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第88話:レトロなゲームをプレイしましょ(その7)(完結)

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しばらく後・・・
優里恵から教えてもらった攻略法をもとに
3人はまた屋敷に集まってゲームを再開していた。

「・・・なるほど、優里恵さんの言った通り、
この子は数値が上がりにくい代わりに、一度上がった数値は
下がりにくいのですのね」
「序盤は比較的上げやすい『信頼』と『快楽』を上げて
比較的早めに使えるアイテムを増やして、できる調教を追加して
早い段階から多少強めの調教をしても極端に数値が下がったりしないから
期限内に目標数値を達成できる確率が上がる・・・と」
「流石隠れキャラだけあって、一筋縄では参りませんわね」
「ええ・・・でも、どうにかなりそうでのよ」
3人は優里恵の助言に感謝しつつゲームを進めていく。

そしていよいよエンディング内容が決まるという
最後の選択肢にたどり着いた。

「さて・・・最後はどのエンディングにいたしましょうか?」
結衣が2人に問いかける。
「最後の選択肢は『彼女を屋敷から解放して自由にする』と
『彼女を手元に置いて一緒に暮らす』この二つですのね。」
「優里恵さんの話ではどちらもバッドエンドではないとの事ですが・・・」
友麻が少し考えながら言う。

「では、こうしませんか?」
暫く考えてた結衣がそういいながら顔を上げる。
「『せーの』で皆で言って多かった意見にしましょう」
「ええ、それがよろしいですわね。」
「では、行きますわよ」
3人は同時に息を吸い込んだ・・・。
「せーのっ!」
「手元に置く!」「「自由にする!!」」
3人は殆ど同時に声にした。
「・・・っ」
・・・結果は姉妹が『解放』黒川が『手元に』であった。

「・・・ふふ、やはり私たちは似た者同士ですわね」
「ええ、そうですわね。お姉さま」
「では、『解放』にしますか?」
「そうですわね。でも・・・」
そう言って結衣は黒川を見る。

「何故お前は『手元に置く』を選んだのですか?」
「え・・・?」
突然の質問に黒川は困惑する。
「・・・そ、それは・・・」
彼は口ごもるがその理由は、先日このゲームのトゥルーエンドである
「奴隷を売却する」という内容に不安を覚えたことと同じことであった。
(俺は・・・お二人と離れたくない)
その思いから、彼は『手元に置く』という選択をしたのだ。
しかしそれをそのまま伝えるのは躊躇われる。

「ふふ、答えたくないなら答えなくてよろしいですわ。
その態度を見れば、大体のことは把握できますから」
結衣がそう言ってにっこりと笑う。

「きっと、大丈夫ですわよ」結衣は更に黒川の肩をポンと叩く。
「え・・・?」
「そうそう、直前にセーブして、そこからまた始めればいいんですのよ」
「・・・友麻、そういう事ではありませんわ」
結衣は友麻に呆れながら言う。
「え、違うんですの?」
友麻が不思議そうに首を傾げた。

「・・・とにかく続きを始めましょう」
結衣の言葉に3人はゲームを再開した。

―――――

『・・・私が彼女を解放して数ヶ月。彼女がどうなったのか分からない。
周りには大金をはたいて女を解放するなんて馬鹿を事をしたと笑う者もいるが
私は後悔していない。彼女の幸せを考えた結果だからだ。

そんなある日、私の部屋のドアをノックする音がする・・・。

「き、君は・・・?!」
ドアを開けたその先にいたのは、まぎれもない彼女だった。

「どうして帰って来たんだ!?」
「せっかく解放して頂きましたが・・・
私はあなたの傍を離れたくありません。
この数ヶ月、離れていて分かりました。
・・・あなたがいない世界など私にとっては何の意味もないと!」
「なんて・・・なんて馬鹿な事を!」
「はい、馬鹿でも構いません。お願いです、私を・・・」

私は彼女を強く抱きしめた。
私の腕の中で微笑む彼女を見て、
私の心は言いようのない幸福感に包まれた。

この先、私達はどうなるのかは分からない。
しかし満たされた日々を送れそうだ・・・。

FIN』

――――――――

「・・・・え?」
「だから言いましたでしょう?大丈夫って。」
結衣は少しだけ誇らしく笑う。
「まさかお姉さま、この結末を見抜いていらしたの?」
友麻が驚いた顔で尋ねる。
「ふふ、まさか」結衣は笑いながら答えた。
「ではどうして?」
「・・・ただの勘ですわ」と結衣は答える。
しかしその表情には自信があった。

「一度紡いだ絆というものは早々簡単に切れないという事です。」
結衣はそう言ってウインクして見せた。
「お前だって今すぐ私たちから離れたくはないでしょう?」
結衣が黒川の頭を優しく撫でる。
(そうか・・・)
黒川は結衣の言葉の意味を理解する。
「・・・はい」
彼は素直に答えた。

「変態のお前は私たち無しでは生きられないという事ですのよね」
「友麻様・・・その、あまり露骨な表現は・・・」
友麻の不躾な言葉に黒川は赤面する。

「あら、事実でしょう?」
「・・・はい」黒川は恥ずかしそうに答えた。
(そうだ・・・俺はもうこの人たちの奴隷なんだ・・・)
彼は改めてその事を認識した。
そしてそれはとても幸せなことだと感じた。

***

「あぁもう!じれったい女ですわね!迷わず押し倒しましょう!!」
「結衣様・・・これはそういうゲームではないので」
数日後、また友麻が古いゲームをオークションで落としたので
皆でプレイしていた。
今度のは所謂「純愛ゲーム」で選択肢を選び目当ての女の子との恋を
成就されるというものだ。
18禁要素を抜いたものが家庭用のハードにも移植されており
タイトルだけなら黒川も知っているものだった。

「まぁまぁお姉さま。この「純愛ルート」を全員分クリアしたら、
ひたすら鬼畜でマニアックなエロを楽しめる、「鬼畜ルート」が
解放されますのよ」
「そうですか・・・流石に一人につきHなシーンが一つしかないのは
伝説のエロゲにしては物足りなさすぎると思いましたが」

「そうそう、だからそれまではこのじれったくも不器用な
甘酸っぱい恋の駆け引きを楽しみましょう」
友麻はそう言って目を輝かせる。
(友麻様、こういうの好きみたいだしな・・・)
黒川はそんな事を考えながらゲームをプレイしていた。

「で、あと何人落とせばいいんですか?」
「ええと・・・あと8人ほどですわね」
友麻が取説の人物欄を見ながら説明する。

「8人て・・・これは1周するのに2時間以上掛かりますよ!」
ゲーム自体が純愛系というだけあって、
シナリオが個別にしっかり練られており、
いくら既読スキップ機能があったとしても、
1キャラ分のシナリオのボリュームがかなりあった。
(なんか物凄く嫌な予感がしてきた・・・)
黒川は画面を見ながら途方に暮れる。

「もちろんそれだけではございませんわ。この後の鬼畜ルートも
キャラ別にシナリオが用意されているという事ですから、
そちらもよろしくお願いしますのよ」

「え、そうなんですか?」
黒川は驚いて聞き返す。
「ええ、しかも分岐するルートも複数用意されてますのよ」
友麻がにっこりと笑う。
(つまり当分は続けなきゃいけないって事か・・・・)
黒川はがっくりと肩を落とした。
「さあ、どんどん進めましょう」
「そ、そうですね・・・」

友麻の元気な声に黒川は深くため息を吐いた。

おわり
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