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第22話:デートとケーキと地雷女(その1)
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「バイトがこんなに長引くなんて・・・」
夜の街で紺野希美は家路を急いてでいた。
バイトが予想以上に長引き、予定より1時間以上遅れてしまった。
なるべく明るい道を選んでいると、どうしても大通りに出てしまう。
明るいのはいいのだが、会社帰りの酔っぱらいの姿もちらほら見える。
「早く帰ろう・・・」
そう思った瞬間、誰かに肩がぶつかった。
「す、すいません」「どこ見て歩いてんだよ!」
「ちょっと、やめてください」
紺野希美は中年男に絡まれた。
(最悪だ・・・)
よく見ると相手はかなり酔っている。「あ?何見てんだよ?」
(早く逃げなきゃ・・・)
彼女はその場を立ち去ろうとするが、腕を掴まれてしまった。
「おい!待てって!」
「だから、やめてください!!」
紺野は慌てて振りほどこうとするが、
相手の力が強すぎて離してくれない。
「あ、あの・・・私急いでるんです・・・」
「ああ?ふざけんなよ!こっち来い!」
(うう・・・誰か助けて!!)
紺野がそう思った瞬間だった。後ろから声がした。
「おい、何してんだ?」
振り返るとそこには、若い男がいた。
「あ?なんだお前?」
若い男は、中年男の腕を掴んだ。そしてそのまま捻り上げた。
「いてて!離せ!」
(え!?)
紺野は何が起こったのか分からなかったが、
男が痛そうにしているのを見て少し驚いた。
「いい年して女の子に何してんだよ?」
「くそ!覚えてろよ!」
(あ、行っちゃった・・・)
男は絵にかいたような捨て台詞を残して逃げていった。
紺野は呆然としていた。すると男が話しかけてきた。
「大丈夫だった?この時間、この辺り変なの多いから気をつけてな」
「あ、ありがとうございます・・・」
紺野は戸惑いながらも礼を言った。
「じゃ、俺はこれで」
そう言うと彼は雑踏に消えた。
紺野はしばらく立ち尽くしていた。
そして小さな声でこうつぶやいた。
「みつけた・・・私の・・・王子様」
***
「・・・というわけで調査の結果、
その男の人はうちの大学3年の茶木先輩と分かったの!」
1ヶ月後、紺野は友人たちに上記の顛末を報告していた。
「なるほどね。つまり紺野は、その先輩に
また一目惚れしちゃったわけだ」
「毎度毎度よく調べるよね・・・」
「まったく・・・いったいどんな調査したのよ?」
友人たちが若干引き気味に言うが、彼女は気にしてない。
「まあね。でも今回は、いつもよりは早く調べられた方よ」
紺野は得意げだった。
「でもそれなら、茶木先輩に彼女いるのも知ってるよね?」
「そうそう、確か彼女と暮らしているって。
私他の子から聞いたことある」
「なんか、かなり仲がいいって噂だけどね」
彼女たちは好き勝手に話している。
紺野は、1ヶ月前、ユキヤに助けられてから、
すっかり恋に落ちてしまっていた。
その日からというもの、 彼のことを入念に調べ上げ、
今に至っているということだ。
「彼女ってさ、3年の白石って人だっけ?」
「うん、そう。結構可愛い人って聞いたよ」
紺野は知っている情報を彼女たちに伝えた。
(でも・・・)
「私調べたの!茶木先輩は以前浮気を繰り返していたって!!」
「は?」
「だからこっちから猛アタックすればチャンスあるかもって!」
「いやいや、ちょっと待って」
彼女たちは困惑している。紺野の話は突拍子もないものだった。
「だからまだ希望はあるかもしれないって事よ!」
「・・・・・」
紺野は力強く言った。しかし友人たちはドン引きしていた・・・。
「あのー紺野、あのさぁ・・・」
「いや、でもさ・・・」
「うん、それはちょっとね」
「え?何が?」
どうやら紺野の想いが上手く伝わっていないようだ。
「あんたさ・・・タフね」
「え?何が?」
「いや、だってさ・・・」
彼女たちは呆れたように言った。
しかし紺野の想いは変わらないようだ。
「でも私は諦めない!チャンスがちょっとでもある限り!」
「・・・・」
友人たちはちょっと呆れ気味だ。
