、新エネルギー研究所の方へも顔を出していただけると聞いてますが」
「ええ。液体燃料の研究会を行っています。ロケットには液体燃料を使いますので」
「なるほど。新エネルギー開発所ももろ手をあげてあなたを歓迎したことでしょうね」
「持ち上げ過ぎですよ。叶さん」
叶健太郎と若き天才はお互いに声をあげて笑う。
新エネルギー研究所は既存エネルギーの効率化――特に電力施設には力を入れている。資源をより効率よく使うことで、コストを落とす研究をしている。それに加え、液体燃料やその他のエネルギーの研究をしている。
例えば、太陽や波からエネルギーが取得できないかとか、他にはドイツの科学者が発見した核分裂反応をエネルギーとして使えないかなどだ。
新エネルギー研究所も宇宙科学研究所に負けず劣らず、実験的要素が強い。上手くいかないことの方が多いんじゃないだろうか。
――磯銀新聞
どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリの磯銀新聞だぜ! 今回もエッセイストの叶健太郎が執筆するぜ! いやあ久しぶりに長旅をしたら、足腰に来るな。いや、運動はちゃんとしてるぞ俺。ははは。
まだだ、俺はまだ行ける! え? 整体に毎日行ってるって? んなわけあるかよ! ……週三回だよ。言わせんな恥ずかしい。
ソ連が再攻勢の為に軍をフィンランド国境へ集結させていたが、ここに来て急転直下フィンランドとソ連は休戦条約を締結した。フィンランドはカレリア地方のフィンランド湾沿いの僅かな地域の割譲を行ったが、あれほどのソ連の援軍を見せられてソ連に脅されたフィンランドは、ソ連の講和条件があまりに譲歩したものだったから逆に驚愕したそうだ。
フィンランドとあっさり停戦したソ連の思惑は推測に過ぎないが、イギリスの切り離しだろう。イギリスはフィンランドに対して支援を行っているが、ドイツ、オーストリア連邦、ポーランド、フランスへは中立宣言を行っている。今後ソ連がこれらの国と争うことになってもイギリスは出てこない。
フィンランドは日本とイギリスが支援していたので、このまま他と争うことになればイギリスが出て来る可能性があったからな。情勢を見てフィンランドから手を引いたんだろう。
相変わらず攻めるのも引くのも決断がはやいなソ連は。
フィンランドとソ連の戦いが終結し、ポーランドは西プロイセンに居座ったまま、中国大陸は中華ソビエト共和国と中華民国が睨み合ったままの不気味な静寂さを保ち1939年は終わりを迎える。
開けて1940年。静寂だった波が一気に嵐へと変貌する。
まず動いたのがフランスとベルギーだった。フランスはドイツへ数度再軍備を停止するよう要求を出したがドイツが受け入れるわけは無く、ドイツ領ラインラントへベルギーと共に進駐する。
フランスとしてはドイツに脅しをかけ譲歩を得る構えだったのだろうが、フランスとベルギーのラインラント進駐から三日後、ソ連が東プロイセンに侵攻する。
ソ連の侵攻を受けドイツはソ連へ宣戦布告を行い、対決する姿勢を見せた。この頃になるとドイツの軍備も整ってきており、対抗する力を持ちつつあったんだ。日本はドイツを支持し、ドイツへ物資の輸送及び海軍と海兵隊を引き続きドイツへ留まらせることを約束する。
これを受けて、宣戦布告無しで東プロイセンへ侵攻したソ連はドイツへ宣戦布告を行う。
ドイツは宣戦布告を行ったものの、西プロイセンにポーランド軍が控えているのと、兵数がまだ十分に整っていないこともあり東プロイセンへ兵が回せず、東プロイセンはあっさりと占領されてしまう。
さて複雑になってきたので整理しよう。なあに難しくはないさ。
ドイツはフランス、ベルギーがラインラントへ進駐。ポーランドが西プロイセンに進駐。この三か国とは戦争状態にはなっていない。ドイツは三か国に退去を求めている状況だ。
ソ連は東プロイセンに侵攻し、占領下に置いた。
ドイツを直接支援している国は日本のみだ。支持している国はイタリア、北欧諸国、トルコ、オーストリア連邦になる。アメリカとイギリスは中立を保ちつつも、ソ連に対しては非難声明を出している。
驚くことにフランスとポーランドもソ連に東プロイセンからの退去を求める声明を出しているんだ。
ものすごく混沌としているよな。この状況。
ドイツが東プロイセンに至るには西プロイセンのポーランド軍を排除しなければならない。ドイツはポーランドに対し即時西プロイセンからの撤退を求めたが、ポーランドはドイツ領西プロイセンの南側の割譲を認めなければ退去しないと拒否を繰り返す。
そうしている間にも東プロイセンはソ連によって占領統治が進む。このまま座して待っていられないドイツはポーランドに期日を定め、退去命令を出す。もし退去しない場合は実力でポーランド軍を排除するとポーランドへ通達を行う。
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