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第79話:厄介なお仕事9「終幕」
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「あらあらこんな状態にされているのに、
こんなに大きくしてしまって・・・」
「う・・・うぅ」
樺島は地下室で全身を縛られた上に天井から吊るされていた。
「こっちもすっかり感じてしまうようになりましたわね」
結衣がそう言って彼の無防備な乳首を強く引っ張る
「はぐぅ・・・!」
その刺激に樺島は思わず切ない声を出してしまう。
しかし今の彼は逃げる事も抵抗する事も出来なかった。
「あら、痛い方がお好きのようですわね」
「う・・・く・・・」
「では、これはどうかしら?」
「ひぎゃっ!あ、あああっ!」
今度はもっと強くつままれる。
しかし樺島はそれに痛みと同時に快感を覚えてしまっていた・・・。
「ふふ・・・もうすっかりマゾに目覚めてしまったようですわね」
「う・・・うう・・・」
樺島は何も言い返せない・・・。
「ここにピアスを付けたらきっと可愛らしいですのよ」
友麻が無邪気に笑いながら乳首を撫でまわす。
「!!!!」
友麻の言葉を聞いた途端、樺島は恐怖のあまり涙目で首を振る。
「あら、嫌なのですか?耳にはこんなに連ピアスを開けてますのに」
そう言って友麻が彼の耳たぶに付いたピアスに触れる。
「う・・・うう」
「ふふ、この子のピアスはきっと弱い自分を強く見せるための
心を守るアイテムのなのでしょう。
男の子は自分を大きく見せたがりますから」
結衣もからかうように続く。
「そうでしたらこんなところに付けたら心を守るどころか
自分の隠された性癖をさらけ出す事になってしまいますものね」
「そうそう、実はこの子の心はとっても弱いのですわ」
「ち、ちが・・・」
樺島は必死に否定しようとするが上手くしゃべれない。
「あら、強がって可愛いですこと」
「ふふ、自分に素直になった方がきっと楽ですわよ」
二人が顔を見合わせて笑う。
「・・・はぁ、はぁ・・・」
そして二人の反応に樺島は何も言い返せなかった・・・。
彼自身女性経験がないわけではない。
というかその目を引く整った外見で
女性が寄ってくることは多かった。
しかしこうして彼女たちに調教されるようになってから、
無意識にだが、樺島の中では自分がこれまでしてきた
普通のセックスが酷く単調なものに思える気持ちが
目覚めていた・・・。
それほどに姉妹たちから惨めに攻められているこの状態は、
これまでのそれとは全く別の 異常な興奮を彼に与えていた。
「あら、こちらももう限界のようですわよ」
「う・・・うぅ・・・」
「ふふ、本当ですね」
姉妹は樺島の様子を確認すると、滑車を回し彼を床へと下ろした。
「え・・・?」
そして両手の戒めをほどいた。
しかし足はそのまま縛られているので歩くことは出来ない。
「さ、手は自由になるよう解放してあげましたわ。」
「その手でお前の好きなようになさいな」
姉妹はそう言うと樺島から少し離れた場所に動いた。
「う・・・うぅ・・・」
樺島は姉妹の言葉に促されるように、
両手を自分の股間へと持って行く。
そしてそのまま激しく弄りはじめた。
「う・・・ぐぅ・・・」
「あら、人目も憚らず自分で始めましたのよ?
