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第84話:レトロなゲームをプレイしましょ(その3)

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3日後・・・。
「見つかりましたのよ!」
大学で友麻が黒川を見つけるなり興奮気味にそう声をかける。
「・・・・ええと・・・何をです?」
彼女の唐突な物言いに、少々黙ってしまう黒川だったが
少々面食らいながらも何とか返す。

「あら失礼・・・私としたことが」
黒川の返事に少し冷静さを取り戻した友麻は、一呼吸おいてから
続きを話し出した。
「ありましたのよ!例のゲームの攻略サイトが!」
「え?!ほ、本当ですか?・・・でもえらい早いですね。」
黒川は驚いた様子で聞きかえす。
「はい!ダメもとでレトロゲーの攻略サイトを
片っ端から検索したら・・・なんとありましたのよ!」

(・・・あ、結構あっさり見つかったんだ)
見つかったのは良かったが、それと当時に先日あれだけ盛り上がったのは
一体何だったんだといささか拍子抜けする気持ちもどこかにあった。

「まぁ少々簡単すぎる気もしますが、何はともあれ
これでゲームを再開することが出来ますのよ!」

「そ、そうですね・・・」
(あ、友麻様にも自覚あるんだな・・・)
「では、また週末に集まって皆で続きをやりましょう!」
「は、はい」
友麻は嬉しそうに黒川の手を取り、そう宣言した。

(これでやるのがエロゲじゃなかったら、
普通に楽しみなんだけどな・・・)
楽しそうに話す友麻を見ながら、黒川は
心の中でそうつぶやくのだった。


***

「・・・めんどくさい女ですわねまったく」
「思わず極太ディルドを初めての相手にして
やりたくなりますのよ・・・」
「いっそあの大根を上と下の口に味合わせてやりましょうか?」
「あら、それはいいですわね。食べ物も無駄になりませんし・・・」

「あのお二人とも・・・落ち着いて」

週末、姉妹と黒川は再び屋敷に集まってゲームをしていた。
今回は攻略サイトのお陰もあってか、シナリオを色々楽しめている。
(しかし・・・)

「おお、未亡人さん、遂に手首が入りましたのよ!」
「・・人の身体は無限の可能性に満ちていますわ」
(う、うう・・・)
ゲームの中のイベント展開に興奮気味に話す二人の指示を聞きながら
彼はプレイを続けていた。
(お二人に出会ってから、この手の会話には
大分慣れてきたとは思ってたけど・・・)

「まぁ、こんなところに生で入れるなんて・・・
感染症になっても知りませんわよ!」
「後ろでした後で前でするなんて・・・
一体どういう衛生観念をしていますの!」
(ううう・・・)

「カテーテルって初めてだと難しいのですよね。」
「そうそう、下手糞にやると痛みと苦痛だけに
なってしまいますし・・・」
(ぐぅぅ・・・)

「あら・・・これはまたお掃除が大変そう・・・」
「バナナとミルクが勿体ないですわね・・・」
「でも『涙が出るほどおいしい』と喜んでますのよ」
(助けて・・・)

この姉妹、容赦がなかった・・・。
「・・・」
こんなハードな内容でも、まがりなりにもプロの調教師である
彼女たちにとっては、普通のゲームと同じ感覚で楽しめていた。

そしてそのアナーキーな内容をさも普通のゲームを
やっているかのように無邪気にはしゃぎながら実況する・・・。
(やっぱり地獄だ・・・)

そしてそんな2人の地獄のような会話を聞いてて
黒川は思わず泣きそうな気分になってくる。

「ん?どうしましたの?文月?」
黒川の視線に気づき友麻が声をかける。

「い、いえ・・・これで4人全員の個別EDに到達したので、
つぎから隠れキャラの攻略が可能になりますね」
黒川はごまかすようにタイトル画面を見る。

キャラ選択場面に行くと、最初の4人の他に
新しく金髪のメイドが追加されていた。
「あら、このメイドさんは・・・」
「確かいつも屋敷内にいて、ゲーム中に攻略のヒントをくれたり
一部のプレイをお手伝いしていた方ですわ」
「なるほど、このメイドさんにも個別EDがあるんですね」
黒川は画面を見ながらそう呟く。
「では、さっそくプレイしてみましょう!」
友麻が元気よく宣言する。

『何故・・・私を選んでしまったんですか?』
メイドを選ぶと最初にこんなメッセージが表示された。
「いきなり意味深ですわね・・・」
「初期パラメータは、従順度と忠誠度が高めになってますね」
「隠れキャラという事は、きっと他の子とは明らかに違った
アプローチになると思いますのよ」
画面を見ながら結衣と黒川がこんなことを言っていると・・・。

「う・・・」
タブレットで攻略サイトを見ていた友麻が
ちょっとげんなりした顔をする。
「どうしました?」
「この子の個別エンドの条件は・・・かなり面倒ですのよ」
「え・・・?」

***

更に1時間後・・・
「また・・・バッドエンドですね・・・」
黒川が画面を見てため息を吐く。
「選択肢は勿論ですが調教期間中のパラメータ数値の管理が
タイトすぎますのよ・・・」
友麻も少しうんざりしてきていた。
「プロローグの後の出会いイベントも、選択肢を間違えると 
即バッドエンドルートですものね・・・」
「おまけにほかのキャラと比べて格段に数値が
上がりにくいですよ・・・」
黒川は疲れた顔で結衣に答えた。

「攻略サイトは目的数値は出てても、効率よく数値を上げる方法は
出てませんものねぇ・・・」
友麻も攻略サイトを見て渋い顔している。
「昔はエロゲのEDをコンプするのも大変だったんですわね」
「まぁ、攻略サイトがあっただけマシですけど・・・」
黒川は苦笑しながら答える。

