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第40話 レベルアップ再び

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「良介さん!」

 拠点に戻った俺を見とめたライラは全速力で駆けてきて俺に抱き着く。
 俺は彼女の艶やかな髪を撫で、
 
「ただいま」

 と告げる。
 
「おかえりなさい。良介さん」

 一方のライラも俺の胸に顔をうずめながら、言葉を返した。

「積もる話はいろいろあるけど、まずは食事にでもしようか」
「はい!」

 エドから頂いた鶏肉を切り分け、塩を振って串焼きにする。他にも香草と猪肉を使ってヤシの葉っぱでくるみ蒸し焼きに。
 更にはほうれん草ぽい野菜とカリフラワー、トウモロコシはまとめて茹でてサラダにする。
 なんと、牛乳とチーズも手に入ったので、牛乳は念のため湯煎してから食事と一緒に飲もう。チーズは保管。
 
「ライラ、この野菜や香草類ってこの辺りで自生しているかなあ?」
「香草はあると思いますが、野菜は畑で育てないと……ですね」
「そっかあ、畑も作ろうか」
「はい! 苗は悪魔族の村から頂けば大丈夫と思います」
「おお、それくらいなら融通してくれそうだね」

 食事の準備ができたので、ライラへ悪魔族の村で起こった出来事をかいつまんで話をする。
 彼女は時にぱああと明るく、時に顔をしかめ、俺の話をうんうんと頷きながら聞いてくれた。
 
「良介さん、大活躍だったんですね! 村も元に戻ってよかったです」
「ライラの父さんもライラが話をしにくるのは歓迎みたいだったよ」
「そうですか。ありがとうございます!」

 お、そうそう。もう一つライラに相談したいことがあったのだ。

「お礼にいろいろ物資もくれるみたいだから、何が必要か一緒に考えないか?」
「はい!」
 
 ライラは満面の笑みを浮かべて元気よく返事をしたのだった。
 
 ◆◆◆
 
 久しぶりに体を洗ってさっぱりした後、自室に戻りポチのお腹に寝そべる。
 モフモフして気持ちいいー。
 さてと、落ち着いたところでエドから聞けた情報を整理してみるか。
 
 一番気になっていたのは、悪魔族と人間の関係性だ。悪魔族と人間は過去にドンパチがあったみたいで、それ以来悪魔族は人間と接触を断つようになった。
 それでも、一部の好戦的な悪魔族と人間はお互いに「狩り」を行っているらしい。エドの村ではそのようなことをする悪魔族はいないらしく、専ら人間の残虐性を伝え人間と接触しないように子供に言い聞かせているとのこと。
 だから、ライラはあれほどまでに人間を恐れていたってわけだ。
 一方、人間側はどうなんだろう。ガイアたちと接した感じ、悪魔族は戦闘力が高く危険な存在だと言っていた。他のことに気を取られて余り詳しく聞いていなかったことが悔やまれるなあ。
 でも、ガイアたちとは定期的に会えることになっているからおいおい聞いていけばいいか……って! ガイアたちと会う日は明後日じゃないか! アリのことですっかり忘れていたよ……。
 明日、彼らに持っていくものを何か見繕うとしよう。あ、そうか! アリの甲殻も売れるかもしれないじゃないか……持って帰ってきたらよかったかな。
 
 エドから聞いたことを紙に書いてまとめたわけじゃなかったから、抜けなく聞けたわけではないが技術力や家畜、畑のことも聞くことができた。
 車軸のところで気になっていたんだけど、悪魔族と人間は接触が無いからお互いの技術力は不明となっている。少なくとも悪魔族の技術力では、鉄の車軸やゴムを使った衣類を作ることはできないみたいだ。
 となると、人間と悪魔族の技術格差はそれなりにありそうだと予想される。
 家畜に関しては、馬牛羊ヤギと俺の知っている家畜はほとんど揃っている模様。例外は豚くらいか。豚は家畜化しておらず、野生の猪を狩猟しているそうだ。
 畑では俺待望の穀物類としてトウモロコシ。俺がもらってきたようないくつかの野菜を栽培している。
 マンゴーなどの果物類は余り栽培しておらず、ジャングルに自生しているものを使うことが多いみたいだった。
 
 だいたいこんなところか。ガイアたちからもっと情報を得たいところだけど、焦らずじっくりやっていくつもりだ。俺には急ぐ理由もないしねー。
 さしあたり、生きていく分には問題ないくらいの物資も揃いつつあるし。
 
 ここまでこれたのはなんといってもタブレットによるところが大きい。
 俺は何気なくタブレットを手に出現させる。すると、画面に映るブロックアプリのアイコンにビックリマークが浮かんでいるじゃないか。確かこれって……レベルアップだっけ?
 ブロックアプリを起動させてみると、俺の予想通りの案内が出てくる。
 