恥ずかしくないのでしょうか?」
「ふふ、ここで出さなければまた貞操帯を付けさせられて
宿舎へと戻される事をこの子はわかっていますわ。」
「先日、出す寸前で貞操帯を付けさせらて一晩放置されたのが
相当堪えているようですのよ。」
「やはり口で言って分からない子は貞操帯付けての
寸止め放置に限りますわ」
姉妹はそう言い合いながらクスクスと笑う。
「ああ・・・う・・・うぅ」
「ふふ、もう夢中ですわね・・・」
(くそ・・・手が止まらない)
「はぁ、はぁ・・・」
樺島はあっという間に達しそうになっていた。
「ふふ、もうイッてしまうの?」
「いいですわよ。このド遺物のような姿で盛大に
惨めに果ててしまいなさいな」
「あ・・あぁ・・・ぐうぅ!」
そして樺島のモノの先から白い液がほとばしる・・・
「・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ」
樺島はがっくりとうなだれる。
(ああ・・・俺は・・・本当に変態に・・・)
「ほら、沢山出ましたわよ」
結衣がそう言って樺島の頭を撫でた。
彼はそれに言い返す事もなく恍惚とした表情で
自分で床にぶちまけてしまったものを見つめていた。
そしてその様子を後ろから傍観する黒川の姿があった。
しかし彼もまた、樺島の痴態を見て
これまでにない感情を抱いていた・・・。
***
あの日以降、樺島は大人しくなった。
急に態度や性格が変わったわけではないが、
ただ姉妹たちに反抗したり悪態をつく回数は確実に減っていった。
「・・・なんか物足りなくなってしまいましたわね」
「まだ少し文句は言いますが、こちらのいう事をちゃんと聞きますものね」
「今回の事は全くの想定外ですわ・・・」
結衣がため息を吐く。
「今回は奴隷に堕としきれってオーダーではなかったので
既にミッションコンプリートではありませんの?」
「まだあと1日ほどあるのですけど・・・」
この予想を大きく裏切ったの結果に姉妹が
別の意味で頭を悩ませていた。
そんな彼の変化は調教の時ばかりではなかった。
樺島本人も、調教以外の時間の殆どを
ピアノか机に向かって過ごしていた。
(あのどうしたらいいのか分からない感情を・・・形にしたい)
理由はどうあれ彼が音楽に対して
ここまで情熱を注いだのは初めてだった。
今まではただ気分や思い付きの無目的なものが殆どだったが、
今やりたいのは、自分自身が心躍る曲を作るためだ。
(俺は、おかしくなっちまったのかな・・・)
そんな事を考えながら彼は湧き上がる感情を
譜面にぶつけていく。
日々の調教で体力を消耗した後にも関わらず
一心不乱に手を動かすその姿は、まさに狂気であっただろう。
その狂気の権化ともいえる譜面は、調教終了日には
おびただしい量となり部屋中に散らばっていた・・・。
***
「・・・ん」
最終日の朝、樺島が目を覚ますとそこはベッドの上だった。
「おはようございます」
「ごきげんよう、お目覚めですか?」
横には姉妹と黒川の姿があった。どうやら彼らが
ベッドまで運んでくれたらしい。
(そうか・・・俺ピアノを弾いててそのまま眠ったのか)
樺島は寝ぼけた頭でそんな事を考えていると
「ところでこれ、拝見いたしましたわ」
そう言って友麻が一枚の紙を手渡した。
「・・・あっ!」
それは樺島自身が書き上げた譜面だった。
「え、えっと・・・」
戸惑う樺島に結衣が声をかける。
「ふふ、なかなか面白い曲でしたわ」
「歌詞はまだ少し酷いですけど、
以前のような空虚な感じが無くなって
鬼気迫る感じがよく出てると思いましたのよ」
「・・・!」
その言葉に樺島が起き上がり目を見開く。
「もう、なんて顔をしていますのよ」
「私たちは音楽に関しては素人ですが、
音を嗜む事に関しては人並みの感性は持ち合わせています。
なので良いと感じたものはちゃんと評価したしますわ」
姉妹はそう続けた。
「これ・・・今のお前の感情を
何とか伝わる形にしてみたものですか?」
樺島は無言で頷く。
「お前はここに来て、何を感じましたか?」
結衣が優しい笑顔で聞いてくる。
「・・・」
樺島は少し考えてから、ぽつりぽつりと話し始める。
「・・・最初は、ただ自分の好きな事をやればいいって、
ずっとそう思ってた」
「だけど・・・ここに来て、俺は自分が何もできない事を知った」
姉妹たちは黙って聞いている。
「そしたら、あんたらが動けない俺を好き勝手し始めて
