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11.騎乗パンダ
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小屋のある広場に戻ると、パンダがゴロゴロ左右に転がっていた。
あの様子は暇を持て余してるだろ。それなら自分で木登りをして笹の葉を食べればいいんじゃないのか?
「おい、パンダ」
『パンダは笹が食べたいようです』
「こ、こいつ」
「ダメですう!」
ま、またこのパターンか。
カルミアに羽交い締めにされそうになる前に彼女へ向け「大丈夫だ」と態度で示す。
同じことを繰り返していても仕方がない。俺も成長するんだ。
「うおっぷ」
『パンダは笹が食べたいようです』
パンダがあの巨体でのしかかってきやがった。
しかし、思ったよりは重たくない。木登りできるからかな。もっふんもっふんでとても暑い。
それにしても、俺だけじゃなくカルミアまで巻き込んでるぞ。華奢な彼女の骨が折れたらどうすんだよ。
「あったかいです」
「暑くないか……」
「ふわふわしてます」
『パンダは笹が食べたいようです』
ブレないな。パンダ……。
笹を渡そうにもどいてくれないと何もできんだろうに。
押してみるが、むぬーとなるだけで動かん。
「パンダ。笹をやるからどくのだ」
一言そう言っただけでゴロンと転がり体を離すパンダである。
分かればいい。分かればいいんだ。
ここで笹をやらなかったらどうなるんだろうな。なんて邪悪な考えが浮かんでくるが、カルミアの悲しそうな顔を想像しやめておくことにした。
パンダはともかく、彼女までにいじわるする気はないからな。仕方ない。カルミアに感謝しろよ。
手のひらから笹をどさっと出してやると、お座りしたパンダがもっしゃもっしゃと笹を貪り喰らい始めた。
「水浴びの前に笹を食べたよな」
「神獣は今までわたしが不甲斐ないばかりにお腹を空かせていましたので」
「一人でよくこんなふてぶてしい奴を甲斐甲斐しく世話していたと思うよ。尊敬する」
「そのようなことは……嘘でも嬉しいです!」
屈託のない笑顔を浮かべられると気恥ずかしくなってカルミアから目を反らし後ろ頭をかいてしまう。
「パンダ。外に出てみたいのだが。絶対戻って来るから」
『ひょろ憎は捕食されるようです』
「待て待て」
『仕方ないからついて行ってやる、そうです』
「え? パンダってここから出られるの?」
『結界はこのままに、パンダだけひょろ憎と外に出るようです』
「カルミアも一緒に行きたいんだが」
問題ないとばかりに笹を口元から垂らしながらパンダがうんうんと頷く。
じーっと俺とパンダの様子を眺め、うふふと口元を緩ませていたカルミアへ目を向ける。
「パンダと一緒に外へ出よう」
「んふふー。え?」
「また俺が動物に一人で話しかける可哀そうな子だと思ってただろ」
「いえ、素敵です。真剣にお話ししている姿に癒されちゃいます」
「……そのうち分かってくれるか。ともかく、パンダと外に出る」
「結界に阻まれますよ? 見えない壁にレンさんも触れたじゃないですか」
「パンダが結界を司っているみたいだから問題ないはずだ」
半信半疑のカルミアのむううという顔が結構可愛いななんて思っていたら、ハッとなった。
パンダの奴、あれでもちゃんと考えているんだ。
俺は単純に結界を広げてしまえばいいと思っていたけど、パンダは案外慎重だった。
何も考えていないような間抜けな顔と態度をしているってのに。
「パンダ。一応聞くが、結界の範囲を変更することはできるのか?」
『パンダを何だと思っているんだと言いたいようです』
「できるってことだな……」
『ひょろ憎とは違うのだと言いたいようです』
やはりそうか。外に出ることを聞いた後に結界の話をしようと思っていたのだ。
パンダは結界を拡張できる。少なくとも結界の形を多少なりとも変えることができると自信満々に言ってのけた。
結界をそのままに、パンダだけ外に出ることができることは意外だったのだけど、ポイントはそこじゃあない。
いや、結界の外にパンダを連れて出ることができることは嬉しい誤算ではあったのだけど、ね。
パンダが結界をどうこうするのじゃなく、自分だけ外に出るといったのは現状を変えないため。結界をそのまま維持するのなら、精霊とやらの動きも変わらない。
俺としても願ったり叶ったりだ。
しかし、パンダの奴、単独で結界を維持したまま外に出ることができるのなら何で外に出なかったんだ?
