異世界に来たらコアラでした。地味に修行をしながら気ままに生きて行こうと思います

うみ

文字の大きさ
上 下
45 / 52

45.きがついてしまったもしゃ

しおりを挟む
「アンデッドですから、ユーカリは出ませんよ……。エリアボスなら別ですが」
「エリアボスならアンデッドでも……いや、そこじゃなくて、アンデッド、そうか、アンデッドなんだ」
「どうしたんですか?」

 生き残りのジャックオーランタンを仕留めた時に気が付けたはずだった。
 だけど、今の今まで疑問にも思わないとは……我ながら抜けている。

「ジャックオーランタンはアンデッドだった」
「はい。そうです。アンデッドナイトやヘッドレスナイトに比べれば、それほど強いモンスターではありません」
「そうだ。そうだよ。ヘッドレスナイトを倒した時からジャックオーランタンは『おかしかった』」
「よく……分かりません」
「いいか、コレット。俺たちはジャックオーランタンの生き残りと遭遇したわけじゃあなかった」
「え?」
「ジャックオーランタンは生き残ってなんかいない。エルダートレント討伐後に倒したジャックオーランタンは生き残りなんかじゃあなかった」
「あ……」
「そうなんだ。ジャックオーランタンはアンデッドなんかじゃあかなった。それがアンデッドと化し姿を現した」

 エルダートレントが生み出すジャックオーランタンは、間違いなく通常の植物系モンスターだ。倒すと砂のように消え去るし、決して黒い煙になったりなんてしなかった。
 動物や人間といった生物は、倒されると死体になる。
 俺のスキル候補一覧にはネクロマンシーなんておどろおどろしいものもあるが、これは俺のゲーム的知識からすると死霊魔法と言い換えることができるだろう。
 予想される魔法は死者を操る魔法とか、骨から竜牙兵を作り出したり……なんてことができるのかもしれない。
 さて、話は戻るが、ジャックオーランタンは植物系モンスターからアンデッドになっていた。
 モンスターは死体にはならないから、死亡してからこの世に未練が残ってアンデッド化したわけじゃあない。
 何者かが、ネクロマンシーみたいな魔法を使ってジャックオーランタンをアンデッドにしてしまったんじゃないだろうか?
 
「コアラさん」

 腕を組み考え込む俺にコレットが不安気に俺の名前を呼んでくる。
 
「コレット。ワーンベイダーやトリアノンの予測は間違っている可能性が高い」
「え、ええっと」
「アンデッドはどこからか来たわけじゃあなく、何者かによってここで、他の場所でもかもしれんが生み出され続けているんだ!」
「なんですってえええ!」

 ひっくり返りそうになったコレットを後ろから支える……が、ああああ。
 むぎゅう。
 彼女のお尻に潰されてしまった。
 
「す、すいません」
「驚くのも無理はないさ。明日から、推測の裏付け調査を行いたいと思っているんだ。もちろん、ユーカリを集めながら」
「そ、そうですね。ひょっとしたら、先ほど倒したアンデッドナイトも、元は熟練の騎士様だったとか……」
「分からない。ワイトみたいな元は獣人だったとか人間だったとかは、この世への未練でもアンデッドになるんだろう?」
「は、はい。可能性はあります。ですが、通常はゾンビかスケルトン……せいぜいゴーストで、滅多にワイトやアンデッドナイトになんてなりません。いえ、むしろ、聞いたことがありません」
「元相当な熟練者で、かつ、未練のレベルも図抜けていないとってことかな」
「はい。こんな頻繁に出会うなんて、確かに変です」
「何者かの手が介入している線が強いな……一体何のつもりでこんな酷いことを」
「そ、そうです! 生を冒涜するなんて」
「アンデッドになったらユーカリが出ない。いいか、こいつは死活問題だ」

 コレットが自分の決意を示すかのように両手をギュっと握りしめる。
 許さねえ。
 俺はアンデッドを憎む。
 ユーカリを落とさないだけじゃあなく、俺のユーカリまで奪っていく(アンデッドが通常モンスターを倒すから)。
 更にアンデッドを作り出すだとお。
 見つけ出して、絶対にぶっ飛ばしてやる。絶対にだ。
 
『パンダは笹が食べたいようです』
「ほら、約束の笹だ。でもな、パンダ。アンデッドが蔓延ると笹クラスのモンスターもいなくなるかもしれんぞ」

 笹をもしゃっていたパンダの動きが止まる。

「コレット、パンダ。俺の予測だが、モンスターってリポップするよな」
「はい」
「アンデッド化したら、『倒されたこと』にならないからリポップしないんじゃないか?」
「そ、その場合、アンデッド化したモンスターを倒せば、アンデッド化する前のモンスターとしてリポップするのではないでしょうか」
「おそらくそうだろうな。だが、本来モンスターがドロップするはずだったユーカリが、アンデッド化してしまったことで取得できなくなる」
「ま、まあ、そうですね」
「これが、許しておけるか! おけない。そうだろう!」
「は、はい……」
「考えれば考えるほど、腹が立ってきた」
「ま、まあ、ユーカリでも食べて落ち着いてください」

 コレットが俺を抱き上げ、俺を落ち着かせるようとギュッと胸に抱いた。
 ユーカリを食べてと言う割に、彼女はそのまま俺を離そうとはしない。
 こんな密着していたらユーカリをもしゃもしゃできないだろう……。
 
 ああああ。もしゃれないなんて考えたら無性にユーカリの葉が食べたくなってきた。
 ユーカリ、ユーカリ。
 
「コアラさん? あ、あああ。トリップしてるじゃない!? ご、ごめんね」

 慌てたからか、自分に向けてだったからかコレットの口調がいつもと違う。
 だが、そんなことはどうでもユーカリ。
 
 コレットが俺から体を離し、俺の脇の下に自分の手を回した状態で腕を前にやった。

「もしゃ……」
「だ、大丈夫ですか?」
「ん? どうした? ユーカリを食べたいと思ったところまでは覚えているけど」
「え、あ、はい。何も無かったです。モンスターの気配は感じません」
「もしゃ……それならよかった」

 えっと、何を考えていたんだっけか。
 そうだ。アンデッド化についてだった。
 アンデッド化の原因は、自然発生でもなく他の地域から流れてきたわけでもない。
 人為的にアンデッドが生み出された可能性が高い。
 他には病原菌みたいなものでアンデッド化してしまった、なんてこともあるかもしれないよな。
 
「今日のところは休んで、明日から行動範囲を広げて調べてみようか」
「アンデッドの調査のことですよね?」
 
 コレットの問いかけにコクリと頷きを返す。
 アンデッドナイトが何か落としていたからそいつを拾い、我が家へ戻ることにした。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...