坊主にしたり裸にしたり、俺の身体を散々辱めてくれて・・・」
樺島の顔と声が少し熱を帯びてくる。
(まぁそういう依頼でしたから)
結衣が心の中でツッコみかけるが黙っていた。
「あんたたちは、俺の態度を見ても怯むどころか
見下してバカにしてくるし更に毎日何をしてくるか
全然予想ができなかったし、
考えてる事も全く読めないし・・・
俺は初めて特定の誰かを・・・『怖い』と思った」
(だって本当に言う事やる事があまりに馬鹿臭かったし・・・)
黒川も思わずそんな言葉が喉まで出かかってしまう。
「怖い・・・とは?」
結衣が優しく問いかける。
「あんたたちが相手だと、俺は自分の何もかもを
さらけ出してしまいそうだった・・・。
俺の意志とは無関係に、恥ずかしさも、情けなさも、悔しさも・・・
すべてだ。だから・・・あんたらが怖ったんだ。」
(口にはしてませんがこれには絶対『気持ち良かった事』も
入っていそうですのよ・・・)
友麻もそう茶々を入れたいのをぐっとこらえていた。
「だから俺はそんなぐちゃぐちゃになった感情を
自分なりの形にしたくなった・・・」
樺島はそう言い切る。
「そして出来たのがこの曲だと・・・」
黒川の言葉に樺島が小さく頷く。
「あぁ、こんなに自分の気持ちや感情を
曲にぶつけたのは初めてだ・・・
今まではただ適当に書いてたけど、
自分をさらけ出して全てぶつけるって
こんなに楽しいんだなって知ったよ・・・」
樺島はそう言って少々自嘲気味に笑った。
「お前の気持ちは分かりました。
では次に私からも少し言わせていただきます。」
今度は結衣が口を開く。
「今回依頼された調教はお前を完全な奴隷に堕とす事ではなく
手が付けられない程の素行の悪さと、
動物並みの知能と倫理観何とかしてほしい・・・
という事でした。」
(結衣様、最後まで本当に容赦ない・・・)
相変わらずの歯に衣着せぬ彼女の物言いに
黒川が心の中で突っ込む。
「しかし実際に会ってみればそれに加えて
知性も教養も常識もなく、あるのは才能だけという・・・」
(結衣様、その通りですがもうちょいオブラートに・・・)
黒川も他人事ながら流石に気の毒になってくる。
「社長さんも多少の罰ではお前の百科事典並みに分厚い面の皮は
貫けないと踏んでここによこしたのだと思いますのよ」
友麻が冷静にとどめを刺す。
(友麻様まで・・・!)
黒川は友麻にも心でツッコんだ。
「そうか・・・」
黒川のそんな心配をよそに樺島は苦笑いでそう答えた。
そしてしばらく考え込んだ後に再び言葉を発する。
「そうだな・・・あんたらには散々ひどい目に遭わせられたよ」
彼が自嘲気味に再び笑う。
「ふふ、どういたしまして。でも得たものもありましたでしょう?」
「あぁ・・・そうだな」
樺島は部屋に散らばった譜面を見てそう答える。
「・・・以前のお前のままでしたら、せっかく作ったこの曲も
世に出す事すら叶わなかったでしょうね」
「もう少し周囲に対して柔軟になれば、
多くの人にこの曲を聴いてもらえる可能性も高まりますわ」
「あぁ・・・精進するよ」
姉妹の言葉に樺島がしみじみと答える。
「その言葉、本当かどうか疑わしいですわね」
友麻が腕を組んで疑いの目を向ける。
「・・・まぁ、でも、少しは信じてもいいよ」
樺島はそう答えた。
「その心掛けが長く持つといいのですがね」
「ふふ、でもまぁいいですわ」
姉妹はそう言うと後ろに控えている黒川の方を見た。
「文月、お前はどうですか?この子に何か
言いたいことはありますか?」
「最後だから思い切っていってごらんなさいな」
「え?!」
突然話を振られて黒川はとまどった。
「まぁ、その・・・」
黒川は言葉を詰まらせた。
(言いたいこと・・・)
「あ、あの!樺島さん!」
黒川は思い切って声を上げた。
「お、おう」
樺島は突然大声を出した彼女に少し驚いたが、すぐに向き直る。
「・・・貴方の音楽の才能は確かに本物だと思います。
たとえ万人受けしなくても一部の人の心をつかむのは確実でしょう。
だから思ったほど売れなくても、落ち込んだりしないで下さい。
もし世間に受け入れられなくても、
評価してくれる人は多分いると思います」
「・・・・」
その場にいた全員が黙り、場が凍り付いた。
「あのさ・・・誉めるふりして地獄の堕とすのやめてくれない?」
「な・・・なかなか容赦ないですわね」
「というか、こんな時に脅すような事言ってどうしますのよ・・・」
少し間をおいて皆が口々に言い始める。