「じゃ!私これから忙しくなるから!」と紺野は走り去っていった。
彼女を見送った友人たちは・・・
「紺野さ、前にもこんな風にやって失敗してなかった?」
「悪い子じゃないんだけどね・・・
ただ思い込みが激しいというか」
「うん、ちょっとね」
「茶木先輩と彼女さん・・・ご愁傷様というか」
彼女たちは紺野の行く末を案じていた。
***
「そんなわけで、貴方の事が好きです!お付き合いしてください!!」
「は?」
翌日、紺野希美は大学で早速告白していた。
相手はもちろん、あの茶木ユキヤだ。
彼は突然のことに驚きを隠せない様子だ。
(だ、誰だよ?この子)
と彼は思ったが、すぐに平静を取り戻したようだ。
「えーと・・・君は、どちらさんでしたっけ・・・」
「私、紺野希美です!貴方の彼女になる予定の!」
(は?何言ってんだこの子・・・)と彼は思ったが、
あえて触れなかった。
「・・・1ヶ月前助けていただいて・・・あのご恩は忘れません」
「え・・・?」
彼は思い出した。そういえば、そんなこともあった気がする。
(ああ・・・そんな事もあったか)と彼は思い出したが、
特に気にも留めてない出来事だった。
「私、茶木先輩のことが好きです!付き合ってください!」
「・・・いや、無理だし」ユキヤは即答する。
「そ、そんなぁ」紺野はショックを受ける。
しかし彼女も引き下がらない。
「俺さ、彼女いるの。」
「知ってます!」
「はぁ!?」
ユキヤは、紺野の返答に驚いた。しかし彼女は構わず続ける。
「それでも諦められないんです!」
(こいつ何言ってんだ?)と彼は思ったが、あえて触れなかった。
「と、とにかく一度断られたぐらいじゃ私、諦めませんから!」
「はぁ・・・」ユキヤは呆れていた。
紺野の押しの強さに若干引いていた。
「いつか必ずあなたのハートをつかんで見せますから!!」
そう言うと紺野は去っていった。
その勢いにすっかり毒気を抜かれていたユキヤであったが、
「ひ、人の話を聞けぇ!!」
去り行く彼女の背中にそう叫ぶ。
しかしそんな言葉も彼女に耳には入っていなかった・・・。
***
「あはは、そりゃ大変だったねぇ」
「笑い事じゃねえよもう・・・」
ユキヤは、今日紺野に告白された事を、家ですみれに愚痴っていた。
「ごめんごめん、でも良かったじゃない?その子に気に入られてさ」
「良くなってば!地雷系・・・ていうか、
激ヤバ臭しかしない子だったし!」
ユキヤは直感的に感じたことをそのまま話す。
「へぇ、そうなんだ。でもまあ、正々堂々と告白するあたり
悪い子じゃないんじゃない?」
「どこがだよ・・・」とユキヤは頭を抱える。
すみれは彼の頭を撫でながら慰めた。
「でもさ、私がいるって事は教えてるんでしょ?」
「ああ、一応な」
しかし、紺野は既にすみれの存在を知っていた。
その上で告白してきたのだから、
ユキヤにはどうにも彼女の行動が理解できなかった。
「じゃあ、その子にさ、ユキヤは私のものだから
手を出すなって言っておいてよ」
すみれは冗談めかして言った。
しかしユキヤには笑い事ではなかったようだ。
「・・・茶化してる場合じゃないぞ!」
と彼が苦々しく言う。
「あはは、冗談だってば。」
すみれは笑い飛ばしたが、ユキヤはまだ不安そうだった。
(あの子、俺の次はすみれの方に何か言ってくるんじゃないか・・・)
と彼は思った。
「とにかく、お前も気を付けろよ。」「うん、ありがと。」
しかしすみれは、そんなユキヤの不安を他所に、こう考えていた。
(まあ、今更ユキヤが他の子に走るとも思えないけど)と。
***
しかしユキヤの予感はその翌日に的中する事になった。
「・・・茶木先輩は私の理想の王子様なんです!」
「・・・・・。」
すみれは紺野に大学内にあるカフェテリアに呼び出されていた。
そして今まさに、紺野の唐突な物言いを
目の当たりにしていたところである。
「えーと・・・つまり、ユキヤは私の理想の王子様ってこと?」
「はい!その通りです!」と紺野は自信満々に答えた。
(いや、意味わかんないんだけど)すみれは心の中でツッコミを入れた。
そんなすみれを余所に紺野は語り続ける。
「はい、なので白石さんには茶木先輩と別れて欲しいなって!」
(ちょっと待てい!!)
