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第31話:キミには何も隠せない(その1)
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「よー久しぶり!」
「お、お前も元気だったか?」
ここはある飲み屋の宴会会場。
今日はある高校の同窓会が行われている。
ユキヤはここに参加していた。
「しかしお前高校の時から随分変わっちゃたなぁ」
かつての同級生の1人がユキヤに話しかける。
「まぁ、俺も色々あったんだよ」
ユキヤは苦笑いを浮かべながら答える。
「前は黒髪メガネだったくせにさぁ、勝手に垢抜けやがって」
同級生はそう言って、ユキヤの外見をいじる。
「そうそう、お前なんか高校の頃は地味メガネだったくせに」
他の同級生達もユキヤを茶化す。
「垢抜けたって、メガネ取って髪型変えただけだろ・・・」
ユキヤはため息をつきながら答える。
「いや、それだけじゃないって。なんかこう・・・
全体的に雰囲気も変わった気がする」
「そうそう、なんかオシャレになった感じ」
同級生達は口々に言う。「そ、そうか?」
ユキヤは照れ臭そうに頭を搔く。
「あのさ、お前彼女いるんだろ?どんな子なんだよ」
同級生の1人が興味津々といった様子で聞いてくる。
「まー・・・いるっちゃいるけどさぁ・・・」
ユキヤは少し考えてから答える。
「うぇーマジかよ。どんな子どんな子?かわいい子か?
胸でかい子かー?やっぱ黒髪か?」
ユキヤは返答に困る。
「・・・って、お前の好み並べてどうするんだよ?」
「いいじゃん、俺らの仲だろ?」同級生はニヤつく。
(こいつ高校のときもこんな調子だったな)
ユキヤがそう思っていると・・・・
「おい!お前らそろそろ始めるぞ!」
遠くの方に座っていた男が声を上げる。その男に注目が集まる。
どうやら、今回の主催者兼幹事のようだ。
ユキヤ達はそちらの方へと移動するのだった。
「〇〇高校3年C組出身者の皆さん!
本日は、お忙しい中この同窓会に集まってくれて
ありがとうございまーす!
今日は昔を思い出して沢山楽しんでくださーい!
ということで乾杯!!」
幹事役の男の合図で一斉に皆グラスを合わせる。
酒が入り、かつての旧友同士でそれぞれがやがやと話し始める。
「でさ、お前の彼女ってどんな子なの?」
皆で雑談している中、先程の同級生がしつこく聞いてくる。
「別に・・・普通だよ」ユキヤはそっけなく答える。
(まさか夜になるとあんなになるとは言えない・・・)
「なんだよ、教えろよー」同級生はしつこく聞いてきた。
(こいつ相変わらずしつこいな・・・)
ユキヤは心の中で悪態をつく。
「はーい!皆さん注目!」
しばらく経って皆で程よく酔った後、幹事が声をあげた。
その声に全員がそちらの方を向く。
「これから皆から持ち寄った景品で抽選大会やりまーす」
幹事の言葉に会場から歓声が上がる。
「景品」とは今回の同窓会のために各人が持参したものだ。
宴会場のステージに山と積まれていて、
それぞれに番号が割り振られていた。
「皆が持ち寄ったもののほかに
『シークレット』があるからお楽しみに!」
と幹事は言っていた。
「『シークレット』ってなんだよ?」
その言葉に、皆、興味深そうに幹事の方を見た。
「・・・それは開けてのお楽しみ!」
幹事がニヤニヤして言う。
すると、会場に笑いが起こる。「なんだよそれ~」
そんな反応をよそに幹事は話を進める。
「じゃあ、みんな入場の時に貰った番号札を開いてくださーい!」
その言葉に皆が番号札を開く。
「これから俺が読み上げる番号と賞品の番号が一致したものを
それぞれお持ち帰りいただくルールでーっす!」
幹事はそう言いながら、番号と賞品の書かれたリストが
挟まれているボードを手にする。
「はい―まず1番!」「あ、俺だ」
「はい、ジンベイザメのぬいぐるみ!」「俺男なんだけど・・・」
「はい、ハワイアンビール5本セット!」「やったぁ!」
「俺、『バニーガールコスプレセット』だわ」
「誰だよ!そんなの持ってきたの!?」
そんな会話が飛び交う。皆楽しそうだ。
「はい次は、21番!」
幹事が番号を読み上げて言う。
「・・・・21番は・・おーっと『シークレット』だぁ!