「え・・・あ、あの・・・」
黒川は何かまずい事を言っただろうかとおろおろし始める。
「まぁいいよ・・・厳しめの忠告として覚えとくから」
樺島は苦笑いしてそう言った。
「あら、随分素直ですのね?」
樺島の態度を見て友麻が不思議そうに言う。
「だってこの人が一番怖かったし」
樺島が黒川を見て答える。
「な・・・!」
黒川は何か言いたげだったが言葉が見つからない様子だった。
「その素直さ、今後も忘れずに持ち続けるのですわ」
結衣がそう言って樺島に促す。
「・・・あ、あぁ。分かった」
樺島は少し驚きつつ返事をする。
(この子も・・・少しづつ変わってきましたわね)
友麻はその様子を微笑んで見ていた。
「よし・・・では、これで『調教』の終了を
ここにて宣言いたします。お疲れさまでした。」
結衣はそう宣言する。そして樺島の顎をグッと掴み自分に向けた。
「でも忘れないで下さい。私達はいつでもお前を
完全な奴隷に堕とすことが出来ますわよ」
彼を見下ろし、そう言うと再び優しく微笑んだ。
「・・・」
美しくも妖艶な笑みを浮かべる結衣の視線が刺さり
樺島がごくりと唾をのむ。
「ふふ、それではごきげんよう。良い結果となる事を祈っております」
「またご縁がありましたらお会いしましょう」
結衣と友麻が優雅にお辞儀をする。
(この子達にこの目で睨まれたら・・・俺は逆らえない!)
樺島がそう感じた瞬間だった。
つづく
こんなに大きくしてしまって・・・」
「う・・・うぅ」
樺島は地下室で全身を縛られた上に天井から吊るされていた。
「こっちもすっかり感じてしまうようになりましたわね」
結衣がそう言って彼の無防備な乳首を強く引っ張る
「はぐぅ・・・!」
その刺激に樺島は思わず切ない声を出してしまう。
しかし今の彼は逃げる事も抵抗する事も出来なかった。
「あら、痛い方がお好きのようですわね」
「う・・・く・・・」
「では、これはどうかしら?」
「ひぎゃっ!あ、あああっ!」
今度はもっと強くつままれる。
しかし樺島はそれに痛みと同時に快感を覚えてしまっていた・・・。
「ふふ・・・もうすっかりマゾに目覚めてしまったようですわね」
「う・・・うう・・・」
樺島は何も言い返せない・・・。
「ここにピアスを付けたらきっと可愛らしいですのよ」
友麻が無邪気に笑いながら乳首を撫でまわす。
「!!!!」
友麻の言葉を聞いた途端、樺島は恐怖のあまり涙目で首を振る。
「あら、嫌なのですか?耳にはこんなに連ピアスを開けてますのに」
そう言って友麻が彼の耳たぶに付いたピアスに触れる。
「う・・・うう」
「ふふ、この子のピアスはきっと弱い自分を強く見せるための
心を守るアイテムのなのでしょう。
男の子は自分を大きく見せたがりますから」
結衣もからかうように続く。
「そうでしたらこんなところに付けたら心を守るどころか
自分の隠された性癖をさらけ出す事になってしまいますものね」
「そうそう、実はこの子の心はとっても弱いのですわ」
「ち、ちが・・・」
樺島は必死に否定しようとするが上手くしゃべれない。
「あら、強がって可愛いですこと」
「ふふ、自分に素直になった方がきっと楽ですわよ」
二人が顔を見合わせて笑う。
「・・・はぁ、はぁ・・・」
そして二人の反応に樺島は何も言い返せなかった・・・。
彼自身女性経験がないわけではない。
というかその目を引く整った外見で
女性が寄ってくることは多かった。
しかしこうして彼女たちに調教されるようになってから、
無意識にだが、樺島の中では自分がこれまでしてきた
普通のセックスが酷く単調なものに思える気持ちが
目覚めていた・・・。
それほどに姉妹たちから惨めに攻められているこの状態は、
これまでのそれとは全く別の 異常な興奮を彼に与えていた。
「あら、こちらももう限界のようですわよ」
「う・・・うぅ・・・」
「ふふ、本当ですね」
姉妹は樺島の様子を確認すると、滑車を回し彼を床へと下ろした。
「え・・・?」
そして両手の戒めをほどいた。
しかし足はそのまま縛られているので歩くことは出来ない。
「さ、手は自由になるよう解放してあげましたわ。」
「その手でお前の好きなようになさいな」
姉妹はそう言うと樺島から少し離れた場所に動いた。
「う・・・うぅ・・・」
樺島は姉妹の言葉に促されるように、
両手を自分の股間へと持って行く。
そしてそのまま激しく弄りはじめた。
「う・・・ぐぅ・・・」
「あら、人目も憚らず自分で始めましたのよ?