『・・・もう、私の事なんか放っておいてください』
(うう・・・)
メイドの個別EDはバッドエンドが多く、
なかなか目的数値まで上げられない。
そのため何度も同じイベントを繰り返さなくてはならず、 
いくら既読スキップモードがあるとはいえ
それが中々精神的にキツかった・・・。

「どうしましょうかね?このままじゃ埒があきませんよ?」
「・・・とは言っても正直打つ手は・・・」
友麻がそう言いかけた時、結衣のスマホが鳴った。

「はい、もしもし結衣ですが・・・あ、あらお久しぶりです」
結衣が電話の相手に挨拶をする。
「・・・はい、今日は家におりますけど・・・」
そして一頻り何やら話すと・・・
「・・・では、お待ちしておりますわ」
そう言って電話を切った。
(誰からだったんだろう?)
黒川のそんな疑問をよそに
結衣は二人の方に向き直る。

「友麻、文月、申し訳ございませんが今日のゲームは
これにて終了です。」

「え・・・どうかしたんですか?!」
「何か急用でも入りましたの?」
突然の結衣の発言に、黒川と友麻は驚く。
「・・・お客様が来ますわ」

***

「ごめんなさいね~突然来たりして」
2時間後、屋敷を訪ねてきたのは姉妹の叔母である優里恵であった。
いつものように姉妹の黒を基調としたゴシックドレスとは対照的に
淡いパステルカラーのロリータドレスを着ていた。

(相変わらず、美人で若々しいけど年齢不詳系の人だな・・・)
黒川は心の中でそんな感想をもらす。
しかし彼女は姉妹の一族の一人だ。
しかも彼女たちの師匠でもある。
黒川は優里恵のこの優しく朗らかな笑顔の下にある
本性を知っているのせいか、少し緊張する。

「いえいえ、お気になさらず」
優里恵の言葉に結衣はにこやかに答える。
「それで今日はどうなさいましたの?」
友麻が優里恵にそう尋ねる。

「だってぇ、仕事で3ヶ月も日本にいなかったのよ。
久しぶりに可愛い姪たちの顔を見たくなっちゃって。
あと、お土産もあるしね」
そう言って優里恵は手に持っていた紙袋をテーブルの上に置く。
「まぁ、ありがとうございますわ!」
友麻は嬉しそうにその袋を手に取る。

「あ、あの・・・俺、いていいんでしょうか・・・」
先程と同じ状態で応接室の椅子に座る黒川が
遠慮がちにそう言うと・・・。
「あら、構わないですよ。君は相変わらずこの子たちに
溺愛されてるみたいね」優里恵は面白そうにそう言った。
「い、いえ・・・そんな・・・」
黒川は赤面しながら答える。

「そういえば今日、砂原はどうしましたの?
連れてきていないようですが。」
「ああ、彼はね・・・」
砂原の事を聞かれた優里恵は少し妖艶な笑みを浮かべる。

「長い間一人で退屈してたみたいだったから、
今日は玄関先に裸で縛り付けて放置してきたわよ。
鍵もかけてこなかったから、今頃色々妄想して
スリルを楽しんでるんじゃないかしら?」
「まぁ、それはまた・・・」
優里恵の言葉に結衣は面白そうに笑う。
(やっぱりこの人もお二人の親族だ・・・)
黒川は引きつり笑いを浮かべながら、心の中でそうつぶやくのだった。

「ところで今日は3人集まって何をしていたの?」
優里恵は黒川に紅茶を淹れてもらいながら、そう尋ねる。
「はい、実は・・・」
黒川はゲームの事を優里恵に話した。
「なるほどねぇ・・・それでそのゲームがこれなのね」
優里恵がゲームのパッケージを見ながら言う。

「・・・これ難しいのよね。特に隠れキャラの子が」

「!!?」
優里恵の言葉に3人の動きが止まる。
「優里恵さん!このゲームやった事ありますの?!」
「え、ええ・・・昔ちょっとね・・・」
驚いた顔で尋ねる友麻に優里恵はにこやかに答えた。

(待てよ!これ20年前のゲームだぞ?!)
そんなセリフが喉まで出かかった黒川だったが、言ってしまうと
己の命の保証がないのは確実なので必死に飲み込んだ。

「実際にやったのは、随分後に出たリメイク版だけどね」と
優里恵がまるで黒川の心中を見透かしたように言う。
(う、まさか読まれた・・・?!)
黒川は彼女の底知れなさに改めてぞくりとする。

「それで・・・オールクリア・・・されたんですか?」
「まぁね、大変だったけど」
黒川の問いかけに、優里恵は苦笑してそう答えた。
「あの・・・それはどうやって・・・?」
「ああ、それはね・・・」
優里恵は言いかけるが・・・
「ふふ、どうしようかな~」
黒川達の顔を見ながらそうはぐらかす。
「え!そんなぁ~」
「う・・・勿体ぶらずに教えてくださいませ!」

優里恵がもったいぶると、3人は思わず身を乗り出して
 優里恵に懇願するような目を向ける。
そんな3人の様子を見て優里恵はクスクスと笑う。
(まったく、この3人は可愛いわねぇ・・・)
そしてひとしきり笑った後、
「そうねぇ・・・あなた達がそこまで言うなら、条件付きで
教えてあげない事もないかな~」
と、3人に告げた。
「本当ですか?!」
結衣は嬉しそうに言う。

「で、その条件とはね・・・」
「はい」
「私にその子を一晩貸してくれること」

つづく
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