21番の人、いますかー?」
幹事は商品と番号のリストをめくりながら言った。
「あ、俺だ」ユキヤは21番と書かれた番号札を提示した。
「おおー!おめでとう!」皆が一斉に拍手をする。
「まさかお前が当てるとはな・・・」他の男達が言う。
「え、何なの?『シークレット』って?」ユキヤが尋ねる。
「それは開けてからのお楽しみだよ」幹事が言う。
すると、他の男達もニヤニヤしながら頷く。
(なんだこの空気・・・)ユキヤは嫌な予感がした。
「はい、じゃあ景品をどうぞ!」
そう言って幹事は小さな紙袋を手渡した。
「え、何これ?」ユキヤは困惑しながら受け取る。
「彼女が喜ぶものだよ」幹事がニヤつきながら言う。
(なんだ?)そう思いながらも、ユキヤは紙袋を受け取るのだった。
「で、中身何だったんだよ?」席に戻るなり隣の友人が聞いてくる。
「いや、それがまだ開けてなくてさ」ユキヤは答える。
「え、早く開けろよ!」友人が急かすように言う。
(仕方ないなぁ)そう思いながらも、ユキヤは紙袋を開けることにした。
中に入っていたのは小さな箱だった。
その箱を開けてみると・・・中には・・・
「・・・・なんだこれ?」そこに入っていたのは・・・
所謂『大人のオモチャ』と呼ばれる類のものだった。
(な・・・なんでこんなもの?!)
「ぎゃはは!なんだよそれぇ!」
その途端、周囲で笑いが起こる。
シラフならドン引きされてるところだが、
皆酒が入っているせいか笑いで済んでいた。
「え、なんだよこれ!こんなのが景品なのかよ!」
ユキヤは赤面しながら言う。
(てか女子が貰ったらどうするつもりだったんだよ?!・・・)
あまりに訳が分からないので、思わず頓珍漢なツッコミをしてしまう。
「あはは!確かに彼女が喜ぶんじゃね?!」
友人が爆笑しながら言う。
「いや、こんなの貰っても困るわ!」ユキヤは赤面しながら言う。
(つーか、こんなものもらってどうしろってんだよ?!)
「まぁまぁ、お前彼女いるんだから使えばいいじゃん」
と友人が茶化す。
「使えるか!こんなもん!!」
ユキヤは思わず突っ込んでしまう。
「ぎゃははは!!お前マジかよ!!」
友人はさらに爆笑するのだった。
「彼女に見せてみれば?案外喜ぶかもよ!」
「よ、喜ぶわけ・・・」とユキヤが言いかけて止まる。
(いや・・・喜ぶかも。
ただし、俺に使うオモチャが増えるってことで・・・)
ユキヤはその姿を想像しそうになる自分を
慌てて振り切ろうとするのだった。
「お、おーい茶木くん!大丈夫?!」
幹事が声を上げるのを聞いて我に返る。
(危ない、妄想がはかどってた・・・・)
ユキヤは慌てて、その考えを頭の外に置いたのだった。
そして、こんなものをよこした幹事に突っかかる。
「お前なぁ!いくらなんでも冗談が過ぎるぞ!!」
と怒るのだが、皆ニヤニヤするばかり。
「でも、お前が当てるとは思わなかったからなぁ!」
友人が悪びれも無く言うと他の男達も笑い始めた。
「・・・当てたのが女の子だったらどうするつもりだったんだよ?!」
ユキヤは先ほど考えてた事とまったく同じツッコミをしてしまう。
「あー大丈夫!シクレは男用と女用と用意してたから!」
幹事はそう答えた。「お前なぁ・・・」
(いや、そういう問題じゃないだろ・・・)
ユキヤは呆れてしまった。
「ま、とりあえず当てた以上、持って帰ってくれたまえ」
幹事は笑いながら言う。
(こいつ・・・)ユキヤは心の中で悪態をつく。
「いや、俺はこんなものいらないからな」ユキヤは幹事に言う。
すると、友人が横から口を挟んできた。
「いいじゃん、持って帰って使えよ!」友人が言う。
(こいつら・・・他人事だと思って・・・)
ユキヤは心の中でため息をつく。