「え?」すみれは困惑する。
「い、今なんて言った・・・?」
「ですから、白石さんには茶木先輩と
別れて欲しいなって言ったんですよ」
と紺野は悪びれもせずに言う。
(こ、これは・・・予想以上だね・・・)
その斜め上な言動に流石のすみれも顔をひきつらせた。
「と、唐突だね・・・なんか」
「はい、でもこれは白石さんにとっても悪い話じゃないんですよ」
紺野は自信満々に続ける。
「茶木先輩は私のものになりますから!
つまり私は2人のキューピットになるんです!」
(いや、そうはならんやろ!?)すみれは心の中でツッコミを入れた。
(この子、ヤバい・・・)と彼女は思った。
「えーと、つまり私とユキヤが別れてくれれば
貴女は満足って事?」
「はい!」紺野はニッコリと答える。
「そこまでして・・・人の彼氏欲しいんだ・・・」
すみれは呆れ気味に言う。しかし紺野は相変わらず笑顔だ。
「はい!だって理想の王子様ですから!他にいないんです!」
「王子様・・・ねぇ・・・」
「はい!男らしくて、強くて、優しくて、カッコよくて・・・」
(あいつ、そこまで・・・かなぁ)
ここまで聞いていたすみれだったが、ふとした違和感を感じた。
いくら自分の彼氏の事とはいえ、
流石にそこまでベタ褒めだと疑問が沸く。
(優しくてかっこいいのは確かだけど・・・
すぐに調子に乗るし、やたら悪態はつくし、軽口はたたくし、
部屋にお菓子あると一人で勝手に食べちゃうし・・・
そこまでパーフェクトな王子様って感じじゃないんだよね。)
すみれは、そこまで考えたところでハッとした。
(いや・・・待てよ?)
紺野がユキヤの事をベタ褒めしているのも、
恐らく彼の事をよく知らないからだろう。
(・・・そうだ!)すみれはここで何かを思いつく。
「ねぇ・・・紺野さん!」
「はい?」
「これ・・・私からの提案なんだけど」
つづく
夜の街で紺野希美は家路を急いてでいた。
バイトが予想以上に長引き、予定より1時間以上遅れてしまった。
なるべく明るい道を選んでいると、どうしても大通りに出てしまう。
明るいのはいいのだが、会社帰りの酔っぱらいの姿もちらほら見える。
「早く帰ろう・・・」
そう思った瞬間、誰かに肩がぶつかった。
「す、すいません」「どこ見て歩いてんだよ!」
「ちょっと、やめてください」
紺野希美は中年男に絡まれた。
(最悪だ・・・)
よく見ると相手はかなり酔っている。「あ?何見てんだよ?」
(早く逃げなきゃ・・・)
彼女はその場を立ち去ろうとするが、腕を掴まれてしまった。
「おい!待てって!」
「だから、やめてください!!」
紺野は慌てて振りほどこうとするが、
相手の力が強すぎて離してくれない。
「あ、あの・・・私急いでるんです・・・」
「ああ?ふざけんなよ!こっち来い!」
(うう・・・誰か助けて!!)
紺野がそう思った瞬間だった。後ろから声がした。
「おい、何してんだ?」
振り返るとそこには、若い男がいた。
「あ?なんだお前?」
若い男は、中年男の腕を掴んだ。そしてそのまま捻り上げた。
「いてて!離せ!」
(え!?)