恥ずかしくないのでしょうか?」
「ふふ、ここで出さなければまた貞操帯を付けさせられて
宿舎へと戻される事をこの子はわかっていますわ。」
「先日、出す寸前で貞操帯を付けさせらて一晩放置されたのが
相当堪えているようですのよ。」
「やはり口で言って分からない子は貞操帯付けての
寸止め放置に限りますわ」
姉妹はそう言い合いながらクスクスと笑う。
「ああ・・・う・・・うぅ」
「ふふ、もう夢中ですわね・・・」
(くそ・・・手が止まらない)
「はぁ、はぁ・・・」
樺島はあっという間に達しそうになっていた。
「ふふ、もうイッてしまうの?」
「いいですわよ。このド遺物のような姿で盛大に
惨めに果ててしまいなさいな」
「あ・・あぁ・・・ぐうぅ!」
そして樺島のモノの先から白い液がほとばしる・・・
「・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ」
樺島はがっくりとうなだれる。
(ああ・・・俺は・・・本当に変態に・・・)
「ほら、沢山出ましたわよ」
結衣がそう言って樺島の頭を撫でた。
彼はそれに言い返す事もなく恍惚とした表情で
自分で床にぶちまけてしまったものを見つめていた。
そしてその様子を後ろから傍観する黒川の姿があった。
しかし彼もまた、樺島の痴態を見て
これまでにない感情を抱いていた・・・。
***
あの日以降、樺島は大人しくなった。
急に態度や性格が変わったわけではないが、
ただ姉妹たちに反抗したり悪態をつく回数は確実に減っていった。
「・・・なんか物足りなくなってしまいましたわね」
「まだ少し文句は言いますが、こちらのいう事をちゃんと聞きますものね」
「今回の事は全くの想定外ですわ・・・」
結衣がため息を吐く。
「今回は奴隷に堕としきれってオーダーではなかったので
既にミッションコンプリートではありませんの?」
「まだあと1日ほどあるのですけど・・・」
この予想を大きく裏切ったの結果に姉妹が
別の意味で頭を悩ませていた。
そんな彼の変化は調教の時ばかりではなかった。
樺島本人も、調教以外の時間の殆どを
ピアノか机に向かって過ごしていた。
(あのどうしたらいいのか分からない感情を・・・形にしたい)
理由はどうあれ彼が音楽に対して
ここまで情熱を注いだのは初めてだった。
今まではただ気分や思い付きの無目的なものが殆どだったが、
今やりたいのは、自分自身が心躍る曲を作るためだ。
(俺は、おかしくなっちまったのかな・・・)
そんな事を考えながら彼は湧き上がる感情を
譜面にぶつけていく。
日々の調教で体力を消耗した後にも関わらず
一心不乱に手を動かすその姿は、まさに狂気であっただろう。
その狂気の権化ともいえる譜面は、調教終了日には
おびただしい量となり部屋中に散らばっていた・・・。
***
「・・・ん」
最終日の朝、樺島が目を覚ますとそこはベッドの上だった。
「おはようございます」
「ごきげんよう、お目覚めですか?」
横には姉妹と黒川の姿があった。どうやら彼らが
ベッドまで運んでくれたらしい。
(そうか・・・俺ピアノを弾いててそのまま眠ったのか)
樺島は寝ぼけた頭でそんな事を考えていると
「ところでこれ、拝見いたしましたわ」
そう言って友麻が一枚の紙を手渡した。
「・・・あっ!」
それは樺島自身が書き上げた譜面だった。
「え、えっと・・・」
戸惑う樺島に結衣が声をかける。