「ま、とりあえず持って帰れって!な?」幹事も言ってくる。
「お前らなぁ・・・・」そう言いながらも
渋々受け取ることにしたのだった。
「ほれ、彼女さんを気持ちよくさせてあげなさい」
と誰かがユキヤに対してそんなことを言ってきた。
「うるせぇ!」ユキヤはその言葉に悪態をつく。
友人達は大盛り上がりである。
そんな友人を恨めしく思うものの、
景品をもらってしまった以上、
何も言えないのがもどかしいところである。
「じゃ、そろそろお開きにしますか」幹事が言う。
そして会計を済ませて解散となったのであった。
「じゃあな!今度彼女さん紹介しろよー!」
友人がそう言ってくる。
(こいつら・・・また俺を弄る気満々だな)
ユキヤは心の中で悪態をつくのだった。
その後、二次会に行くという友人たちと別れ、
一人電車に乗った。
電車の中で彼は考える。
(これをあいつに見せて、気持ちよくさせられるのは・・・
俺だよな・・・間違いなく。)
ユキヤは、その『オモチャ』を見ながらため息をつく。
今日集まった級友たちは、今の彼の特殊な状況を知らない。
というか、知らせないように立ち回っている。
(まさか、こんなものを貰ってしまったなんて言えない・・・)
ユキヤは心の中でつぶやく。
彼女であるすみれとの夜の生活は
今やすっかり逆転してしまっている。
ここ1年以上、夜になるとユキヤが彼女に主導権を奪われ、
好き放題にされている。
その事を友人達に言う気にはならなかった。
ユキヤは内心ため息をつく。
(あいつには見せないでおいて、
こっそり持ち帰って隠しておくか・・・)
そう思い、それを自分のディバッグの中に入れた。
***
「ただいま」
「おかえり、同窓会どうだった?」
ユキヤが家に帰ると、すみれが出迎えてくれた。
「ああ、みんな相変わらずで楽しかったよ」
ユキヤはそう答えながら靴を脱ぐ。
そんな彼の様子を見て、すみれはニヤニヤしながら言う。
「あれぇ?なんかいい事あった?」
(こいつ・・・)
ユキヤは思うものの、表情に出さないようにする。
しかし、付き合いの長い彼女にはバレているかもしれない。
彼女はたまに勘が鋭い時がある。
「いや、別に?」とユキヤははぐらかす。
「怪しいなぁ・・・」すみれがニヤニヤしながら言う。
(くそ・・・こいつ絶対勘づいてやがる)
「な、何もないよ。仲いい友達とバカ話してただけだし」
と、なんとか誤魔化そうとするユキヤであったが・・・
「・・・そう。ま、いいわ」
彼女はそう言うと、台所の方に向かって行った。
(あ、危ねぇぇぇ)
彼の背中には冷や汗が流れる感覚があった。
「ね、なんかお土産とかないの?」
すみれは台所からユキヤに声をかける。
「あ、ああ。ほらこれ」と、ユキヤは彼女にお土産を渡す。
「お!ビールじゃん!」彼女は嬉しそうにそれを受け取る。
これは宴会後、皆に配ったものだった。
そして、冷蔵庫にしまいに行くのであった。
(ふぅ・・・なんとか誤魔化せたか?)そう思いながらも、
彼はほっと胸をなでおろすのだった。
(それにしても・・・)
ユキヤはそう思いながらディバッグ内の底を見つめる。
そこには先ほど貰った大人のオモチャが入っていた。
(これをどうしたもんか・・・)
「どうしたの?」すみれが声をかけてくる。
ユキヤはビクッとして、慌てて返事をする。
「な、なんでもない!」と。
「どうしたの?なんか変だよ?」
すみれが不思議そうに聞いてくる。
「い、いやなんでもないよ」ユキヤは焦りながら答える。
(こいつに見つかったら何を言われるか・・・
というか何をされるか分かったもんじゃないからな・・・)
「ふぅん?」彼女は訝しげにユキヤを見る。
(こいつ、絶対何か感づいてる・・・!)