あ、お世話係を放置して自分だけ外に出ないためか。この辺、コミュニケーションが取れないことの弊害だよな。
お互いが不幸になるこの制度も、もうすぐ終わりにしてやる。
お互いと言ったのは、もちろんパンダにとっても今より暮らしがよくなるってことだ。全員が損をしない。それこそ俺の目指すところなのだ。
◇◇◇
「ほ、本当に外に出ることができるなんて」
「森エルフの村はどっちだろう? 分かるかな?」
「朧気ですが、何とか分かります」
パンダの背に乗り、のっしのっしと森の中を進む。
俺が首元でカルミアが俺にしがみつくようにしている。
おや。せっかく結界の外に出て来たってのにパンダが停止した。
どうやら早くもガソリン切れか?
『ひょろ憎。パンダは笹が食べたいようです』
はいはい。
パンダに乗ったまま、体を前に伸ばしパラパラと笹を落とす。
パンダは俺たちを乗せたままむしゃむしゃと笹を食べ始めた。
ガソリンは十分だ。念のため、もう一本分アイテムボックスに笹の葉を突っ込んできたからな。ははは。
しかし、これほどすぐにガス欠になるならパンダ単独で外に出るのは無理な気がする。
本気になれば、食べずとも進めそうだけどな、こいつ。
一心不乱に笹を貪るパンダへじとーっとした目を向ける。そんな視線など気にする奴ではなかったが。
食事が終わったパンダが再び動き始める。
「パンダ。もう少し速く動けないか? 走るとかできる?」
『ひょろ憎。生意気なことを言うな、だそうです』
「うわっぷ」
「きゃ」
突然速度があがり、体がガクンと揺れた。
これなら俺が全力疾走するより遥かに速く動けそうだぞ。
目指すはカルミアの故郷「森エルフの集落」だ。
あの様子は暇を持て余してるだろ。それなら自分で木登りをして笹の葉を食べればいいんじゃないのか?
「おい、パンダ」
『パンダは笹が食べたいようです』
「こ、こいつ」
「ダメですう!」
ま、またこのパターンか。
カルミアに羽交い締めにされそうになる前に彼女へ向け「大丈夫だ」と態度で示す。
同じことを繰り返していても仕方がない。俺も成長するんだ。
「うおっぷ」
『パンダは笹が食べたいようです』
パンダがあの巨体でのしかかってきやがった。
しかし、思ったよりは重たくない。木登りできるからかな。もっふんもっふんでとても暑い。
それにしても、俺だけじゃなくカルミアまで巻き込んでるぞ。華奢な彼女の骨が折れたらどうすんだよ。
「あったかいです」
「暑くないか……」
「ふわふわしてます」
『パンダは笹が食べたいようです』
ブレないな。パンダ……。
笹を渡そうにもどいてくれないと何もできんだろうに。
押してみるが、むぬーとなるだけで動かん。
「パンダ。笹をやるからどくのだ」
一言そう言っただけでゴロンと転がり体を離すパンダである。
分かればいい。分かればいいんだ。
ここで笹をやらなかったらどうなるんだろうな。なんて邪悪な考えが浮かんでくるが、カルミアの悲しそうな顔を想像しやめておくことにした。
パンダはともかく、彼女までにいじわるする気はないからな。仕方ない。カルミアに感謝しろよ。
手のひらから笹をどさっと出してやると、お座りしたパンダがもっしゃもっしゃと笹を貪り喰らい始めた。
「水浴びの前に笹を食べたよな」
「神獣は今までわたしが不甲斐ないばかりにお腹を空かせていましたので」
「一人でよくこんなふてぶてしい奴を甲斐甲斐しく世話していたと思うよ。尊敬する」
「そのようなことは……嘘でも嬉しいです!」
屈託のない笑顔を浮かべられると気恥ずかしくなってカルミアから目を反らし後ろ頭をかいてしまう。
「パンダ。外に出てみたいのだが。絶対戻って来るから」
『ひょろ憎は捕食されるようです』
「待て待て」
『仕方ないからついて行ってやる、そうです』
「え? パンダってここから出られるの?」