「ふふ、なかなか面白い曲でしたわ」
「歌詞はまだ少し酷いですけど、
以前のような空虚な感じが無くなって
鬼気迫る感じがよく出てると思いましたのよ」
「・・・!」
その言葉に樺島が起き上がり目を見開く。
「もう、なんて顔をしていますのよ」
「私たちは音楽に関しては素人ですが、
音を嗜む事に関しては人並みの感性は持ち合わせています。
なので良いと感じたものはちゃんと評価したしますわ」
姉妹はそう続けた。
「これ・・・今のお前の感情を
何とか伝わる形にしてみたものですか?」
樺島は無言で頷く。
「お前はここに来て、何を感じましたか?」
結衣が優しい笑顔で聞いてくる。
「・・・」
樺島は少し考えてから、ぽつりぽつりと話し始める。
「・・・最初は、ただ自分の好きな事をやればいいって、
ずっとそう思ってた」
「だけど・・・ここに来て、俺は自分が何もできない事を知った」
姉妹たちは黙って聞いている。
「そしたら、あんたらが動けない俺を好き勝手し始めて
坊主にしたり裸にしたり、俺の身体を散々辱めてくれて・・・」
樺島の顔と声が少し熱を帯びてくる。
(まぁそういう依頼でしたから)
結衣が心の中でツッコみかけるが黙っていた。
「あんたたちは、俺の態度を見ても怯むどころか
見下してバカにしてくるし更に毎日何をしてくるか
全然予想ができなかったし、
考えてる事も全く読めないし・・・
俺は初めて特定の誰かを・・・『怖い』と思った」
(だって本当に言う事やる事があまりに馬鹿臭かったし・・・)
黒川も思わずそんな言葉が喉まで出かかってしまう。
「怖い・・・とは?」
結衣が優しく問いかける。
「あんたたちが相手だと、俺は自分の何もかもを
さらけ出してしまいそうだった・・・。
俺の意志とは無関係に、恥ずかしさも、情けなさも、悔しさも・・・
すべてだ。だから・・・あんたらが怖ったんだ。」
(口にはしてませんがこれには絶対『気持ち良かった事』も
入っていそうですのよ・・・)
友麻もそう茶々を入れたいのをぐっとこらえていた。
「だから俺はそんなぐちゃぐちゃになった感情を
自分なりの形にしたくなった・・・」
樺島はそう言い切る。
「そして出来たのがこの曲だと・・・」
黒川の言葉に樺島が小さく頷く。
「あぁ、こんなに自分の気持ちや感情を
曲にぶつけたのは初めてだ・・・
今まではただ適当に書いてたけど、
自分をさらけ出して全てぶつけるって
こんなに楽しいんだなって知ったよ・・・」
樺島はそう言って少々自嘲気味に笑った。
「お前の気持ちは分かりました。
では次に私からも少し言わせていただきます。」
今度は結衣が口を開く。
「今回依頼された調教はお前を完全な奴隷に堕とす事ではなく
手が付けられない程の素行の悪さと、
動物並みの知能と倫理観何とかしてほしい・・・
という事でした。」
(結衣様、最後まで本当に容赦ない・・・)
相変わらずの歯に衣着せぬ彼女の物言いに
黒川が心の中で突っ込む。
「しかし実際に会ってみればそれに加えて
知性も教養も常識もなく、あるのは才能だけという・・・」
(結衣様、その通りですがもうちょいオブラートに・・・)
黒川も他人事ながら流石に気の毒になってくる。
「社長さんも多少の罰ではお前の百科事典並みに分厚い面の皮は
貫けないと踏んでここによこしたのだと思いますのよ」
友麻が冷静にとどめを刺す。
(友麻様まで・・・!)