ユキヤは内心冷や汗をかきながら思うのだった。
つづく
「お、お前も元気だったか?」
ここはある飲み屋の宴会会場。
今日はある高校の同窓会が行われている。
ユキヤはここに参加していた。
「しかしお前高校の時から随分変わっちゃたなぁ」
かつての同級生の1人がユキヤに話しかける。
「まぁ、俺も色々あったんだよ」
ユキヤは苦笑いを浮かべながら答える。
「前は黒髪メガネだったくせにさぁ、勝手に垢抜けやがって」
同級生はそう言って、ユキヤの外見をいじる。
「そうそう、お前なんか高校の頃は地味メガネだったくせに」
他の同級生達もユキヤを茶化す。
「垢抜けたって、メガネ取って髪型変えただけだろ・・・」
ユキヤはため息をつきながら答える。
「いや、それだけじゃないって。なんかこう・・・
全体的に雰囲気も変わった気がする」
「そうそう、なんかオシャレになった感じ」
同級生達は口々に言う。「そ、そうか?」
ユキヤは照れ臭そうに頭を搔く。
「あのさ、お前彼女いるんだろ?どんな子なんだよ」
同級生の1人が興味津々といった様子で聞いてくる。
「まー・・・いるっちゃいるけどさぁ・・・」
ユキヤは少し考えてから答える。
「うぇーマジかよ。どんな子どんな子?かわいい子か?
胸でかい子かー?やっぱ黒髪か?」
ユキヤは返答に困る。
「・・・って、お前の好み並べてどうするんだよ?」
「いいじゃん、俺らの仲だろ?」同級生はニヤつく。
(こいつ高校のときもこんな調子だったな)
ユキヤがそう思っていると・・・・
「おい!お前らそろそろ始めるぞ!」
遠くの方に座っていた男が声を上げる。その男に注目が集まる。
どうやら、今回の主催者兼幹事のようだ。
ユキヤ達はそちらの方へと移動するのだった。
「〇〇高校3年C組出身者の皆さん!
本日は、お忙しい中この同窓会に集まってくれて
ありがとうございまーす!
今日は昔を思い出して沢山楽しんでくださーい!
ということで乾杯!!」
幹事役の男の合図で一斉に皆グラスを合わせる。
酒が入り、かつての旧友同士でそれぞれがやがやと話し始める。
「でさ、お前の彼女ってどんな子なの?」
皆で雑談している中、先程の同級生がしつこく聞いてくる。
「別に・・・普通だよ」ユキヤはそっけなく答える。
(まさか夜になるとあんなになるとは言えない・・・)
「なんだよ、教えろよー」同級生はしつこく聞いてきた。
(こいつ相変わらずしつこいな・・・)
ユキヤは心の中で悪態をつく。
「はーい!皆さん注目!」
しばらく経って皆で程よく酔った後、幹事が声をあげた。
その声に全員がそちらの方を向く。
「これから皆から持ち寄った景品で抽選大会やりまーす」
幹事の言葉に会場から歓声が上がる。
「景品」とは今回の同窓会のために各人が持参したものだ。
宴会場のステージに山と積まれていて、
それぞれに番号が割り振られていた。
「皆が持ち寄ったもののほかに
『シークレット』があるからお楽しみに!」
と幹事は言っていた。
「『シークレット』ってなんだよ?」
その言葉に、皆、興味深そうに幹事の方を見た。
「・・・それは開けてのお楽しみ!」
幹事がニヤニヤして言う。
すると、会場に笑いが起こる。「なんだよそれ~」
そんな反応をよそに幹事は話を進める。
「じゃあ、みんな入場の時に貰った番号札を開いてくださーい!」
その言葉に皆が番号札を開く。
「これから俺が読み上げる番号と賞品の番号が一致したものを
それぞれお持ち帰りいただくルールでーっす!」
幹事はそう言いながら、番号と賞品の書かれたリストが
挟まれているボードを手にする。
「はい―まず1番!」「あ、俺だ」
「はい、ジンベイザメのぬいぐるみ!」「俺男なんだけど・・・」
「はい、ハワイアンビール5本セット!」「やったぁ!」
「俺、『バニーガールコスプレセット』だわ」
「誰だよ!そんなの持ってきたの!?」
そんな会話が飛び交う。皆楽しそうだ。
「はい次は、21番!」
幹事が番号を読み上げて言う。
「・・・・21番は・・おーっと『シークレット』だぁ!