『ミッションクリア レベルが上がりました』
 
 お、おおお。ミッション自体何をしたのか分からないけど、性能がパワーアップするのは大歓迎だぜ。
 どれどれ、画面をタップすると追加された機能が出てくる。
 
『材質に水が追加されました』
『「解除」の機能が追加されました』

 ほうほう。最初のは分かりやすい。木材に加えて水もブロックにできるってことだよな。
 もう一つは試してみないと何のことかよく分からないな……明日、ガイアたちに会いに行く前に試してみるとしようか。
 
 寝ころんでいたものの、遠足前の子供のようにブロックの新機能を試すことでワクワクしてしまい、ゴロゴロとその場で寝返りを打つ。
 しかし、ポチをモフモフしているうちにすぐに眠ってしまったのだった。
 
 ◆◆◆
 
――翌朝
 ライラが朝食を準備している間、俺は心ここにあらずと言った感じで小川の方をぼーっと眺めていた。

「どうされました? 良介さん、体調が優れないのですか?」
「ぬお、ラ、ライラ。近い、近い!」

 気が付くとライラの顔がドアップになっていたから驚いてしまう。

「す、すいません。つ、つい」
「あ、当たる」
「え、きゃああ」

 ちょっと当たってしまったかもしれない……お口同士が。
 だってえ、ライラの顔が近すぎるんだものお。お、俺のせいじゃあないよお(棒)。
 焦る俺に対し、ライラが俯いて「キ、キス、しちゃったかも……」とか呟いているけど、何を言ったのかハッキリとは俺の耳に届かない。
 
「ライラ? 何だろう?」
「何でもありません! し、しかし、良介さん、先ほどからどうされたんですか?」

 あからさまに話題を変えてきたライラへ俺も同じ気持ちだったから、彼女の言葉に乗っかる。
 
「新しい機能を試してみたいと思っているんだよ」
「ブロックの大魔法のですか?」
「うん。片づけたら小川に行こう」
「はい!」

 ライラと一緒に小川で食器を洗った後、俺はタブレットを手に出し小川を映しこむ。
 それじゃあ、一丁、試してみるとしますか!
 
 画面に映る水をタッチすると、『水をブロック化しますか?』と聞いてきたので、『はい』をタップし、小さい方のサイズを選ぶ。
 すると、画面の中に透明な水でできたブロックが出現したので、足元に移動させ『決定』ボタンをタッチした。
 
――次の瞬間、現実世界に四十五センチ角の透明なブロックが姿を現す。

「お、おおおお」
「良介さん、水でしょうか? これは」

 俺とライラは異口同音に感嘆の声をあげた。
 
「良介さん、何を?」
「あ、踏んでみようかなと」

 俺はライラに宣言したとおり、よっこらせっと水ブロックの上に乗ってみる。
 その場で軽く飛び跳ねてみるけど、水でできたブロックは木のブロックと同じように頑丈な質感でひっかいても傷が付く様子はまるでなかった。
 押しても動かないし、見た目が違うだけで水でも木でも同じ性質を持つように思える。
 ライラに頼んで水ブロックの上で火を焚いてみたが、普通に火が燃え盛った。おそらく、俺の考えに間違いはないはずだ。
 
 それじゃあ、もう一つの機能「解除」を使ってみるとしよう。
 水ブロックと木のブロックを横に並べて、タブレットに映像を映しこむ。水ブロックをタップしてみると、「解除」が選択できるようになっていた。
 
 おっし「解除」を選んで……決定を行うと水ブロックは元の水に戻ってその場で重力に従い形が崩れ流れていってしまった。
 木のブロックはそのままに見えるが……たぶんこれは。
 
「ライラ、ナタを使うよ」
「はい!」

 後ろに控えてずっと固唾を飲んで見守っていたライラが、俺が動くより早く動き出してナタを取って来てくれる。

「ありがとう」
「いえ!」

 ライラからナタを受け取り、「解除」した木のブロックへナタを振り下ろすと……ナタが突き刺さる!
 お、おお。これも材質が元の「木材」に戻っているみたいだな。木は水と違って固体だからブロックの形は保っていたってことか。
 なるほど、これを使えば……水と木を持ち運ぶことができるってことだ! 素晴らしいぞお。
 
 試して無かったけど、木を元にした加工品……例えば、炭なんかもブロックにできるんだろうか。
 先にガイアたちに持っていく商品を見繕うことにしよう。ブロックアプリの機能確認は後からじっくりやればいいからな!
 
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