黒川は友麻にも心でツッコんだ。
「そうか・・・」
黒川のそんな心配をよそに樺島は苦笑いでそう答えた。
そしてしばらく考え込んだ後に再び言葉を発する。
「そうだな・・・あんたらには散々ひどい目に遭わせられたよ」
彼が自嘲気味に再び笑う。
「ふふ、どういたしまして。でも得たものもありましたでしょう?」
「あぁ・・・そうだな」
樺島は部屋に散らばった譜面を見てそう答える。
「・・・以前のお前のままでしたら、せっかく作ったこの曲も
世に出す事すら叶わなかったでしょうね」
「もう少し周囲に対して柔軟になれば、
多くの人にこの曲を聴いてもらえる可能性も高まりますわ」
「あぁ・・・精進するよ」
姉妹の言葉に樺島がしみじみと答える。
「その言葉、本当かどうか疑わしいですわね」
友麻が腕を組んで疑いの目を向ける。
「・・・まぁ、でも、少しは信じてもいいよ」
樺島はそう答えた。
「その心掛けが長く持つといいのですがね」
「ふふ、でもまぁいいですわ」
姉妹はそう言うと後ろに控えている黒川の方を見た。
「文月、お前はどうですか?この子に何か
言いたいことはありますか?」
「最後だから思い切っていってごらんなさいな」
「え?!」
突然話を振られて黒川はとまどった。
「まぁ、その・・・」
黒川は言葉を詰まらせた。
(言いたいこと・・・)
「あ、あの!樺島さん!」
黒川は思い切って声を上げた。
「お、おう」
樺島は突然大声を出した彼女に少し驚いたが、すぐに向き直る。
「・・・貴方の音楽の才能は確かに本物だと思います。
たとえ万人受けしなくても一部の人の心をつかむのは確実でしょう。
だから思ったほど売れなくても、落ち込んだりしないで下さい。
もし世間に受け入れられなくても、
評価してくれる人は多分いると思います」
「・・・・」
その場にいた全員が黙り、場が凍り付いた。
「あのさ・・・誉めるふりして地獄の堕とすのやめてくれない?」
「な・・・なかなか容赦ないですわね」
「というか、こんな時に脅すような事言ってどうしますのよ・・・」
少し間をおいて皆が口々に言い始める。
「え・・・あ、あの・・・」
黒川は何かまずい事を言っただろうかとおろおろし始める。
「まぁいいよ・・・厳しめの忠告として覚えとくから」
樺島は苦笑いしてそう言った。
「あら、随分素直ですのね?」
樺島の態度を見て友麻が不思議そうに言う。
「だってこの人が一番怖かったし」
樺島が黒川を見て答える。
「な・・・!」
黒川は何か言いたげだったが言葉が見つからない様子だった。
「その素直さ、今後も忘れずに持ち続けるのですわ」
結衣がそう言って樺島に促す。
「・・・あ、あぁ。分かった」
樺島は少し驚きつつ返事をする。
(この子も・・・少しづつ変わってきましたわね)
友麻はその様子を微笑んで見ていた。
「よし・・・では、これで『調教』の終了を
ここにて宣言いたします。お疲れさまでした。」
結衣はそう宣言する。そして樺島の顎をグッと掴み自分に向けた。
「でも忘れないで下さい。私達はいつでもお前を
完全な奴隷に堕とすことが出来ますわよ」
彼を見下ろし、そう言うと再び優しく微笑んだ。
「・・・」
美しくも妖艶な笑みを浮かべる結衣の視線が刺さり
樺島がごくりと唾をのむ。
「ふふ、それではごきげんよう。良い結果となる事を祈っております」
「またご縁がありましたらお会いしましょう」
結衣と友麻が優雅にお辞儀をする。
(この子達にこの目で睨まれたら・・・俺は逆らえない!)
樺島がそう感じた瞬間だった。
つづく
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