21番の人、いますかー?」
幹事は商品と番号のリストをめくりながら言った。
「あ、俺だ」ユキヤは21番と書かれた番号札を提示した。
「おおー!おめでとう!」皆が一斉に拍手をする。
「まさかお前が当てるとはな・・・」他の男達が言う。
「え、何なの?『シークレット』って?」ユキヤが尋ねる。
「それは開けてからのお楽しみだよ」幹事が言う。
すると、他の男達もニヤニヤしながら頷く。
(なんだこの空気・・・)ユキヤは嫌な予感がした。
「はい、じゃあ景品をどうぞ!」
そう言って幹事は小さな紙袋を手渡した。
「え、何これ?」ユキヤは困惑しながら受け取る。
「彼女が喜ぶものだよ」幹事がニヤつきながら言う。
(なんだ?)そう思いながらも、ユキヤは紙袋を受け取るのだった。
「で、中身何だったんだよ?」席に戻るなり隣の友人が聞いてくる。
「いや、それがまだ開けてなくてさ」ユキヤは答える。
「え、早く開けろよ!」友人が急かすように言う。
(仕方ないなぁ)そう思いながらも、ユキヤは紙袋を開けることにした。
中に入っていたのは小さな箱だった。
その箱を開けてみると・・・中には・・・
「・・・・なんだこれ?」そこに入っていたのは・・・
所謂『大人のオモチャ』と呼ばれる類のものだった。
(な・・・なんでこんなもの?!)
「ぎゃはは!なんだよそれぇ!」
その途端、周囲で笑いが起こる。
シラフならドン引きされてるところだが、
皆酒が入っているせいか笑いで済んでいた。
「え、なんだよこれ!こんなのが景品なのかよ!」
ユキヤは赤面しながら言う。
(てか女子が貰ったらどうするつもりだったんだよ?!・・・)
あまりに訳が分からないので、思わず頓珍漢なツッコミをしてしまう。
「あはは!確かに彼女が喜ぶんじゃね?!」
友人が爆笑しながら言う。
「いや、こんなの貰っても困るわ!」ユキヤは赤面しながら言う。
(つーか、こんなものもらってどうしろってんだよ?!)
「まぁまぁ、お前彼女いるんだから使えばいいじゃん」
と友人が茶化す。
「使えるか!こんなもん!!」
ユキヤは思わず突っ込んでしまう。
「ぎゃははは!!お前マジかよ!!」
友人はさらに爆笑するのだった。
「彼女に見せてみれば?案外喜ぶかもよ!」
「よ、喜ぶわけ・・・」とユキヤが言いかけて止まる。
(いや・・・喜ぶかも。
ただし、俺に使うオモチャが増えるってことで・・・)
ユキヤはその姿を想像しそうになる自分を
慌てて振り切ろうとするのだった。
「お、おーい茶木くん!大丈夫?!」
幹事が声を上げるのを聞いて我に返る。
(危ない、妄想がはかどってた・・・・)
ユキヤは慌てて、その考えを頭の外に置いたのだった。
そして、こんなものをよこした幹事に突っかかる。
「お前なぁ!いくらなんでも冗談が過ぎるぞ!!」
と怒るのだが、皆ニヤニヤするばかり。
「でも、お前が当てるとは思わなかったからなぁ!」
友人が悪びれも無く言うと他の男達も笑い始めた。
「・・・当てたのが女の子だったらどうするつもりだったんだよ?!」
ユキヤは先ほど考えてた事とまったく同じツッコミをしてしまう。
「あー大丈夫!シクレは男用と女用と用意してたから!」
幹事はそう答えた。「お前なぁ・・・」
(いや、そういう問題じゃないだろ・・・)
ユキヤは呆れてしまった。
「ま、とりあえず当てた以上、持って帰ってくれたまえ」
幹事は笑いながら言う。
(こいつ・・・)ユキヤは心の中で悪態をつく。
「いや、俺はこんなものいらないからな」ユキヤは幹事に言う。
すると、友人が横から口を挟んできた。
「いいじゃん、持って帰って使えよ!」友人が言う。
(こいつら・・・他人事だと思って・・・)
ユキヤは心の中でため息をつく。
「ま、とりあえず持って帰れって!な?」幹事も言ってくる。
「お前らなぁ・・・・」そう言いながらも