紺野は何が起こったのか分からなかったが、
男が痛そうにしているのを見て少し驚いた。
「いい年して女の子に何してんだよ?」
「くそ!覚えてろよ!」
(あ、行っちゃった・・・)
男は絵にかいたような捨て台詞を残して逃げていった。
紺野は呆然としていた。すると男が話しかけてきた。
「大丈夫だった?この時間、この辺り変なの多いから気をつけてな」
「あ、ありがとうございます・・・」
紺野は戸惑いながらも礼を言った。
「じゃ、俺はこれで」
そう言うと彼は雑踏に消えた。
紺野はしばらく立ち尽くしていた。
そして小さな声でこうつぶやいた。
「みつけた・・・私の・・・王子様」
***
「・・・というわけで調査の結果、
その男の人はうちの大学3年の茶木先輩と分かったの!」
1ヶ月後、紺野は友人たちに上記の顛末を報告していた。
「なるほどね。つまり紺野は、その先輩に
また一目惚れしちゃったわけだ」
「毎度毎度よく調べるよね・・・」
「まったく・・・いったいどんな調査したのよ?」
友人たちが若干引き気味に言うが、彼女は気にしてない。
「まあね。でも今回は、いつもよりは早く調べられた方よ」
紺野は得意げだった。
「でもそれなら、茶木先輩に彼女いるのも知ってるよね?」
「そうそう、確か彼女と暮らしているって。
私他の子から聞いたことある」
「なんか、かなり仲がいいって噂だけどね」
彼女たちは好き勝手に話している。
紺野は、1ヶ月前、ユキヤに助けられてから、
すっかり恋に落ちてしまっていた。
その日からというもの、 彼のことを入念に調べ上げ、
今に至っているということだ。
「彼女ってさ、3年の白石って人だっけ?」
「うん、そう。結構可愛い人って聞いたよ」
紺野は知っている情報を彼女たちに伝えた。
(でも・・・)
「私調べたの!茶木先輩は以前浮気を繰り返していたって!!」
「は?」
「だからこっちから猛アタックすればチャンスあるかもって!」
「いやいや、ちょっと待って」
彼女たちは困惑している。紺野の話は突拍子もないものだった。
「だからまだ希望はあるかもしれないって事よ!」
「・・・・・」
紺野は力強く言った。しかし友人たちはドン引きしていた・・・。
「あのー紺野、あのさぁ・・・」
「いや、でもさ・・・」
「うん、それはちょっとね」
「え?何が?」
どうやら紺野の想いが上手く伝わっていないようだ。
「あんたさ・・・タフね」
「え?何が?」
「いや、だってさ・・・」
彼女たちは呆れたように言った。
しかし紺野の想いは変わらないようだ。
「でも私は諦めない!チャンスがちょっとでもある限り!」
「・・・・」
友人たちはちょっと呆れ気味だ。
「じゃ!私これから忙しくなるから!」と紺野は走り去っていった。
彼女を見送った友人たちは・・・
「紺野さ、前にもこんな風にやって失敗してなかった?」
「悪い子じゃないんだけどね・・・
ただ思い込みが激しいというか」
「うん、ちょっとね」
「茶木先輩と彼女さん・・・ご愁傷様というか」
彼女たちは紺野の行く末を案じていた。
***
「そんなわけで、貴方の事が好きです!お付き合いしてください!!」
「は?」
翌日、紺野希美は大学で早速告白していた。
相手はもちろん、あの茶木ユキヤだ。
彼は突然のことに驚きを隠せない様子だ。
(だ、誰だよ?この子)
と彼は思ったが、すぐに平静を取り戻したようだ。
「えーと・・・君は、どちらさんでしたっけ・・・」
「私、紺野希美です!貴方の彼女になる予定の!」
(は?何言ってんだこの子・・・)と彼は思ったが、
あえて触れなかった。
「・・・1ヶ月前助けていただいて・・・あのご恩は忘れません」
「え・・・?」
彼は思い出した。そういえば、そんなこともあった気がする。
(ああ・・・そんな事もあったか)と彼は思い出したが、
特に気にも留めてない出来事だった。
「私、茶木先輩のことが好きです!付き合ってください!」
「・・・いや、無理だし」ユキヤは即答する。
「そ、そんなぁ」紺野はショックを受ける。
しかし彼女も引き下がらない。
「俺さ、彼女いるの。」
「知ってます!」
「はぁ!?」
ユキヤは、紺野の返答に驚いた。しかし彼女は構わず続ける。
「それでも諦められないんです!」
(こいつ何言ってんだ?)と彼は思ったが、あえて触れなかった。
「と、とにかく一度断られたぐらいじゃ私、諦めませんから!」
「はぁ・・・」ユキヤは呆れていた。
紺野の押しの強さに若干引いていた。