『結界はこのままに、パンダだけひょろ憎と外に出るようです』
「カルミアも一緒に行きたいんだが」
問題ないとばかりに笹を口元から垂らしながらパンダがうんうんと頷く。
じーっと俺とパンダの様子を眺め、うふふと口元を緩ませていたカルミアへ目を向ける。
「パンダと一緒に外へ出よう」
「んふふー。え?」
「また俺が動物に一人で話しかける可哀そうな子だと思ってただろ」
「いえ、素敵です。真剣にお話ししている姿に癒されちゃいます」
「……そのうち分かってくれるか。ともかく、パンダと外に出る」
「結界に阻まれますよ? 見えない壁にレンさんも触れたじゃないですか」
「パンダが結界を司っているみたいだから問題ないはずだ」
半信半疑のカルミアのむううという顔が結構可愛いななんて思っていたら、ハッとなった。
パンダの奴、あれでもちゃんと考えているんだ。
俺は単純に結界を広げてしまえばいいと思っていたけど、パンダは案外慎重だった。
何も考えていないような間抜けな顔と態度をしているってのに。
「パンダ。一応聞くが、結界の範囲を変更することはできるのか?」
『パンダを何だと思っているんだと言いたいようです』
「できるってことだな……」
『ひょろ憎とは違うのだと言いたいようです』
やはりそうか。外に出ることを聞いた後に結界の話をしようと思っていたのだ。
パンダは結界を拡張できる。少なくとも結界の形を多少なりとも変えることができると自信満々に言ってのけた。
結界をそのままに、パンダだけ外に出ることができることは意外だったのだけど、ポイントはそこじゃあない。
いや、結界の外にパンダを連れて出ることができることは嬉しい誤算ではあったのだけど、ね。
パンダが結界をどうこうするのじゃなく、自分だけ外に出るといったのは現状を変えないため。結界をそのまま維持するのなら、精霊とやらの動きも変わらない。
俺としても願ったり叶ったりだ。
しかし、パンダの奴、単独で結界を維持したまま外に出ることができるのなら何で外に出なかったんだ?
あ、お世話係を放置して自分だけ外に出ないためか。この辺、コミュニケーションが取れないことの弊害だよな。
お互いが不幸になるこの制度も、もうすぐ終わりにしてやる。
お互いと言ったのは、もちろんパンダにとっても今より暮らしがよくなるってことだ。全員が損をしない。それこそ俺の目指すところなのだ。
◇◇◇
「ほ、本当に外に出ることができるなんて」
「森エルフの村はどっちだろう? 分かるかな?」
「朧気ですが、何とか分かります」
パンダの背に乗り、のっしのっしと森の中を進む。
俺が首元でカルミアが俺にしがみつくようにしている。
おや。せっかく結界の外に出て来たってのにパンダが停止した。
どうやら早くもガソリン切れか?
『ひょろ憎。パンダは笹が食べたいようです』
はいはい。
パンダに乗ったまま、体を前に伸ばしパラパラと笹を落とす。
パンダは俺たちを乗せたままむしゃむしゃと笹を食べ始めた。
ガソリンは十分だ。念のため、もう一本分アイテムボックスに笹の葉を突っ込んできたからな。ははは。
しかし、これほどすぐにガス欠になるならパンダ単独で外に出るのは無理な気がする。
本気になれば、食べずとも進めそうだけどな、こいつ。
一心不乱に笹を貪るパンダへじとーっとした目を向ける。そんな視線など気にする奴ではなかったが。
食事が終わったパンダが再び動き始める。
「パンダ。もう少し速く動けないか? 走るとかできる?」
『ひょろ憎。生意気なことを言うな、だそうです』
「うわっぷ」
「きゃ」
突然速度があがり、体がガクンと揺れた。
これなら俺が全力疾走するより遥かに速く動けそうだぞ。
目指すはカルミアの故郷「森エルフの集落」だ。
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