渋々受け取ることにしたのだった。
「ほれ、彼女さんを気持ちよくさせてあげなさい」
と誰かがユキヤに対してそんなことを言ってきた。
「うるせぇ!」ユキヤはその言葉に悪態をつく。
友人達は大盛り上がりである。
そんな友人を恨めしく思うものの、
景品をもらってしまった以上、
何も言えないのがもどかしいところである。
「じゃ、そろそろお開きにしますか」幹事が言う。
そして会計を済ませて解散となったのであった。
「じゃあな!今度彼女さん紹介しろよー!」
友人がそう言ってくる。
(こいつら・・・また俺を弄る気満々だな)
ユキヤは心の中で悪態をつくのだった。
その後、二次会に行くという友人たちと別れ、
一人電車に乗った。
電車の中で彼は考える。
(これをあいつに見せて、気持ちよくさせられるのは・・・
俺だよな・・・間違いなく。)
ユキヤは、その『オモチャ』を見ながらため息をつく。
今日集まった級友たちは、今の彼の特殊な状況を知らない。
というか、知らせないように立ち回っている。
(まさか、こんなものを貰ってしまったなんて言えない・・・)
ユキヤは心の中でつぶやく。
彼女であるすみれとの夜の生活は
今やすっかり逆転してしまっている。
ここ1年以上、夜になるとユキヤが彼女に主導権を奪われ、
好き放題にされている。
その事を友人達に言う気にはならなかった。
ユキヤは内心ため息をつく。
(あいつには見せないでおいて、
こっそり持ち帰って隠しておくか・・・)
そう思い、それを自分のディバッグの中に入れた。
***
「ただいま」
「おかえり、同窓会どうだった?」
ユキヤが家に帰ると、すみれが出迎えてくれた。
「ああ、みんな相変わらずで楽しかったよ」
ユキヤはそう答えながら靴を脱ぐ。
そんな彼の様子を見て、すみれはニヤニヤしながら言う。
「あれぇ?なんかいい事あった?」
(こいつ・・・)
ユキヤは思うものの、表情に出さないようにする。
しかし、付き合いの長い彼女にはバレているかもしれない。
彼女はたまに勘が鋭い時がある。
「いや、別に?」とユキヤははぐらかす。
「怪しいなぁ・・・」すみれがニヤニヤしながら言う。
(くそ・・・こいつ絶対勘づいてやがる)
「な、何もないよ。仲いい友達とバカ話してただけだし」
と、なんとか誤魔化そうとするユキヤであったが・・・
「・・・そう。ま、いいわ」
彼女はそう言うと、台所の方に向かって行った。
(あ、危ねぇぇぇ)
彼の背中には冷や汗が流れる感覚があった。
「ね、なんかお土産とかないの?」
すみれは台所からユキヤに声をかける。
「あ、ああ。ほらこれ」と、ユキヤは彼女にお土産を渡す。
「お!ビールじゃん!」彼女は嬉しそうにそれを受け取る。
これは宴会後、皆に配ったものだった。
そして、冷蔵庫にしまいに行くのであった。
(ふぅ・・・なんとか誤魔化せたか?)そう思いながらも、
彼はほっと胸をなでおろすのだった。
(それにしても・・・)
ユキヤはそう思いながらディバッグ内の底を見つめる。
そこには先ほど貰った大人のオモチャが入っていた。
(これをどうしたもんか・・・)
「どうしたの?」すみれが声をかけてくる。
ユキヤはビクッとして、慌てて返事をする。
「な、なんでもない!」と。
「どうしたの?なんか変だよ?」
すみれが不思議そうに聞いてくる。
「い、いやなんでもないよ」ユキヤは焦りながら答える。
(こいつに見つかったら何を言われるか・・・
というか何をされるか分かったもんじゃないからな・・・)
「ふぅん?」彼女は訝しげにユキヤを見る。
(こいつ、絶対何か感づいてる・・・!)
ユキヤは内心冷や汗をかきながら思うのだった。
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