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第38話 スローライフ?
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新居は断熱もなにもなく、床が石そのままだったので快適とは言えなかった。日本時代に大理石床やコンクリート打ちっぱなしのデザイナーズハウスを見たことはあるが、あれって快適さも伴っているんだろうか。少なくとも俺たちが作った新居は床が固いし冷たいしで、落ち着ける空間ではなかったんだ。
発掘作業は続けるが、家の内装を充実させるべくそれぞれに作業時間を割り振ることにした。
のだが、ハリーとペネロペが食材集めを兼ねて巨大なイノシシを狩ってきてくれたりしたので毛皮を活用すればいいじゃない、ってことで毛皮をなめす作業にも精を出す。
なんてことをしていたら、あっという間に一か月と少しが経過した。
この間、いくつの魔道具を修理したのか分からないくらい片っ端から修理したなあ。
「ふう」
修理したビーチチェアに寝そべり、果実ジュースを飲む。パラソルがいい感じで木陰を作り、湖方向から吹くそよ風が心地よい。
「みゅ」
もう一つのビーチチェアの真ん中にハリーがちょこんと座って虫をバリバリやっている。
平和だ。ようやくこうしたのんびりした時間がとれるようになった。ここまであくせく動いていたから格別だねえ。
とはいえ、毎日寝そべって過ごすことは考えていない。休みってのは忙しい時間があるからこそ気持ちよく味わえるものなのだ。
ずっと寝そべって休んでいては体も訛るし、暇を持て余すと思って。我ながら根っからの以下自主規制。
今日はラージャが眠っていた場所へ出かけていて、万が一もあるのでペネロペが彼女に付き添っている。つまり、休むには持ってこいの日だったってことだよ。
『エラー、状態を確認してください』
果実ジュースを吹き出しそうになった。寝そべるのを狙っていたかのように工作機械から俺にエラーメッセージが届く。
エラーメッセージはe-mailと似ているが、仕組みは大きく異なる。
何かあった時にエラーメッセージを吐き出すのは同じなのだが、届くのは俺の脳内になるんだ。アラートなので、メッセージと共に呼び出し音も鳴る。
「仕方ない。ハリー、様子を見てくるよ」
「みゅ」
てこてこと足元まで来たハリーが俺の体をよじ登り、肩に座った。
「一緒に行こう」
「みゅ」
そんなこんなで事件が起こっている現場に向かう。
現場は自宅から数十メートル先にある……のだが、あくまで入り口である。
そこは大穴が開いていて、穴の中は階段になっているんだ。
階段はコンクリートで固めているわけではないのだが、魔法的に『固めてある』。ただ堀っただけに見える穴の中全て、崩落しないように同じく魔法的にかちこちなんだぜ。この辺り、科学文明より優れていると思う。なんせ建材を用意しなくていいんだからな。
堀った時に出る土は外まで運ばなきゃならないのは同じなのだけどね。それでも、コンクリートを運ぶ必要もなく、土を固めるのだってアイロンをかけるがごとくで済む。すごいだろ、魔法文明って。
俺が入ると天井がぼんやりと光り、視界が確保される。これも……以下略。
マナが無尽蔵にあるから、省マナとかまるで気にしていない作りなのである。ははは。
「我ながら結構掘ったよなあ」
『いっぱい』
「指示するだけで俺はなんもしていないけどね」
『いっぱい、いっぱい』
みゅ、みゅとご機嫌なハリーは散歩をするのが嬉しいのかな? それなら地下という辛気臭い場所じゃなくて、山の中で狩でもしながら遊んだ方がよかったかも。
いやいや、アラートのチェックに行かねば。よっし、戻ってから再び寝そべるんじゃなくてハリーと遊ぶことにしよう。
真っすぐの階段は日本の地下としたらだいたい地下二階から三階ってところか。
階段を下りたらなだらかな斜面となっているところや平面のところがあり、横幅もそれなりにある。トロッコがすれ違うくらいはできるくらいの広さ? それくらいになっていた。
なんで唐突に地下道を? というのにはちゃんとした理由がある。
工作機械が一式あったというのがきっかけなんだけど、俺たちが住む周辺地域は結界があり、踏み入れようなら超好戦的なモンスターたちが次から次へと挑んくるだろ。
俺やペネロペは平気なのだけど、気軽に誰かを呼ぶこともできない。迎えに行けば招くことはできるのだけど、お互い予定ってもんもあるからさ。
道中もかなり険しいので、旅慣れた人じゃないと厳しい。
といっても、街の知り合いなんて数えるほどしかない。その中で是非とも訪れたいと言いそうな人はイデアだけだろうなあ。
行き来しやすいように何かできないか、と考えていたところに工作機械一式があった。
地下ならばモンスターも来ないし、山の中を歩いて進むより格段に早く進むことができる。もし発見できれば、レールを敷いてトロッコを走らせるのも手だ。
「さすがに結構な距離があるな」
歩くこと30分を過ぎたが、一行にアラートを出した工作機械の元まで辿り着かないでいた。
もうすぐ地下道が開通しそうってところまで掘り進めていたからなあ。
「お、あったあった」
工作機械のアラートの原因はエネルギーが切れそうなだけだったので、さくっと魔石を入れ替えてメンテナンスが終了。
再起動させ、工作機械が動き始める。
この調子ならあと数日で地下道が完成しそうだな。開通が楽しみだぜ。
「よっし、ハリー。帰りまで競争しようか」
「みゅ」
「ま、待って。身体能力強化をかけさせて」
律儀に待っていてくれているハリーの顎元を指先で撫で、身体能力強化の魔法をかける。