「いつか必ずあなたのハートをつかんで見せますから!!」
そう言うと紺野は去っていった。
その勢いにすっかり毒気を抜かれていたユキヤであったが、
「ひ、人の話を聞けぇ!!」
去り行く彼女の背中にそう叫ぶ。
しかしそんな言葉も彼女に耳には入っていなかった・・・。
***
「あはは、そりゃ大変だったねぇ」
「笑い事じゃねえよもう・・・」
ユキヤは、今日紺野に告白された事を、家ですみれに愚痴っていた。
「ごめんごめん、でも良かったじゃない?その子に気に入られてさ」
「良くなってば!地雷系・・・ていうか、
激ヤバ臭しかしない子だったし!」
ユキヤは直感的に感じたことをそのまま話す。
「へぇ、そうなんだ。でもまあ、正々堂々と告白するあたり
悪い子じゃないんじゃない?」
「どこがだよ・・・」とユキヤは頭を抱える。
すみれは彼の頭を撫でながら慰めた。
「でもさ、私がいるって事は教えてるんでしょ?」
「ああ、一応な」
しかし、紺野は既にすみれの存在を知っていた。
その上で告白してきたのだから、
ユキヤにはどうにも彼女の行動が理解できなかった。
「じゃあ、その子にさ、ユキヤは私のものだから
手を出すなって言っておいてよ」
すみれは冗談めかして言った。
しかしユキヤには笑い事ではなかったようだ。
「・・・茶化してる場合じゃないぞ!」
と彼が苦々しく言う。
「あはは、冗談だってば。」
すみれは笑い飛ばしたが、ユキヤはまだ不安そうだった。
(あの子、俺の次はすみれの方に何か言ってくるんじゃないか・・・)
と彼は思った。
「とにかく、お前も気を付けろよ。」「うん、ありがと。」
しかしすみれは、そんなユキヤの不安を他所に、こう考えていた。
(まあ、今更ユキヤが他の子に走るとも思えないけど)と。
***
しかしユキヤの予感はその翌日に的中する事になった。
「・・・茶木先輩は私の理想の王子様なんです!」
「・・・・・。」
すみれは紺野に大学内にあるカフェテリアに呼び出されていた。
そして今まさに、紺野の唐突な物言いを
目の当たりにしていたところである。
「えーと・・・つまり、ユキヤは私の理想の王子様ってこと?」
「はい!その通りです!」と紺野は自信満々に答えた。
(いや、意味わかんないんだけど)すみれは心の中でツッコミを入れた。
そんなすみれを余所に紺野は語り続ける。
「はい、なので白石さんには茶木先輩と別れて欲しいなって!」
(ちょっと待てい!!)
「え?」すみれは困惑する。
「い、今なんて言った・・・?」
「ですから、白石さんには茶木先輩と
別れて欲しいなって言ったんですよ」
と紺野は悪びれもせずに言う。
(こ、これは・・・予想以上だね・・・)
その斜め上な言動に流石のすみれも顔をひきつらせた。
「と、唐突だね・・・なんか」
「はい、でもこれは白石さんにとっても悪い話じゃないんですよ」
紺野は自信満々に続ける。
「茶木先輩は私のものになりますから!
つまり私は2人のキューピットになるんです!」
(いや、そうはならんやろ!?)すみれは心の中でツッコミを入れた。
(この子、ヤバい・・・)と彼女は思った。
「えーと、つまり私とユキヤが別れてくれれば
貴女は満足って事?」
「はい!」紺野はニッコリと答える。
「そこまでして・・・人の彼氏欲しいんだ・・・」
すみれは呆れ気味に言う。しかし紺野は相変わらず笑顔だ。
「はい!だって理想の王子様ですから!他にいないんです!」
「王子様・・・ねぇ・・・」
「はい!男らしくて、強くて、優しくて、カッコよくて・・・」
(あいつ、そこまで・・・かなぁ)
ここまで聞いていたすみれだったが、ふとした違和感を感じた。
いくら自分の彼氏の事とはいえ、
流石にそこまでベタ褒めだと疑問が沸く。
(優しくてかっこいいのは確かだけど・・・
すぐに調子に乗るし、やたら悪態はつくし、軽口はたたくし、
部屋にお菓子あると一人で勝手に食べちゃうし・・・
そこまでパーフェクトな王子様って感じじゃないんだよね。)
すみれは、そこまで考えたところでハッとした。
(いや・・・待てよ?)
紺野がユキヤの事をベタ褒めしているのも、
恐らく彼の事をよく知らないからだろう。
(・・・そうだ!)すみれはここで何かを思いつく。
「ねぇ・・・紺野さん!」
「はい?」
「これ・・・私からの提案なんだけど」
つづく
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