「さあ、競争だ! って……」
あっという間にハリーが見えなくなってしまった。この後全力で走るも、彼の姿が見えることはなかったとさ……。
速すぎるってんだよ。
※ストックがまったくないため、、遅くなってます。
発掘作業は続けるが、家の内装を充実させるべくそれぞれに作業時間を割り振ることにした。
のだが、ハリーとペネロペが食材集めを兼ねて巨大なイノシシを狩ってきてくれたりしたので毛皮を活用すればいいじゃない、ってことで毛皮をなめす作業にも精を出す。
なんてことをしていたら、あっという間に一か月と少しが経過した。
この間、いくつの魔道具を修理したのか分からないくらい片っ端から修理したなあ。
「ふう」
修理したビーチチェアに寝そべり、果実ジュースを飲む。パラソルがいい感じで木陰を作り、湖方向から吹くそよ風が心地よい。
「みゅ」
もう一つのビーチチェアの真ん中にハリーがちょこんと座って虫をバリバリやっている。
平和だ。ようやくこうしたのんびりした時間がとれるようになった。ここまであくせく動いていたから格別だねえ。
とはいえ、毎日寝そべって過ごすことは考えていない。休みってのは忙しい時間があるからこそ気持ちよく味わえるものなのだ。
ずっと寝そべって休んでいては体も訛るし、暇を持て余すと思って。我ながら根っからの以下自主規制。
今日はラージャが眠っていた場所へ出かけていて、万が一もあるのでペネロペが彼女に付き添っている。つまり、休むには持ってこいの日だったってことだよ。
『エラー、状態を確認してください』
果実ジュースを吹き出しそうになった。寝そべるのを狙っていたかのように工作機械から俺にエラーメッセージが届く。
エラーメッセージはe-mailと似ているが、仕組みは大きく異なる。
何かあった時にエラーメッセージを吐き出すのは同じなのだが、届くのは俺の脳内になるんだ。アラートなので、メッセージと共に呼び出し音も鳴る。
「仕方ない。ハリー、様子を見てくるよ」
「みゅ」
てこてこと足元まで来たハリーが俺の体をよじ登り、肩に座った。
「一緒に行こう」
「みゅ」
そんなこんなで事件が起こっている現場に向かう。
現場は自宅から数十メートル先にある……のだが、あくまで入り口である。
そこは大穴が開いていて、穴の中は階段になっているんだ。
階段はコンクリートで固めているわけではないのだが、魔法的に『固めてある』。ただ堀っただけに見える穴の中全て、崩落しないように同じく魔法的にかちこちなんだぜ。この辺り、科学文明より優れていると思う。なんせ建材を用意しなくていいんだからな。
堀った時に出る土は外まで運ばなきゃならないのは同じなのだけどね。それでも、コンクリートを運ぶ必要もなく、土を固めるのだってアイロンをかけるがごとくで済む。すごいだろ、魔法文明って。
俺が入ると天井がぼんやりと光り、視界が確保される。これも……以下略。
マナが無尽蔵にあるから、省マナとかまるで気にしていない作りなのである。ははは。
「我ながら結構掘ったよなあ」
『いっぱい』
「指示するだけで俺はなんもしていないけどね」
『いっぱい、いっぱい』
みゅ、みゅとご機嫌なハリーは散歩をするのが嬉しいのかな? それなら地下という辛気臭い場所じゃなくて、山の中で狩でもしながら遊んだ方がよかったかも。
いやいや、アラートのチェックに行かねば。よっし、戻ってから再び寝そべるんじゃなくてハリーと遊ぶことにしよう。
真っすぐの階段は日本の地下としたらだいたい地下二階から三階ってところか。
階段を下りたらなだらかな斜面となっているところや平面のところがあり、横幅もそれなりにある。トロッコがすれ違うくらいはできるくらいの広さ? それくらいになっていた。
なんで唐突に地下道を? というのにはちゃんとした理由がある。
工作機械が一式あったというのがきっかけなんだけど、俺たちが住む周辺地域は結界があり、踏み入れようなら超好戦的なモンスターたちが次から次へと挑んくるだろ。
俺やペネロペは平気なのだけど、気軽に誰かを呼ぶこともできない。迎えに行けば招くことはできるのだけど、お互い予定ってもんもあるからさ。
道中もかなり険しいので、旅慣れた人じゃないと厳しい。
といっても、街の知り合いなんて数えるほどしかない。その中で是非とも訪れたいと言いそうな人はイデアだけだろうなあ。
行き来しやすいように何かできないか、と考えていたところに工作機械一式があった。
地下ならばモンスターも来ないし、山の中を歩いて進むより格段に早く進むことができる。もし発見できれば、レールを敷いてトロッコを走らせるのも手だ。
「さすがに結構な距離があるな」
歩くこと30分を過ぎたが、一行にアラートを出した工作機械の元まで辿り着かないでいた。
もうすぐ地下道が開通しそうってところまで掘り進めていたからなあ。
「お、あったあった」
工作機械のアラートの原因はエネルギーが切れそうなだけだったので、さくっと魔石を入れ替えてメンテナンスが終了。
再起動させ、工作機械が動き始める。
この調子ならあと数日で地下道が完成しそうだな。開通が楽しみだぜ。
「よっし、ハリー。帰りまで競争しようか」
「みゅ」
「ま、待って。身体能力強化をかけさせて」
律儀に待っていてくれているハリーの顎元を指先で撫で、身体能力強化の魔法をかける。
「さあ、競争だ! って……」
あっという間にハリーが見えなくなってしまった。この後全力で走るも、彼の姿が見えることはなかったとさ……。
速すぎるってんだよ。
※ストックがまったくないため、、遅くなってます。
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